陽炎の向こうにーー健太郎のある一日

みかえじゅんや

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4、祈り

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 新学期が始まってまもなく、健太郎は学校を早退して五條堀総合病院に行った。もちろん行き先は小浮気以外には絶対に内緒で。
 担当医の健保に呼ばれて診察室に入った。
「やあ、どうだい調子は?」健保は笑顔で迎えてくれた。
「はあ、まあ……」どう答えていいのかわからず、健太郎は言葉を濁した。
「早速だけれど、検査の結果を報告するね。『レントゲン検査』では、骨に異常は見当たらなかった。一方、『MRI検査』なんだけれど、やはり思っていた通り『インピジメント症候群』、わかりやすくいうと『投球障害肩』、通称“野球肩”といわれている疾患だ」
「野球肩……」
「どういうことか説明すると、投球動作をする際、関節包や肩関節に付着する腱や筋が損傷、つまり、はさまれたり、擦られたりしたことによって炎症が起こる疾患だ」
 健保は、肩部分の模型やシャーカステンに挟んだMRIの画像写真を示しながら、わかりやすく説明してくれた。
「肩の部分には健板というものがあって、それは肩関節に安定性をもたらす筋肉および腱の複合体のことなんだけれど、君の場合、その健板が損傷……つまり、かなり筋が傷んでいる状態だ」
「損傷……」尾崎は言葉を失った。
「原因は……、君もわかっていると思うが、甲子園での投げ過ぎによるものだ」
「筋が傷んでるんですか……」尾崎は独り言のように呟いた。少しの間、健保の言葉が入ってこなかった。
「おいおい、そんな悲壮な顔をするなよ。野球選手の場合……特に投手にはよくあることなんだから。それに、一般の人だって、転倒して手を突いてしまったり、肩を強打したとき、あるいは歳を取って脆《もろ》くなってしまうことにより、損傷してしまうこともあるんだから」
 ーーう~ん、困ったことになったぞ。国体はどうする……ドラフト会議までに治るんだろうか……今は凄く……マズイ……。
 良い予感は当たらないが、悪い予感は当たる。予想していないことではなかった。ただ、実際にその場に直面して健太郎は激しく動揺した。
 『練習は嘘をつかない』――とよくいわれている。より上達するためにハードワークで自分を追い込む。試合においても、良い結果を出すために、自分という選手を認めてもらうために、ギリギリのところまで身体を酷使せざるを得ない。
 楽をして勝てるほど競技の世界は甘くないのだ。しかし、自分の欲望とは裏腹に、身体が付いて行けずに悲鳴をあげてしまう。健太郎の場合もそうだった。だからといって、甲子園大会という大舞台で手を抜くことなどできるわけがない。
    --そういえば……、オリンピックに出場が決まっていた女子マラソンの選手で、前回のオリンピックで金メダルを取ったこともあり、かなりの期待とプレッシャーがかかる中、再び金メダルを狙うべく、相当激しい練習をしたのだろう、しかし、そのあげく、足の指を疲労骨折してしまい、結局、無念のオリンピック出場辞退となったケ-スがあったっけ……。
「……ねえ、聞いてる……?」健保の声が届いた。
  健太郎は夢から覚めたかのように健保を見た。
「……アッ、すいません」
「治療方法について説明するからよく聞いててね」
「はい……」
「肩腱板の治療法には主に2つ、保存療法といって手術を行わない治療法、もう1つは損傷箇所を修復する手術療法」
「し、手術……!」健太郎は健保の言葉に反応して目を見開いた。
「傷んだ箇所を放っておいて自然に治ることはないんだ」
「駄目、駄目です! 今は駄目です、手術なんか!」健太郎は思わず立ち上がって叫んだ。
「まあまあ、落ち着いて……、わかっているよ。いろいろと小浮気先生から事情は聞いている」
