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闇魔道士クロエル編
10.発動!救う為の攻撃!
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異世界ミフラ。
ここは、「魔法」「発現」等、"想い"が具現化する世界──。
──兄さん。
"救う為の攻撃"とは何ですか?
例え、身を守る為でも。誰かの為でも。
"攻撃する"という事は、こちらの都合ではないですか?
兄さん……。
ラグザル「……へへ、ようやくくたばったかよ」
時は遡り、(仮称)浮遊城・2F──
"人形繰り"ミザリアは、仮面に緑のマント、手足がそこから出ているという、異様な姿だ。
ミザリア「あははは!私の相手はこんな可愛い女の子なんて!ちょっと気が引けますなー!」
ドロシー「あなたも女の子の声です」
ミザリア「黙らっしゃい!私の事はいいんです!」
ミザリア「……時に。"キリキリ漆黒ムカデ"……の時はいなかったか……"漆黒オーク"は、お気に召しましたかな?」
ドロシー「あ、あれ、貴女の仕業だったです?」
ミザリア「せいかーい!まちょっと、あの辺りに用事がありましてね。私の力でちょちょっとね」
ドロシー「あれのせいで、師匠やアリサさんが悲しい目に遭ったです」
と、ドロシーの身体から、ばちばちと雷!
ドロシー「ミザリアさん。ドロシー、けっこう怒ってるです」
ミザリア「……お、面白い!如何程の事ができるか、このミザリア楽しみですなー!」
ミザリア(落ち着け、魔法使いドロシーのデータは頭に入ってんだ)
一方、こちらは。
ラグザル「んじゃあ、とっとと始めっかぁー」
"堕僧"ラグザル。──彼女は、ほぼ裸の出立ちに、ピアスというか、宝石というか……「つける」というより「埋め込んでいる」というようで、身体のあちこちで、無数に光っている。
ラグザル「ま。どうだ。聖職者ちゃんよ。一発ぶん殴ってみるー?」
と、ラグザルは長い舌──そこにもびっしりと──を出し、自分のこめかみをとんとん叩いた。
セレナ、杖を振り被り、ラグザルを殴る。
と。
ラグザル「いってぇーなあー!!!」
ラグザル「"ウィゾナ"!"ヒーティス"!」
セレナ「に、二種類の属性魔法!?」
と──勝つ為とは言え、人を殴った後悔。そんなものが瞬時に消し飛ぶような、猛烈な反撃を加えてきた。
……ラグザルの肩が裂け、血が噴き出る。
ラグザル「おっとぉ。へへ……"ルーティ"……クロエルとミザリアにやって貰ったのさあ。あたしは四属性と聖属性を使える。……の為に、三人、あたしの中に入ってんだけどさぁ」
ラグザル「ちょーっと限界越えるようで、撃つ度、身体が裂けちゃうんだよねぇ。ま、それも"僧侶"齧ってたから?回復すりゃいーという訳で」
セレナ「あ……貴女」
ラグザル「あー?分かるよ、次の言葉。"回復魔法をかけすぎると身体に悪い"とか言うんでしょー?堅っ苦しいねぇ、聖職者って」
ラグザル「何なら神様に祈ってみるか?"無理がたたって死にますように"ってさあー。死んだらあんたの勝ちだね、げひゃひゃ」
ラグザル「そら"マリゾーダ"に"ドドベラン"。げひゃひゃ……つー。"ルーティ"と」
ラグザル「ほぉ?生きてんじゃん。いいねぇ」
ラグザル「でも攻撃ないっしょ?知ってるよぉ元僧侶だし。その後も色々殺したしねえ。聖職者って攻め手がないから、立木を殴るみたいなもんなのー」
ラグザル「最初は同僚だったなあー。あたしが脱けるの止めてきてさ。殺してひん剥いて開いて、祭壇に置いといてやったわあー、おかげで、誰もあたしを追って来なかった」
ラグザル「お、いいねぇその顔。あたしは楽に殺さないからあ。"ヒーティス""ドドベラン"!"ルーティ"……でもねぇ?こんなあたしでもまだ、聖魔法、使えるのよ」
ラグザル「あんたらが祈る神様ってなあにー?って、思っちゃうよねえ?あ?何だその顔……"マリゾーダ""ウィゾナ"ちっ……"ルーティ"」
セレナは。
健気にも、耐えていた。
"ハイ・バッシュ"で、ラグザルの魔法を凌ぎ──
セレナ(攻撃は……)
"セイント"しか、ないのではないか。
仲間達は皆、壁の向こうだ。補助に徹していたらいい状況とは違う……ラグザルの、"堕僧"の話に、耳を貸さず。
セレナ(救う!)
