魔王エルデネス2

葉雲屋

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トーエルフの章

3.

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「誰が貴様に……ッ!」

と、ミレイは言いかけたが、軍刀を近付けられると、従うしかない。

(我らが王、キング・ヒエレ様に任せる他ない)

ミレイは、更に思う。──魔王の戯言も、王が、打ち砕いてくれるだろう。





トーエルフの大樹。
と、そのは呼ばれる。この森で最も古く、最も大きな樹。エルフたちは、そこを拠点にしていた。
トーエルフの指導者、キング・ヒエレも、エルフ版「トーエルフの大樹」といえるだろう。最も年を取り、しかし、身体は大きく、皮膚は堅い。まるで、森とエルフの混血児。

「しかし、か」

キング・ヒエレ達の前に、エルデネスとミレイ。
トーエルフの大樹が、ヒエレ達の背後にある。ヒエレの左右にエルフたち。剣を持ち、弓を持ち、杖を構え、エルデネスを睨みつける。

「認めよ、ミレイ。トーエルフは勢力ではない。キングがおり、領地に森を持っただけの国であると」

「……キングは、我々がそう呼んでいるだけだ」

「そうか」と、エルデネスは、ミレイに軍刀をつきつけたまま言う。ミレイは、三歩ほど、エルデネスの左前だ。魔王は右手に持った軍刀を、左側にもってきて、ミレイの首を狙っている。

「キング・ヒエレ。先刻の戦いを、貴様は知っている筈だ。余は散歩していただけだ。君の配下は森を操り、木々に矢を突き立てた、それでも余の方が森の敵か?考えを聞きたい」

何か言いかけたミレイを、魔王の軍刀が制する。
キング・ヒエレはまず「配下ではない」と言った。

「私に配下は居ない。私含め、トーエルフの皆が、森の配下だ」

「成程」

「魔王エルデネス。確かに……先刻の戦いを私は知っている。その前の、貴様の行動も。貴様が散歩と称し、森に足を踏み入れた時点で、我々は警戒せざるを得なかった。そして、木々を傷つけたことは、我々の失策」

「キング・ヒエレ様!そんな……!」

ミレイの言葉に反応し、冷たい軍刀が、首にあてられる。やはり、ミレイは黙るしかない。

「しかし」と、ヒエレは言う。

「エルデネス。しかし、お前はエルフ達を殺し、ミレイをそうやって脅す。──森の敵以外の何者でもなかろう。トーエルフは森の一部だ。傷つけるならば、森は黙らぬ」

「それは、森が言ったのかね?」

「我々の意思は森の意思」ヒエレは、譲らない。

エルデネスは、鼻から息を吐いた。

「キング・ヒエレ。王よ……貴様に信念があるなら、エルフとしての誇りがあるなら、改めるが良い。余は君達”エルフの敵”であって、”森の敵”ではない。余は確かに君達の仲間を殺し、ミレイに刀を突きつけている。敵に違いない。しかし”森の敵”ではない。貴様らの大義名分のためにあくまで森を利用するか?それとも言い直して信念を守るか?答えよ」

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