宝玉チャージ!溜まるとキュイン♪〜スケベ勇者アッシュの冒険〜

葉雲屋

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闇魔道士クロエル編

10.発動!救う為の攻撃!

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異世界ミフラ。
ここは、「魔法」「発現」等、"想い"が具現化する世界──。



──兄さん。
"救う為の攻撃"とは何ですか?
例え、身を守る為でも。誰かの為でも。
"攻撃する"という事は、こちらの都合ではないですか?
兄さん……。

ラグザル「……へへ、ようやくくたばったかよ」





時は遡り、(仮称)浮遊城・2F──

"人形繰り"ミザリアは、仮面に緑のマント、手足がそこから出ているという、異様な姿だ。

ミザリア「あははは!私の相手はこんな可愛い女の子なんて!ちょっと気が引けますなー!」

ドロシー「あなたも女の子の声です」

ミザリア「黙らっしゃい!私の事はいいんです!」





ミザリア「……時に。"キリキリ漆黒ムカデ"……の時はいなかったか……"漆黒オーク"は、お気に召しましたかな?」

ドロシー「あ、あれ、貴女の仕業だったです?」

ミザリア「せいかーい!まちょっと、あの辺りに用事がありましてね。私の力でちょちょっとね」

ドロシー「あれのせいで、師匠やアリサさんが悲しい目に遭ったです」

と、ドロシーの身体から、ばちばちと雷!

ドロシー「ミザリアさん。ドロシー、けっこう怒ってるです」

ミザリア「……お、面白い!如何程の事ができるか、このミザリア楽しみですなー!」

ミザリア(落ち着け、魔法使いドロシーのデータは頭に入ってんだ)





一方、こちらは。

ラグザル「んじゃあ、とっとと始めっかぁー」

"堕僧"ラグザル。──彼女は、ほぼ裸の出立ちに、ピアスというか、宝石というか……「つける」というより「埋め込んでいる」というようで、身体のあちこちで、無数に光っている。

ラグザル「ま。どうだ。聖職者ちゃんよ。一発ぶん殴ってみるー?」

と、ラグザルは長い舌──そこにもびっしりと──を出し、自分のこめかみをとんとん叩いた。
セレナ、杖を振り被り、ラグザルを殴る。
と。

ラグザル「いってぇーなあー!!!」

ラグザル「"ウィゾナ"!"ヒーティス"!」

セレナ「に、二種類の属性魔法!?」

と──勝つ為とは言え、人を殴った後悔。そんなものが瞬時に消し飛ぶような、猛烈な反撃を加えてきた。





……ラグザルの肩が裂け、血が噴き出る。

ラグザル「おっとぉ。へへ……"ルーティ"……クロエルとミザリアにやって貰ったのさあ。あたしは四属性と聖属性を使える。……の為に、三人、あたしの中に入ってんだけどさぁ」

ラグザル「ちょーっと限界越えるようで、撃つ度、身体が裂けちゃうんだよねぇ。ま、それも"僧侶"齧ってたから?回復すりゃいーという訳で」

セレナ「あ……貴女」

ラグザル「あー?分かるよ、次の言葉。"回復魔法をかけすぎると身体に悪い"とか言うんでしょー?堅っ苦しいねぇ、聖職者って」

ラグザル「何なら神様に祈ってみるか?"無理がたたって死にますように"ってさあー。死んだらあんたの勝ちだね、げひゃひゃ」

ラグザル「そら"マリゾーダ"に"ドドベラン"。げひゃひゃ……つー。"ルーティ"と」





ラグザル「ほぉ?生きてんじゃん。いいねぇ」

ラグザル「でも攻撃ないっしょ?知ってるよぉ元僧侶だし。その後も色々殺したしねえ。聖職者って攻め手がないから、立木を殴るみたいなもんなのー」

ラグザル「最初は同僚だったなあー。あたしが脱けるの止めてきてさ。殺してひん剥いて開いて、祭壇に置いといてやったわあー、おかげで、誰もあたしを追って来なかった」

ラグザル「お、いいねぇその顔。あたしは楽に殺さないからあ。"ヒーティス""ドドベラン"!"ルーティ"……でもねぇ?こんなあたしでもまだ、聖魔法、使えるのよ」

ラグザル「あんたらが祈る神様ってなあにー?って、思っちゃうよねえ?あ?何だその顔……"マリゾーダ""ウィゾナ"ちっ……"ルーティ"」





セレナは。
健気にも、耐えていた。
"ハイ・バッシュ"で、ラグザルの魔法を凌ぎ──

セレナ(攻撃は……)

