2 / 14
第1章
エルフの少女 イリューナ
しおりを挟む
エルフの美女が雄馬を怪訝な顔つきで見て、周囲に視線を送っていく。
「いったいここはどこですか?」
「よしっ、よしっ、グッジョブネット!」
そんな彼女のことなどお構いなしに雄馬は召喚に成功した喜びで踊り上がっていた。
「ひゃっほぉおおい! エルフ、エルフ! よーし、さっそく童貞を捨てさせてもらいましょうか!」
雄馬は服を脱ぎだして、全裸へ。
そのままエルフの少女へ手をワキワキさせながら急接近を始めた。
エルフの少女は突然の目の前にいる自分の変態行動に血の気を引いていた。
かまわず、雄馬は決行する。
某怪盗アニメのような叫びをあげてダイブをする。
「へ、変態ぃいい!」
次の瞬間である彼女が右手を振りあげる。
「ぎゃぁああああ!」
突如として雄馬の体を突風が巻き上げて天井を突き破って空へ。
雄馬は空に浮遊しながら落下地点を見下ろす。
あ、死んだ。
「死にたくなぁああああああ――へ?」
自室の床に叩きつけられる寸前で雄馬の体は止まった。
そのまま、ゆっくりと身体は部屋の床へ。
倒れた雄馬の腹を片足で踏みにじりエルフの少女が雄馬を軽蔑の眼差しで見下ろす。
あ、ご褒美かな?
「人間風情が私に不貞を働けば万死に値しますが、今は緊急を要します。人間、ここはどこだか説明をしなさいっ」
「あ、あの説明の前に腹にある足をどけて――うほっ」
そのお願いは無碍にされる。
雄馬の腹へ強く彼女は体重をかける。
雄馬は息苦しさとMの性癖に拍車をかけてしまい、血流が一部分へ向かっていく。
「ともかく、ここがどこだか説明をしてください!」
「うへへへ」
「ひっ! 気持ち悪い顔をしてなんですか!」
雄馬の蕩けきった顔を見て表情を彼女は思わず引きつらせた。
恐る恐る彼から離れて、間合いを取った。
エルフの少女は見てしまう。
雄馬のとある男の部分。
「きゃぁあああああ!」
彼女が雄馬の股間を踏みつけ、天井へ手をかざした。
「ぎゃぁああああ!」
雄馬の体を今度は電撃がほとばしって真っ黒こげに焦がした。
意識が薄れていき、ピクピクと雄馬は痙攣をする。
「お、おもわず……仕方ありません。ここはいろんなものであふれていますし何か手掛かりになるものでも探しましょう」
雄馬はゆっくりと身体を起き上がらせていく。
起き上がったときに雄馬の目に飛び込んだのはエルフの少女が雄馬の部屋にある一冊の本を手に取って興味深く読んでいることだった。
その本は『THEエロマンガ』。
彼女の目にしているのはちょうど、幼女がモンスターの男に媚びをうるという物語のあるエロ展開。
「ノォオオオオ!」
彼女の顔はページをめくるごとに顔を真っ赤にしていた。
雄馬は伸ばした手は遅く、エルフは怒りその本を手に握って燃やし尽くした。
「あぁあああああ! 俺のコレクションがぁああああ!」
「な、なんて破廉恥な書籍ですか! 子供にあのような真似をさせるなんてとんでもない。しかも謎の文字でなんて書いてあるのかはわかりませんが卑猥な絵だけで何が書いてあるかは察せますよ! ここはまさか、悪魔族の居城です? いや、しかし、悪魔族の中になぜ人間が? ともかく、あなたは死刑です!」
燃やされたエロ本の欠片をとって雄馬は打ちひしがれる。
当のエルフが背後で雄馬の背中に手をかざしているなどまったく気づかない。
「これはプレミアがついている貴重なエロマンガだったのに……くぅ……おい、エルフ!」
「なんですか人間? やっと説明をする気になりましたか?」
「俺は駄城雄馬だ! よくも俺の貴重なコレクションを燃やしてくれやがって! 絶対にその体に支払ってもらうからな!」
「俺のコレクション? あの本はあなたのでしたか。つまり、ここはあなたの部屋ですか?」
「だったらなんだ!」
「汚らわしいですね。やはり、人間は下等な生き物です」
彼女の右手にはバチバチと電流が走り続けている。
このまま、放電させて自分を感電させるようだ。
だからといって雄馬も怒りは止まらない。
「さっきから、俺を馬鹿にしやがって! お前をここに呼び出した主になんたる態度だ! 普通はもっと従順なもんじゃないのかよ!」
「ここに呼び出した?」
「ああ、そうだ! お前を黒魔術で呼び出したんだ!」
「魔術で……」
彼女は部屋の床面を見て、目を大きく見開いた。
まるで、衝撃を受けているかのような様子。
「人間――いえ、ダジョウユウマといいましたか。ここはどこですか?」
「ここは俺の部屋で……」
「そうじゃありません! ここはイストラではないんですか!?」
「いすとら? なんだそれ?」
「ま、まさか……そんな……」
彼女は床にへたり込むと雄馬へ近づいてくる。
そして、雄馬の胸ぐらをつかんだ。
「今すぐ私を帰してください! 私はエルフの村長の娘としてイストラを守っていく使命があるんです!」
