俺がペットでペットがご主人さまで~転生者の殺戮場~

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第1章

第3話 力の覚醒

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   街を囲う防壁に連立するようにして建築された門扉。
 街の北側にその門扉はあり、一個大隊の『アリルアンヌ大国』の騎士が集った。
 騎士たちは各々武器を腰に携え迫りくる敵を向かい打つべく進軍していた。
 その傍らで騎士にまぎれて騎士ではない者も数名いた。冒険者や傭兵という志願兵。
 彼らもまた『アリルアンヌ大国』という世界有数の産業豊富の国であり傭兵や冒険者などの職業者のための楽園国のために戦おうとしてくれる勇気ある戦士たちである。
 敵とはだれかは兵たちにはわかりきっていた。
 この世界で悪の王と知られる昔の大戦時に滅んだ国の亡国の王である軍団。現在来ているのはその王に仕える傘下の男、シルバーウォングという珍しい種族の騎士団長が率いた傘下が鬼気迫ってきている。
 傘下の連中は『モンスター』といわれる人とは違う異形の存在も混ざっている。
 国を守るためにはどんなことでもしないといけない。
『アリルアンヌ大国』の王女は囚人の考えを認め囚人である彼女を同行させていた。
 こちらにはデメリットなことは何も起こることはないとは言い切れないが彼女が裏切り行為を働いたといしても身の安全には大きな自身があるので彼女を頼ることを決断するのに時間はそう掛かりはしなかった。いや、王女の中では頼るということではない。扱うことをする。世界が戦時の定かの中で『アリルアンヌ大国』も兵力が足りないのは当たり前。猫の手も借りたい今は彼女の力を借りてもいいだろうくらいの気持ちを持たねばならない。

「見えましたか?」
「いえ、まだです。ですが、王女殿下彼女を信じて本当によろしいのでしょうか?」

『アリルアンヌ大国』の騎士、アカネ・キサラギは困り顔で王女に問うた。彼女の背後には厳重に護衛騎士に囲まれるように手枷をつけられたローブ姿のホロウラビット族の美女の囚人がいた。ホロウラビット族は素早い動きはでき、耳がよく偵察などに優れた種族だが力量は乏しい種族なので手枷で十分でありこの数相手では彼女でも逃げおおせるのは困難と思う。しかし、それでも彼女は捕縛の際に見せた力量はホロウラビット族以上のものだったので注意を怠れはしない。
 アカネはその彼女を蔑むように観察する。

「王女殿下の配慮ある選択は大変心が広く立派であると思いますがもし何かあれば危険であります」
「何度も申させないでほしいですわアカネ。平気ですわ。彼女もどちらが危険な存在であるかはわかりますでしょう。それにこのような敵陣の中心で裏切り行為なんてことを働くなんてすると思いませんわ」
「わからないじゃないですか」
「いいから、前を向いて監視を続行しなさい」
「……わかりました。おい、そこのお前。偵察兵は戻ってきたか?」

 アカネは王女の考えにためらいながらも賛同し近くにいた一人の部下を呼び付け状況確認をとった。すると、部下は偵察兵がまだ戻らないという旨を伝える。
 嫌な予感がする。
 このまま直進すると岩壁が続くけもの道。
 数分前の報告によれば敵陣はけもの道を通り過ぎているという。
 ならば、そろそろ対面するはずなのだが一向に姿が見えなかった。

「王女殿下、背後にお控えをください。なんだか、空気が不穏ですので」

 アカネはすぐに王女を一番中央に配置させ周りを手だれの『アリルアンヌ大国』騎士で1層目を固めて2層目に冒険者や傭兵で固める。王女を守るような防衛の包囲陣を敷く。
 あくまで、その包囲陣は半数の兵士でやらせる。防御チームと攻撃チームに分けて戦う戦略を使う。攻撃チームは魚鱗の陣で進行をする。
 けもの道にたどりつく。
 王女を馬から降ろさせ身をしゃがませる。