セレナは思った。
セレナ「セイント!」
しかし。
杖は、何も放たない。
セレナ(何で……!)
と歯噛み。セイント!しかし放てず。神よ、あなたは、この者に味方するのですか!
セレナ(救う、救う!)
思い、込める。セイント──しかし。来るのはラグザルの嘲笑と、魔法の連打。セレナは「ハイ・バッシュ」で防ぎ……
きれず。
ラグザル「お?飛んだねー。飛んだ飛んだ。こりゃ、死んだんじゃない?あら、動いてるや。げひゃひゃ」
ラグザル「やーっぱ立木じゃない?聖職者ってぇー、最期の顔が素敵なのよね"ヒーティス""ウィゾナ"、に"ルーティ"と。動いてんねー、"ドドベラン"に"マリゾーダ"」
ラグザル「お?そうそう、いい顔になったじゃん?"神様なんかいない"ってね。じゃ、その顔のまんまでー、死ね」
──兄さん。
"救う為の攻撃"とは何ですか?
例え、身を守る為でも。誰かの為でも。
攻撃するという事は、こちらの都合ではないですか?
兄さん……。
いえ。
この状況は、何ですか?
"聖魔法"とは何ですか?
神様とは何ですか?
何故この女性が"ルーティ"を唱えられるのでしょう?
セレナ(……私が……私が信じてきたものは……)
セレナ(全……て……お遊び?……ダッタ……トイウノ……?)
俯せのセレナは、虚な目で。右手を、地面を掻くように動かし。
ぱたりと。
ラグザル「……へへ、ようやくくたばったかよ」
ミザリア「"デス"!」
ドロシー「"サンダーボルト"!」
バアァ!と、音!
ミザリア「ふわあ!成程!流石、上位存在、雷の魔法!聖属性ほどではないにしろ、"闇魔法"にぶつけられるんですねぇ!」
ミザリア、腕を動かし、仮面を被り直すと、
ミザリア「ですが、貴女は"サンダーボルト"頼り!これならどうです?出でよ、モンスターッ!」
と、ミザリアが両手を上げると、無数の闇の玉が現れ、生まれるように、モンスターが現れてくる!
ミザリア「漆黒ガーゴイルのように洗練されてはおりませんがね。この戦いには十分でしょう。さあ!"サンダーボルト"で切り抜けられるなら、切り抜けてみなさい!」
セレナは。
もがいていた。
ラグザル「……お?なんだ、まだ動いてやがらァ」
食らいまくった、身体で考える。
セレナ(ここで負けたら、皆が!)
──ここで負けたら、皆が……皆を、救えない。
セレナ(こじつけでもいい)
救う、救う。
セレナは、うつ伏せのまま。とにかく、杖を突き出した。
──放てなければ、正気はない!
セレナ「兄さん!力を貸して!」
ミザリア「んー……」
ミザリア「私には、ラグザルのような趣味は無いので……そろそろ死体になったかな」
と、粗製ガーゴイル達が、羽を縮めきったそこを、伺っていると。
「"ラズマ・パンク"!」
とドロシーの声!
