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第22話 主人公と体育祭
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昴が風音生徒会長に引っ張られて行った朝のあと。
オレは深刻な面持ちの昴に呼び止められた。
「瑛。」
「ん?」
「これ、瑛の家の鍵。」
震えた手で、オレに鍵を返す。
オレの心臓は一瞬凍ったような感覚を覚えた。
そうだ。オレは昴にテスト期間と条件付けて、来てもらってたんだっけ。
「あ、そっか。テスト終わったもんな。」
「……うん。ありがと。」
「いや、お礼を言うのはこっちだよ。マジでありがとな!」
オレもそんな気持ちを隠して何とか笑顔を作る。
どうしたものか、気まずい空気が流れた。
「瑛。」
そんな空気を変えたのは昴の声だった。
「体育祭まで、朝ごはん、一緒に食べられ、ない、です。」
「そ……っか。」
昴の善意に甘えてばかりのオレはそんな返答しか出来なくて。
昴となかなか話すことの出来ないまま、3日が過ぎてしまった。
話せたのはテストの点数のことくらいで、無事、赤点回避はできたとの事だ。
何度も礼を言われて、オレが「昴が頑張ったからだよ」って返して。
それだけ。
昔の遠からず近からずの距離感に戻ってしまった。
そんな感じがした。
朝練が終わる頃には昴の鞄はもう教室にあるし、早朝から登校しているのは分かっているけれど、どこで何をしているのか分からない。
放課後も、話す間もなく直ぐにどこかへ消えていく。
当たり前になりつつあった日常がなくなって、少し心がザワザワとした。
***
ロングホームルーム。
「体育祭だぁぁぁ!」
教卓の手をついて、そう絶叫するのはスポーツ刈りの野球部員、兼、体育委員の亮介だ。
彼は握りこぶしを作りながら、抑えきれない感情を爆発させる。
「やっと来た!俺の出番!」
そんな亮介の発言を聞いた翔馬が、それをフフっと鼻で笑う。
「そんなこと言うならウチの瑛は毎日出番だけどね。」
「ぐうの音も出ない……。てる、野球部はいつでもお前を待ってるよ。」
涙目になりながら、くるりと黒板の方を向いて、乱れた文字で『体育祭について!色々決める!』と記す。
振り返った時には、満面の笑みを笑みを浮かべていた。
亮介の大きな声が教室の空気を震わす。
「やっぱり、目指すは優勝!そして大会MVP!
優勝の特典は、9月に行われる文化祭の出店優先権!」
「やっぱ文化祭は一番人気の模擬店したいよね~!」
そんな翔馬の発言に皆が頷く。
文化祭といえば、体育祭と同じくらい盛り上がるイベントだ。その中でも模擬店は花形で超人気。
体育祭で優勝すれば、クラスの競合を気にせず好きな形態を選べるのだから、皆がとても必死になるのは納得だ。
「更に!優勝クラスから選ばれる大会MVPには、生徒会が許可する範囲内で、なんでも要望できる権利!」
亮介の声のボリュームは最大になる。
大会MVP。優勝クラスの中で特に活躍した生徒が選ばれる賞だ。そして報酬で得られるのはとんでもない特権。
「前回MVPとった3年の先輩は文化祭で自由に使えるゴールドカード貰ったって言ってた。マジでなんでも聞いてくれるらしい。」
「すげぇ……。」
そんな声がどこかから溢れる。
「過去には生徒会完全バックアップのもと、告白の場所の提供とかもあったらしいよ。」
ボソリと女子の囁きも聞こえる。
いい、それ、めちゃくちゃ青春だろ!
