魔王エルデネス2

葉雲屋

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トーエルフの章

4.

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「エルデネス。私は我々の信念を、貴様が聞きやすいように曲げたりはしない」

ヒエレに、魔力が溜まる。
戦闘準備らしい。それはヒエレの身体から、緑色のエネルギーを立ち昇らせるほどだ。

「魔王。貴様の所業は、森の敵だ。トーエルフは森と調和し、森と共に生きている。トーエルフの敵は森の敵。我々は森と共に生きて、森と共に戦う。以上だ」

「魔王、お前……森を利用だと?ふざけるなよ……!」

と、ミレイですら、反発する。
ヒエレの魔力、自然魔法だろう──と、エルデネスは見抜き、見抜きながら、しかしちょっと俯いて、言う。

「ああ、そうか、王よ。調和というか。トーエルフの所業、日々の営みが”森の調和”の一部だというのだな?」

「森にエルフが住むのは構わぬ」と、エルデネスは続ける。

「生きるために森を利用するのも良かろう。しかしそれを”森の調和”にまとめるのだな?散歩していた余を”調和を乱す”とするのだな?──これが最後だ、キング・ヒエレ。頷くか、意見を改めるか、どちらだ」

「改めぬ」

「そうか!」

魔王が、魔力を溜める。
ヒエレは、目を疑った。ヒエレもすごいが……エルデネスの白い魔力は、それ自体が周囲を吹き飛ばすかのように、激流となって巻き起こる。

「なッ……魔王、お前!」

と、ミレイが、金髪を魔力にはためかせて、振り返ったほどだ。

「ヒエレ。ならば余は、余の思う”調和”を始めるとしよう。……森をタテに偽りの正義を騙る不届き者どもめ!せめて土に還り、木々を育むが良い!」

「ぐ……皆!」

と、キング・ヒエレが声を張る。

「ミレイもだ!集中しろ!こうなればフォレスト・フェニックスを……」

「”レイチェル”!」


封印魔法:レイチェル
エルデネスが編み出した魔法。範囲内の、術者が指定した力を封印する。


「なッ!?」

ヒエレと、ミレイに、共通のイメージが巻き起こる。
召喚獣が使えない──まるで押し込められたように、フォレスト・フェニックスへの魔力送りが、できない。
エルデネスの手が伸び、ミレイを投げ飛ばす。彼女の身体が真横に飛ぶ。木の幹に当たって、ミレイは呻いた。目を開けると、

「”ベノム・ボム”」

全てが──エルフ達が、爆ぜていた。
土に還す。エルデネスが、思う通りにそれをやる。周囲のエルフ達が死に、ヒエレが、それを見遣る。魔王の魔力が流れ込み、ヒエレの大きな体も、爆ぜる。血肉が飛び、緑の景色に散る。
それは。その景色は──残酷ながら。

「土に還れ」

ミレイを放っておき、エルデネスが、踵を返す。

「やはり、人間の女だな」

ミレイは、動けなかった。エルデネスは、来た道を引き返し、”トーエルフの木”から十分に離れたところで、収納玉を使用した。
憂さ晴らしに、人間の女二人を、抱くつもりでいる。
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