「く、苦しい……戻せって……無茶を言うな……」
「帰してください!」
「俺はただ……ネットに書かれていた情報通りにあんたを呼び出しただけだ……戻す方法なんかわからない」
あるがままのことを伝えると彼女は泣きだしてしまった。
雄馬も興奮はどこへやらか去ってしまい。
困ったように頭を掻いた。
********
しばらくして、彼女が落ち着き、お互いの素性やここがどこなのかをざっくりと雄馬は説明をした。
それを聞いた異世界イストラという場所から呼び出しに応じたエルフの少女、イリューナ・ミシェリィナはため息をこぼした。
「つまり、私はあなたのくだらない欲望を満たすためだけに呼び出されたわけですか。いい迷惑じゃないですか!」
「く、くだらなくなんかねぇよ! こちとら、必死なんだぞ! 童貞捨てたいんだよ!」
「女と交じり合いたいなんてくだらない欲望です! 私はそんなことのために呼び出されたのですか! なんたる屈辱ですか!」
イリューナは心底悔しそうに顔を顰めて、雄馬が描いた魔法陣を注意深く観察している。
「この魔法陣はイストラで伝わる禁忌の召喚魔法に酷似しています。おおよそ、イストラ人である何者かがこちらの世界にある情報を流す魔法のようなもので伝えたのですか」
「なぁ、それよりさ俺の命令に従って……」
「あ? また焦がされたいのですか? 死にますか?」
「いえ、なんでもございません!」
彼女の眼はまさに鬼だった。
うん、躊躇なく焦がされるのが雄馬の頭の中では想像できた。
これ以上性欲をぶつけるのは良そう。
「それよりも、いい加減に服を着たらどうなんですか!? いつまで、全裸で正座しているつもりですか! その汚らわしいもの引きちぎりますよ」
「ひぅ! やめて! その単語は今一番言っちゃいけない!」
股間が縮み上がる。
雄馬はいそいそと彼女に命令されるがままに服を着用する。
あれ? おかしいぞ。これってどっちが召喚者かわからないな。
「ともかく、今すぐに私を帰る方法を探さなければなりませんね。そういえば、先ほどねっととかいうのを使用したといってましたね」
「あー、うん」
「なら、それを見せてください」
「え」
雄馬は一瞬だけ、躊躇した。
なぜなら、ネットはいわゆるパソコンを使用した情報ツールだ。
パソコンはいわゆる男にとっては重要なものだし、特に雄馬のような変態にとってはパンドラの箱だ。
このパソコンの壁画は――
(やべぇ、あの壁画を見られたらこのエルフ次こそ俺を殺しかねない)
ポケットからの振動でハッと思い出す。
別にパソコンだけがネットを使用できるというわけではない。
もう一つあった。
「わかったよ」
雄馬はさっそく携帯を取り出してネットを立ち上げた。
携帯電話も一種の情報端末機械だ。
これを用いればあらゆる情報を収集できる。
「それはなんですか?」
「携帯電話だよ。遠くの奴と話せたり、世界の地図を表記したり、世界中の情報を集めたりできる万能の情報通信端末。まぁ、わかりやすくいえば情報通信装置かな」
「??」
異世界人のエルフには理解できぬような言葉であった様子で彼女は眉間にしわを寄せて首をかしげていた。
雄馬はとりあえずはネットを起動する。
「それで、ネットでどうするんだ?」
「それで、あなたが見たというものを見せてほしいんです。あなたはそれでこの魔法を会得したのですよね?」
「会得っていうか、それの通りに書き記したってだけだよ」
「書き記した?」
「ああ。このネットはいわば情報の集まりで本みたいな感覚想像してもらえればわかりやすいかな」
「本!?」
なんだか、やけに先ほどよりも食いつきがすごい彼女の反応に雄馬は驚く。
なにがそんなに彼女の琴線に触れたのだろう。
ネットでそのサイトに飛ぼうとしたとき、おかしなことにサイト情報は出てこなかった。
「あれぇ?」
「どうかしたんですか?」
「いや、出てこないんだ」
「はい?」
「俺が見たっていうサイトだ。それが全くでないんだよ」
雄馬の言葉に疑い深く、彼女はじっとこちらを見ていた。
「疑ってるな! 俺は正直者だ! こんなことで嘘はつかねぇ!」
「どうでしょうか? 私が異世界人だというのをいいことに意味の分からない単語を並べ立てて私を帰らせ内容としていませんか? 己が欲のために」
「あのなぁ、そんなことしねぇよ! そもそも、させてもらえないんじゃ意味ないしこっちだって帰ってもらうほうがいい。そして、別の奴を呼び出すまでだ! 今度はサキュバスでも召喚して……うひひ」
エロい妄想がはかどる。
目の前のエルフよりはよっぽどのことがない限り拒絶されないことを祈る。
だが、その前に彼女を帰らせることなのだが、やはりあらゆるサイトを見てもそれらしいものは出てこなかった。
「あー、駄目だ! 全然出てこない!」
雄馬が断念している間に彼女は雄馬の部屋にある漫画などを勝手に読み漁っていた。