オレも思わずドキドキしてしまう。
「へぇ、告白、ねぇ。」
数々の囁き声に、後ろで頬杖をついていた翔馬はニコニコと、オレの方を見ながら意味ありげにそんなことを呟いた。
また、翔馬は変な勘違いをしているのかもしれない。
オレがどうやって訂正しようか考えていると、教卓の方からクラスの視線を集める声が響く。
「そんな体育祭の目玉になる、全クラス対抗男女混合リレーのメンバーを決めたいと思います!」
亮介の発言でクラスが一気に盛り上がった。
「陸上部の鈴川さんと、アンカーの瑛は確定として。」
活発な女子である鈴川さんは、いいよ~と軽く返事をする。
オレも勝手に出ることになってるが、クラスの役に立てるなら本望だ。
「女子一人、男子一人、あとやりたいやついる?」
そんな亮介の問い掛けに、一人の女子生徒が手を挙げた。
「私、出ててもいいですか?」
「お!白百合さん!もちろん~!」
「女子は他に出たい人いない?」
亮介が一度辺りを見渡して確認する。
白百合さん、文武両道だもんな。
全員の納得した表情を見た亮介は、勢いよく黒板に白百合さんの名前を書き足す。
「じゃあ、女子は決定ね!それじゃあ男子だ!
出たいヤツ~!はい俺~!」
自分の問いかけに即座に返答する亮介と。
「僕も~!」
挙げた手を大きく振る翔馬。
妥当なメンバーだ。
二人が出たいっていうなら、オレは抜けるのもアリだな。
そんなことを考えていた時。
予想打にしなかった声が、対角線上から聞こえてきた。
「お、俺、出たいです。」
「え、昴?」
オレは思わずそんな声を漏らしてしまった。
「酒神マジ!?」
「走れるの?!」
走れはするだろ。
遠回しにめちゃくちゃ失礼な発言をする翔馬には軽くチョップをかましておく。
「ウウウウウ、ウン。」
凄い動揺してるけど大丈夫なのだろうか。
昴は昔から読書とかが大好きなインドア派で、運動が得意そうなイメージはなかったが、オレの思い込みだったのか。
そんな心の声を昴自身の声がかき消す。
「走ります!走らせてください!」
昴は勢いよく立ち上がる。
まさかの展開に教室がザワザワとうるさくる。
それを沈めたのは亮介の誰よりも大きな声だった。
「じゃあ、3人で決戦か!」
亮介がニヤリとしながら指の関節を鳴らす。
そんな彼に、翔馬も受けて立とうと立ち上がる。
殺伐とした空気に、オレは手を挙げてある提案をしようとする。
「オレ、やりたいヤツに譲るよ……」
「何言ってんだ。てるはクラス一、足速いだろ。」
「瑛が出なきゃ始まんないからね。これは、2番を決める戦いなんだよ。」
「そ、そう……」
二人のあまりの圧に圧倒されたオレは、しぶしぶ手を下ろした。
「ここはグラウンドに出て実力勝負だね……」
翔馬がブレザーを脱いで、今にも外に出ようと教室の扉に手をかけようとした時だった。
「いや、ここはジャンケンだ。」
「え、」
「すまんが、メンバー表の提出、今日のロングホームルーム終了までなんだわ。他の種目も決めなきゃだし、グラウンド出てたらマジで間に合わん。」
「コイツ……!」
亮介の計画性のなさはテストの頃から滲み出てはいたが、相当だったらしい。
翔馬はやり場のない怒りをどうにか拳に封じ込めて、ジロリと亮介の方を睨む。
「……ジャンケン。行けます。」
昴もそう言うと、尋常ではない鋭い目つきで立ち上がり前進する。例えるなら、歴戦の戦士の目。
そんな表情できたんだ、と新たな友人の一面に少し驚いてしまった。
亮介と翔馬、そして昴が教卓の前に集う。
オレはその様子を1番前の席という特等席で見守っていた。
沈黙のあと、男子高校生の真剣な声が教室に轟く。
「「「じゃんけん、ぽん」」」
亮介がグー。
翔馬がパー。
昴もパー。
「ぐぁぁぁぁ!」
敗北した亮介は頭を抱えて絶叫し項垂れる。
敗者の声は聞こえないのか、それを気にすることなく、勝者達はお互いを睨んでいる。
「「じゃんけん、ぽん」」
昴がチョキ。翔馬もチョキ。
あいこだ。
昴の握られた拳は震えていて、余程強く握りしめていることが分かる。
昴の額から1滴、汗がこぼれ落ちる。
このリレーに、ジャンケンに、そこまで真剣になるか?
