魔王エルデネス2

葉雲屋

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ハバト王国の章

3.

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「次は?」

と、エルデネスが言う。もはや、王女と王しかいない。

「……ハバトは、まだ、終わらない!」

ラルザが、短剣を抜く。
眼を鋭く、唇を、一というより点に結び、魔王へと向かってゆく。

「見上げた王女だ。気に入ったぞ。君も余のとなってもらおう」

?」

軍刀と短剣が、火花を散らす。

「気に入ったですって!?私はものじゃないわ!ハバトの王女よ!」

二撃、三撃。短剣が押す。
しかし──その眼に気付いたのは、ラルザではなく、ハークスだった。

「ラルザ!待て!」

「遅い」

誘ったのだ。
短剣が、打ち落とされる。そのまま魔王は、

「”ヒプノ”そして”収納玉”だ、王女。しかし皆、と呼ぶことに怒るな……言葉のアヤという奴ではないか?……まあいい、国王よ。貴様はどうする?大人しく首を刎ねられるか、それとも一戦するかね?王女は事は約束するが?」

ハークスは、消えていった王女の姿を見、エルデネスの言葉を聞いて、みるみる、顔を紅潮させた。
こめかみに、筋が浮かぶ。

「き……貴様!どこまで、どこまで!このハバトを……!」

と、玉座の横に立てかけてあった剣を、鞘ぐるみ持つ。柄に、手をかけ、

「落ち着いて抜け」

「言われずとも!」

白い切っ先が、エルデネスの前に現れる。
国王のマントが翻り、ハークスの声が響く。それは勇ましく、魔王を捉えた。
だが、現実は非情なものだ。魔王の前では、非情さしかない。10秒後ほどには、エルデネスの軍刀が、ハークスの腹を貫いていた。

「き……貴様……!ハバトは……終わりか……!」

「ああ、終わりだ。しかし、始まりでもある」

エルデネスが、刀を引き抜く。ハークスが、剣を握り締めたまま、倒れる。
ヒュッ、と、一閃。ハークスの首が飛び、ハバトの国が死ぬ。
魔王は、踵を返し、歩いてみた。王の死体、破裂した血肉。斬り伏せた衛兵たちの死体が、彼の左右に転がり続ける。
門を出たところで、彼は満足したらしい。収納玉を、取り出した。





「目覚めたかね」

という声を、初めに聞いた。動く手が、絨毯に触れる。ハッとして、ラルザが上体を起こすと、そこは謁見の間らしき一室だった。
数段上の玉座に、魔王が座っている。

「エルデネス!」

王女が、瞬時に立ち上がる。

「おはよう、賢明なる王女、ラーニャよ。さて……君の言いたい事を言うがいい。まず、聞こう」

「言いたい事……?」

ラルザは、意味を掴み損ねたが、やがて、出るままに口を動かし始めた。

「ここはどこ!?貴方、何をした!?王国は、父上は!?」
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