ミザリア「な、な、な!何!"サンダーボルト"しか、使えないのではないですか!」
「サンダーボルト?」ドロシー、きょとん。
ミザリア「だ、だって!貴女は、戦闘においていつも……」
ドロシー「それは、師匠や皆がいてくれるからです。だからドロシーは、"サンダーボルト"に集中できるです」
「うわ」とミザリア。「負けたわ、何もかも」
ドロシー「じゃ、お望み通り!ドロシー、放ってあげるです!"サンダーボルト"!」
その威力に。
いや。
それと分からなかった。
が、ラグザルの左脇腹が。いきなり"消失"した。
ラグザル「……あ?」
と、見遣る。
血が出ていない。のが、余計に。綺麗な断面だけを残して。
ラグザル「おま……お前、お前ぇ!何をしたあああああアアアアアアアアアアア!!??」
と、やけに綺麗な断面を押さえ、もがく。から、分からなかったが──這いつくばって、ともかく、杖を持ち、構えたセレナの顔も、目を見開き、驚愕と恐怖の合体で、玉のような汗をかいていた。
──何て、何て。何て恐ろしい力。
覚えた、という事で。その"思想"が頭に入ってくるが。
セレナ(何て、何て傲慢なの!)
と、セレナは叫び出したくなった!
しかし、ラグザルが、ともかく落ち着き、
ラグザル「てめっ……てめえぇ!!!」
と叫ぶ頃には。
セレナも、覚悟を決めて。立ち上がる事も出来なかったが杖を持ち。
セレナ(私は、聖職者。なので、神よ。あなたに身を委ねます)
ラグザルに"救済"を放つ。
セレナ「"セイント"!」
撃たれたラグザルは、光の粒となって、消えていった。
立ち上がれない。
セレナ「"ルーティ"」
徐々に、身体が楽になってゆく。
セレナは、ともかく立ち上がると、部屋を切るその壁を、見てみた。
セレナ(皆は……)
思う。
この壁は、きっと消える、と思った。セレナは"ルーティ"を自分にかけ続け、首を振ると、ふふ、と笑ってみせた。
セレナ(酷い顔は、見せられないからね)
やがて、壁が揺らぐ──
四人を分断した壁が、揺らいで消えた。
改めて、中央に寄り、再会を喜ぶ。
アリサ「セレナさん……」
と、アリサは気まずいが。
セレナはアリサの顔を見て、"発現"が、セレナの思う通りの形で使われた事を察し、
セレナ「まず、アリサちゃんから回復しましょうね」
と言った。
セレナ「あまり消耗していないわ。本当に最小限だったのね。偉い」
アリサ「セレナさん……」
アッシュ「僕の時は膝枕でお願いします!」
アリサ「スケベ!」
アッシュ「……」
アリサ「な、何?ジッと見て……」
壁があった所に、上へと続く階段があった。
(仮称)浮遊城・最上階──
アッシュ「扉だ……嫌な予感がする」
ドロシー「すごい魔力の予感です」
セレナ「居るんでしょうね、彼が」
アッシュ「……」
アッシュ「アリサ、来てくれ」
アリサ「えっ、ちょ、ちょっと!」
ドロシー「どこ行くですかー?」
セレナ「私達は待っていましょうね」
アリサ「え!い、嫌よ!こんな所で!」
アッシュ「頼む!"一回"使わせてくれ!剣チャージしないと!」
アリサ「言ったけど、せめてさ……」
アッシュ「世界の為なんだ!」
アリサ「……」
『キュイン!』
セレナ「あら」
ドロシー「剣の音です!」
アッシュ「待たせたな、行こうか、皆!」
ドロシー「師匠、なんかツヤツヤしてるです!」
アリサ「……」
アリサ「し、死にたい……」
セレナ「アリサちゃん。締めだから、次回までには立ち直りましょうね」
再会、喜ぶ、一行が。
次に、当たるは、城の主。
第十章、終わり
【tips】
魔法⑦
セイント【聖】
聖属性の攻撃魔法。当たった相手を"救済"する。
相手は、光の粒となって消える。
ウィゾナ【風】
風属性の攻撃魔法。四段階中の三段目。
激しい風が相手を切り裂く。
ヒーティス【火】
火属性の攻撃魔法。四段階中の三段目。
激しい炎が相手を燃やす。
マリゾーダ【水】
水属性の攻撃魔法。四段階中の三段目。
激しい水流が相手を呑み込む。
ドドベラン【土】
土属性の攻撃魔法。四段階中の三段目。
大きな岩石が相手を砕く。
ラズマ・パンク【雷】
雷属性の攻撃魔法。自身の周囲に雷を展開する。
ここは、「魔法」「発現」等、"想い"が具現化する世界──。
──兄さん。
"救う為の攻撃"とは何ですか?