 健保も立ち上がって、健太郎を座らせる。
「そこでだね、治療方法としては、肩を動かさなければ痛みは出ないわけだし、保存療法を行って様子を見ていこうと思う」
「投げられるまで……どのぐらい?」
「そうだなぁ……全力投球できるまでには、半年ぐらいかな」
「はん……半年……」茫然自失の表情で健太郎は呟いた。
「とにかく、今日から2週間程度、左腕を三角巾で固定して、肩の安静を保つ。その間、飲み薬の消炎鎮痛剤を服用する。この薬には副作用があるんだけれど、胃は丈夫な方?」
「強い方だと思います。少々腐ったモノを食べても平気ですから」
「少々でも、腐ったモノは食べない方がいいと思うけどなぁ」健保は苦笑していった。「まあ、胃薬も合わせて処方するから」
「はあぁ……」健太郎は悩んでいた。
 --マズイ……マズイなぁ。飲み薬はいいとして、左腕を三角巾で固定するというのは……ハッキリと目立つ。肩を故障していることを、みんなに宣伝しているようなもんだ。う~ん、どうしよう……。
 様々なことが健太郎の頭の中を駆け巡っていた。
    --国体どころじゃなくなった……長期安静をしているうちに、左腕の投げる筋力は格段に落ちてしまうだろう……スカウトの人たちに知られたらどうなる……それでもドラフト会議で指名してくれるのか……もし……もし、指名されなかったら、プロ野球選手になる夢はいったい……。
    もし今回指名されなかったら、次回は社会人野球に進んだ場合は2年後、大学に進学したら4年後……いやいや、それじゃ駄目だ。そんな余裕なんかねえ。それに、先で指名される保証はどこにもねえし……。
    暗澹《あんたん》たる気持ちを引きずりながら五条堀総合病院を後にした健太郎は、ふと気がつくと小浮気整骨院の前に立っていた。
    『投資物件』本人としては、左腕を三角巾で吊った状態で小浮気に会うのは気が引けた。入ろうか……止めようか……、迷った末に、のっそりとドアを開けて中に入った。
「……あら、健ちゃんじゃない。いらっしゃい」受付にいたオバチャン看護士が笑顔で迎えてくれた。
「ども……」健太郎はペコリと頭を下げた。
「アララ、その腕どうしたの?」事情を知らないオバチャン看護士が、左腕の三角巾を見ながら訊いてきた。
「それが……ちょっと……」健太郎はいい淀んだ。
「ま、とにかく上がりなさいよ。先生は3番施術室にいるから」
「はい……失礼します」どんよりと答えて、スリッパに履き替える。
「ちょっと、なんか元気がないねぇ~。ご飯しっかり食べてる?」
    この年代の人は、若者に対して、食事の量で“元気”か“元気じゃない”かを判断するものらしい。
「いやぁ……それが……最近、どんぶり3杯しか食べられなくなっちまってて……まいった」
「……ウヒャー、ワタシ的には、それだけ食べられりゃ、もの凄く元気だと思うけどぉ~」
 その言葉を背に、健太郎はペロッと舌を出してから、施術室のカ-テンに向かって声をかけた。
「お疲れさまです。尾崎です」
「おう、来たか、入れ」
    カ-テンを引いて中に入ると、小浮気は電気治療器の調整を行っていた。
「健保から連絡があった。内容は聞いている」
 小浮気は健太郎の左腕の三角巾をチラッと見てからいった。
「いわれた通りの治療をして、早く治すことだな」
「はあ……」健太郎はうなだれた。
    そんな健太郎を見て、「なにもそんなに落ち込むこたぁないだろうが。不治の病じゃあるまいし」
「……あの……先生、相談があるんですが……」
「何だ?」
「この三角巾、なんとかなりませんかね。これじゃあんまりだぁ。肩をぶっ壊してますよう――って、みんなに宣伝してるようなもんじゃないですか」
「実際そうなんだから仕方がないだろうが」
「何かこう……ないですかねぇ、もっと目立たないようなヤツ。例えば、外から見えないような……人から気づかれないようなヤツ……何かありませんかねぇ?」
