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1巻 3章~エレノールと凍りオオカミと導術と
賑やかすぎるパーティー~Floating Disc
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「相棒。大分にぎやかになってきたじゃねぇか! やっぱ旅は靴ずれ、世は情けねぇってか」
交渉事なので黙って聞いていたのか、難しい話に面倒くさかったのかは分からないが、話が終わってから俺の頭の上に乗り、変なテンションのグリューン。
ちょっと待て、その言葉自体完全に間違ってないか……それを言うなら『旅は道連れ、世は情け』だろう。
「なによ! ちょっとくらい胸が大きいのがなんなのよ。レンジさんも鼻の下伸ばしちゃって。確かにわたしと比べたら大きいけど。いやでも……」
まだこだわっているなフィオナ。いつもの丁寧さが消えてるぞ。フィオナの意外な一面を知ったな。少なくとも怒らせちゃいけない相手なのは分かった。
「全くお前たちは……このパーティーに居ると自分の常識が正しいのか一瞬分からなくなるぞ。レンジもふざけているのか、真剣なのかはっきりしろ」
ため息をつきながら、ガルムが至極もっともな意見を言う。その通りだとは思う。だが俺は反省をしないぞ。
「交渉成立と考えていいのね。良かったわ。これであたしの目的も達成できるし、キミ達もやりやすくなるし。友好的な合意ということで」
座っていたエレノールが立ち上がる。俺達は腹ごしらえもしっかりと済み、荷物を再度まとめると洞窟を後にする。
ちなみにガルムが作ってくれた凍り狼の焼き肉は、『持続保持』の魔法をかけて俺のリュックの中へ仕舞う。こんな旨い物を残していくなんて勿体ない。
魔法を唱えた時に、エレノールの興味津々な眼差しが痛いほどの俺に突き刺さってきたが構うもんか。どうせこの先嫌でも見せる事になるんだしな。ガルムが苦々し気な表情をしていたが、気にしない事にする。
外に出るとすぐに、エレノールが立ち止まりなにごとか呟く。持っている黒色の杖を構えて、力を込める様な仕草をする。
『小さき大気の猛者シルフィよ。その力を我の前に示せ、浮かぶ円盤』
「おお。新しい導術か! やっぱりカッコいい……」
エレノールの足元に空気の渦のような、圧縮された見えにくい半径1メートルくらいの円盤状のもの。それがあっという間に出現する。エレノールは「よっ」という小さな声を出して、その円盤の上に乗る。滑るように雪の少し上を円盤に乗って滑空していく。
「あ。それ楽そうでいいなぁ」
俺がつぶやく。ガルムはそういったものに慣れているようで特に興味は示さない。フィオナは立ち止まって少しびっくりしたような表情を見せている。
「エレノールは空とかも飛べるのか? 」
俺は、アニメの中で高速で飛行する魔法使いの姿を想像しながら聞いている。
「あら、導術が珍しい? 王都だとそこまで奇異な存在でもないとは思っていたけど」
はぐらかす様に言うエレノール。王都だと割と一般的な光景なのか? それにしてはフィオナが驚いていたような気がする。
「空を飛べるのかと言われるなら答えはイエスよ。今使った導術とは違う呪文で『飛行』という呪文があるわ。今あたしが乗っているコレは、大気の精霊にお願いして、地面に沿って少し浮きながら進む、小さな円盤を作ってもらっただけよ」
色々な呪文があるんだな。まさに俺の想像通りの魔法使いが『導術士』ってやつなのか。
「レンジ君はやっぱり不思議ね。導術を面白い物って感覚で見るヒトってあんまりいないのよ。大抵は畏怖や崇拝、果ては変わり者のような見方が一般的ね」
「そんなもんなのか。俺にとっては新鮮で面白そうってイメージになっちゃうんだけどな。その円盤って、街中で使うと楽そうだよな。あ、そうか、それより空を飛べばいいのか。いろいろ出来そうでいいなぁ」
俺が見たままの感想をエレノールにぶつけると、彼女は困ったような表情で答えてくれる。
「この呪文もそうだけど、空を飛ぶとなると更に高い集中力が必要なの。だから簡単に街中で使える代物でもないのよ。目立っちゃって面倒くさいしね。特に旅先では何が起こるかも分からないし、導術士は魔力を温存するのが常だから、余計な呪文を唱えないものよ」
ああ、なるほどな。そういうもんなのね。理解したけど、その余計な呪文を唱えて滑空しているのがエレノールなので説得力が無いんだよな。いいんだけどよ。
すると、グリューンが面白そうに俺からエレノールの乗っている円盤に移ろうと飛んだのが見えた。しかしエレノールの足元に立とうとして、なぜか円盤には乗れずにエレノールの足にしがみつくグリューン。どうなってんだ?
