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闇魔道士クロエル編
11.決戦!闇魔道士クロエル
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異世界ミフラ。
ここは「魔法」「発現」等、"想い"が具現化する世界──
ドコカ村――
老人が、歩く。
杖をつき、晴れの中。
「……あら、エルガーデさん」
「お散歩ですか?」
"元勇者"エルガーデ「ああ、はい。……足の調子も良いので」
ただの老人と違うのは、腰に提げた「虹色」宝玉の剣だ。
エルガーデ「よっ、と」
エルガーデ(……この気配、邪龍、や、ハデス、ではないが……)
エルガーデ(勇気、じゃぞ。アッシュ)
(仮称)浮遊城・最上階──
アッシュ「聖魔法、セイント……」
セレナ「ええ。――言ってはいけないのだけど、恐ろしい力だわ」
セレナ「相手を消す、という威力もそうだし、消しといて“救う”なんて……私には、まだ分からない、かな」
アリサ「セレナさん……」
セレナ「でも、クロエル相手になら、迷わず撃つわ。みんなの為にも」
セレナ「世界を、救う為にもね」
アッシュ「それで決まっちゃったら、俺のチャージ使わないかもですね!」
アッシュ「アリサと…」
ドン!
アッシュ「ぐは!」
アリサ「黙ってろ!スケベ勇者!」
(仮称)浮遊城・最上階・クロエルの間――
その男。
黒髪に、赤いマントを羽織り。
玉座に座り、頬杖ついて、右手に、豪奢な杖を持ち。
アッシュ「何とかって杖なのかな」
ドロシー「シャロンさんなら分かりそうです」
クロエル「気にするとこかな、それ」
アッシュ「読者も知りたがってるって、きっと」
クロエル「――“紅蓮の杖”だ。金色で、紅蓮感はないかな?」
クロエル「改めまして、ようこそ、愛の勇者アッシュブレイブ君と、その一行」
クロエル「僕が、黒魔道士クロエルだ。――外では会ってなかったよね?“羽虫”四匹の掃除、ありがとうね」
アリサ「羽虫って──!」
クロエルは、手をあげてアリサを制し、
クロエル「アッシュ君。僕の話、聞いてくれないか?」
アッシュ「聞くことなんか何もねェよ」
クロエル「そう言わずに。もし僕が今死んだら、僕の話を出来るやつが居なくなっちゃうだろう?」
アッシュ「……」
アッシュ「お前…」
クロエル「魔法都市カルバラ。眼下に広がるこの街が、懐かしいよ」
クロエル「熱心に研究をやっててね。好きな論文ばかり、却下されるんだ。“人道に反している”は分かる、けども時には“革新的すぎる”なんて。もっと酷いのだと僕を目障りに思った誰か?の手によってね」
クロエル「よく味方してくれた、ノークス先生には悪いけど。この世界は、僕には窮屈すぎる。僕は闇の中でしか、生きられないらしい」
アッシュ「だから、滅ぼすのか」
クロエル「“解放”だよ」
アリサ「傲慢ね。貴方の解放なんか、誰も望んでないのに」
クロエル、アリサには反応せず、
クロエル「君も分かるんじゃないか?アッシュ君。この世界の窮屈さに」
クロエル「“スケベ勇者”なんて。選ばれし勇者であり、実績を上げている君を、彼らは規制しようとしている」
クロエル「こっちに来ないか?アッシュ君」
アッシュ「話は終わりか?」
アッシュ、剣を抜く。
アッシュ「じゃあ始めようぜ。――お前がやろうとしている事は、俺が好きな皆を苦しめる事だ」
アッシュ「だから俺はそれを止める。愛の勇者として」
クロエル「残念だ」
クロエル、立ち上がり、
クロエル「そうだね、始めよう」
アッシュ「……」
クロエル「……」
アッシュ「チャージ解……」
セレナ「“セイント”!」
クロエル「!?」
セレナ「なッ!?バリアが……」
クロエル「“オムバレス”を消すか。流石、“セイント”……」
セレナ「!みんな、私の後ろに!」
クロエル「“デス”」
セレナ「”ハイ・バッシュ”!」
瞬間、全てを持って行くような、死の魔力!
