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サルベネス王国の章
5.
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話し合いは、城でと決まった。
エルデネスが、歩く。兵士たちが、彼を警戒しながら、遠巻きに、護衛だか、護送だか分からないような感じで、一緒に歩く。
兵士たちの外側には、サルベネスの民たちがいる。見に来たのだ。エルデネスは、それを見ようともしない。
ただ、砂漠の、水色の空にそびえるサルベネス城だけを見て、歩く。
エルデネスの後ろには、怒りを抑えながら歩くルザミネと、しおしお歩くロンドの姿があった。
皆、サルベネス国王が指定した、城内会議室――を目指していた。そこは、城の一階にある。肌色の石の中に作ったプール。庭のそれを、顔を横に向けたら見ることが出来る部屋。豪奢な、広い室内に、レースつきの大テーブル。それは細長く、周囲に椅子が並べられている。
片方の短辺に、エルデネス。
もう片方に座ったのは、日焼けした肌に、長い白髪を持つ、痩せた老人。サルベネス国王だ。
座っているのは、彼ら二人だけ。ルザミネ、ロンドはじめ、サルベネス国家の重鎮たちが、辺りを取り囲んでいる。
エルデネスは、ゆったりと話し始めた。
「今、参った。……サルベネス国王。余が、魔王エルデネスだ」
「サルベネス国王、レメノス、だ」
「レメノス。先刻の戦いの、結果。知らぬわけではなかろう。余は君に勧告する。降伏か、抵抗か」
「先に対価を説明しよう」と、エルデネスは続ける。
「降伏ならば、この国は余の傘下として、永遠の栄華を約束しよう。――黄金で払う。ただしそこの、ルザミネという女性は余が戦利品として貰ってゆく。あとは条件として、今後余に逆らわない事、だな」
――抵抗するならば、改めて、この国を徹底的に破壊する。
と、エルデネスが言い終わる。
「戦利品だと!?」と口を開いたのは、ルザミネだ。
「ふざけるな、貴様!戦利品として持ち帰るだと!?私を愚弄するつもりか!」
「戦利品とは、勝ってから戴く、というものだ。先刻、君は、そこの男と共に余に負けなかったかね?何なら今からかかってきたまえ。余の勝ち、を教え込んでやろう」
「……ッ」
「陛下の、御前だ」と、ルザミネが、悔しそうに言う。
エルデネスが、歩く。兵士たちが、彼を警戒しながら、遠巻きに、護衛だか、護送だか分からないような感じで、一緒に歩く。
兵士たちの外側には、サルベネスの民たちがいる。見に来たのだ。エルデネスは、それを見ようともしない。
ただ、砂漠の、水色の空にそびえるサルベネス城だけを見て、歩く。
エルデネスの後ろには、怒りを抑えながら歩くルザミネと、しおしお歩くロンドの姿があった。
皆、サルベネス国王が指定した、城内会議室――を目指していた。そこは、城の一階にある。肌色の石の中に作ったプール。庭のそれを、顔を横に向けたら見ることが出来る部屋。豪奢な、広い室内に、レースつきの大テーブル。それは細長く、周囲に椅子が並べられている。
片方の短辺に、エルデネス。
もう片方に座ったのは、日焼けした肌に、長い白髪を持つ、痩せた老人。サルベネス国王だ。
座っているのは、彼ら二人だけ。ルザミネ、ロンドはじめ、サルベネス国家の重鎮たちが、辺りを取り囲んでいる。
エルデネスは、ゆったりと話し始めた。
「今、参った。……サルベネス国王。余が、魔王エルデネスだ」
「サルベネス国王、レメノス、だ」
「レメノス。先刻の戦いの、結果。知らぬわけではなかろう。余は君に勧告する。降伏か、抵抗か」
「先に対価を説明しよう」と、エルデネスは続ける。
「降伏ならば、この国は余の傘下として、永遠の栄華を約束しよう。――黄金で払う。ただしそこの、ルザミネという女性は余が戦利品として貰ってゆく。あとは条件として、今後余に逆らわない事、だな」
――抵抗するならば、改めて、この国を徹底的に破壊する。
と、エルデネスが言い終わる。
「戦利品だと!?」と口を開いたのは、ルザミネだ。
「ふざけるな、貴様!戦利品として持ち帰るだと!?私を愚弄するつもりか!」
「戦利品とは、勝ってから戴く、というものだ。先刻、君は、そこの男と共に余に負けなかったかね?何なら今からかかってきたまえ。余の勝ち、を教え込んでやろう」
「……ッ」
「陛下の、御前だ」と、ルザミネが、悔しそうに言う。
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※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
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※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
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