もはや、こちらに頼らず自分でこの部屋にあるものをあさって情報を得ようという魂胆なのだろう。
言語が読めないのに何を理解しようというのかがわからん。
「あのさ、不思議に思ったんだけど」
「なんですか?」
「あんた字は読めないのに言葉は理解できているよな。これってどういうことだ?」
「そのことですか。それはあなたが行った魔法の力ですよ。召喚の魔法に付属する読解の力が働いているのでしょう。しかし、あくまでそれも一部のみ。つまりは相手の声や音としての認識はできるけれども、文字としての認識は阻害が生まれているのでしょうね」
なんとなく、雄馬の頭の中には異世界召喚のテンプレが想像できた。
文字は読めないが言葉は理解できるということはどの物語にもあるあるだ。
「あれ? そうだ」
雄馬は一冊の本を取り出した。
それはちょうど、今の雄馬とエルフの彼女の立場そっくりな漫画だ。
「なんですかそれは? 本のように見えますが」
「ああ、本だ。こいつは空想の物語を描いた本さ」
「空想の物語?」
「えっと、なんていうのかな。そっちには童話とか昔ばなしみたいなのはないのか?」
「昔から伝わる伝承みたいなものはありますが」
「そうそう、それそれ。そんなやつがこの世界には多くあってさ。そんな話の中にも魔法とか実在しているんだ。あくまで物語の中での話だけど」
「そういうことですか」
説明をしてようやく理解を示してくれた。
雄馬はほっとしながら話の続きをする。
「そうだ……、思ったんだけどさこういう漫画だと普通は魔力ってものがないと魔法は使用できない設定があるんだ。そっちの魔法はそういうのはないのか?」
根本的に自らが魔法を簡単に行えたなんて思ってはいない。
何かしらの要素があってこそ魔法ってのは実現するものだと思っていた。
漫画にもそういう設定が多く有り、魔力を持たないから魔法を使えないなんて設定もある。
もしも、その設定と同じならば普通の人間である雄馬が魔法を使えたということはおかしな話になるのだ。
召喚魔法も失敗するのをわかり切ったうえで試したのに成功してしまっているのには正直驚いているのだから。
「それは簡単です。どうやらあなたには魔力が微々たるものですが備わっています。私の知る話では私の世界イストラは古くからあらゆる世界へ飛ばされて帰ってこなくなったという存在の話を耳にします。おおよそ、推測ですがあなたはその者たちの子孫であったのでしょう。ですから、魔力を持っており流されていた召喚魔法を偶然にも知って試し、私を呼び出したということではないでしょうか」
自分が異世界人の子孫と言われてもピンとは来ない。
でも、話の流れの中で納得はできる経緯は確かに存在している。
召喚魔法によってこうしてイストラという異世界の出身である彼女を呼び出せたのだ。
「すみませんが、あなたが見たというその情報源を参照できますか?」
「あーいいけどさ、さっきも言ったがもう公開されていないんだ」
雄馬は今度はパソコンでインターネットを立ち上げるためにおパソコンを起動した。
と、自分がなぜさきほど携帯でネットを使用したのかを思い出してだらだらと汗が噴き出す。
デスクトップ画面が立ち上がり、エルフが裸で身もだえる壁画がデカデカと表示された。
「…………一つ聞いていいでしょうか?」
「なんでしょうか?」
「これはなんですか? ずいぶんとすごいものだとは伝わりますが、それ以前にこの絵はなんですか?」
「…………これはそっちで言えば情報をあつめる魔法の本です。絵は表紙のようなものですね」
「………なるほど、表紙……。この世界の魔導書はみんなこのような卑猥な表紙をしているのでしょうか?」
厳かな低い声で聴いてくる彼女が非常に怖い。
雄馬はビクビクとしながらもゆっくりと彼女へ返答をする。
「そ、そうです」
パソコンメーカー様、申し訳ございません。
自分の嘘でパソコンは卑猥な存在として異世界人に認識されます。
「そうですか……そうですか……」
バチバチと彼女の身体から電流が迸っていた。
「ちょちょちょ、待って! これは確かに卑猥な表紙をしているけれどもしっかりと情報を集めるものだって証明するから!」
「なら、はやく例のこの召喚魔法が乗っていたページを見せてください」
「見せます見せます! ――って乗っていないんだったぁあああ!」
「燃やしましょう」
「待って待って! ほら、こういう感じで見れるんだ!」
慌てて雄馬は最初に検索したワードを打ち込み適当なサイトを開いた。
「これはっ!?」
非常に興味を持たれたように彼女が画面を食い入るように見つめた。
そして、雄馬の手からマウスをひったくりカチカチとあちこちをクリックしまくる。
「ちょちょ、落ち着いて! そんな乱暴にクリックした――あ!」
クリックした表紙に昨日雄馬がオカズに使っていたサイトが表示された。
ブックマークバーをクリックしたようだ。
(アカーン! オワタ!)