"セイント"しか、ないのではないか。
仲間達は皆、壁の向こうだ。補助に徹していたらいい状況とは違う……ラグザルの、"堕僧"の話に、耳を貸さず。

セレナ(救う!)

セレナは思った。

セレナ「セイント!」

しかし。
杖は、何も放たない。





セレナ(何で……!)

と歯噛み。セイント!しかし放てず。神よ、あなたは、この者に味方するのですか!

セレナ(救う、救う!)

思い、込める。セイント──しかし。来るのはラグザルの嘲笑と、魔法の連打。セレナは「ハイ・バッシュ」で防ぎ……
きれず。

ラグザル「お?飛んだねー。飛んだ飛んだ。こりゃ、死んだんじゃない?あら、動いてるや。げひゃひゃ」

ラグザル「やーっぱ立木じゃない?聖職者ってぇー、最期の顔が素敵なのよね"ヒーティス""ウィゾナ"、に"ルーティ"と。動いてんねー、"ドドベラン"に"マリゾーダ"」

ラグザル「お?そうそう、いい顔になったじゃん?"神様なんかいない"ってね。じゃ、その顔のまんまでー、死ね」





──兄さん。
"救う為の攻撃"とは何ですか?
例え、身を守る為でも。誰かの為でも。
攻撃するという事は、こちらの都合ではないですか?
兄さん……。

いえ。

"聖魔法"とは何ですか?
神様とは何ですか?
何故この女性が"ルーティ"を唱えられるのでしょう?

セレナ(……私が……私が信じてきたものは……)

セレナ(全……て……お遊び?……ダッタ……トイウノ……?)

うつぶせのセレナは、虚な目で。右手を、地面を掻くように動かし。
ぱたりと。

ラグザル「……へへ、ようやくくたばったかよ」





ミザリア「"デス"!」

ドロシー「"サンダーボルト"!」

バアァ!と、音!

ミザリア「ふわあ!成程!流石、上位存在、雷の魔法!聖属性ほどではないにしろ、"闇魔法"にぶつけられるんですねぇ!」

ミザリア、腕を動かし、仮面を被り直すと、

ミザリア「ですが、貴女は"サンダーボルト"頼り!これならどうです?出でよ、モンスターッ!」

と、ミザリアが両手を上げると、無数の闇の玉が現れ、生まれるように、モンスターが現れてくる!

ミザリア「漆黒ガーゴイルのように洗練されてはおりませんがね。この戦いには十分でしょう。さあ!"サンダーボルト"で切り抜けられるなら、切り抜けてみなさい!」





セレナは。
もがいていた。

ラグザル「……お?なんだ、まだ動いてやがらァ」

食らいまくった、身体で考える。

セレナ(ここで負けたら、皆が!)

──ここで負けたら、皆が……皆を、救えない。

セレナ(こじつけでもいい)

救う、救う。
セレナは、うつ伏せのまま。とにかく、杖を突き出した。
──放てなければ、正気はない!

セレナ「兄さん!力を貸して!」





ミザリア「んー……」

ミザリア「私には、ラグザルのような趣味は無いので……そろそろ死体になったかな」

と、粗製ガーゴイル達が、羽を縮めきったそこを、伺っていると。

「"ラズマ・パンク"!」

とドロシーの声!

