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エイレン王国の章
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「おはよう、アリス。エイレンは……まあ、君の父上は無事だな。良かったら顛末を話してやろうか?」
収納玉内、エルデネス城・謁見の間。
目覚めたアリスの数段上に、魔王が座っている。
「貴方……エルデネス!」
からの数分間のやり取りは、置いておく。結局アリスは、彼の言葉を聞かざるを得ない。
「エイレン王レナンベル。君の父は無事だ。冷たい王だな。余が民を傷つけても、君が囚われていると知っても何もできなかった。……聖龍、だな。あれも出さなかった」
──何もしなかったようだが、彼は”した”という理屈を、君は理解するかね。
と、エルデネスが続ける。
(ただの侵略者じゃない)
と、アリスが思い、一層、身を硬くした。
──民を傷つけられる事を、君が攫われている事を、彼は沈黙の中で了承してしまったのだよ。
(そうかもしれない)
聞いて、そう思ってしまった。決めなければ、事態は動く。となれば、沈黙もまた選択ではないか。
「ッ……それで、それで、貴方は何」
彼女が、声を絞り出す。「エイレンをどうするの。私は、つまり人質?」
「少し違うな。君は余の戦利品だ」
アリスが目を見開く。一歩引いたところで、魔王が「止まれ」というように、掌を前に翳した。
戦利品。
エルデネスはこの侵略戦争で、人間の女性をものにしていくつもりであった。有り体に言えば妾の類である。エルデネスらは魔族と称される。魔族と人間とは遺伝子が似ているらしく、子供ができる。
実際、エルデネス唯一の子供は、人間との子供であった。エイレンの前、侵略戦争を起こす前だが、どこかで巡り合ったらしい。
それはともかくとして、エルデネスは、この戦利品への遇し方についても自分のルールがある。それをアリスに説明した。……王女でも見たことのない黄金、そしてこの城での贅沢、更に、出自であるエイレン王国の永遠の栄華。もっともこの栄華は、「都度黄金を届ける」事で成り立たせるらしいが。
「そ、そんなもの、要らないわ!」
と、彼女が断る。
「勘違いしていないか?アリス。受ける、受けないの話ではない。有無を言わさず”押し付ける”話だ」
魔王は、彼女の反応に覆いかぶせて、
「まずは、君への金塊を。──使い魔よ。エイレン王国へ、続々と黄金を。理由も告げよ。レナンベルが何か望むなら、出来るだけ叶えてやれ。以上だ、抱くぞ、アリス」
そうして、アリスを無理矢理抱き、”魔王の種”を放った。場所は収納玉内、豪華な寝室である。体裁はちゃんとしているが、される方からすれば嫌味だろう。
「ではな、また来るぞ、アリス。楽しむなら楽しめ、恨むなら恨め。それは君の勝手だ」
収納玉内、エルデネス城・謁見の間。
目覚めたアリスの数段上に、魔王が座っている。
「貴方……エルデネス!」
からの数分間のやり取りは、置いておく。結局アリスは、彼の言葉を聞かざるを得ない。
「エイレン王レナンベル。君の父は無事だ。冷たい王だな。余が民を傷つけても、君が囚われていると知っても何もできなかった。……聖龍、だな。あれも出さなかった」
──何もしなかったようだが、彼は”した”という理屈を、君は理解するかね。
と、エルデネスが続ける。
(ただの侵略者じゃない)
と、アリスが思い、一層、身を硬くした。
──民を傷つけられる事を、君が攫われている事を、彼は沈黙の中で了承してしまったのだよ。
(そうかもしれない)
聞いて、そう思ってしまった。決めなければ、事態は動く。となれば、沈黙もまた選択ではないか。
「ッ……それで、それで、貴方は何」
彼女が、声を絞り出す。「エイレンをどうするの。私は、つまり人質?」
「少し違うな。君は余の戦利品だ」
アリスが目を見開く。一歩引いたところで、魔王が「止まれ」というように、掌を前に翳した。
戦利品。
エルデネスはこの侵略戦争で、人間の女性をものにしていくつもりであった。有り体に言えば妾の類である。エルデネスらは魔族と称される。魔族と人間とは遺伝子が似ているらしく、子供ができる。
実際、エルデネス唯一の子供は、人間との子供であった。エイレンの前、侵略戦争を起こす前だが、どこかで巡り合ったらしい。
それはともかくとして、エルデネスは、この戦利品への遇し方についても自分のルールがある。それをアリスに説明した。……王女でも見たことのない黄金、そしてこの城での贅沢、更に、出自であるエイレン王国の永遠の栄華。もっともこの栄華は、「都度黄金を届ける」事で成り立たせるらしいが。
「そ、そんなもの、要らないわ!」
と、彼女が断る。
「勘違いしていないか?アリス。受ける、受けないの話ではない。有無を言わさず”押し付ける”話だ」
魔王は、彼女の反応に覆いかぶせて、
「まずは、君への金塊を。──使い魔よ。エイレン王国へ、続々と黄金を。理由も告げよ。レナンベルが何か望むなら、出来るだけ叶えてやれ。以上だ、抱くぞ、アリス」
そうして、アリスを無理矢理抱き、”魔王の種”を放った。場所は収納玉内、豪華な寝室である。体裁はちゃんとしているが、される方からすれば嫌味だろう。
「ではな、また来るぞ、アリス。楽しむなら楽しめ、恨むなら恨め。それは君の勝手だ」
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