セレナ「はっ……はっ……」
アッシュ「た……助かった……」
セレナ(今の“デス”……今までのどれよりも、強力で大きすぎる……)
クロエル「“バハム”!」
セレナ「なっ、炎――」
クロエル「の、一番強い奴さ」
クロエル「どうかな?……それにしても、有り余るようだね。“魔法泉”の魔力は」
クロエル「お?」
アッシュ「チャージ解放!真・勇者の鎧!」
アッシュ「“ラブレード”!」
ドロシー「“サンダーボルト”!」
アリサ「発現・サムライ!」
アリサ「奥義!“綺羅綺羅”ァ!」
クロエル「“バハム”」
セレナ「……ッあ……」
セレナ「“セイント”!」
クロエル「くぅッ!“オムバレス”!」
ドロシー「“サンダーボルト”!」
アリサ「“綺羅綺羅”ァ!」
クロエル「ぬ、だ、だが……」
アッシュ「“ラブレード”!」
クロエル「まだだ!」
アッシュ「こっちもまだだ!」
ガッ!
と、アッシュの、全体重を乗せた縦振りを、クロエルの左手が受け止める!
クロエル(僕の身体には攻撃力、防御力、魔力その他、闇魔法の“強化”を重ね掛けしてある)
クロエル(いくら勇者でも……)
クロエル「……?ん?んん……ッ!?」
アッシュ「うおおおおおおおおお!!」
アッシュ「おッ!」
クロエルの左腕が、斬り落とされる──
クロエル「な、この力……」
セレナ「“セイント”!」
ドロシー「“サンダーボルト”!」
アリサ「“綺羅綺羅”ァ!」
アッシュ「“ラブ・インパクト”!」
クロエル「……」
アッシュ「どうだよ!」
アリサ「どう!?」
セレナ「身体が残ってるだけ、マシなくらい──」
セレナ「!?」
ドロシー「わ、わ」
クロエル「ぬうッ!」
と、クロエルから、闇の波動!
虹の鎧のアッシュ以外は、皆壁に激突する!
ドロシー「う、う……」
アリサ「ま、まだ動けるの、あいつ……」
セレナ「左腕をなくして、あんなにボロボロなのに」
セレナ「私たちの全力を、叩き込んだのに」
クロエル「……」
クロエル「はーッ、はーッ、はーッ」
クロエル「……い、いや、誇り給え。まさか、ここまでとは思わなかった。あの四人の勇者達より、君たちの方がよっぽど脅威だ」
クロエル(そんな筈はないのだが……絆の力、というやつか?)
クロエル(そして、特に、アッシュ……!やはりハデスを倒した力は、伊達ではなく、しかも未知数……)
クロエル「なら!」
と、クロエルが、床に右手を置くと、城全体が震え始める!
クロエル「これも魔力の塊だ!この城を取り込んで!君達を倒す!そして世界もだ!」
ドロシー「く、崩れちゃうです!」
アリサ「この……!」
アッシュ「クロエルお前!まだ……!」
アッシュ「そこまでやる事か!そこまでしてやる事なのかよ!お前の言う“解放”って奴は!」
クロエル「そうさ」
アッシュ「ッ……」
クロエル「説得じゃ、僕は止まらない」
セレナ(崩れると、空!)