例え、身を守る為でも。誰かの為でも。
"攻撃する"という事は、こちらの都合ではないですか?
兄さん……。
ラグザル「……へへ、ようやくくたばったかよ」
時は遡り、(仮称)浮遊城・2F──
"人形繰り"ミザリアは、仮面に緑のマント、手足がそこから出ているという、異様な姿だ。
ミザリア「あははは!私の相手はこんな可愛い女の子なんて!ちょっと気が引けますなー!」
ドロシー「あなたも女の子の声です」
ミザリア「黙らっしゃい!私の事はいいんです!」
ミザリア「……時に。"キリキリ漆黒ムカデ"……の時はいなかったか……"漆黒オーク"は、お気に召しましたかな?」
ドロシー「あ、あれ、貴女の仕業だったです?」
ミザリア「せいかーい!まちょっと、あの辺りに用事がありましてね。私の力でちょちょっとね」
ドロシー「あれのせいで、師匠やアリサさんが悲しい目に遭ったです」
と、ドロシーの身体から、ばちばちと雷!
ドロシー「ミザリアさん。ドロシー、けっこう怒ってるです」
ミザリア「……お、面白い!如何程の事ができるか、このミザリア楽しみですなー!」
ミザリア(落ち着け、魔法使いドロシーのデータは頭に入ってんだ)
一方、こちらは。
ラグザル「んじゃあ、とっとと始めっかぁー」
"堕僧"ラグザル。──彼女は、ほぼ裸の出立ちに、ピアスというか、宝石というか……「つける」というより「埋め込んでいる」というようで、身体のあちこちで、無数に光っている。
ラグザル「ま。どうだ。聖職者ちゃんよ。一発ぶん殴ってみるー?」
と、ラグザルは長い舌──そこにもびっしりと──を出し、自分のこめかみをとんとん叩いた。
セレナ、杖を振り被り、ラグザルを殴る。
と。
ラグザル「いってぇーなあー!!!」
ラグザル「"ウィゾナ"!"ヒーティス"!」
セレナ「に、二種類の属性魔法!?」
と──勝つ為とは言え、人を殴った後悔。そんなものが瞬時に消し飛ぶような、猛烈な反撃を加えてきた。
……ラグザルの肩が裂け、血が噴き出る。
ラグザル「おっとぉ。へへ……"ルーティ"……クロエルとミザリアにやって貰ったのさあ。あたしは四属性と聖属性を使える。……の為に、三人、あたしの中に入ってんだけどさぁ」
ラグザル「ちょーっと限界越えるようで、撃つ度、身体が裂けちゃうんだよねぇ。ま、それも"僧侶"齧ってたから?回復すりゃいーという訳で」
セレナ「あ……貴女」
ラグザル「あー?分かるよ、次の言葉。"回復魔法をかけすぎると身体に悪い"とか言うんでしょー?堅っ苦しいねぇ、聖職者って」
ラグザル「何なら神様に祈ってみるか?"無理がたたって死にますように"ってさあー。死んだらあんたの勝ちだね、げひゃひゃ」
ラグザル「そら"マリゾーダ"に"ドドベラン"。げひゃひゃ……つー。"ルーティ"と」
ラグザル「ほぉ?生きてんじゃん。いいねぇ」
ラグザル「でも攻撃ないっしょ?知ってるよぉ元僧侶だし。その後も色々殺したしねえ。聖職者って攻め手がないから、立木を殴るみたいなもんなのー」
ラグザル「最初は同僚だったなあー。あたしが脱けるの止めてきてさ。殺してひん剥いて開いて、祭壇に置いといてやったわあー、おかげで、誰もあたしを追って来なかった」
ラグザル「お、いいねぇその顔。あたしは楽に殺さないからあ。"ヒーティス""ドドベラン"!"ルーティ"……でもねぇ?こんなあたしでもまだ、聖魔法、使えるのよ」
ラグザル「あんたらが祈る神様ってなあにー?って、思っちゃうよねえ?あ?何だその顔……"マリゾーダ""ウィゾナ"ちっ……"ルーティ"」
セレナは。
健気にも、耐えていた。
"ハイ・バッシュ"で、ラグザルの魔法を凌ぎ──
セレナ(攻撃は……)
"セイント"しか、ないのではないか。
仲間達は皆、壁の向こうだ。補助に徹していたらいい状況とは違う……ラグザルの、"堕僧"の話に、耳を貸さず。
セレナ(救う!)