「「じゃんけん、ぽん」」
昴がパー。翔馬もパー。
昴は大きく息を吸って吐く。
翔馬を見る視線はまるで獲物を狩る肉食動物のよう。
なんでそこまでこのリレーに拘るんだ、と疑問に思っていると、彼らの後ろにある黒板が視界に入り、オレはその答えを見つけてしまう。
リレーのメンバーには、白百合さんがいるじゃないか。
そうか。
昴は白百合さんとどうしても一緒に走りたかったんだ。
いや、そのもっと先、MVPになって、特権を獲得したいのかも。
主人公が振り絞る勇気。
そして、これまであまり目立たなかった主人公が本領発揮する体育祭。
まさに、ラブコメ展開だ!
頑張れ、昴!
そんな念を送り、オレは二人の戦いを見守る。
「「じゃんけん、ぽん!」」
昴がグーで、翔馬がチョキ。
「ありゃ、負けちゃった。」
翔馬は自分の手をじっと見つめて、ため息を吐く。
「か、かか勝てた……ありがとう……」
ありがとう?
何故か遠くの方を見つめる勝者の反応に少し疑問が残りつつ。
オレは心の中で主人公の勝利に大きく湧いていた。
「じゃあ、酒神が最後のメンバーってことで!補欠は俺が適当に出しとくな~。」
さっきの落胆はどこへやら、すっかり元気を取り戻した様子の亮介が、力一杯に黒板に昴の名前を書き込む。
「託したよ~、すばる君!」
「は、はい!」
翔馬はバシバシと昴の大きな背中を叩いて鼓舞する。
それを受ける昴の表情は固くて、オレは思わずそんな昴に声をかけた。
「あんま気負うなよ?」
オレがそう言うと、翔馬はこっちに寄ってきて肩を組む。
「そそ~、なんてったって、後ろには瑛がいるから。」
「オレに重圧かけんな。」
「アハ。」
翔馬は舌をチラリと見せて笑う。
「瑛、俺、頑張るから!」
「……おう!無理だけはすんなよ。」
「うん。」
そんなオレの言葉に昴は困ったように少し笑った。
オレは深刻な面持ちの昴に呼び止められた。
「瑛。」
「ん?」
「これ、瑛の家の鍵。」
震えた手で、オレに鍵を返す。
オレの心臓は一瞬凍ったような感覚を覚えた。
そうだ。オレは昴にテスト期間と条件付けて、来てもらってたんだっけ。
「あ、そっか。テスト終わったもんな。」
「……うん。ありがと。」
「いや、お礼を言うのはこっちだよ。マジでありがとな!」
オレもそんな気持ちを隠して何とか笑顔を作る。
どうしたものか、気まずい空気が流れた。
「瑛。」
そんな空気を変えたのは昴の声だった。
「体育祭まで、朝ごはん、一緒に食べられ、ない、です。」
「そ……っか。」
昴の善意に甘えてばかりのオレはそんな返答しか出来なくて。
昴となかなか話すことの出来ないまま、3日が過ぎてしまった。
話せたのはテストの点数のことくらいで、無事、赤点回避はできたとの事だ。
何度も礼を言われて、オレが「昴が頑張ったからだよ」って返して。
それだけ。
昔の遠からず近からずの距離感に戻ってしまった。
そんな感じがした。
朝練が終わる頃には昴の鞄はもう教室にあるし、早朝から登校しているのは分かっているけれど、どこで何をしているのか分からない。
放課後も、話す間もなく直ぐにどこかへ消えていく。
当たり前になりつつあった日常がなくなって、少し心がザワザワとした。
***
ロングホームルーム。
「体育祭だぁぁぁ!」
教卓の手をついて、そう絶叫するのはスポーツ刈りの野球部員、兼、体育委員の亮介だ。
彼は握りこぶしを作りながら、抑えきれない感情を爆発させる。
「やっと来た!俺の出番!」
そんな亮介の発言を聞いた翔馬が、それをフフっと鼻で笑う。
「そんなこと言うならウチの瑛は毎日出番だけどね。」
「ぐうの音も出ない……。てる、野球部はいつでもお前を待ってるよ。」
涙目になりながら、くるりと黒板の方を向いて、乱れた文字で『体育祭について!色々決める!』と記す。
振り返った時には、満面の笑みを笑みを浮かべていた。
亮介の大きな声が教室の空気を震わす。
「やっぱり、目指すは優勝!そして大会MVP!