アリサ「その前に!もう一度……」
アッシュ「アリサ!」
アッシュ「いや、セレナさん。脱出の魔法、ありましたよね?」
セレナ「ええ。……体勢を立て直す?」
アッシュ「いえ」
アッシュ「俺が、決着つけます。セレナさんは、二人を連れて、脱出を」
アリサ「は!?」
アッシュ「この城が崩れたら、みんな落下してしまう」
アッシュ「俺なら、鎧で、飛べます。だから」
セレナ「アッシュ君」
アリサ「駄目よ!」
アリサ、アッシュに縋りつく。
アッシュ「アリサ……」
アリサ「駄目!」
アリサ「置いてかないで!あの時みたいに!」
アッシュ「……」
アッシュ「置いてって、なんかないよ。アリサがいるから、俺は戦えるんだ」
アッシュ「俺は、空で戦う。アリサは、陸で戦ってくれ。な?」
アリサ「……」
アッシュ「セレナさん。アリサを」
セレナ「ええ」
セレナ「アッシュ君。……女の子泣かせたんですもの。責任取りなさいね?」
アッシュ「分かってます」
セレナ「じゃあ、アリサちゃん、ドロシーちゃん……”ポルダスト”!」
三人、飛び出す。
瞬間、浮遊城が、内向きに壊れて。
アリサ「帰ってこないと許さないから!」
アリサ「あんな一回、承知するかッ!スケベ勇者ー!」
涙の叫びは、彼に届き。
アリサ「……あ」
アリサの身体から、光が、彼に飛んでいく。
アリサ(これ……)
アリサ(ハデスの時の……アッシュの、本気)
クロエルが、全てを吸い込む。
最後の、自分の足場が崩れる瞬間、アッシュは飛び出した。
アッシュ「うおおおおおおおおおおおおおおッ!」
クロエルが、垂直に追ってくる。
左腕が再生し、クロエルの身体で、紫が、波打つように光り。
アッシュ「おらァ!」
クロエル「ふッ!」
クロエル「やァ!」
アッシュ「ぐッ!」
アッシュ「さっきの杖はどこやったよ?」
クロエル「もう要らないだろ……力を、手に入れたんだ!」
クロエル「浮遊城を取り込み、僕こそが、”邪龍”で”邪神”だ」
アッシュ「ほざきやがれ!」
クロエルが、殴り。
アッシュが、斬り。
二人して、蹴り。
打たれては、次を繰り出す。
アリサ「ドロシー!セレナさん!アッシュの事を考えて!」
セレナ「考え……?」
アリサ「この光……私から出てるのシャクだけど」
アリサ「本気のアッシュは、”愛”を集めるんです!私達が想えば、アッシュはどんどん強くなる!」
セレナ「アッシュ君……」
ドロシー「師匠!大好きです!」
ドロシーの身体から、光が、続々昇っていく。
セレナ「アッシュ君」
セレナ「スケベだけどカッコいいわ。好きよ、アッシュ君」
魔法都市カルバラ・魔法院本部屋上──
イザベル「あのスケベ勇者を想えですって!?」
アクラレル「浮遊城が壊れ、恐らく、最終決戦となりました」
ノークス「我々にできる事は、せめて、それくらいか」
イザベル「そんな……しかし……」
マーキュ「あんたの頭でも、分かってるだろう?」
ローカイ「彼は今、世界の為に戦っているんだ。――想われるぐらいの資格はあるさ」
勇気、とは。
他人の為に、振り絞る力。
その”他人”の存在を。
裏付けるように、アッシュに、光が集まっていく。
『キュイン♪キュインキュインキュインキュイン♪』
『キュインキュインキュインキュインキュイン♪』
クロエル「なッ!?アッシュの、鎧が変わった!?」
アッシュ「全開だァ!」
アッシュ「俺は、愛の勇者!!お前には分からねえよ、クロエル!!」
クロエル「面白い!まだまだ行くぞ!」
アッシュ「うおおおおおおおお!」
クロエル「ぬおおおおおおおお!」
アッシュ(何とか、隙を作らねえと)
アッシュ(隙を作ったら、すかさず!)
ドロシー「!」
ドロシー「師匠!」
アリサ「え?」
ドロシー「師匠!師匠が呼んでるです!」
ドロシー「”サンダーボルト”!」
アッシュ「ぐうッ!」
クロエル「ふッ。何を狙っているのか分からないが……」
クロエル「んッ?……何だ、雷が、地上から?」
アッシュ(クロエルの気が逸れた!)
アッシュ「ナイスだ!ドロシー!」
クロエル「!しまッ……」
アッシュ「究極奥義!”ミラクリング・ラブ・ハリケーン”!」
アッシュの剣から、エネルギーが放出される!