「お前、何でそんなに三角巾を嫌がるんだ?」
「それは……つまり……その……」健太郎は口ごもった。そして、大きく息を吸い込むと、意を決したようにいった。
「俺、どうしても今年のドラフト会議で指名されて、プロ野球の選手になりたいんです。どうしてもたくさんの契約金がいるんです!」
    健太郎は、父親を癌で失ってからの貧しかった3人家族の生活のこと、そんな状況にもかかわらず、母が一生懸命働いて、好きな野球をやらせてくれたこと、その母が今、病気であること、学力優秀な双子の弟の大学進学のこと--今まで無理矢理自分の胸の内に押し込めてきた思いのたけを、洗いざらい一気に小浮気にぶちまけた。
「だから大金が欲しいんです。どうしても必要なんです。なんとしても今回のドラフト会議で指名されなければならない。それも上位で!」
  小浮気は、健太郎をじっと見つめながら黙って話を聞いていた。
「そのためには、肩の故障が治るまで、プロのスカウトにはこのことを絶対に秘密にする!」 
    健太郎は吊っている左腕を睨みつけて、「自分の夢を叶えるために、この三角巾……邪魔なんです!」呻くように言葉を吐き出した。
 小浮気はおもむろに口を開いた。
「スカウトを騙して多額の契約金をせしめようって魂胆か」
「そうです……」健太郎は一旦言葉を切ってから、勢い込んだ。「スカウト騙くらかしてでもプロに入るんだ。ただしそれは一時的なこと。しっかり故障を治して、その分を取り戻せるようにガンガン練習して、チ-ムに貢献する。それなら文句はないでしょう。それに、投資してくれた先生にも恩返しができる。とにかく……とにかく肩さえ治れば……俺はやれる!」
「いいか尾崎、スカウトたちはプロだ、隠し通すことは容易じゃない。もし、運良くバレずにドラフト会議で指名されて入団しても、しばらくはリハビリを続けなければならない。まさか故障していたなんて……、スカウトたちはさぞ驚くことだろう。そして球団側からは叱責されるハメになるだろうな」
「自分のため、家族のためには仕方がないことです。俺はそのためだけに、今まで野球をやってきたんだ……」言い終わると、健太郎は黙り込んだ。
    小浮気は、しばらくの間瞑目していた。そして目を開けると、「今、お前が話したことを、私は聞かなかったことにする。いいな」ことさら、ゆっくりといった。
    健太郎は暗い表情のまま無言でお辞儀をして、施術室を出ようとした。
「おい、ちょっと待て……」小浮気は、棚から一つの箱を取り出して、マッサージベッドの上に置いた。そして箱のフタを開け、中に入っていたモノを取り出して、健太郎に見せた。
「これは『ファンクションショルダープロ』だ。お前にしばらく貸してやる。装着してやるから三角巾を取れ」
「は……?」
「いいから、ベッドに座れ。早く」
    小浮気は、健太郎の左肩から腕の中程まで、黒の肩サポーターを巻いていった。留めるとき、マジックテープのビリビリという音が部屋に響いた。
「このサポーターの上に、シャツ、ワイシャツを着れば、そんなに目立たないだろう。ただ、まだ残暑が続きそうだから、蒸れないように注意しろ。汗疹《あせも》なんかの皮膚炎になっちまうからな。それと、このサポーターもときどき洗え。汗を吸って臭くなっちまうからよ」
    巻き終ると、「ホイッ」といって、健太郎の背中をポンと叩いた。健太郎は、驚きと戸惑いで目をまたたかせた。
「家族にも内緒にしておくつもりか?」
「……はあ、そうするつもりです」
「そりゃあ、まず無理だろうな……なんたって、家族だからな」
「先生、ありがとうございました」健太郎は深々と小浮気に頭を下げて、マッサージベッドから立ち上がった。
 帰り道、健太郎は肩の故障のことはもちろん、このショルダーサポーターについても、母の美加子と弟の優二に対して、どう誤魔化そうかと考えながら歩いた。しかし……妙案は浮かばなかった。健太郎はため息を一つついた。