セレナは思った。
セレナ「セイント!」
しかし。
杖は、何も放たない。
セレナ(何で……!)
と歯噛み。セイント!しかし放てず。神よ、あなたは、この者に味方するのですか!
セレナ(救う、救う!)
思い、込める。セイント──しかし。来るのはラグザルの嘲笑と、魔法の連打。セレナは「ハイ・バッシュ」で防ぎ……
きれず。
ラグザル「お?飛んだねー。飛んだ飛んだ。こりゃ、死んだんじゃない?あら、動いてるや。げひゃひゃ」
ラグザル「やーっぱ立木じゃない?聖職者ってぇー、最期の顔が素敵なのよね"ヒーティス""ウィゾナ"、に"ルーティ"と。動いてんねー、"ドドベラン"に"マリゾーダ"」
ラグザル「お?そうそう、いい顔になったじゃん?"神様なんかいない"ってね。じゃ、その顔のまんまでー、死ね」
──兄さん。
"救う為の攻撃"とは何ですか?
例え、身を守る為でも。誰かの為でも。
攻撃するという事は、こちらの都合ではないですか?
兄さん……。
いえ。
この状況は、何ですか?
"聖魔法"とは何ですか?
神様とは何ですか?
何故この女性が"ルーティ"を唱えられるのでしょう?
セレナ(……私が……私が信じてきたものは……)
セレナ(全……て……お遊び?……ダッタ……トイウノ……?)
俯せのセレナは、虚な目で。右手を、地面を掻くように動かし。
ぱたりと。
ラグザル「……へへ、ようやくくたばったかよ」
ミザリア「"デス"!」
ドロシー「"サンダーボルト"!」
バアァ!と、音!
ミザリア「ふわあ!成程!流石、上位存在、雷の魔法!聖属性ほどではないにしろ、"闇魔法"にぶつけられるんですねぇ!」
ミザリア、腕を動かし、仮面を被り直すと、
ミザリア「ですが、貴女は"サンダーボルト"頼り!これならどうです?出でよ、モンスターッ!」
と、ミザリアが両手を上げると、無数の闇の玉が現れ、生まれるように、モンスターが現れてくる!
ミザリア「漆黒ガーゴイルのように洗練されてはおりませんがね。この戦いには十分でしょう。さあ!"サンダーボルト"で切り抜けられるなら、切り抜けてみなさい!」
セレナは。
もがいていた。
ラグザル「……お?なんだ、まだ動いてやがらァ」
食らいまくった、身体で考える。
セレナ(ここで負けたら、皆が!)
──ここで負けたら、皆が……皆を、救えない。
セレナ(こじつけでもいい)
救う、救う。
セレナは、うつ伏せのまま。とにかく、杖を突き出した。
──放てなければ、正気はない!
セレナ「兄さん!力を貸して!」
ミザリア「んー……」
ミザリア「私には、ラグザルのような趣味は無いので……そろそろ死体になったかな」
と、粗製ガーゴイル達が、羽を縮めきったそこを、伺っていると。
「"ラズマ・パンク"!」
とドロシーの声!