それはもの凄い音を立てて、ボール状に広がり、
そして、雲を巻き込みながら、渦巻きだした。
【tips】
ミラクリング・ラブ・ハリケーン
アッシュの究極奥義。
発動には、「虹」より上の段階を要する。この時アッシュの鎧は、皆の「愛」を、光として集めるような性質を見せる。溜まった「愛」のエネルギーを剣に乗せて、相手を斬りつける。
魔法⑧
バハム【火】
火属性の攻撃魔法。四段階中の四段階目で、最強の魔法。
灼熱の火炎が相手を焼き尽くす。
ポルダスト【聖】
聖属性の魔法。ダンジョンや建物内から脱出する。
ここは「魔法」「発現」等、"想い"が具現化する世界──
ドコカ村――
老人が、歩く。
杖をつき、晴れの中。
「……あら、エルガーデさん」
「お散歩ですか?」
"元勇者"エルガーデ「ああ、はい。……足の調子も良いので」
ただの老人と違うのは、腰に提げた「虹色」宝玉の剣だ。
エルガーデ「よっ、と」
エルガーデ(……この気配、邪龍、や、ハデス、ではないが……)
エルガーデ(勇気、じゃぞ。アッシュ)
(仮称)浮遊城・最上階──
アッシュ「聖魔法、セイント……」
セレナ「ええ。――言ってはいけないのだけど、恐ろしい力だわ」
セレナ「相手を消す、という威力もそうだし、消しといて“救う”なんて……私には、まだ分からない、かな」
アリサ「セレナさん……」
セレナ「でも、クロエル相手になら、迷わず撃つわ。みんなの為にも」
セレナ「世界を、救う為にもね」
アッシュ「それで決まっちゃったら、俺のチャージ使わないかもですね!」
アッシュ「アリサと…」
ドン!
アッシュ「ぐは!」
アリサ「黙ってろ!スケベ勇者!」
(仮称)浮遊城・最上階・クロエルの間――
その男。
黒髪に、赤いマントを羽織り。
玉座に座り、頬杖ついて、右手に、豪奢な杖を持ち。
アッシュ「何とかって杖なのかな」
ドロシー「シャロンさんなら分かりそうです」
クロエル「気にするとこかな、それ」
アッシュ「読者も知りたがってるって、きっと」
クロエル「――“紅蓮の杖”だ。金色で、紅蓮感はないかな?」
クロエル「改めまして、ようこそ、愛の勇者アッシュブレイブ君と、その一行」
クロエル「僕が、黒魔道士クロエルだ。――外では会ってなかったよね?“羽虫”四匹の掃除、ありがとうね」
アリサ「羽虫って──!」
クロエルは、手をあげてアリサを制し、
クロエル「アッシュ君。僕の話、聞いてくれないか?」
アッシュ「聞くことなんか何もねェよ」
クロエル「そう言わずに。もし僕が今死んだら、僕の話を出来るやつが居なくなっちゃうだろう?」
アッシュ「……」
アッシュ「お前…」
クロエル「魔法都市カルバラ。眼下に広がるこの街が、懐かしいよ」
クロエル「熱心に研究をやっててね。好きな論文ばかり、却下されるんだ。“人道に反している”は分かる、けども時には“革新的すぎる”なんて。もっと酷いのだと僕を目障りに思った誰か?の手によってね」
クロエル「よく味方してくれた、ノークス先生には悪いけど。この世界は、僕には窮屈すぎる。僕は闇の中でしか、生きられないらしい」
アッシュ「だから、滅ぼすのか」
クロエル「“解放”だよ」
アリサ「傲慢ね。貴方の解放なんか、誰も望んでないのに」
クロエル、アリサには反応せず、
クロエル「君も分かるんじゃないか?アッシュ君。この世界の窮屈さに」
クロエル「“スケベ勇者”なんて。選ばれし勇者であり、実績を上げている君を、彼らは規制しようとしている」
クロエル「こっちに来ないか?アッシュ君」
アッシュ「話は終わりか?」
アッシュ、剣を抜く。
アッシュ「じゃあ始めようぜ。――お前がやろうとしている事は、俺が好きな皆を苦しめる事だ」
アッシュ「だから俺はそれを止める。愛の勇者として」
クロエル「残念だ」
クロエル、立ち上がり、
クロエル「そうだね、始めよう」
アッシュ「……」
クロエル「……」
アッシュ「チャージ解……」
セレナ「“セイント”!」
クロエル「!?」
セレナ「なッ!?バリアが……」
クロエル「“オムバレス”を消すか。流石、“セイント”……」
セレナ「!みんな、私の後ろに!」
クロエル「“デス”」
セレナ「”ハイ・バッシュ”!」
瞬間、全てを持って行くような、死の魔力!
