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30、犯人捜し
しおりを挟む翌朝、ヴァイスは学園に向かう前にオルドリー伯爵家に立ち寄った。
リフィアは明け方、目を覚ましたそうだ。
部屋に通されたヴァイスは、ベッドで体を起こしているリフィアを見て涙ぐむ。
「リフィア!!」
「ヴァイス、おはよう」
微笑んでいるリフィアに駆け寄り、ベッドに腰を下ろす。
両手で頬を包み、唇、瞼、耳を撫でて確認する。
「ちゃんと生きてる···」
顔を歪め、涙を流しながらリフィアを強く抱きしめた。
「ごめん!君を守るなんて言ったくせに、危険な目に合わせて、ごめん!」
「泣かないで。私は助かったし、私にも責任があるわ。指に付いたソースを舐めるなんて、お行儀が悪いわよね」
そう言って、ヴァイスの背中をトントンと宥める。
母親から事情を聞いたであろうリフィアに、ヴァイスは改めて毒殺について説明する。
さらに、ルナントフの依頼でフォグに襲撃されたこと、ハイルトン家を調査しているのがシャッテンという組織であることも伝える。
シャッテンについては、リフィアに話してもいいとタリダルに許可を得ていた。
一度にたくさんの情報を聞き、リフィアは呆然としている。
「そんなことになっていたなんて···」
ヴァイスの命が狙われていたことにショックを受ける。
しかも殺そうとしているのが、ルナントフだということに動揺する。
「君に心配させたくなくて黙ってた。ちゃんと話をしていれば、君は毒を口にすることもなかった···僕の責任だ。ごめん」
リフィアは、気落ちしているヴァイスの頭を撫でる。
「黙っていたのは、私のためを思ってなんでしょ?気にしないで。これからは私も気をつけるわ」
(優しくて強いな、リフィアは)
「···うん。リフィア、愛してる」
「私も愛してるわ」
ヴァイスはキスをしようとするが、リフィアは人差し指でヴァイスの唇をムニムニと押し返す。
「私よりも、あなたのほうが危険なのよ!油断大敵!気を引き締めて!」
リフィアは少し怒った顔をしている。
「ははは、そうだね。君を怒らせると怖いな!」
「痛いところはない?」
「喉と胸のあたり···食道かな?あと胃も。でも少し痛む程度だから大丈夫」
メブリードの言った通りである。
リフィアは微かに声が掠れていて、キブエラ毒のせいで荒れているのかもしれない。
「そうか···今日学園は休むんだろう?ちゃんと医師に診てもらってね」
「うーん···お医者様に毒を飲んでから痛みます、って言ったら大事になりそうだわ。といっても、学園ではすでに噂になってるでしょうけど」
食堂での出来事は何十人にも見られている。
口止めする余裕なんてなかった。
「じゃあ今日の午後、事情を話しても大丈夫な医師を連れてくるよ。午後は休診の日だから、きっと来てくれるはず」
「それって、もしかして···」
「ふふ、楽しみにしてて」
ヴァイスはリフィアの頬を撫で、キスをする。
「じゃあ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
久しぶりのこの挨拶は前世以来だ。
懐かしくて、二人とも声を出して笑う。
ヴァイスは学園に着くとすぐに、授業そっちのけで毒を盛った犯人捜しを始める。
教師たちやメブリードも参加しており、事態を重く見ているようだ。
取り調べはあっけなく終わった。
料理人の中に、明らかに顔を青くし震えている人物がいたからだ。
問い詰めると、素直に白状した。
話によると、旅人風のマントを纏った男が、液体の入った小瓶を渡してきたという。
『ヴァイス・トリガーの食事に混ぜろ』
料理人は、その液体が怪しい物だと察し拒否したが、『家族がどうなってもいいのか』と脅されたため従った。
小瓶を渡してきた男はフードを深く被り、顔はよく見えなかったという。
(街で僕を襲ってきた連中と同じ格好だ。フォグで間違いないな。つまり、毒殺はルナントフの指示か···)
メブリードが口を開く。
「キブエラ毒は無色透明で、無味無臭。料理に混ぜても全くわかりません」
料理人は小瓶を受け取った日から、ヴァイスが食堂で注文する度に毒を仕込んでいた。
五回は盛ったという。
(解毒薬を開発したメブリード先生には、本当に感謝だな)
取り調べを終えたヴァイスは教室に戻り、ルナントフと目が合うと舌打ちされた。
(毒を飲んでも死なない僕に、相当苛ついていそうだ)
「ヴァイス様、朝リフィアに会いに行ったのでしょう?目覚ましてましたか?」
アーラが尋ねてきた。
リフィアの朝の様子を伝えると、ほっとした表情を見せた。
「私、絶対に寿命が縮みましたよ。こんなこと、二度とご免です」
「う、すまない···」
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