優勝の特典は、9月に行われる文化祭の出店優先権!」
「やっぱ文化祭は一番人気の模擬店したいよね~!」
そんな翔馬の発言に皆が頷く。
文化祭といえば、体育祭と同じくらい盛り上がるイベントだ。その中でも模擬店は花形で超人気。
体育祭で優勝すれば、クラスの競合を気にせず好きな形態を選べるのだから、皆がとても必死になるのは納得だ。
「更に!優勝クラスから選ばれる大会MVPには、生徒会が許可する範囲内で、なんでも要望できる権利!」
亮介の声のボリュームは最大になる。
大会MVP。優勝クラスの中で特に活躍した生徒が選ばれる賞だ。そして報酬で得られるのはとんでもない特権。
「前回MVPとった3年の先輩は文化祭で自由に使えるゴールドカード貰ったって言ってた。マジでなんでも聞いてくれるらしい。」
「すげぇ……。」
そんな声がどこかから溢れる。
「過去には生徒会完全バックアップのもと、告白の場所の提供とかもあったらしいよ。」
ボソリと女子の囁きも聞こえる。
いい、それ、めちゃくちゃ青春だろ!
オレも思わずドキドキしてしまう。
「へぇ、告白、ねぇ。」
数々の囁き声に、後ろで頬杖をついていた翔馬はニコニコと、オレの方を見ながら意味ありげにそんなことを呟いた。
また、翔馬は変な勘違いをしているのかもしれない。
オレがどうやって訂正しようか考えていると、教卓の方からクラスの視線を集める声が響く。
「そんな体育祭の目玉になる、全クラス対抗男女混合リレーのメンバーを決めたいと思います!」
亮介の発言でクラスが一気に盛り上がった。
「陸上部の鈴川さんと、アンカーの瑛は確定として。」
活発な女子である鈴川さんは、いいよ~と軽く返事をする。
オレも勝手に出ることになってるが、クラスの役に立てるなら本望だ。
「女子一人、男子一人、あとやりたいやついる?」
そんな亮介の問い掛けに、一人の女子生徒が手を挙げた。
「私、出ててもいいですか?」
「お!白百合さん!もちろん~!」
「女子は他に出たい人いない?」
亮介が一度辺りを見渡して確認する。
白百合さん、文武両道だもんな。
全員の納得した表情を見た亮介は、勢いよく黒板に白百合さんの名前を書き足す。
「じゃあ、女子は決定ね!それじゃあ男子だ!
出たいヤツ~!はい俺~!」
自分の問いかけに即座に返答する亮介と。
「僕も~!」
挙げた手を大きく振る翔馬。
妥当なメンバーだ。
二人が出たいっていうなら、オレは抜けるのもアリだな。
そんなことを考えていた時。
予想打にしなかった声が、対角線上から聞こえてきた。
「お、俺、出たいです。」
「え、昴?」
オレは思わずそんな声を漏らしてしまった。
「酒神マジ!?」
「走れるの?!」
走れはするだろ。
遠回しにめちゃくちゃ失礼な発言をする翔馬には軽くチョップをかましておく。
「ウウウウウ、ウン。」
凄い動揺してるけど大丈夫なのだろうか。
昴は昔から読書とかが大好きなインドア派で、運動が得意そうなイメージはなかったが、オレの思い込みだったのか。
そんな心の声を昴自身の声がかき消す。
「走ります!走らせてください!」
昴は勢いよく立ち上がる。
まさかの展開に教室がザワザワとうるさくる。
それを沈めたのは亮介の誰よりも大きな声だった。
「じゃあ、3人で決戦か!」
亮介がニヤリとしながら指の関節を鳴らす。
そんな彼に、翔馬も受けて立とうと立ち上がる。
殺伐とした空気に、オレは手を挙げてある提案をしようとする。
「オレ、やりたいヤツに譲るよ……」
「何言ってんだ。てるはクラス一、足速いだろ。」