セレナ「はっ……はっ……」
アッシュ「た……助かった……」
セレナ(今の“デス”……今までのどれよりも、強力で大きすぎる……)
クロエル「“バハム”!」
セレナ「なっ、炎――」
クロエル「の、一番強い奴さ」
クロエル「どうかな?……それにしても、有り余るようだね。“魔法泉”の魔力は」
クロエル「お?」
アッシュ「チャージ解放!真・勇者の鎧!」
アッシュ「“ラブレード”!」
ドロシー「“サンダーボルト”!」
アリサ「発現・サムライ!」
アリサ「奥義!“綺羅綺羅”ァ!」
クロエル「“バハム”」
セレナ「……ッあ……」
セレナ「“セイント”!」
クロエル「くぅッ!“オムバレス”!」
ドロシー「“サンダーボルト”!」
アリサ「“綺羅綺羅”ァ!」
クロエル「ぬ、だ、だが……」
アッシュ「“ラブレード”!」
クロエル「まだだ!」
アッシュ「こっちもまだだ!」
ガッ!
と、アッシュの、全体重を乗せた縦振りを、クロエルの左手が受け止める!
クロエル(僕の身体には攻撃力、防御力、魔力その他、闇魔法の“強化”を重ね掛けしてある)
クロエル(いくら勇者でも……)
クロエル「……?ん?んん……ッ!?」
アッシュ「うおおおおおおおおお!!」
アッシュ「おッ!」
クロエルの左腕が、斬り落とされる──
クロエル「な、この力……」
セレナ「“セイント”!」
ドロシー「“サンダーボルト”!」
アリサ「“綺羅綺羅”ァ!」
アッシュ「“ラブ・インパクト”!」
クロエル「……」
アッシュ「どうだよ!」
アリサ「どう!?」
セレナ「身体が残ってるだけ、マシなくらい──」
セレナ「!?」
ドロシー「わ、わ」
クロエル「ぬうッ!」
と、クロエルから、闇の波動!
虹の鎧のアッシュ以外は、皆壁に激突する!
ドロシー「う、う……」
アリサ「ま、まだ動けるの、あいつ……」
セレナ「左腕をなくして、あんなにボロボロなのに」
セレナ「私たちの全力を、叩き込んだのに」
クロエル「……」
クロエル「はーッ、はーッ、はーッ」
クロエル「……い、いや、誇り給え。まさか、ここまでとは思わなかった。あの四人の勇者達より、君たちの方がよっぽど脅威だ」
クロエル(そんな筈はないのだが……絆の力、というやつか?)
クロエル(そして、特に、アッシュ……!やはりハデスを倒した力は、伊達ではなく、しかも未知数……)
クロエル「なら!」
と、クロエルが、床に右手を置くと、城全体が震え始める!
クロエル「これも魔力の塊だ!この城を取り込んで!君達を倒す!そして世界もだ!」
ドロシー「く、崩れちゃうです!」
アリサ「この……!」
アッシュ「クロエルお前!まだ……!」
アッシュ「そこまでやる事か!そこまでしてやる事なのかよ!お前の言う“解放”って奴は!」
クロエル「そうさ」
アッシュ「ッ……」
クロエル「説得じゃ、僕は止まらない」
セレナ(崩れると、空!)