ミザリア「な、な、な!何!"サンダーボルト"しか、使えないのではないですか!」
「サンダーボルト?」ドロシー、きょとん。
ミザリア「だ、だって!貴女は、戦闘においていつも……」
ドロシー「それは、師匠や皆がいてくれるからです。だからドロシーは、"サンダーボルト"に集中できるです」
「うわ」とミザリア。「負けたわ、何もかも」
ドロシー「じゃ、お望み通り!ドロシー、放ってあげるです!"サンダーボルト"!」
その威力に。
いや。
それと分からなかった。
が、ラグザルの左脇腹が。いきなり"消失"した。
ラグザル「……あ?」
と、見遣る。
血が出ていない。のが、余計に。綺麗な断面だけを残して。
ラグザル「おま……お前、お前ぇ!何をしたあああああアアアアアアアアアアア!!??」
と、やけに綺麗な断面を押さえ、もがく。から、分からなかったが──這いつくばって、ともかく、杖を持ち、構えたセレナの顔も、目を見開き、驚愕と恐怖の合体で、玉のような汗をかいていた。
──何て、何て。何て恐ろしい力。
覚えた、という事で。その"思想"が頭に入ってくるが。
セレナ(何て、何て傲慢なの!)
と、セレナは叫び出したくなった!
しかし、ラグザルが、ともかく落ち着き、
ラグザル「てめっ……てめえぇ!!!」
と叫ぶ頃には。
セレナも、覚悟を決めて。立ち上がる事も出来なかったが杖を持ち。
セレナ(私は、聖職者。なので、神よ。あなたに身を委ねます)
ラグザルに"救済"を放つ。
セレナ「"セイント"!」
撃たれたラグザルは、光の粒となって、消えていった。
立ち上がれない。
セレナ「"ルーティ"」
徐々に、身体が楽になってゆく。
セレナは、ともかく立ち上がると、部屋を切るその壁を、見てみた。
セレナ(皆は……)
思う。
この壁は、きっと消える、と思った。セレナは"ルーティ"を自分にかけ続け、首を振ると、ふふ、と笑ってみせた。
セレナ(酷い顔は、見せられないからね)
やがて、壁が揺らぐ──
四人を分断した壁が、揺らいで消えた。
改めて、中央に寄り、再会を喜ぶ。
アリサ「セレナさん……」
と、アリサは気まずいが。
セレナはアリサの顔を見て、"発現"が、セレナの思う通りの形で使われた事を察し、
セレナ「まず、アリサちゃんから回復しましょうね」
と言った。
セレナ「あまり消耗していないわ。本当に最小限だったのね。偉い」
アリサ「セレナさん……」
アッシュ「僕の時は膝枕でお願いします!」
アリサ「スケベ!」
アッシュ「……」
アリサ「な、何?ジッと見て……」
壁があった所に、上へと続く階段があった。
(仮称)浮遊城・最上階──
アッシュ「扉だ……嫌な予感がする」
ドロシー「すごい魔力の予感です」
セレナ「居るんでしょうね、彼が」
アッシュ「……」
アッシュ「アリサ、来てくれ」
アリサ「えっ、ちょ、ちょっと!」
ドロシー「どこ行くですかー?」
セレナ「私達は待っていましょうね」
アリサ「え!い、嫌よ!こんな所で!」
アッシュ「頼む!"一回"使わせてくれ!剣チャージしないと!」
アリサ「言ったけど、せめてさ……」
アッシュ「世界の為なんだ!」
アリサ「……」
『キュイン!』
セレナ「あら」
ドロシー「剣の音です!」
アッシュ「待たせたな、行こうか、皆!」
ドロシー「師匠、なんかツヤツヤしてるです!」
アリサ「……」
アリサ「し、死にたい……」
セレナ「アリサちゃん。締めだから、次回までには立ち直りましょうね」
再会、喜ぶ、一行が。
次に、当たるは、城の主。
第十章、終わり
【tips】
魔法⑦
セイント【聖】
聖属性の攻撃魔法。当たった相手を"救済"する。
相手は、光の粒となって消える。
ウィゾナ【風】
風属性の攻撃魔法。四段階中の三段目。
激しい風が相手を切り裂く。
ヒーティス【火】
火属性の攻撃魔法。四段階中の三段目。
激しい炎が相手を燃やす。
マリゾーダ【水】
水属性の攻撃魔法。四段階中の三段目。
激しい水流が相手を呑み込む。
ドドベラン【土】
土属性の攻撃魔法。四段階中の三段目。
大きな岩石が相手を砕く。
ラズマ・パンク【雷】
雷属性の攻撃魔法。自身の周囲に雷を展開する。
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辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?
黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。
古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。
これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。
その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。
隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。
彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。
一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。
痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。
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