「瑛が出なきゃ始まんないからね。これは、2番を決める戦いなんだよ。」
「そ、そう……」
二人のあまりの圧に圧倒されたオレは、しぶしぶ手を下ろした。
「ここはグラウンドに出て実力勝負だね……」
翔馬がブレザーを脱いで、今にも外に出ようと教室の扉に手をかけようとした時だった。
「いや、ここはジャンケンだ。」
「え、」
「すまんが、メンバー表の提出、今日のロングホームルーム終了までなんだわ。他の種目も決めなきゃだし、グラウンド出てたらマジで間に合わん。」
「コイツ……!」
亮介の計画性のなさはテストの頃から滲み出てはいたが、相当だったらしい。
翔馬はやり場のない怒りをどうにか拳に封じ込めて、ジロリと亮介の方を睨む。
「……ジャンケン。行けます。」
昴もそう言うと、尋常ではない鋭い目つきで立ち上がり前進する。例えるなら、歴戦の戦士の目。
そんな表情できたんだ、と新たな友人の一面に少し驚いてしまった。
亮介と翔馬、そして昴が教卓の前に集う。
オレはその様子を1番前の席という特等席で見守っていた。
沈黙のあと、男子高校生の真剣な声が教室に轟く。
「「「じゃんけん、ぽん」」」
亮介がグー。
翔馬がパー。
昴もパー。
「ぐぁぁぁぁ!」
敗北した亮介は頭を抱えて絶叫し項垂れる。
敗者の声は聞こえないのか、それを気にすることなく、勝者達はお互いを睨んでいる。
「「じゃんけん、ぽん」」
昴がチョキ。翔馬もチョキ。
あいこだ。
昴の握られた拳は震えていて、余程強く握りしめていることが分かる。
昴の額から1滴、汗がこぼれ落ちる。
このリレーに、ジャンケンに、そこまで真剣になるか?
「「じゃんけん、ぽん」」
昴がパー。翔馬もパー。
昴は大きく息を吸って吐く。
翔馬を見る視線はまるで獲物を狩る肉食動物のよう。
なんでそこまでこのリレーに拘るんだ、と疑問に思っていると、彼らの後ろにある黒板が視界に入り、オレはその答えを見つけてしまう。
リレーのメンバーには、白百合さんがいるじゃないか。
そうか。
昴は白百合さんとどうしても一緒に走りたかったんだ。
いや、そのもっと先、MVPになって、特権を獲得したいのかも。
主人公が振り絞る勇気。
そして、これまであまり目立たなかった主人公が本領発揮する体育祭。
まさに、ラブコメ展開だ!
頑張れ、昴!
そんな念を送り、オレは二人の戦いを見守る。
「「じゃんけん、ぽん!」」
昴がグーで、翔馬がチョキ。
「ありゃ、負けちゃった。」
翔馬は自分の手をじっと見つめて、ため息を吐く。
「か、かか勝てた……ありがとう……」
ありがとう?
何故か遠くの方を見つめる勝者の反応に少し疑問が残りつつ。
オレは心の中で主人公の勝利に大きく湧いていた。
「じゃあ、酒神が最後のメンバーってことで!補欠は俺が適当に出しとくな~。」
さっきの落胆はどこへやら、すっかり元気を取り戻した様子の亮介が、力一杯に黒板に昴の名前を書き込む。
「託したよ~、すばる君!」
「は、はい!」
翔馬はバシバシと昴の大きな背中を叩いて鼓舞する。
それを受ける昴の表情は固くて、オレは思わずそんな昴に声をかけた。
「あんま気負うなよ?」
オレがそう言うと、翔馬はこっちに寄ってきて肩を組む。
「そそ~、なんてったって、後ろには瑛がいるから。」
「オレに重圧かけんな。」
「アハ。」
翔馬は舌をチラリと見せて笑う。
「瑛、俺、頑張るから!」
「……おう!無理だけはすんなよ。」
「うん。」
そんなオレの言葉に昴は困ったように少し笑った。
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