宝玉チャージ!溜まるとキュイン♪〜スケベ勇者アッシュの冒険〜

葉雲屋

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闇魔道士クロエル編

11.決戦!闇魔道士クロエル

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異世界ミフラ。
ここは「魔法」「発現」等、"想い"が具現化する世界──



ドコカ村――

老人が、歩く。
杖をつき、晴れの中。

「……あら、エルガーデさん」

「お散歩ですか?」

"元勇者"エルガーデ「ああ、はい。……足の調子も良いので」

ただの老人と違うのは、腰に提げた「虹色」宝玉の剣だ。

エルガーデ「よっ、と」

エルガーデ(……この気配、邪龍、や、ハデス、ではないが……)

エルガーデ(勇気、じゃぞ。アッシュ)





(仮称)浮遊城・最上階──

アッシュ「聖魔法、セイント……」

セレナ「ええ。――言ってはいけないのだけど、恐ろしい力だわ」

セレナ「相手を消す、という威力もそうだし、消しといて“救う”なんて……私には、まだ分からない、かな」

アリサ「セレナさん……」

セレナ「でも、クロエル相手になら、迷わず撃つわ。みんなの為にも」

セレナ「世界を、救う為にもね」

アッシュ「それで決まっちゃったら、俺のチャージ使わないかもですね!」

アッシュ「アリサと…」

ドン!

アッシュ「ぐは!」

アリサ「黙ってろ!スケベ勇者!」





(仮称)浮遊城・最上階・クロエルの間――

その男。
黒髪に、赤いマントを羽織り。
玉座に座り、頬杖ついて、右手に、豪奢な杖を持ち。

アッシュ「何とかって杖なのかな」

ドロシー「シャロンさんなら分かりそうです」

クロエル「気にするとこかな、それ」

アッシュ「読者も知りたがってるって、きっと」

クロエル「――“紅蓮の杖”だ。金色で、紅蓮感はないかな?」





クロエル「改めまして、ようこそ、愛の勇者アッシュブレイブ君と、その一行」

クロエル「僕が、黒魔道士クロエルだ。――外では会ってなかったよね?“羽虫”四匹の掃除、ありがとうね」

アリサ「羽虫って──!」

クロエルは、手をあげてアリサを制し、

クロエル「アッシュ君。僕の話、聞いてくれないか?」

アッシュ「聞くことなんか何もねェよ」

クロエル「そう言わずに。もし僕が今死んだら、僕の話を出来るやつが居なくなっちゃうだろう?」

アッシュ「……」

アッシュ「お前…」





クロエル「魔法都市カルバラ。眼下に広がるこの街が、懐かしいよ」

クロエル「熱心に研究をやっててね。好きな論文ばかり、却下されるんだ。“人道に反している”は分かる、けども時には“革新的すぎる”なんて。もっと酷いのだと僕を目障りに思った誰か?の手によってね」

クロエル「よく味方してくれた、ノークス先生には悪いけど。この世界は、僕には窮屈すぎる。僕は闇の中でしか、生きられないらしい」

アッシュ「だから、滅ぼすのか」

クロエル「“解放”だよ」

アリサ「傲慢ね。貴方の解放なんか、誰も望んでないのに」

クロエル、アリサには反応せず、

クロエル「君も分かるんじゃないか?アッシュ君。この世界の窮屈さに」

クロエル「“スケベ勇者”なんて。選ばれし勇者であり、実績を上げている君を、彼らは規制しようとしている」





クロエル「こっちに来ないか?アッシュ君」

アッシュ「話は終わりか?」

アッシュ、剣を抜く。

アッシュ「じゃあ始めようぜ。――お前がやろうとしている事は、俺が好きな皆を苦しめる事だ」

アッシュ「だから俺はそれを止める。愛の勇者として」

クロエル「残念だ」

クロエル、立ち上がり、

クロエル「そうだね、始めよう」

アッシュ「……」

クロエル「……」





アッシュ「チャージ解……」

セレナ「“セイント”!」

クロエル「!?」

セレナ「なッ!?バリアが……」

クロエル「“オムバレス”を消すか。流石、“セイント”……」

セレナ「!みんな、私の後ろに!」

クロエル「“デス”」

セレナ「”ハイ・バッシュ”!」

瞬間、全てを持って行くような、死の魔力!