  --仕方がない。取りあえず、シカトで行くか……。
 夕食後、健太郎が宿題をやっていると、同じ部屋の後ろ側の机で勉強していた優二が、コソッと声をかけてきた。
「ねえ、肩の具合どう。大丈夫……?」
 目を見開いて、ゆっくりと振り向いた健太郎は、「な、何いってんだよ、お前……」突然の優二の言葉に動揺を隠せなかった。
「もう~、正直にいいなよ。こんな狭い家で一緒に暮してるんだぜ、兄ちゃんの動きがなんかヘンだって、すぐにわかっちゃうさ。なんたって、オレたち双子だよ」
    健太郎は俯いて深くため息をつき、顔を上げると、「……大丈夫だから心配すんな」と笑顔でいった。
「小浮気先生のところで治療してもらってるんだろ。学校帰りに、兄ちゃんが整骨院に入って行くのを偶然見ちゃったんだ」
「そうなのか……。ま、とにかく、小浮気先生は名医だから。いろんな競技のアスリートたちが治療に来てるらしい。だから心配するな」
「早く治るといいね」
「すぐに治るさ」そういい終ると、健太郎は浴室の方を見た。今、母親の美加子が入っている。
「……なあ優二、母さんは俺の肩のことわかってるんだろうか?」
「う~ん、口には出さないけれど、たぶん気づいていると思う。なんたって母親だからね。それに、甲子園の再試合のときだって、暑い中、あんなに投げて肩や肘は大丈夫なんだろうか?……って心配してたし」
「そうっか……」健太郎は再びため息をついた。病人の母に、自分の肩の故障の心配をさせてしまっていることに、胸が痛んだ。
「……いいか、優二、肩のことは絶対に誰にも喋るな。俺はどうしても今年のドラフトで指名されて、プロに入りたいんだ。もし、肩の故障のことがスカウトの耳に入ちまったら、すべてが水の泡になる。だから俺は、自分の夢を実現させるために何がなんでも肩が治るまで、このことについては母さんを含めて、誰に対してもシカトして隠し通す。だから、お前も協力してくれ」
「そんなに思い詰めなくても……。ねぇ、今年にこだわらないで、“先も含めて”というわけにはいかないの?」
「馬鹿をいうな! 今の俺にはそんな悠長な余裕なんかねぇんだ!……それに、先でプロに入れる保証なんかどこにもねえ。今回が絶好のチャンスなんだ!」
「……わかった……わかったよ」健太郎の迫力に圧されて、優二は深く2度頷くのだった。
    当面の問題は、来月の国体だ。
   --さあ、どうする……。
    健太郎は腕を組んで思わず唸った。





                                    ◆






    野球部の早朝練習がなくなった代わりに、健太郎は毎朝5時に起床して、登校前に往復1時間10キロのランニングを自分に課した。投げられない分、下半身を鍛えることに重点を置いたからだ。
    結局、昨夜はいい考えが思い浮かばなかった。そこで、ランニングをしながら考えてみることにした。やはり、机に向かってじっと考え事をするより、身体を動かしながらの方が自分の性《しょう》に合っている気がしたからだ。
    --不自然な理由じゃ駄目だ。みんなが自然に受け止められるものでなけりゃ……。肩、肘以外の箇所で、致命傷ではなく、比較的早く治り、松葉杖など遣わずに済む、見栄えのいい箇所……。足首の軽い捻挫……軸足である右足太腿の軽い肉離れ……。う~ん……。
 走りながら健太郎は唸った。
   --朝霧高校新チ-ムの練習は9月に入ってまもなく始まった。
  3年生に関しては、進学を優先させるために練習に参加しない者、国体が終わるまでは参加する者の2組に別れた。どちらにせよ、10月中旬に行われる『追い出し会』をもって退部(卒部)することとなる。
   ただし、健太郎の他にも、五頭、栫、程塚など、これからも野球を続けるメンバーについては、大学硬式野球部のセレクションや練習会を受けるために、新チ-ムの邪魔にならないようにして、放課後、練習を行うことを許可されていた。