ミザリア「な、な、な!何!"サンダーボルト"しか、使えないのではないですか!」

「サンダーボルト?」ドロシー、きょとん。

ミザリア「だ、だって!貴女は、戦闘においていつも……」

ドロシー「それは、師匠や皆がいてくれるからです。だからドロシーは、"サンダーボルト"に集中できるです」

「うわ」とミザリア。「負けたわ、何もかも」

ドロシー「じゃ、お望み通り!ドロシー、放ってあげるです!"サンダーボルト"!」





その威力に。
いや。
それと分からなかった。
が、ラグザルの左脇腹が。""

ラグザル「……あ?」

と、見遣る。
血が出ていない。のが、余計に。綺麗な断面だけを残して。

ラグザル「おま……お前、お前ぇ!何をしたあああああアアアアアアアアアアア!!??」

と、やけに綺麗な断面を押さえ、もがく。から、分からなかったが──這いつくばって、ともかく、杖を持ち、構えたセレナの顔も、目を見開き、驚愕と恐怖の合体で、玉のような汗をかいていた。

──何て、何て。何て恐ろしい力。

覚えた、という事で。その"思想"が頭に入ってくるが。

セレナ(何て、何て傲慢なの!)

と、セレナは叫び出したくなった!
しかし、ラグザルが、ともかく落ち着き、

ラグザル「てめっ……てめえぇ!!!」

と叫ぶ頃には。
セレナも、覚悟を決めて。立ち上がる事も出来なかったが杖を持ち。

セレナ(私は、聖職者。なので、神よ。あなたに身を委ねます)

ラグザルに"救済"を放つ。

セレナ「"セイント"!」

撃たれたラグザルは、光の粒となって、消えていった。





立ち上がれない。

セレナ「"ルーティ"」

徐々に、身体が楽になってゆく。
セレナは、ともかく立ち上がると、部屋を切るその壁を、見てみた。

セレナ(皆は……)

思う。
この壁は、きっと消える、と思った。セレナは"ルーティ"を自分にかけ続け、首を振ると、ふふ、と笑ってみせた。

セレナ(酷い顔は、見せられないからね)

やがて、壁が揺らぐ──





四人を分断した壁が、揺らいで消えた。
改めて、中央に寄り、再会を喜ぶ。

アリサ「セレナさん……」

と、アリサは気まずいが。
セレナはアリサの顔を見て、"発現"が、セレナの思う通りの形で使われた事を察し、

セレナ「まず、アリサちゃんから回復しましょうね」

と言った。





セレナ「あまり消耗していないわ。本当に最小限だったのね。偉い」

アリサ「セレナさん……」

アッシュ「僕の時は膝枕でお願いします!」

アリサ「スケベ!」

アッシュ「……」

アリサ「な、何?ジッと見て……」





壁があった所に、上へと続く階段があった。



(仮称)浮遊城・最上階──

アッシュ「扉だ……嫌な予感がする」

ドロシー「すごい魔力の予感です」

セレナ「居るんでしょうね、彼が」

アッシュ「……」





アッシュ「アリサ、来てくれ」

アリサ「えっ、ちょ、ちょっと!」

ドロシー「どこ行くですかー?」

セレナ「私達は待っていましょうね」





アリサ「え!い、嫌よ!こんな所で!」

アッシュ「頼む!"一回"使わせてくれ!剣チャージしないと!」

アリサ「言ったけど、せめてさ……」

アッシュ「世界の為なんだ!」

アリサ「……」





『キュイン!』

セレナ「あら」

ドロシー「剣の音です!」

アッシュ「待たせたな、行こうか、皆!」

ドロシー「師匠、なんかツヤツヤしてるです!」

アリサ「……」

アリサ「し、死にたい……」

セレナ「アリサちゃん。締めだから、次回までには立ち直りましょうね」


再会、喜ぶ、一行が。
次に、当たるは、城の主。

第十章、終わり



【tips】

魔法⑦

セイント【聖】
聖属性の攻撃魔法。当たった相手を"救済"する。
相手は、光の粒となって消える。

ウィゾナ【風】
風属性の攻撃魔法。四段階中の三段目。
激しい風が相手を切り裂く。

ヒーティス【火】
火属性の攻撃魔法。四段階中の三段目。
激しい炎が相手を燃やす。

マリゾーダ【水】
水属性の攻撃魔法。四段階中の三段目。
激しい水流が相手を呑み込む。

ドドベラン【土】
土属性の攻撃魔法。四段階中の三段目。
大きな岩石が相手を砕く。

ラズマ・パンク【雷】
雷属性の攻撃魔法。自身の周囲に雷を展開する。


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