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プロローグ

プロローグ エルフ召喚

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 とある学校の教室での昼休み時間。
 一人の黒髪に黒い瞳、陰気な顔が目立つ青年を中心にして男子たちが一つの本を開いて盛り上がっていた。
「うっほやべぇーこのチチ」
「いいや、俺は断然足だね」
「おまッ、すげぇー性癖だな」
「足とか普通だろ!」
「何を言うか、おぬしら。わしは断然尻いったくどん」
「はいはーい、尻フェチはいいから」
「ひどいどん!」
 男たちが注目しているのは一つのグラビア雑誌だ。
 そのページをめくるたびに思春期の男子高校生らしく、大盛り上がりだ。
 だが、男たちが集まる中心たる男、唯一席に座る男子、駄城雄馬だじょうゆうまだけは沈黙を続けていた。
「おいおい、雄馬これをみてお前は何も思わないのかよ」
「人間の女になんか興味ねぇ」
「は?」
「世の中モンスター娘だろぉおおおお!」
『うぉ!』
 雄馬の突然の気迫に圧倒される男たち。
 雄馬は堂々と一冊の雑誌を取り出した。
 それは二次元の絵柄の表紙を飾るTHEエロマンガ!である。
「このページのこの漫画! クッソエロい! やっぱり馬っ子最高! 無駄にデケェ尻が誘って……おい、同志たち? どうした?」
「あ、いや、おれモンスター系は無理だわぁー」
「わ、わりぃ、俺っちもMではあるけど、モンスター系は……。あ、でも、蛇ならありか? いや、うーん」
「わ、わいは気持ち悪いドン。そもそも、二次元でもモンスターは上級者過ぎるドン」
「お、おまえら! 何を言ってるんだよ!」
「何を言ってるんだよはあなたたち全員よ!」
 雄馬の脳天に鋭い手刀が入った。
 衝撃の勢いによって机に顔面から強打した。
 雄馬はしばし、沈黙して意識を取り戻すと起き上がって後ろを振り返る。
「何すんだ! 雪日!」
 後ろにいたのは、長く艶やかな黒髪、鋭い目つき、すらっとした鼻梁や小ぶりな唇、端正な美貌をしているモデルのような体つきをしてるがスレンダーな体つきをした幼馴染の少女、笹美雪日ささみゆきひが怒り心頭に立っていた。
「笹美だ! やばっ」
「逃げるぞ!」
「やばいどん!」
 慌てて散っていく男子。
 そして、雄馬の机の上にはグラビア雑誌と二次元の表紙の描かれたエロ漫画雑誌が置かれた。
「ったくもう、あなたは毎回毎回懲りずにそんなもの学校に持ってきてどういうつもりよ!」
「どういうつもりってこれは鑑賞する以外になにがある? あーそうか。おか――ぶへぇ!」
 首が梗塞されていく。
 後ろから雪日のヘッドロックが決まった。
 あわてて雄馬は腕をタップする。
「解放してほしかったら今後一切変なこと言わないって誓いなさい! そして、もう持ってこないこと!」
「わ……わかった」
 雪日に開放されて雄馬はむせて本をしまおうとしたがその本をひょいっと幼馴染の雪日に奪われる。
 雪日はその本をゴミ箱へ入れた。
「うぉおい!」
 慌てて雄馬が回収しに行こうとしたが襟首をつかまれて身動きを取れなくさせた。
 相変わらず怪力バカ女だ。
「くそぉおお! 雪ゴリラが」
「あ?」
「俺にとってあれは宝物なんだぞ! 大事な大事な! そ、それをぉ……うぅ……うぉおおお!」
「ちょっと、泣くことないじゃない!」
「だ、だってなぁ!」
「わかったわよ、わかったから」
 そこへ見かねたように一人のギャルっぽい女子が入ってくる。
「駄目っすよ、ユッキー。またそうやって甘やかしたらダメウマの言うとおりになってしまうっすよ」
「明菜」
 クラス一のギャルで雪日の友人である倉本明菜くらもとあきなは雪日を諭す。
 雄馬は舌打ちをする。
「くそっ! 邪魔すんなよ! くそビッチ!」
「ハァ、あんたもさ、よくも懲りずに毎回持ってくるっすよね。周りの目をもう少し見たらどうなんすか?」
「周りの目なんか気にしないね! 俺はエロのために生きてるんだから!」
「堂々と言い切りやがったっす!?」
 学園で一番の変態と名高く有名な男子、それが駄城雄馬だ。
「ハァ、そんなんだからいつまでも童貞なんすよ」
「う、うるせぇ! 童貞で何が悪いんだ!」
「高校生にもなって童貞とか御笑い種っすね」
「く、くそぉお! いずれ、俺は童貞を捨てるんだ!」
「あんたを好いている女子なんているんすかねぇ?」
「うぐぅ、ぐぅううう! くそぉおおお!」
 雄馬は教室を飛び出して逃げ出した。
「おい、てめぇらもいいかげんにするんすよ! そんなんじゃいつまでも彼女作れないっすよ」
 挑発するように明菜は雄馬の友人に苦言をする。
 肩を震わせて反応する男子の様子を見て明菜は大仰にため息をついた。
 クラスの取りまとめ役でもある明菜をみて雪日は簡単の息をこぼす。
「相変わらず、明菜はすごいわ」
「何言ってんすか。それにしても、ユッキーもあんなのが幼馴染で大変っすよね」
「まぁね……でも、昔はあんなことなかったんだけどね」



