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エイレン王国の章
4.
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(この国を見るに、王族こそ全て、とは、普段言っておらぬだろう)
雷での黒煙が、痛々しく立ち昇っている。エルデネスは、しばらく待った。
「余の信念は約束と対価……レナンベル、我が宿敵よ。一つ教えてやるから聞くが良い。君の国は刻一刻と喪われている。一秒前の命は、一秒後に悔いようとも戻って来ない。生涯とは選択の連続。責任ある立場で、逡巡は許されない」
「……」
「貴様が迷っている間に、余はエイレンを五度は滅ぼせた。さあ選ぶが良い。聖龍を出さないなら、降伏して跪け」
「国王!」
勇気ある男性が、声をあげる。
「聖龍を!この化物に鉄槌を!」
「そうです、国王!このままでは、私達の家が……」
「ま、待て、皆!」
と叫ぶのは、大臣。
「事はそう単純ではないのだ、陛下は、熟慮しておられる」
「単純だろう!」
と叫んだのは、気の強そうな若者。「勝つか負けるかだ!」
騎士達の一部が、民の方を向く。魔王との緊張だけでなく、民との緊張も増してきた。だがレナンベルの口は堅く閉ざされたままだ。彼の頭には、王女アリスの安否への不安と、エルデネスの圧倒的な力への恐怖が渦巻いていた。
「抵抗」「聖龍」という言葉が、それら渦巻きに飛び込むも、出てこない。失敗すれば今度こそ、全てが終わる。
「確定」させたくない。確定、という重圧に耐えきれず、彼は動けない。
「残念だ、レナンベル」
魔王が、王を睨む。
「王女を奪われ、民を傷つけられたのに”決めるべき”立場の君が立ち尽くすとは。余は帰る。──もはや、勝敗は明らかだろう。噛みしめるが良い、レナンベル、そしてエイレンの民よ」
──ここには、余の敵はいなかったらしい。
と、エルデネスは続け、「もし、望めるなら。次はもう少しましな王になっている事を望むぞ、レナンベル」そう言って、収納玉を取り出した。魔王の姿が、消える。
「卑怯者!」
「馬鹿王!」
二つの声が飛んだ。騎士がすっ飛ぶが、声の主はもう逃げ去っている。
雷での黒煙が、痛々しく立ち昇っている。エルデネスは、しばらく待った。
「余の信念は約束と対価……レナンベル、我が宿敵よ。一つ教えてやるから聞くが良い。君の国は刻一刻と喪われている。一秒前の命は、一秒後に悔いようとも戻って来ない。生涯とは選択の連続。責任ある立場で、逡巡は許されない」
「……」
「貴様が迷っている間に、余はエイレンを五度は滅ぼせた。さあ選ぶが良い。聖龍を出さないなら、降伏して跪け」
「国王!」
勇気ある男性が、声をあげる。
「聖龍を!この化物に鉄槌を!」
「そうです、国王!このままでは、私達の家が……」
「ま、待て、皆!」
と叫ぶのは、大臣。
「事はそう単純ではないのだ、陛下は、熟慮しておられる」
「単純だろう!」
と叫んだのは、気の強そうな若者。「勝つか負けるかだ!」
騎士達の一部が、民の方を向く。魔王との緊張だけでなく、民との緊張も増してきた。だがレナンベルの口は堅く閉ざされたままだ。彼の頭には、王女アリスの安否への不安と、エルデネスの圧倒的な力への恐怖が渦巻いていた。
「抵抗」「聖龍」という言葉が、それら渦巻きに飛び込むも、出てこない。失敗すれば今度こそ、全てが終わる。
「確定」させたくない。確定、という重圧に耐えきれず、彼は動けない。
「残念だ、レナンベル」
魔王が、王を睨む。
「王女を奪われ、民を傷つけられたのに”決めるべき”立場の君が立ち尽くすとは。余は帰る。──もはや、勝敗は明らかだろう。噛みしめるが良い、レナンベル、そしてエイレンの民よ」
──ここには、余の敵はいなかったらしい。
と、エルデネスは続け、「もし、望めるなら。次はもう少しましな王になっている事を望むぞ、レナンベル」そう言って、収納玉を取り出した。魔王の姿が、消える。
「卑怯者!」
「馬鹿王!」
二つの声が飛んだ。騎士がすっ飛ぶが、声の主はもう逃げ去っている。
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