雄馬はもう顔を手で覆い隠した。
「この世界の人間という人類はつくづく変態なようですね」
もう、つぎこそは壊されるのを覚悟したが、聞こえてきたのはため息のこぼれる息遣い。
「なるほど、たしかにあらゆるものを見ることのできるものですか。文字は解読できませんがこれは素晴らしいモノですね」
「えっと……理解してくれたのかな?」
「あなたの見た情報源が本当に実在したというのは信じてあげましょう。ただし、条件があります」
「条件?」
「しばらく、帰る場所を探すまでこれらを貸してください。この世界の情報に興味を持ちました」
「はぁ? はぁあああ!? いやいや、帰るんじゃないのか!?」
「帰るにしてもこれらを使用するほかないでしょう。これらの中になにかヒントがある可能性があります」
「まぁ、確かにそうだと思うけど」」
彼女の信用性を獲得したはいいけれども、彼女は雄馬のコレクションを独占するようだった。
そうされたら、オタクライフができなくなってしまう。
「でも、別にコイツだけじゃないんだぞ。情報筋を集めるのは……」
「だとしても、あなたはこれを使い召喚魔法を会得したのですよね?」
「そうだけど……」
「なら、これを貸していただきます。それから、なにかこの世界の文字を習得できる本をお貸しください」
「いや、それならこの情報ツールで簡単に……ホラ」
雄馬はパソコンで用事にもわかる日本語レッスン帳のサイトを立ち上げた。
音声ガイド付きだから彼女にもわかりやすいだろう。
(って、俺は何やってんだ! ますます彼女がネットを興味持ってしまう行為じゃないか!)
案の定というか、彼女はしばらくパソコンを離さないといわんばかりに興味津々だ。
「そういえば、不思議に思ったんだけどよ」
「なんですか?」
「なんで、サイトなんかに本物の召喚魔法を記載したりしたんだろうか」
彼女も今頃になって気づいたというようにこちらへ真剣な表情をして振り返る。
「イストラ人をここに召喚するのが目的だとしか言えないよな」
そんなことを笑いながら雄馬が言うとイリューナが鬼の形相で雄馬の肩をつかむ。
「な、なんすか?」
「それです」
「え?」
「今すぐにその理由を突き止めて召喚者を探しましょう」
「いやいや、それは無理だって。情報源を公開した人物までを俺に調べることはこれではできないよ。ハッキングとかできるやつがいれば可能だけど」
「つまりどういうことですか?」
「だから、俺の力では無理だっていうこと。これにも色々と制限があるんだ。それにこの世界というか国にも法律とか禁止事項みたいなのがあってさ」
「??」
イリューナは説明をしても困惑していた。
うん、説明が下手だとよくわかった。
雄馬はとにかく、無理なんだと説得する。
「では、どうすればいいのですか!」
「とにかく、まずは君の世界の情報を集めるが先だと思う。そこから、なにかヒントにつながるかもしれない」
検索ワードに『イストラ』と打ち込み、検索をする。
まぁ、出てきたのはゲームやアニメ、漫画の関連したような情報ばかりだった。
雄馬はその情報を見ていくととある漫画本に目が入った。
それは今の雄馬とイリューナの立場と似たような話を題材にしたものだ。
「えっと、なんと?」
「ヒントらしいものは出てこない」
「そうですか」
「でもさ……当面の目標は提示できるよ」
「はい?」
「帰る方法を探すためにもまずはここの世界のことを知るんだよ。さっき、あんたが言ったようにさ」
「そうですね。たしかにそのほうが賢明です」
「そう、一応調べてみたけどイストラに関してはここの世界の遊具の関連情報しか出ない」
「この世界の遊具とイストラが何か関係しているんですか?」
「いや、まったく」
「はい?」
「その辺は口で説明するよりも自分で経験していって知ったほうが早いよ」
雄馬は漫画本を与えた。
それはちょうど、今の雄馬とエルフの少女のような立場を題材にしたファンタジーコメディの漫画だった。
「これは?」
「この世界の本さ。帰る方法を探すのもいいと思うけどそれを探すのにもこの世界のことを知ってからでも遅くないんじゃないかな」
「………正直、この世界の物事に今非常に興味を……もって……あれ?」
急にイリューナは身体を倒れさせて雄馬に身を預けた。
雄馬は彼女を思わず抱き留める。
その拍子に彼女の豊満な胸を鷲掴み、弾力を手に感じ取った。
「や、やわらけぇ」
その時、誰かが部屋にやってくる足音が聞こえた。
そうして、扉が開かれる。
「ユウマ、夕飯つくりに……きた……よ」
部屋の扉を開けたのは堂々と不法侵入をしでかしている幼馴染の笹美雪日だった。
雪日は手に持った買い物袋を落とし、雄馬と雄馬の腕に抱かれているイリューナを見る。
「朝、モンスター娘が欲しいとか言ってたにしても……まさか……女の子を拉致してコスプレさせて……あまつさえ……」
「ちょっと、雪日さんなんか勘違いしていらっしゃる?」
彼女の顔に陰りがさす。
雄馬は血の気が引いていく。
「雪日さん、ちょっと待って話を――」
「てんちゅううう!」
「ぎゃぁああああ!」
雄馬の脳天に彼女の鋭いかかと落としが落とされた。
「いったいここはどこですか?」
「よしっ、よしっ、グッジョブネット!」
そんな彼女のことなどお構いなしに雄馬は召喚に成功した喜びで踊り上がっていた。
「ひゃっほぉおおい! エルフ、エルフ! よーし、さっそく童貞を捨てさせてもらいましょうか!」
雄馬は服を脱ぎだして、全裸へ。
そのままエルフの少女へ手をワキワキさせながら急接近を始めた。
エルフの少女は突然の目の前にいる自分の変態行動に血の気を引いていた。
かまわず、雄馬は決行する。
某怪盗アニメのような叫びをあげてダイブをする。
「へ、変態ぃいい!」
次の瞬間である彼女が右手を振りあげる。
「ぎゃぁああああ!」
突如として雄馬の体を突風が巻き上げて天井を突き破って空へ。
雄馬は空に浮遊しながら落下地点を見下ろす。
あ、死んだ。
「死にたくなぁああああああ――へ?」
自室の床に叩きつけられる寸前で雄馬の体は止まった。
そのまま、ゆっくりと身体は部屋の床へ。
倒れた雄馬の腹を片足で踏みにじりエルフの少女が雄馬を軽蔑の眼差しで見下ろす。
あ、ご褒美かな?