「岩壁上に魔球2射出!」

 指示を出すと背後に控えていた騎士たちが岩壁頭上に向け手を掲げあげ、掌の中心で様々な球体が生み出された。風の圧縮玉、火炎球体、雷光球体、氷の球体さまざまな球体が縦横無尽に射出される。
 敵への威嚇射撃を込めた掃射であった。
 岩壁の陰に敵が隠れてるというパターンを考えての作戦である。
 岩壁上を魔球が通り過ぎていくも反応はない。

「よし、敵影はないですか。直進をします。防衛側は包囲陣刑を維持したまま現場待機。攻撃側は陣計維持のまま進行する」

 その時だった。

「前よ!」

 攻撃側に組み込んでいた囚人――アルピノアと自称した女が声を荒げた。
 その声に従うように前方を見れば大きな木の丸太が転がってきてるではないか。
 それに合わせるように木の丸太の後ろから大群の敵兵団が押し寄せてくる。
 しかも、岩壁からもやはり隠れてたと思われる兵が矢を放ってきた。

「挟み込まれた!」

 アリルアンヌ大国の騎士部隊の団長として判断を見誤った。前方からのそのような戦法など考えがつかなかった。

「今から攻撃チームを2分の陣に分ける! 攻撃第一陣は前方の敵を迎え撃て! 攻撃第2陣は岩壁からの飛来物を防げ! それからそこの3名は私に続けぇ!」

 アカネはそう指示をすると攻撃の嵐をかいくぐって岩壁に駆け出し壁を蹴って昇っていく。すぐに一つの岩壁に隠れた兵士の軍勢の中心に割り込み剣を振るう。数人がなぎ倒されていく。
 囚人である『ピノ』はその光景を尻目に飛来してくる矢の雨から懸命に回避する。

「ちょっと、この手枷外して! このままじゃやられちゃうわ!」
「そんなことできる状況では――ぐぁあ!」

 次から次へと迫ってくる攻撃にピノを監視していた兵士が次々と倒れていく。次第に眼前の丸太がすぐそこまで迫ってなぎ倒されてく仲間の騎士の姿があった。

「なっ!」

 眼前に迫った丸太をピノは足で食い止めようと足を伸ばした。
 他の騎士たちもありとあらゆる火炎の球や雷光の球を射出し丸太を粉みじんにしていくも次から次へと丸太はやってくる上にその背後に控えた騎士が丸太に迫る火炎の球体を撃ち落としてしまうので丸太に当たるのはわずかな球体の砲弾だけである。
 ピノはその状況を鑑みて打撃による食い止めは困難だと推察し足でとめることをやめて前世のウサギとしての跳躍力を生かし丸太を一気に飛び越えた。

『なっ!』

 敵勢がその跳躍力にドギマを抜かれる。拍子抜けした敵の意表を突き敵陣のど真ん中でピノはまず一人を蹴り倒し打撃の襲撃を開始する。

「コイツはなんだ!」
「敵は一人だ! 取り囲んで殺せぇええ!」

 懸命な攻防戦を繰り広げながらでピノは大本の親玉を探した。

「いったいどいつが親玉?」

 相手の頭蓋を蹴り砕き、手枷をさせられた手で殴り飛ばしつづけてくのもいずれは隙を突かれやられるのがオチ。その前に敵の主を叩いて戦力削ごうとしたが見つからない。
 ふと、その時に背後から異様な圧力を感じて咄嗟に腕を振り上げたが食い止められた。

「しまっ――」

 横っ面に強烈な一撃がはいり、数キロほど吹き飛ばされた。頭がぐらつき、自分に攻撃を当てた人物を視認した。大柄な体に全身を白銀の鱗におおわれた姿。そして、サイのような図体をしトカゲのような尻尾をもった奇妙な人。
 岩壁にいたアカネが叫んだ。