セレナ「はっ……はっ……」

アッシュ「た……助かった……」

セレナ(今の“デス”……今までのどれよりも、強力で大きすぎる……)





クロエル「“バハム”!」

セレナ「なっ、炎――」

クロエル「の、一番強い奴さ」

クロエル「どうかな?……それにしても、有り余るようだね。“魔法泉”の魔力は」

クロエル「お?」

アッシュ「チャージ解放!真・勇者の鎧!」

アッシュ「“ラブレード”!」

ドロシー「“サンダーボルト”!」

アリサ「発現・サムライ!」

アリサ「奥義!“綺羅綺羅”ァ!」





クロエル「“バハム”」

セレナ「……ッあ……」

セレナ「“セイント”!」

クロエル「くぅッ!“オムバレス”!」

ドロシー「“サンダーボルト”!」

アリサ「“綺羅綺羅”ァ!」

クロエル「ぬ、だ、だが……」

アッシュ「“ラブレード”!」

クロエル「まだだ!」

アッシュ「こっちもまだだ!」

ガッ!
と、アッシュの、全体重を乗せた縦振りを、クロエルの左手が受け止める!

クロエル(僕の身体には攻撃力、防御力、魔力その他、闇魔法の“強化”を重ね掛けしてある)

クロエル(いくら勇者でも……)

クロエル「……?ん?んん……ッ!?」

アッシュ「うおおおおおおおおお!!」





アッシュ「おッ!」

クロエルの左腕が、斬り落とされる──

クロエル「な、この力……」

セレナ「“セイント”!」

ドロシー「“サンダーボルト”!」

アリサ「“綺羅綺羅”ァ!」

アッシュ「“ラブ・インパクト”!」





クロエル「……」

アッシュ「どうだよ!」

アリサ「どう!?」

セレナ「身体が残ってるだけ、マシなくらい──」

セレナ「!?」

ドロシー「わ、わ」

クロエル「ぬうッ!」

と、クロエルから、闇の波動!
虹の鎧のアッシュ以外は、皆壁に激突する!

ドロシー「う、う……」

アリサ「ま、まだ動けるの、あいつ……」

セレナ「左腕をなくして、あんなにボロボロなのに」

セレナ「私たちの全力を、叩き込んだのに」

クロエル「……」





クロエル「はーッ、はーッ、はーッ」

クロエル「……い、いや、誇り給え。まさか、ここまでとは思わなかった。あの四人の勇者達より、君たちの方がよっぽど脅威だ」

クロエル(そんな筈はないのだが……絆の力、というやつか?)

クロエル(そして、特に、アッシュ……!やはりハデスを倒した力は、伊達ではなく、しかも未知数……)

クロエル「なら!」

と、クロエルが、床に右手を置くと、城全体が震え始める!

クロエル「これも魔力の塊だ!この城を取り込んで!君達を倒す!そして世界もだ!」





ドロシー「く、崩れちゃうです!」

アリサ「この……!」

アッシュ「クロエルお前!まだ……!」

アッシュ「そこまでやる事か!そこまでしてやる事なのかよ!お前の言う“解放”って奴は!」

クロエル「そうさ」

アッシュ「ッ……」

クロエル「説得じゃ、僕は止まらない」





セレナ(崩れると、空!)

アリサ「その前に!もう一度……」

アッシュ「アリサ!」

アッシュ「いや、セレナさん。脱出の魔法、ありましたよね?」

セレナ「ええ。……体勢を立て直す?」

アッシュ「いえ」

アッシュ「俺が、決着つけます。セレナさんは、二人を連れて、脱出を」

アリサ「は!?」





アッシュ「この城が崩れたら、みんな落下してしまう」

アッシュ「俺なら、鎧で、飛べます。だから」

セレナ「アッシュ君」

アリサ「駄目よ!」

アリサ、アッシュに縋りつく。

アッシュ「アリサ……」

アリサ「駄目!」

アリサ「置いてかないで!あの時みたいに!」

アッシュ「……」





アッシュ「置いてって、なんかないよ。アリサがいるから、俺は戦えるんだ」

アッシュ「俺は、空で戦う。アリサは、陸で戦ってくれ。な?」

アリサ「……」





アッシュ「セレナさん。アリサを」

セレナ「ええ」

セレナ「アッシュ君。……女の子泣かせたんですもの。責任取りなさいね?」

アッシュ「分かってます」

セレナ「じゃあ、アリサちゃん、ドロシーちゃん……”ポルダスト”!」





三人、飛び出す。
瞬間、浮遊城が、内向きに壊れて。

アリサ「帰ってこないと許さないから!」

アリサ「あんな一回、承知するかッ!スケベ勇者ー!」

涙の叫びは、彼に届き。

アリサ「……あ」

アリサの身体から、光が、彼に飛んでいく。

アリサ(……)

