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アルーレ帝国の章
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アリスの吐息を聞きながら、エルデネスは部屋を出た。
次の目的地は、アルーレ帝国。彼が収納玉を取り出せば、また惨劇が始まるのだ。帝国一の要塞に、エルデネスは狙いをつけた。
しかし、企みは、彼の思い付きで変更される。とにかく、まずは──。アルーレは、砂漠の中で繫栄してきた。
「あれは……」
「まさか、貴様!」
「いかにも、余が、魔王エルデネス」
帝国は剣と魔法を使う。武官として、剣将軍、魔将軍という二つの位があった。剣将軍はザヒドという壮年の男。魔将軍はカグラという、赤髪の女性。
(魔王エルデネス。どれほどの男かしら)
「アルーレを舐めるな!」
と、思考と叫びを、それぞれする。城壁の上でカグラが杖を構え、ザヒドの剣に魔力を込める。
それは十字の斬撃となり、エルデネスに放たれた。合体技”バルデロック”。橙色の強力なエネルギーが、魔王に迫る。
「──ふむ、良い事を思いついたぞ」
砂が、爆ぜた。灼熱の空中に舞い上がり、やがて、容赦なく降り注ぐ。砂が、砂に還る。そこにエルデネスの姿はない。
「何処へ行った?やったのか?」
ザヒドの隣で、カグラは目を細めた。
このエルデネスの思い付きについては、分からない。単なる遊び心だったのかもしれないし、エイレンやレナンベル国王を見て、何かが燻ったのかもしれない。
とにかく魔王は「サハル」と「ラザド」という二つの町を標的にした。砂上に降り立つと、町の住人全てに”ヒプノ”をかけた。これは、術者であるエルデネスが解除しないと、ひたすらに眠りこけてしまう。
眠りの病が、帝国に出現した。
(フフ、こうなれば、泥棒や盗賊が喜びそうだが……さて、アルーレにそのたぐいは居るか)
魔王は、一旦姿を消した。枯れ木に茸が映える所でも観察するような様子であった。
果たして、いた。帝国がというより、どこの国でもそうであろう。人間がいるかぎり、こういう者達は出る。
二つの町は眠りっぱなし。機能が止まり、経済が止まり、治安は悪化する。人々が起きないという事で、国内に潜む悪人たちが町を荒らし始めた。
次の目的地は、アルーレ帝国。彼が収納玉を取り出せば、また惨劇が始まるのだ。帝国一の要塞に、エルデネスは狙いをつけた。
しかし、企みは、彼の思い付きで変更される。とにかく、まずは──。アルーレは、砂漠の中で繫栄してきた。
「あれは……」
「まさか、貴様!」
「いかにも、余が、魔王エルデネス」
帝国は剣と魔法を使う。武官として、剣将軍、魔将軍という二つの位があった。剣将軍はザヒドという壮年の男。魔将軍はカグラという、赤髪の女性。
(魔王エルデネス。どれほどの男かしら)
「アルーレを舐めるな!」
と、思考と叫びを、それぞれする。城壁の上でカグラが杖を構え、ザヒドの剣に魔力を込める。
それは十字の斬撃となり、エルデネスに放たれた。合体技”バルデロック”。橙色の強力なエネルギーが、魔王に迫る。
「──ふむ、良い事を思いついたぞ」
砂が、爆ぜた。灼熱の空中に舞い上がり、やがて、容赦なく降り注ぐ。砂が、砂に還る。そこにエルデネスの姿はない。
「何処へ行った?やったのか?」
ザヒドの隣で、カグラは目を細めた。
このエルデネスの思い付きについては、分からない。単なる遊び心だったのかもしれないし、エイレンやレナンベル国王を見て、何かが燻ったのかもしれない。
とにかく魔王は「サハル」と「ラザド」という二つの町を標的にした。砂上に降り立つと、町の住人全てに”ヒプノ”をかけた。これは、術者であるエルデネスが解除しないと、ひたすらに眠りこけてしまう。
眠りの病が、帝国に出現した。
(フフ、こうなれば、泥棒や盗賊が喜びそうだが……さて、アルーレにそのたぐいは居るか)
魔王は、一旦姿を消した。枯れ木に茸が映える所でも観察するような様子であった。
果たして、いた。帝国がというより、どこの国でもそうであろう。人間がいるかぎり、こういう者達は出る。
二つの町は眠りっぱなし。機能が止まり、経済が止まり、治安は悪化する。人々が起きないという事で、国内に潜む悪人たちが町を荒らし始めた。
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