「人間風情が私に不貞を働けば万死に値しますが、今は緊急を要します。人間、ここはどこだか説明をしなさいっ」
「あ、あの説明の前に腹にある足をどけて――うほっ」
そのお願いは無碍にされる。
雄馬の腹へ強く彼女は体重をかける。
雄馬は息苦しさとMの性癖に拍車をかけてしまい、血流が一部分へ向かっていく。
「ともかく、ここがどこだか説明をしてください!」
「うへへへ」
「ひっ! 気持ち悪い顔をしてなんですか!」
雄馬の蕩けきった顔を見て表情を彼女は思わず引きつらせた。
恐る恐る彼から離れて、間合いを取った。
エルフの少女は見てしまう。
雄馬のとある男の部分。
「きゃぁあああああ!」
彼女が雄馬の股間を踏みつけ、天井へ手をかざした。
「ぎゃぁああああ!」
雄馬の体を今度は電撃がほとばしって真っ黒こげに焦がした。
意識が薄れていき、ピクピクと雄馬は痙攣をする。
「お、おもわず……仕方ありません。ここはいろんなものであふれていますし何か手掛かりになるものでも探しましょう」
雄馬はゆっくりと身体を起き上がらせていく。
起き上がったときに雄馬の目に飛び込んだのはエルフの少女が雄馬の部屋にある一冊の本を手に取って興味深く読んでいることだった。
その本は『THEエロマンガ』。
彼女の目にしているのはちょうど、幼女がモンスターの男に媚びをうるという物語のあるエロ展開。
「ノォオオオオ!」
彼女の顔はページをめくるごとに顔を真っ赤にしていた。
雄馬は伸ばした手は遅く、エルフは怒りその本を手に握って燃やし尽くした。
「あぁあああああ! 俺のコレクションがぁああああ!」
「な、なんて破廉恥な書籍ですか! 子供にあのような真似をさせるなんてとんでもない。しかも謎の文字でなんて書いてあるのかはわかりませんが卑猥な絵だけで何が書いてあるかは察せますよ! ここはまさか、悪魔族の居城です? いや、しかし、悪魔族の中になぜ人間が? ともかく、あなたは死刑です!」
燃やされたエロ本の欠片をとって雄馬は打ちひしがれる。
当のエルフが背後で雄馬の背中に手をかざしているなどまったく気づかない。
「これはプレミアがついている貴重なエロマンガだったのに……くぅ……おい、エルフ!」
「なんですか人間? やっと説明をする気になりましたか?」
「俺は駄城雄馬だ! よくも俺の貴重なコレクションを燃やしてくれやがって! 絶対にその体に支払ってもらうからな!」
「俺のコレクション? あの本はあなたのでしたか。つまり、ここはあなたの部屋ですか?」
「だったらなんだ!」
「汚らわしいですね。やはり、人間は下等な生き物です」
彼女の右手にはバチバチと電流が走り続けている。
このまま、放電させて自分を感電させるようだ。
だからといって雄馬も怒りは止まらない。
「さっきから、俺を馬鹿にしやがって! お前をここに呼び出した主になんたる態度だ! 普通はもっと従順なもんじゃないのかよ!」
「ここに呼び出した?」
「ああ、そうだ! お前を黒魔術で呼び出したんだ!」
「魔術で……」
彼女は部屋の床面を見て、目を大きく見開いた。
まるで、衝撃を受けているかのような様子。
「人間――いえ、ダジョウユウマといいましたか。ここはどこですか?」
「ここは俺の部屋で……」
「そうじゃありません! ここはイストラではないんですか!?」
「いすとら? なんだそれ?」
「ま、まさか……そんな……」
彼女は床にへたり込むと雄馬へ近づいてくる。
そして、雄馬の胸ぐらをつかんだ。
「今すぐ私を帰してください! 私はエルフの村長の娘としてイストラを守っていく使命があるんです!」
「く、苦しい……戻せって……無茶を言うな……」
「帰してください!」
「俺はただ……ネットに書かれていた情報通りにあんたを呼び出しただけだ……戻す方法なんかわからない」
あるがままのことを伝えると彼女は泣きだしてしまった。
雄馬も興奮はどこへやらか去ってしまい。
困ったように頭を掻いた。
********
しばらくして、彼女が落ち着き、お互いの素性やここがどこなのかをざっくりと雄馬は説明をした。
それを聞いた異世界イストラという場所から呼び出しに応じたエルフの少女、イリューナ・ミシェリィナはため息をこぼした。
「つまり、私はあなたのくだらない欲望を満たすためだけに呼び出されたわけですか。いい迷惑じゃないですか!」
「く、くだらなくなんかねぇよ! こちとら、必死なんだぞ! 童貞捨てたいんだよ!」