「囚人逃げるのです! そいつは軍勢の親玉――」

 激しく取り乱した彼女が本来の素のような口調を吐きだして警告を促した。だが、その警告は遅くその親玉が獰猛な笑みをたたえ吐き捨てた。

「このオレ様シルバレットさまの部下をよくぞいたぶってくれたなホロウラビットの分際で。死ぬがいい!」

 巨体に似合わない速度を兼ね合わせた突進がピノを襲い、飛ばし上げたのだった。

 ******

 竜生はただ一人監房にぶち込まれ、気落ちした表情で格子窓の外を眺め見た。
 何処から遠くで奇声の様な鬨の声が聞こえる。
 戦争が始まってるのであろうと察せられた。

「クソッ! 俺を見捨てやがってあの馬鹿ウサギ!」

 一人愚痴るも彼女にその声は聞こえるわけはない。彼女は自分を見捨て独断で戦争に手助けを行いに行くことで自らが他国のスパイではないことを立証に出向いた。そして、あわよくば国の騎士になろうと目論んでるに違いなかった。

「ウサギの時はあんなかわいげがない奴じゃなかったのに」
「さっきからうるさいぞ変態の囚人が!」

 格子扉の向こう側で看守の騎士が竜生に対して怒気を孕んで格子扉を殴りつけたのだろうことによって音が響いてきた。竜生は沈黙したが怖気づいたわけではなくめんどうくさくなった。彼を怒らせたことで何も生まない状況をしっかりと理解したうえで沈黙を決め込んだ。

「ふん、最初からそうしてしろ」

 格子扉の隙間からギロリと睨みつけた看守を見て溜息をついた。
 コイツも結局戦争に駆り出されずに弱き者扱いされた同士と言って他ならないものなのだろう。
 ズキリと心臓が痛む。
 今までの恩人に見捨てられたというのは過剰にメンタルを傷つけるのである。
 少しばかり過呼吸気味に陥っていく。

「お、おい! 大丈夫か!」

 看守の騎士がこちらの異常事態に気づいた。だが、さすがは看守か。容易に扉を開く真似はしない。
 痛みはどんどん増していく。次第に頭蓋にまで痛みは進行し死にそうなほどにまでなる。

「あがぁあああああああああああああああ!」
「っ! おい、誰かを呼んでくれ! 異常事態だ!」

 扉の向こう側で慌てふためいた看守の声。
 その時に何か異様な感覚に体が支配されていく。
 視界に映った自らの腕は毛深くなっていき、まるで『獣』のような手に変化する。
 声もどことなく『獣』の声になってるような感じがした。

「なっ! なんだコイツは!」

 看守が扉を開いた。
 同時に竜生の脳内にどこかの戦場の光景と『ピノ』が吹き飛ばされた映像が電流のように流れた。

「っ!」

 ――息をのんだ。
 体全体が導かれるようにして自動操縦でもされてるかのように足早に駆け出す。

「がぁ!」

 その間に看守を蹴飛ばしたが構わず走った。地下監房の出入り口扉を突貫でぶち抜いて城の内部に戻ってきた。そのまま廊下を犬の様な四足で疾走した。
 道中に騎士たちの「モンスターだとぉ!? 皆魔球を撃てぇ!」という声を聞く。四方八方から飛来してくる奇妙な球体の嵐をかいくぐっていく。その時に硝子戸に映った自分の姿を見て驚愕する。そこにはおぞましき狼のような姿をした黒い毛におおわれた四足歩行の獣がいた。肩甲骨のあたりには二つの翼まで生えている。

(これは俺なのか‥‥)

 異様なその姿に背筋が凍る。
 竜生は自分が狙われる意味を察することができた。騎士たちは懸命に竜生を追いかけてくる。このままでは身の危険が危ぶまれる。その前にでもあいつを助けたい。その思いが竜生を王城の外へと飛び出させた。