 ********

 雄馬は教室から飛び出してとある部屋に来ていた。
 そこには魔法陣や占い用の道具に、奇妙な幾何学模様が描かれた何か、悪魔のような銅像があったり、その中に異様に二次元フィギュアとか二次元のポスターとか関連書籍とかちょっとよくわからない異色な雰囲気を出す暗い部屋だった。
 そこは二次元愛好オカルト研究部というちょっと変わった部活の部室だった。
 部員数はわずかばかりのちっぽけな部活動で雄馬のオアシスでもあった。
 雄馬の趣味全快な部屋でもあるからだ。
 特にその部屋の中で異質な雰囲気を出すのはその部屋に唯一存在するパソコンである。
 机の上に置かれた一台のノートパソコンを雄馬は起動した。
「彼女を作る方法」
 以外にも根に持っていて、本心ではすごく焦っていた。
 雄馬は検索ワードに『彼女を作る方法』と打ち込んで検索をかけてみた。
 出会い系を利用することばかりがかかれていたり、近場の女子に積極的に話を書けて猛アタックしてみようなどの話題がばかり。
「近場の女子なんてあのクソビッチと幼馴染の雪日くらいだぞ。まぁ、どっちもかわいいタイプだが……」
 告白した時のことを想定して考えてみた。
『はぁ? え? ちょっと冗談はやめてよね』
『え? アハハハ、なんすかそれ? どうせ、童貞捨てたいだけっすよね?』
 案の定、最悪な結果しか想像できない。
 やめよう。
 そんな検索結果一覧の中に唯一興味をひかれたものがった。
「『黒魔術で彼女を召喚しちゃうぜ!www』」
 よくわからぬ、内容のもので書かれていた術式もどことなく、全うにも儀式とか手順とかが記載されていた。
 興味本位に熱がついて、おもわず手元のメモ用紙に書き留めてしまう。
「家帰ったら試してみるか」
 なぁんておもわくを考えてチャイムが鳴った。
「やべぇええええ! 急いで戻らなきゃ遅刻じゃないかぁあああ!」
 慌てて雄馬は教室へ戻った。


*******

 放課後。
「よし、帰るぞ!」
「あ、雄馬! 一緒に――」
 幼馴染の声など無視して一目散に雄馬は家へ直帰した。
 雄馬の家は一軒家の3階建て。
 両親ともに働いていて優秀な企業家で毎日のように忙しく、共に海外出張でいなかった。
 生活費は両親からの仕送りで高校生の雄馬は賄っていた。
 そんな寂しい家にいつも帰って雄馬がすることといえば普段はパソコンをつけてネットサーフィンとエロゲである。
 だが、今日は違う。
「くくっ、試してみるか」
 雄馬は昼休みに部室のパソコンを使って調べた例の黒魔術を決行することにしてみた。
 黒魔術といえば、典型的な例では異性を殺したり、うざいやつを排除したりと不吉なイメージのほうが強い。
「なのに、これときたらなぁ、これってどっちかっていえば召喚術って表記が正しくね?」
 誤字だろうなんておもわく考えながら、キャンドルや自分の血、油性マジック、金属片などというようなものをかき集める。
 まず、魔法陣を紙に記載した通りに描いて、魔法陣の端っこにそれぞれ金属片を置いていく。
 両親が化学薬品を取り扱うようにと残していた注射器を用いて自らの血液を採取する。
 採取した血液を金属片に浸していく。
 油性マジックで自らの腕に紙に書かれている文字を書く。
「えっと、最後にこれを唱えるのか」
 どこの言語かよくわかない言語をまるでつたない英語を日本語訳したような感覚で唱える。
「――――ウェイ、イエル、シィア、ルッツゥ、オウゥ、スェエディ、エルフ!」
 最後の詠唱を唱えた。
 反応はない。
「まぁ、そうだよなぁ。こんなのばからしいよな。あはは」
 童貞を捨てるチャンスなんて甘い考えだったかーと思い立った時、足元に描いた魔法陣が輝きだした。
「え?」
 光は眩い閃光となって雄馬の目元をくらませた。
「きゃっ!」
 雄馬の耳に聞き覚えのない女性の声が聞こえた。
 ゆっくりと瞼を開くと目の前に見知らぬ金髪の耳の長いグラマラスの女の子がいた。
 それもとんでもなく美人。
 そうして、彼女の容姿はどことなくアニメや漫画でよくみるあの種族を思わせた。
「マジカ」
「あなた誰ですか?」
「エルフっ子キタァアアアアア!」
 雄馬は今ままでの人生で一番の絶叫をした。
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