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ギルグラド王国の章
2.
しおりを挟むフォンスは、周囲を見た。
まだ、自分たちのように、戦える兵士たちがいる。
「突撃!魔王を討ち取れ!」
「”バッシュ”」
が、ギルグラドの、優秀な兵士たちも、魔王の障壁に跳ね返される。
人が飛び、槍や盾が舞い、その中に、エルデネスが立っている。
「どうした?そこの、騎士団長らしき男」
とエルデネス、何とか立ち上がったフォンスを指さす。
「もう終わりか?終わりならば、その隣の娘で愉しむぞ?男としてかかってくるがよい」
「貴様……!」
「やめて、フォンス!」
「やめられるかッ!」
フォンスは紅潮し、エルデネスに向かって叫んだ。
「侮辱するな、下郎!シャンディアは渡さん!」
自慢の長剣を、引き抜き、魔王に突進する。
シャンディアはその後姿を見、想いと、悲しさで、よくわからなくなっていた。
「せめて……」
と祈り、フォンスに、強化魔法をかける。
「ほう、騎士団長。見上げた心意気だ。面白い、相手してやろう」
エルデネス、腰に提げた軍刀を抜く。
〇
武器:軍刀
エルデネスの近接武器。お気に入りの一振りだが、特殊能力などはない。
〇
フォンスが、縦振りを放つ。
が、エルデネスの軍刀が、受け止める。
「なっ!?貴様、剣も!?」
「次は?」
「舐めるな!」
というが、受け止めたエルデネスの方が、ものすごい力だ。
フォンスの剣を、気を抜けば、押し返そうとしてくる。──ならば、と、フォンスは、わざと大きく剣を振り上げ、拮抗状態を解除し、
「うおぉ!」
横振りに切り替えた。
が、エルデネスは、素早くフォンスの左側に回り込むと。軍刀の峰で、彼の背中を打った。
「ぐあ……!」
「フォンス!」
口が開き、前に吹っ飛ぶ。
息を吸い、吐いた時。フォンスの眼前には、軍刀があった。
「フォンス!」
「騎士よ」
「止めてください!彼を殺さないで!」
「……」
シャンディアが、走ってくる。
「殺せ……!」
フォンスが、歯ぎしりしながら言った。
エルデネスは、軍刀を構えたまま、シャンディアが来るに任せ、彼女が、フォンスの身体を支えるのを待った。
「彼は殺せ、というが。何か言う事があるか?女性よ」
シャンディアが、絶望の中、息を吸って言う。その様子には、戦いの中で高潔さを保つギルグラドの王女らしさがあった。
「……今更ですが、私は、この国の女王シャンディア。彼は騎士団長のフォンス」
王女が、大きな青い目を揺らしながら、言う。
「お願いです、フォンスを、この国をこれ以上傷つけないで。私が……私にできる事なら、何でもしますから」
「ふむ、何でもか」
「姫様!」
「良いの」というふうに、シャンディアは頷いた。そんな目で見られると、フォンスも口ごもってしまう。
「王女、しかし、いや、まだ俺は……!」
「フォンス」
「好きでした」と、シャンディアは短く言った。
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