「女と交じり合いたいなんてくだらない欲望です! 私はそんなことのために呼び出されたのですか! なんたる屈辱ですか!」
イリューナは心底悔しそうに顔を顰めて、雄馬が描いた魔法陣を注意深く観察している。
「この魔法陣はイストラで伝わる禁忌の召喚魔法に酷似しています。おおよそ、イストラ人である何者かがこちらの世界にある情報を流す魔法のようなもので伝えたのですか」
「なぁ、それよりさ俺の命令に従って……」
「あ? また焦がされたいのですか? 死にますか?」
「いえ、なんでもございません!」
彼女の眼はまさに鬼だった。
うん、躊躇なく焦がされるのが雄馬の頭の中では想像できた。
これ以上性欲をぶつけるのは良そう。
「それよりも、いい加減に服を着たらどうなんですか!? いつまで、全裸で正座しているつもりですか! その汚らわしいもの引きちぎりますよ」
「ひぅ! やめて! その単語は今一番言っちゃいけない!」
股間が縮み上がる。
雄馬はいそいそと彼女に命令されるがままに服を着用する。
あれ? おかしいぞ。これってどっちが召喚者かわからないな。
「ともかく、今すぐに私を帰る方法を探さなければなりませんね。そういえば、先ほどねっととかいうのを使用したといってましたね」
「あー、うん」
「なら、それを見せてください」
「え」
雄馬は一瞬だけ、躊躇した。
なぜなら、ネットはいわゆるパソコンを使用した情報ツールだ。
パソコンはいわゆる男にとっては重要なものだし、特に雄馬のような変態にとってはパンドラの箱だ。
このパソコンの壁画は――
(やべぇ、あの壁画を見られたらこのエルフ次こそ俺を殺しかねない)
ポケットからの振動でハッと思い出す。
別にパソコンだけがネットを使用できるというわけではない。
もう一つあった。
「わかったよ」
雄馬はさっそく携帯を取り出してネットを立ち上げた。
携帯電話も一種の情報端末機械だ。
これを用いればあらゆる情報を収集できる。
「それはなんですか?」
「携帯電話だよ。遠くの奴と話せたり、世界の地図を表記したり、世界中の情報を集めたりできる万能の情報通信端末。まぁ、わかりやすくいえば情報通信装置かな」
「??」
異世界人のエルフには理解できぬような言葉であった様子で彼女は眉間にしわを寄せて首をかしげていた。
雄馬はとりあえずはネットを起動する。
「それで、ネットでどうするんだ?」
「それで、あなたが見たというものを見せてほしいんです。あなたはそれでこの魔法を会得したのですよね?」
「会得っていうか、それの通りに書き記したってだけだよ」
「書き記した?」
「ああ。このネットはいわば情報の集まりで本みたいな感覚想像してもらえればわかりやすいかな」
「本!?」
なんだか、やけに先ほどよりも食いつきがすごい彼女の反応に雄馬は驚く。
なにがそんなに彼女の琴線に触れたのだろう。
ネットでそのサイトに飛ぼうとしたとき、おかしなことにサイト情報は出てこなかった。
「あれぇ?」
「どうかしたんですか?」
「いや、出てこないんだ」
「はい?」
「俺が見たっていうサイトだ。それが全くでないんだよ」
雄馬の言葉に疑い深く、彼女はじっとこちらを見ていた。
「疑ってるな! 俺は正直者だ! こんなことで嘘はつかねぇ!」
「どうでしょうか? 私が異世界人だというのをいいことに意味の分からない単語を並べ立てて私を帰らせ内容としていませんか? 己が欲のために」
「あのなぁ、そんなことしねぇよ! そもそも、させてもらえないんじゃ意味ないしこっちだって帰ってもらうほうがいい。そして、別の奴を呼び出すまでだ! 今度はサキュバスでも召喚して……うひひ」
エロい妄想がはかどる。
目の前のエルフよりはよっぽどのことがない限り拒絶されないことを祈る。
だが、その前に彼女を帰らせることなのだが、やはりあらゆるサイトを見てもそれらしいものは出てこなかった。
「あー、駄目だ! 全然出てこない!」
雄馬が断念している間に彼女は雄馬の部屋にある漫画などを勝手に読み漁っていた。
もはや、こちらに頼らず自分でこの部屋にあるものをあさって情報を得ようという魂胆なのだろう。
言語が読めないのに何を理解しようというのかがわからん。
「あのさ、不思議に思ったんだけど」
「なんですか?」
「あんた字は読めないのに言葉は理解できているよな。これってどういうことだ?」
