魔王エルデネス

フィアス連邦の章

4.

――数日後。

「ふん」

町に、ハゲタカが集っている。
まともな人間は居なくなった。野良犬が来るか、盗賊、死体漁りなどが、時折訪れるだけ。
彼は片付けようともしない。
ただ、あるがままに、破壊したものを、破壊したままに置いている。

「そういえば」

と、エルデネスが言う。
夕方になっていた。地平線に近い日差しが、室内に影をつくる。
そのままに、椅子に座るエルデネスの身体を、斜めに立ち割り、上半分を黒く塗りつぶしていた。

「人間の物語では、魔王は勇者に倒されるものらしいが」

言って、黒の中で、ク、と笑った。

「余にも、現れるものかね。――まあ、強ければ、倒れるのも悪くない」

建物の外で、満足したハゲタカが、一羽飛び去った。
エルデネスが指を組む。息を吐き、背もたれに沈んだ。