アリサ(ハデスの時の……





クロエルが、全てを吸い込む。
最後の、自分の足場が崩れる瞬間、アッシュは飛び出した。

アッシュ「うおおおおおおおおおおおおおおッ!」

クロエルが、垂直に追ってくる。
左腕が再生し、クロエルの身体で、紫が、波打つように光り。

アッシュ「おらァ!」

クロエル「ふッ!」

クロエル「やァ!」

アッシュ「ぐッ!」

アッシュ「さっきの杖はどこやったよ?」

クロエル「もう要らないだろ……力を、手に入れたんだ!」

クロエル「浮遊城を取り込み、僕こそが、”邪龍”で”邪神”だ」

アッシュ「ほざきやがれ!」

クロエルが、殴り。
アッシュが、斬り。
二人して、蹴り。
打たれては、次を繰り出す。





アリサ「ドロシー!セレナさん!アッシュの事を考えて!」

セレナ「考え……?」

アリサ「この光……私から出てるのシャクだけど」

アリサ「本気のアッシュは、”愛”を集めるんです!私達が想えば、アッシュはどんどん強くなる!」

セレナ「アッシュ君……」

ドロシー「師匠!大好きです!」

ドロシーの身体から、光が、続々昇っていく。

セレナ「アッシュ君」

セレナ「スケベだけどカッコいいわ。好きよ、アッシュ君」





魔法都市カルバラ・魔法院本部屋上──

イザベル「あのスケベ勇者を想えですって!?」

アクラレル「浮遊城が壊れ、恐らく、最終決戦となりました」

ノークス「我々にできる事は、せめて、それくらいか」

イザベル「そんな……しかし……」

マーキュ「あんたの頭でも、分かってるだろう?」

ローカイ「彼は今、世界の為に戦っているんだ。――想われるぐらいの資格はあるさ」





勇気、とは。
他人の為に、振り絞る力。
その”他人”の存在を。
裏付けるように、アッシュに、光が集まっていく。

『キュイン♪キュインキュインキュインキュイン♪』

『キュインキュインキュインキュインキュイン♪』

クロエル「なッ!?アッシュの、鎧が変わった!?」

アッシュ「全開だァ!」

アッシュ「俺は、愛の勇者!!お前には分からねえよ、クロエル!!」

クロエル「面白い!まだまだ行くぞ!」

アッシュ「うおおおおおおおお!」

クロエル「ぬおおおおおおおお!」





アッシュ(何とか、隙を作らねえと)

アッシュ(隙を作ったら、すかさず!)





ドロシー「!」

ドロシー「師匠!」

アリサ「え?」

ドロシー「師匠!師匠が呼んでるです!」

ドロシー「”サンダーボルト”!」





アッシュ「ぐうッ!」

クロエル「ふッ。何を狙っているのか分からないが……」

クロエル「んッ?……何だ、雷が、地上から?」

アッシュ(クロエルの気が逸れた!)

アッシュ「ナイスだ!ドロシー!」

クロエル「!しまッ……」

アッシュ「究極奥義!”ミラクリング・ラブ・ハリケーン”!」

アッシュの剣から、エネルギーが放出される!
それはもの凄い音を立てて、ボール状に広がり、
そして、雲を巻き込みながら、渦巻きだした。



【tips】

ミラクリング・ラブ・ハリケーン

アッシュの究極奥義。
発動には、「虹」より上の段階を要する。この時アッシュの鎧は、皆の「愛」を、光として集めるような性質を見せる。溜まった「愛」のエネルギーを剣に乗せて、相手を斬りつける。

魔法⑧

バハム【火】
火属性の攻撃魔法。四段階中の四段階目で、最強の魔法。
灼熱の火炎が相手を焼き尽くす。

ポルダスト【聖】
聖属性の魔法。ダンジョンや建物内から脱出する。


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