「そのことですか。それはあなたが行った魔法の力ですよ。召喚の魔法に付属する読解の力が働いているのでしょう。しかし、あくまでそれも一部のみ。つまりは相手の声や音としての認識はできるけれども、文字としての認識は阻害が生まれているのでしょうね」
なんとなく、雄馬の頭の中には異世界召喚のテンプレが想像できた。
文字は読めないが言葉は理解できるということはどの物語にもあるあるだ。
「あれ? そうだ」
雄馬は一冊の本を取り出した。
それはちょうど、今の雄馬とエルフの彼女の立場そっくりな漫画だ。
「なんですかそれは? 本のように見えますが」
「ああ、本だ。こいつは空想の物語を描いた本さ」
「空想の物語?」
「えっと、なんていうのかな。そっちには童話とか昔ばなしみたいなのはないのか?」
「昔から伝わる伝承みたいなものはありますが」
「そうそう、それそれ。そんなやつがこの世界には多くあってさ。そんな話の中にも魔法とか実在しているんだ。あくまで物語の中での話だけど」
「そういうことですか」
説明をしてようやく理解を示してくれた。
雄馬はほっとしながら話の続きをする。
「そうだ……、思ったんだけどさこういう漫画だと普通は魔力ってものがないと魔法は使用できない設定があるんだ。そっちの魔法はそういうのはないのか?」
根本的に自らが魔法を簡単に行えたなんて思ってはいない。
何かしらの要素があってこそ魔法ってのは実現するものだと思っていた。
漫画にもそういう設定が多く有り、魔力を持たないから魔法を使えないなんて設定もある。
もしも、その設定と同じならば普通の人間である雄馬が魔法を使えたということはおかしな話になるのだ。
召喚魔法も失敗するのをわかり切ったうえで試したのに成功してしまっているのには正直驚いているのだから。
「それは簡単です。どうやらあなたには魔力が微々たるものですが備わっています。私の知る話では私の世界イストラは古くからあらゆる世界へ飛ばされて帰ってこなくなったという存在の話を耳にします。おおよそ、推測ですがあなたはその者たちの子孫であったのでしょう。ですから、魔力を持っており流されていた召喚魔法を偶然にも知って試し、私を呼び出したということではないでしょうか」
自分が異世界人の子孫と言われてもピンとは来ない。
でも、話の流れの中で納得はできる経緯は確かに存在している。
召喚魔法によってこうしてイストラという異世界の出身である彼女を呼び出せたのだ。
「すみませんが、あなたが見たというその情報源を参照できますか?」
「あーいいけどさ、さっきも言ったがもう公開されていないんだ」
雄馬は今度はパソコンでインターネットを立ち上げるためにおパソコンを起動した。
と、自分がなぜさきほど携帯でネットを使用したのかを思い出してだらだらと汗が噴き出す。
デスクトップ画面が立ち上がり、エルフが裸で身もだえる壁画がデカデカと表示された。
「…………一つ聞いていいでしょうか?」
「なんでしょうか?」
「これはなんですか? ずいぶんとすごいものだとは伝わりますが、それ以前にこの絵はなんですか?」
「…………これはそっちで言えば情報をあつめる魔法の本です。絵は表紙のようなものですね」
「………なるほど、表紙……。この世界の魔導書はみんなこのような卑猥な表紙をしているのでしょうか?」
厳かな低い声で聴いてくる彼女が非常に怖い。
雄馬はビクビクとしながらもゆっくりと彼女へ返答をする。
「そ、そうです」
パソコンメーカー様、申し訳ございません。
自分の嘘でパソコンは卑猥な存在として異世界人に認識されます。
「そうですか……そうですか……」
バチバチと彼女の身体から電流が迸っていた。
「ちょちょちょ、待って! これは確かに卑猥な表紙をしているけれどもしっかりと情報を集めるものだって証明するから!」
「なら、はやく例のこの召喚魔法が乗っていたページを見せてください」
「見せます見せます! ――って乗っていないんだったぁあああ!」
「燃やしましょう」
「待って待って! ほら、こういう感じで見れるんだ!」
慌てて雄馬は最初に検索したワードを打ち込み適当なサイトを開いた。
「これはっ!?」
非常に興味を持たれたように彼女が画面を食い入るように見つめた。
そして、雄馬の手からマウスをひったくりカチカチとあちこちをクリックしまくる。
「ちょちょ、落ち着いて! そんな乱暴にクリックした――あ!」
クリックした表紙に昨日雄馬がオカズに使っていたサイトが表示された。
ブックマークバーをクリックしたようだ。
(アカーン! オワタ!)
