魔王エルデネス3

葉雲屋

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ガルノ公国の章

1.

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「……二人の元へ、行ってきたの?」

「ああ、言った」

「そして最後に、私の所で寝る、と」

「寝づらいのでな」

「そういうの、気にするのね」

「やる事はやるが」と、エルデネスがカグラに言う。

燭台が、シーツを被る二人を照らしている。

「やる事はやる、って、さらりと言うのね。……けど、三人の中から選ばれているなら嬉しい。王妃争いも私がリード中……って、貴方、王妃は?」

「魔王妃か」

エルデネスは、天井を見上げている。「いない。今も、娶る予定はないな」

その答えに、カグラがちょっと口を尖らせる。

しかし、

(今は──か)

と、思う事にした。

「魔王妃でなくても、子供でも産めば、それなりに遇してくれるわよね」

「無論。約束と対価、だ」

「なら良いです」

カグラは、エルデネスに抱き着いた。

「連れて行って、貴方。私をどこまでも」



翌朝。

エルデネスが玉座に座っていると、ソガークがやってきた。

「毎晩、お楽しみですね」

「と、言いに来たのかね。また魔界から」

「手が空いておりますので」ソガークが、頭を下げる。「魔王様が留守にされていても、平和なものです。皆、帰ってきたときの事を恐れて手を出してきません」

そうそう、ベルジフトが……と、ソガークの話は続く。

エルデネスは頬杖をつき、静かに聞いた。

「ところで、魔王様。いよいよガルノ公国ですね」

「ああ」

「もはや、残された最後の勢力ですが……公国は、存外呑気にやっているようです」

「呑気にか」

魔王の顔が、少し動く。

「公国の技術開発。それしか考えていないようです。変わった国もあるようですな」

「ふむ。……ともかく、言ってみるとしよう」

ソガーク、と、エルデネスが、立ち上がってから言う。

「手出しは無用だぞ」

「無論、公国との戦いにも、戦利品にも手は出しませんよ」

魔王はククと笑い、収納玉をかざした。



ガルノ公国は、大きな島にある。

技術開発が盛んで、沿岸は全て要塞のようだ。砲台などは、撃つ相手がおらずとも、日々改良が続けられている。必要か、ではなくこだわりとして、そうなってゆくらしい。

熱意がひたすら、内に向かっているような公国の一画を、エルデネスが爆破した。

「何だ!?」

と声をあげたのは、技師長のパーナ。短く、煤でくすんだ金髪が、石畳の上を動く。

「パーナ様!」

「ビビ!今の爆発音を聞いたか?」

「はい!何やら、魔王エルデネスらしいです」

ビビは、真っ赤な髪を三つ編みにした、パーナの相棒だ。

その眼は意外にも、怖れではなく、好奇心で輝いている。
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