    健太郎は、外野フェンスに沿ってライトからレフト間を往復する走り込みを、黙々と繰り返していた。
  --さて、いつ故障することにしょうか……。
  『左足首の軽い捻挫』――これでいくことにした。後は故障するタイミングが問題だ。いつまでも投げずに、走り込みばかりやっていては、ヘンに疑われてしまう。先ほども監督の志々目から声をかけられた。
「--どうだ肩の調子は?」
「はい、大丈夫です。明日か明後日あたりから徐々に投げ始めるつもりです。そうしないと国体に間に合いませんから……」
「無理はするなよ。甲子園では、お前にかなり無理をさせてしまったからな」
「でもそのお陰で優勝できました」
「それはそうなんだか……。いいか、国体について、前もっていっておくぞ。先のことも考えて、投手に関しては2年の恩蔵《おんぞう》と牝小路《ひんこうじ》を中心にしようと思っている。もし、お前が投げるとしてもワンポイントリリーフだ。それでもいいピッチングをすれば、プロのスカウトたちも納得するだろう。いいな、その心づもりで準備するように」
「はあ……」健太郎は曖昧に頷いた。
    しぶしぶ納得したかのように見えたかもしれない。しかし……健太郎の気持ちはそうではなかった。今の肩の状態では、たとえワンポイントでも投げることはできない。にもかかわらず、仕方がないとはいえ、3年間指導を受け、共に試合で戦ってきた監督に対して、本当のことをいえず、嘘をついて誤魔化している自分が心苦しかった。
 ところがである――。
 健太郎に、はからずも国体に不出場せざるを得ない事態が起こった。
    今まで通院しながら放射線治療を受けていた母の美加子が、入院することになったのだ。
    入院後、抗がん剤治療を行ったのち、乳ガンの摘出手術をすることとなった。
    弟の優二には、大切な大学受験が控えている。勉強に集中して、なんとしても希望する国立大学に合格してもらいたい――健太郎はそう願っていた。
    そこで、人一倍母親思いの健太郎は、自分が出来る限りの看病をすることを決意した。
    --母子家庭の苦しい経済状態の中、懸命に働いて育ててくれた母さん。好きな野球をやらせてくれた母さん。今こそ恩返しをしなければ。
    健太郎は心から母の回復を祈った。
    監督の志々目に事情を話し、了解を得た。
  偶然、学校に『調査書』を発送したこと、また、『プロ志望届け』を提出する意思はあるのかを問い合わせてきた『四国ジャガース』の関東地区担当スカウトの雙木にも状況を説明した。
  小浮気には電話で連絡した。
  尾崎の忙しい日々が始まった。
  10キロのランニング→自分と優二の朝食と弁当作り→学校→母の見舞い→夕食作り→夜のトレ-ニング。
    宿題など勉強に関しては、学校の休み時間を有効に活用した。
    それに加えて、週に1度、小浮気整骨院に、2週間に1度、健保のいる五條堀総合病院へ通院した。
    肩を安静にしていることや、薬の服用、小浮気や健保の治療などの甲斐もあって、少しずつ快方に向かっていった。
「大丈夫か?。何かできることがあったら遠慮なくいえよ」志々目監督や五頭、栫といったチ-ムメイトも心配して声をかけてくれた。
    時々、美加子が働いている食品工場の社長・碗澤が、箱詰めにされた自社製品の餃子パックを持ってきてくれた。また、近所のオバチャンたちが自分の家で作った料理をお裾分けしてくれたこともあった。小浮気整骨院への通院では、小浮気の妻が料理を持たせてくれたこともあった。
    尾崎は一層決意を新たにした。
    --ありがたいことだ、みんな何かと気にかけてくれて……。この恩に報いるためにも、何がなんでもプロ野球の選手にならなければ!。
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