雄馬はもう顔を手で覆い隠した。
「この世界の人間という人類はつくづく変態なようですね」
もう、つぎこそは壊されるのを覚悟したが、聞こえてきたのはため息のこぼれる息遣い。
「なるほど、たしかにあらゆるものを見ることのできるものですか。文字は解読できませんがこれは素晴らしいモノですね」
「えっと……理解してくれたのかな?」
「あなたの見た情報源が本当に実在したというのは信じてあげましょう。ただし、条件があります」
「条件?」
「しばらく、帰る場所を探すまでこれらを貸してください。この世界の情報に興味を持ちました」
「はぁ? はぁあああ!? いやいや、帰るんじゃないのか!?」
「帰るにしてもこれらを使用するほかないでしょう。これらの中になにかヒントがある可能性があります」
「まぁ、確かにそうだと思うけど」」
彼女の信用性を獲得したはいいけれども、彼女は雄馬のコレクションを独占するようだった。
そうされたら、オタクライフができなくなってしまう。
「でも、別にコイツだけじゃないんだぞ。情報筋を集めるのは……」
「だとしても、あなたはこれを使い召喚魔法を会得したのですよね?」
「そうだけど……」
「なら、これを貸していただきます。それから、なにかこの世界の文字を習得できる本をお貸しください」
「いや、それならこの情報ツールで簡単に……ホラ」
雄馬はパソコンで用事にもわかる日本語レッスン帳のサイトを立ち上げた。
音声ガイド付きだから彼女にもわかりやすいだろう。
(って、俺は何やってんだ! ますます彼女がネットを興味持ってしまう行為じゃないか!)
案の定というか、彼女はしばらくパソコンを離さないといわんばかりに興味津々だ。
「そういえば、不思議に思ったんだけどよ」
「なんですか?」
「なんで、サイトなんかに本物の召喚魔法を記載したりしたんだろうか」
彼女も今頃になって気づいたというようにこちらへ真剣な表情をして振り返る。
「イストラ人をここに召喚するのが目的だとしか言えないよな」
そんなことを笑いながら雄馬が言うとイリューナが鬼の形相で雄馬の肩をつかむ。
「な、なんすか?」
「それです」
「え?」
「今すぐにその理由を突き止めて召喚者を探しましょう」
「いやいや、それは無理だって。情報源を公開した人物までを俺に調べることはこれではできないよ。ハッキングとかできるやつがいれば可能だけど」
「つまりどういうことですか?」
「だから、俺の力では無理だっていうこと。これにも色々と制限があるんだ。それにこの世界というか国にも法律とか禁止事項みたいなのがあってさ」
「??」
イリューナは説明をしても困惑していた。
うん、説明が下手だとよくわかった。
雄馬はとにかく、無理なんだと説得する。
「では、どうすればいいのですか!」
「とにかく、まずは君の世界の情報を集めるが先だと思う。そこから、なにかヒントにつながるかもしれない」
検索ワードに『イストラ』と打ち込み、検索をする。
まぁ、出てきたのはゲームやアニメ、漫画の関連したような情報ばかりだった。
雄馬はその情報を見ていくととある漫画本に目が入った。
それは今の雄馬とイリューナの立場と似たような話を題材にしたものだ。
「えっと、なんと?」
「ヒントらしいものは出てこない」
「そうですか」
「でもさ……当面の目標は提示できるよ」
「はい?」
「帰る方法を探すためにもまずはここの世界のことを知るんだよ。さっき、あんたが言ったようにさ」
「そうですね。たしかにそのほうが賢明です」
「そう、一応調べてみたけどイストラに関してはここの世界の遊具の関連情報しか出ない」
「この世界の遊具とイストラが何か関係しているんですか?」
「いや、まったく」
「はい?」
「その辺は口で説明するよりも自分で経験していって知ったほうが早いよ」
雄馬は漫画本を与えた。
それはちょうど、今の雄馬とエルフの少女のような立場を題材にしたファンタジーコメディの漫画だった。
「これは?」
「この世界の本さ。帰る方法を探すのもいいと思うけどそれを探すのにもこの世界のことを知ってからでも遅くないんじゃないかな」
「………正直、この世界の物事に今非常に興味を……もって……あれ?」
急にイリューナは身体を倒れさせて雄馬に身を預けた。
雄馬は彼女を思わず抱き留める。
その拍子に彼女の豊満な胸を鷲掴み、弾力を手に感じ取った。
「や、やわらけぇ」
その時、誰かが部屋にやってくる足音が聞こえた。
そうして、扉が開かれる。
「ユウマ、夕飯つくりに……きた……よ」
部屋の扉を開けたのは堂々と不法侵入をしでかしている幼馴染の笹美雪日だった。
雪日は手に持った買い物袋を落とし、雄馬と雄馬の腕に抱かれているイリューナを見る。
「朝、モンスター娘が欲しいとか言ってたにしても……まさか……女の子を拉致してコスプレさせて……あまつさえ……」
「ちょっと、雪日さんなんか勘違いしていらっしゃる?」
彼女の顔に陰りがさす。
雄馬は血の気が引いていく。
「雪日さん、ちょっと待って話を――」
「てんちゅううう!」
「ぎゃぁああああ!」
雄馬の脳天に彼女の鋭いかかと落としが落とされた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる