魔王エルデネス2

葉雲屋

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ギルグラド王国の章

1.

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ギルグラド王国。
騎士団長フォンスに、王女シャンディア。
騎士道を掲げ、強く繫栄してきた国。二人は主従でありながら想い合っていた。シャンディアの父、国王レオルも、二人の結婚を認めようとしていた。
……ところへ。
制帽に、軍服。黒い外套を羽織った、一人の男が現れる。
王都近郊、中央城塞。二人が城塞の前に立つと、その男は、声を張って言った。

「ご機嫌よう、ギルグラド王国の諸君。突然だが通告だ。降伏しろ──でなくば、この国は、魔王の序曲を歌う事になるぞ」

魔王の襲来に、ギルグラドは臨戦態勢。
フォンスが、城塞の前で言い返す。

「ふざけるな!妖しき魔物め!貴様にギルグラドは渡すものか!」

フォンスは、短い金髪に、兜を被り、剣を上げた。城塞上下の弓兵が、構える。統制の取れた兵士たちが、盾と槍を構える。
シャンディアも、豊かな銀髪を揺らしながら言う。

「去りなさい、魔物!でなくば、ギルグラドの魂が貴方を突き刺しますよ!」

というが──心の奥では、エルデネスの存在感に圧されてもいる。この、少し背の高いぐらいの、一人に。
魔王は、立ったまま、しかし退くことはせずにいる。

「ええい!弓兵、放て!槍兵、攻撃準備!」

フォンスが焦れた。制帽のの、下の眼が、暗く光る。
シャンディアが、胸の前で手を組み、祈る。

「我らに光の加護を……”ヴェール”」

フォンスはじめ、兵士、弓兵たちの身体が、淡い光に包まれる。それは番えた矢にうつり、放たれるままに、エルデネスに迫った。
エルデネスの右手が、左から右へ。

「”バッシュ”」


反射魔法:バッシュ
攻撃を跳ね返す。基本的な魔法だが、術者の力量に委ねられるため、エルデネスが使えば最強の性能になる。


瞬間、半透明な膜が、エルデネスの前に現れた。

「そんな!」

とシャンディアが言う中で、放たれた矢が、返って来る。
城塞に当たり、土に刺さり、木に刺さり、人にも刺さり、ギルグラドの軍勢が怯む。

「"ゼウス”」


雷魔法:ゼウス
エルデネスが得意とする、雷の魔法。神の如き雷が敵を襲う。


エルデネスが、片手を上げている。
瞬間、空が真っ黒になり、絶大な雷魔法が、城塞に降り注いだ。

「ぐわぁ!」

「ああっ!」

と、フォンスがよろめき、シャンディアが、つい彼に掴まる。
フォンスは、そんなシャンディアをかばうように蹲った。岩が飛び、人が飛ぶ。大地震が起こったかのように、城塞が鳴動する。

「如何かな?ギルグラドの騎士達よ」

「貴様……」

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