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シキ教団の章
6.
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涙が、出て来た。
アキは唇を結び、そして、叫ぶ。
「ネオ様、もうやめてください!私が……私が行きます!」
「アキ……!?何を馬鹿な……」
かつかつと、アキが進む。
石畳に足音。ネオが手をあげる。
「待て、やめろ、アキ……!」
だが、アキは、そのゆっくり押しのけた。
ネオがよろめく。その背を掴もうと手を伸ばしたが、負傷の為か、膝をついた。
「教団が、ネオ様が滅ぶなんて耐えられません。私が……私がっ……魔王!」
大粒の涙が、アキの両眼から零れる。アキは、凛としていった。
「行きます!エルデネス!さあ、私を連れて行って!」
「──そうか」
(負けない)
アキは、思う。涙を流しながら、しかし退くことは絶対にしない。魔王を見上げている。
「では……」
と、エルデネスが、右手を上げる。
「”ルーティ”」
◇
回復魔法:ルーティ
相手の傷を癒す
◇
光が、ネオの身体を包み。
彼の傷が、瞬く間に治ってゆく。
「な……これは、回復魔法?」
どういう事だ。ネオが見上げると、こちらを見るアキと、エルデネスの背があった。
「アキ。その眼にやられたよ」
「……眼、ですか?」
「余の城は、君には似合わない」
エルデネスは、振り返る事無く続ける。
「余も君を、余の城に置きたくない。したがって、このまま帰るとする。しかしもし余に楯突くのならば、今宵のように躊躇わないぞ。分かったかね、代表」
「……」
「では」
月が、綺麗だ。そう言いながら、エルデネスは立ち去った。
収納玉内、エルデネスの城。
「さて……アキ。あれは、余と相容れぬ光だ」
「おかげで”干渉”も抑えられたようです」
「ソガーク。聞いていたのか?」
「聞かれていると分かってて言ったのかと」
「勇者かね」エルデネスが言う。
夜更けの城の廊下は、静かに、燭台が揺らめくだけ。
「勇者です。……ネオ教皇代行や、アキと衝突していれば危なかったですが、回避したおかげで、影響を抑えることが出来ました」
「心配要らぬよ」
エルデネスは微笑み、制帽をさわった。
「余の力が勇者を呼ぶのなら、どの道、避けられんのではないか?もう一つ国が残っているからな」
「ガルノ公国ですか」
「ああ。すんなりとはいかぬだろう」
「まあ、そうでしょうな。……確かにすんなりとは」
ソガークは、ガルノ公国についても調べているようだ。
それは聞かず、エルデネスが、歩き出す。
「女性の元ですか」
「うむ。余に相応しき女性たちの元へ」
ソガークが、頭を下げる。
魔王の昂りは”戦利品”たちが、受ける事になる。
アキは唇を結び、そして、叫ぶ。
「ネオ様、もうやめてください!私が……私が行きます!」
「アキ……!?何を馬鹿な……」
かつかつと、アキが進む。
石畳に足音。ネオが手をあげる。
「待て、やめろ、アキ……!」
だが、アキは、そのゆっくり押しのけた。
ネオがよろめく。その背を掴もうと手を伸ばしたが、負傷の為か、膝をついた。
「教団が、ネオ様が滅ぶなんて耐えられません。私が……私がっ……魔王!」
大粒の涙が、アキの両眼から零れる。アキは、凛としていった。
「行きます!エルデネス!さあ、私を連れて行って!」
「──そうか」
(負けない)
アキは、思う。涙を流しながら、しかし退くことは絶対にしない。魔王を見上げている。
「では……」
と、エルデネスが、右手を上げる。
「”ルーティ”」
◇
回復魔法:ルーティ
相手の傷を癒す
◇
光が、ネオの身体を包み。
彼の傷が、瞬く間に治ってゆく。
「な……これは、回復魔法?」
どういう事だ。ネオが見上げると、こちらを見るアキと、エルデネスの背があった。
「アキ。その眼にやられたよ」
「……眼、ですか?」
「余の城は、君には似合わない」
エルデネスは、振り返る事無く続ける。
「余も君を、余の城に置きたくない。したがって、このまま帰るとする。しかしもし余に楯突くのならば、今宵のように躊躇わないぞ。分かったかね、代表」
「……」
「では」
月が、綺麗だ。そう言いながら、エルデネスは立ち去った。
収納玉内、エルデネスの城。
「さて……アキ。あれは、余と相容れぬ光だ」
「おかげで”干渉”も抑えられたようです」
「ソガーク。聞いていたのか?」
「聞かれていると分かってて言ったのかと」
「勇者かね」エルデネスが言う。
夜更けの城の廊下は、静かに、燭台が揺らめくだけ。
「勇者です。……ネオ教皇代行や、アキと衝突していれば危なかったですが、回避したおかげで、影響を抑えることが出来ました」
「心配要らぬよ」
エルデネスは微笑み、制帽をさわった。
「余の力が勇者を呼ぶのなら、どの道、避けられんのではないか?もう一つ国が残っているからな」
「ガルノ公国ですか」
「ああ。すんなりとはいかぬだろう」
「まあ、そうでしょうな。……確かにすんなりとは」
ソガークは、ガルノ公国についても調べているようだ。
それは聞かず、エルデネスが、歩き出す。
「女性の元ですか」
「うむ。余に相応しき女性たちの元へ」
ソガークが、頭を下げる。
魔王の昂りは”戦利品”たちが、受ける事になる。
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