 *****

 轟く雷光の放電現象、猛烈な大地を焦がす豪炎、吹きすさぶ台風と吹雪。荒野のけもの道で戦う2国の軍勢とモンスターがその地形をめちゃくちゃに変えていた。
 けもの道にはこの世界『アスフィルド』における力、魔法を駆使した戦闘で災害を引き起こしている。
 戦争の状態は『アリルアンヌ大国』に不利なものとなっていた。元々戦略面において後れを取ったのがその現状をひもづける。
 上空側からの攻撃と正面からの丸太による奇襲攻撃がうまく『アリルアンヌ大国』の兵隊を動かせてはいない。本来の実力を出せない状態でいた。
 懸命にそれでも戦う『アリルアンヌ大国』兵。特に騎士団長と王女、そして囚人のアルピノアが一番の戦力として活躍する。
 敵をリンチしたり殴打し、射し、刺す。
 殺伐とした状況下で必死で指揮系統も怠らずにになっていく。その指揮系統を担う騎士団団長たるアカネ・キサラギも次第に疲労困憊になって行き敵に背後を取られ斬りつけられる。

「あぐぅっ‥‥このぉ!」
「ぎゃぁ!」

 斬りつけてきた相手をカウンターで斬り返し応戦しまた一人倒す。敵の数はそれでも減るどころか増えてく。

「どういうことです!」

 アカネは岩壁の下。丸太による奇襲が鎮静化し騎士同士の乱戦になってる戦場を見下ろして顔を青ざめた。

「そういうことですか」

 敵側の兵士の一人が死んだと思ったらその足場からまた新たな兵士が現れているという異様な光景を目の当たりにする。
 それは一種の魔法だった。

「表に出てる兵士だけではなく遠くからも転送して兵士をどんどんとこちらに無限増援させてるというわけですか」
 
 その魔法の使用者は相手の敵の軍勢幹部だった。彼は囚人のアルピノアと戦っていた。アルピノアは有利に戦闘をもちこんではいない。押されまくってしまっていた。

「くっ! このままではこちらが全滅です!」

 王女の方を伺ってみる。王女の周りを固めてる防衛の陣もそろそろ瓦解してしまう。
 瞬時に下に降りていく。
 しかし、遠方から離れた魔球が眼前に着弾。吹き飛ばされて転倒し足を負傷する。

「あがぁ‥‥ぁあ‥‥うぅ‥‥」

 足を抑えて立ち上がろうとするが激痛が走って立ち上がることができない。

「どうすれば‥‥‥」

 囚人、アルピノアがこちらに吹き飛ばされてくる。目の前に倒れた彼女と視線が合った。

「どうなってるのよ! コイツ! この男はなんなの! いくら攻撃を加えても倒れないんだけど!」

 悲痛な訴えでアカネに声をかけた彼女。重い足音を響かせシルバーウォングという防御性の高い種族としても珍しい種族の男が歩み寄ってきていた。

「もう終わりかぁ? ハハァ!」

 血反吐を吐き捨てつつも未だに元気十分な活きのある声を響かせて首をひねる仕草を見せた。

「あの男の弱点は知らないわけ? コイツさえ倒せば敵の指揮は低下して奴らも撤退するはずよ!」
「わかれば苦労しないです。亡国の情報は少ないですから」
「冗談でしょ? あぁ、もう!」

 ホロウラビット族の特徴ある俊敏性を生かしたトップスピードで飛び出し亡国幹部の腹に一発の蹴りをぶちかますアルピノア。
 すぐに足を取られそのまま地面にむけ叩きつけられる。
 この光景にさすがのアカネは目をつぶる。意識を失ったかのように力なくくたっとなった彼女に亡国幹部は止めを刺すように貫手を構えた。
 やはり、強さを見せてくれた囚人たる彼女でも力及ばなかった。

「終わりだ!」

 貫手が迫った時、キラリと煌めきが垣間見えた。そのあとに悲鳴が上がった。それは亡国幹部のものだった。
 貫手にしていた右腕を抑えてうずくまる。その右腕は肘から先がなく。足元に転がっていた。

「終わらないわよ‥‥ようやく‥‥頭の中に響いてくる声が鮮明になったわ」
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