世界の破壊と終わりの先でさようなら

ryuu

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第1章 警察殺しの切裂き魔

情報収集

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 喫茶店にて、間食をとりつつ、俺は現場の状況証拠をまとめて読んでいた。
 その目の前でぎこちなくコーヒーを飲む彼女、リリシア。
 軍事武器生産国でもトップを誇るアリルテッド皇国の皇女がまさかこんな喫茶店でコーヒーを飲んでいるなんて誰も思うことはないだろう。
 周囲には警察官が多く居座っているので彼女の身柄は絶対に大丈夫と言える。
 書類を読みながら、ふと思うことがある。
 あの争いの時に見えた彼らの身体の一部にある紋様の存在。
 それは示すのは明らかに過去のあの忌まわしい事件のことだ。
 もしも、確実にアリルテッド皇国が密接に零の事件と関りがあるのだとしたら俺には彼女をこの捜査状況に付き合わせたくはなかった。
 なのにもかかわらずアリスの奴は護衛兼相棒とよくわからない立場に皇女様を押し付けた。

「あの、ユウタさまここに来たのはないか理由があったんですよね? いつまでこうしているんでしょうか? 私に捜査の仕方とかアリス様から教えてくださると聞き及んでいるんですが」
「……アリスはアリスで、俺には俺なりの考えがあるんだ。捜査の仕方はとりあえず見て学べ」
「ええ……」

 アリスに言われたからと素直に従うほどやさしくはない。
 彼女を適当に突き放しつつ、周囲の警官の話に耳を傾けていたところへ穂波がやってくる。

「ちょっと、新しくできた後輩にもう少し優しくできないの? もうちょっと先輩らしく教えてあげたらどうなの?」
「部外者が勝手に口出しするな」
「あら、ここで無断でコーヒー飲んでおいて部外者って言える? ああたの食費をサポートしてあげてるのは誰? なんだったら、今すぐ今までのツケを返してもらって構わないのよ。そうしたら何も言わない」
「…………」

 威圧的な彼女の言葉には俺も逆らえない。
 食費は生命線で、個々の利用を失えば貴重な警察の情報を聞きいることもできない。
 素直に従うほかない。

「わかったよ」

 根負けした俺はしぶしぶ、書類の読む手を止めて、メモ帳とペンを取り出した。
 ようやく、その仕草を見て穂波も安心を示した。
 リリシアも安堵したように息をつき、穂波に目を向けた。

「あ、あの穂波様ありがとうございます」
「いいのよ、コイツにまたいじめられたら言ってちょうだい。ちょっとひねくれてるけど私に言ってくれたらスグになんでもいうこと聞くから」
「なんでも誰がきくかよ」
「あら、マスターに今すぐユウタがつけを払いたいって言ってくる?」
「すみません」

 ひらひらと手を振りながら彼女が去っていく後姿を見ながら俺は適当に状況を説明を始める。

「ココに来たのは理由がある。周囲を見てみろ」
「周囲ですか?」
「ココは穂波も言ってたとおり、警官がよく出入りしている喫茶店だ。ここでは多くの事件の情報を仕入れることができる」
「情報……」
「普段俺らは民間警備会社だから、警察の筋とつながりはあってもすべてを得ることはできないというかアイツらがよこすことはない。だから、こうしてこういう現場で情報を集める。だけど、穏便に」
「直接話を聞きに行けばいいんじゃないですか?」
「バカ。それをしたら怪しまれて捕まるだけだ。だから、おおよそ、俺はこうしてコーヒーをここでいつも飲みながら聞き耳を立てて情報を集めてるんだ」
「それで、何かわかったんですか?」
「おおむね、知っていることしか入らない。だけど、一つだけ知らないことも分かった」
「何を?」
「あの第5区で術式を展開しようとしてた痕跡があったということだ」
「術式って……転送式のようですね」

 おもわぬ返答に俺は目を数回瞬いた。

「聞こえたのか?」
「少しだけ。やり方はわかりました。ここでただ無駄に無銭飲食をしていただけじゃないんですね」

 なんだか遠回しに馬鹿にみられていたようなことを含ませる言い回しだったがとりあえずスルーをした。
 タイミングよくおかわりのコーヒーを注ぎに来た穂波がにこやかに笑う。

「なにか悪だくみしていない? あまり警察と揉め事はやめてよね。私にも職務質問が来るのよ」
「別にただ捜査をしているだけだ。それより、例の猟奇殺人事件を知っているか?」
「ああ、あの酒屋の店主亡くなったのよね。ニュースに出てたくらいしか聞いてないわ」

 やはりそういう反応を返したがただどこかに目を泳がせた素振りが気になった。

「ここ最近、もう一つ事件があっただろう?」
「なんだ、知っているの。なら捜査も進めてるの?」
「そっちは十分に集まってない」

 鎌をかけた言い回し見事に穂波は食いついた。
 別に俺はその他の事件があったことなど知らない。
 だけど、彼女のふるまい一つは長い間の経験で熟知した。

「そっちの犯人は捕まってるの?」
「まだ。そもそも担当は俺じゃないんだ」
「そう……」

 俺は席を立つ。
 その様子を見て慌てて、リリシアも立ち上がった。
 ちょうど、食事も終わっていたのだから彼女も頃合いだろう。

「ちょっと、お金支払ってないんだけど!」
「ツケといてくれ。急用を思い出した。また来る」


 
 
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