アリサ「その前に!もう一度……」
アッシュ「アリサ!」
アッシュ「いや、セレナさん。脱出の魔法、ありましたよね?」
セレナ「ええ。……体勢を立て直す?」
アッシュ「いえ」
アッシュ「俺が、決着つけます。セレナさんは、二人を連れて、脱出を」
アリサ「は!?」
アッシュ「この城が崩れたら、みんな落下してしまう」
アッシュ「俺なら、鎧で、飛べます。だから」
セレナ「アッシュ君」
アリサ「駄目よ!」
アリサ、アッシュに縋りつく。
アッシュ「アリサ……」
アリサ「駄目!」
アリサ「置いてかないで!あの時みたいに!」
アッシュ「……」
アッシュ「置いてって、なんかないよ。アリサがいるから、俺は戦えるんだ」
アッシュ「俺は、空で戦う。アリサは、陸で戦ってくれ。な?」
アリサ「……」
アッシュ「セレナさん。アリサを」
セレナ「ええ」
セレナ「アッシュ君。……女の子泣かせたんですもの。責任取りなさいね?」
アッシュ「分かってます」
セレナ「じゃあ、アリサちゃん、ドロシーちゃん……”ポルダスト”!」
三人、飛び出す。
瞬間、浮遊城が、内向きに壊れて。
アリサ「帰ってこないと許さないから!」
アリサ「あんな一回、承知するかッ!スケベ勇者ー!」
涙の叫びは、彼に届き。
アリサ「……あ」
アリサの身体から、光が、彼に飛んでいく。
アリサ(これ……)
アリサ(ハデスの時の……アッシュの、本気)
クロエルが、全てを吸い込む。
最後の、自分の足場が崩れる瞬間、アッシュは飛び出した。
アッシュ「うおおおおおおおおおおおおおおッ!」
クロエルが、垂直に追ってくる。
左腕が再生し、クロエルの身体で、紫が、波打つように光り。
アッシュ「おらァ!」
クロエル「ふッ!」
クロエル「やァ!」
アッシュ「ぐッ!」
アッシュ「さっきの杖はどこやったよ?」
クロエル「もう要らないだろ……力を、手に入れたんだ!」
クロエル「浮遊城を取り込み、僕こそが、”邪龍”で”邪神”だ」
アッシュ「ほざきやがれ!」
クロエルが、殴り。
アッシュが、斬り。
二人して、蹴り。
打たれては、次を繰り出す。
アリサ「ドロシー!セレナさん!アッシュの事を考えて!」
セレナ「考え……?」
アリサ「この光……私から出てるのシャクだけど」
アリサ「本気のアッシュは、”愛”を集めるんです!私達が想えば、アッシュはどんどん強くなる!」
セレナ「アッシュ君……」
ドロシー「師匠!大好きです!」
ドロシーの身体から、光が、続々昇っていく。
セレナ「アッシュ君」
セレナ「スケベだけどカッコいいわ。好きよ、アッシュ君」
魔法都市カルバラ・魔法院本部屋上──
イザベル「あのスケベ勇者を想えですって!?」
アクラレル「浮遊城が壊れ、恐らく、最終決戦となりました」
ノークス「我々にできる事は、せめて、それくらいか」
イザベル「そんな……しかし……」
マーキュ「あんたの頭でも、分かってるだろう?」
ローカイ「彼は今、世界の為に戦っているんだ。――想われるぐらいの資格はあるさ」
勇気、とは。
他人の為に、振り絞る力。
その”他人”の存在を。
裏付けるように、アッシュに、光が集まっていく。
『キュイン♪キュインキュインキュインキュイン♪』
『キュインキュインキュインキュインキュイン♪』
クロエル「なッ!?アッシュの、鎧が変わった!?」
アッシュ「全開だァ!」
アッシュ「俺は、愛の勇者!!お前には分からねえよ、クロエル!!」
クロエル「面白い!まだまだ行くぞ!」
アッシュ「うおおおおおおおお!」
クロエル「ぬおおおおおおおお!」
アッシュ(何とか、隙を作らねえと)
アッシュ(隙を作ったら、すかさず!)
ドロシー「!」
ドロシー「師匠!」
アリサ「え?」
ドロシー「師匠!師匠が呼んでるです!」
ドロシー「”サンダーボルト”!」
アッシュ「ぐうッ!」
クロエル「ふッ。何を狙っているのか分からないが……」
クロエル「んッ?……何だ、雷が、地上から?」
アッシュ(クロエルの気が逸れた!)
アッシュ「ナイスだ!ドロシー!」
クロエル「!しまッ……」
アッシュ「究極奥義!”ミラクリング・ラブ・ハリケーン”!」
アッシュの剣から、エネルギーが放出される!
それはもの凄い音を立てて、ボール状に広がり、
そして、雲を巻き込みながら、渦巻きだした。
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黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
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