「あたしだけしか乗れないわ。今回のものは、そういう仕組みにしてあるの」
へぇ、そんなこともできるんだ。学問から発達したとかガルムが言っていたよな。俺にはよく分からないがなにかすごいって事だけは分かる。
エレノールにしがみつくグリューンを見たからか、エレノールの肩に乗っていた優雅な猫が嫌そうに「ミャアミャア」と爪を立てる。ほら、グリューン嫌がられてるぞ。
「ミンミ、よしよし。大丈夫よ。グリューン君、ちょっとうちのミンミが気にしちゃうから、レンジ君の傍に戻ってくれないかな」
ちぇっ……という表情をして、俺の肩の上に戻るグリューン。
「しかしフィーム語を話す使い魔なんて。びっくりしたわ。どうなっているの。さっき唱えた魔法といい、大きな魔力といい……興味が尽きないわ。レンジ君」
う。やはりそう来ましたか。俺にじゃない、グリューンや包丁を探るように見る眼差しに気付いていたさ。さすがに伝説の包丁とか流れ人とか言う訳にはいかない。
ガルムが俺を細い目で睨んでいるのが見えた。
だよな。大丈夫、分かっている。
「答えないならそれでもいいわ。詮索しすぎるのも協力関係にひびを入れてしまうかもしれないから」
興味を無くしたというよりも、一旦は引き下がったという感じだな。フィオナの視線もさっきから痛いし、なんか針の筵にいる気分だぞ。
✛ ✛ ✛ ✛ ✛ ✛ ✛
こちらの投稿で1巻の3章は終了です。
明日から1巻4章が始まります。流石に1日2回の投稿だとお届けできるペースが早いですね!
やっとパーティーの仲間が全員出揃って、書く方も楽しく書いています。
特に今回から出てきたエレノールは私の一推しキャラでもあります。
4人と1匹の掛け合いを今後もお楽しみください。
明日より、物語はいよいよ聖なる山へ移ります。
交渉事なので黙って聞いていたのか、難しい話に面倒くさかったのかは分からないが、話が終わってから俺の頭の上に乗り、変なテンションのグリューン。
ちょっと待て、その言葉自体完全に間違ってないか……それを言うなら『旅は道連れ、世は情け』だろう。
「なによ! ちょっとくらい胸が大きいのがなんなのよ。レンジさんも鼻の下伸ばしちゃって。確かにわたしと比べたら大きいけど。いやでも……」
まだこだわっているなフィオナ。いつもの丁寧さが消えてるぞ。フィオナの意外な一面を知ったな。少なくとも怒らせちゃいけない相手なのは分かった。
「全くお前たちは……このパーティーに居ると自分の常識が正しいのか一瞬分からなくなるぞ。レンジもふざけているのか、真剣なのかはっきりしろ」
ため息をつきながら、ガルムが至極もっともな意見を言う。その通りだとは思う。だが俺は反省をしないぞ。
「交渉成立と考えていいのね。良かったわ。これであたしの目的も達成できるし、キミ達もやりやすくなるし。友好的な合意ということで」
座っていたエレノールが立ち上がる。俺達は腹ごしらえもしっかりと済み、荷物を再度まとめると洞窟を後にする。
ちなみにガルムが作ってくれた凍り狼の焼き肉は、『持続保持』の魔法をかけて俺のリュックの中へ仕舞う。こんな旨い物を残していくなんて勿体ない。
魔法を唱えた時に、エレノールの興味津々な眼差しが痛いほどの俺に突き刺さってきたが構うもんか。どうせこの先嫌でも見せる事になるんだしな。ガルムが苦々し気な表情をしていたが、気にしない事にする。
外に出るとすぐに、エレノールが立ち止まりなにごとか呟く。持っている黒色の杖を構えて、力を込める様な仕草をする。
『小さき大気の猛者シルフィよ。その力を我の前に示せ、浮かぶ円盤』
「おお。新しい導術か! やっぱりカッコいい……」
エレノールの足元に空気の渦のような、圧縮された見えにくい半径1メートルくらいの円盤状のもの。それがあっという間に出現する。エレノールは「よっ」という小さな声を出して、その円盤の上に乗る。滑るように雪の少し上を円盤に乗って滑空していく。
「あ。それ楽そうでいいなぁ」
俺がつぶやく。ガルムはそういったものに慣れているようで特に興味は示さない。フィオナは立ち止まって少しびっくりしたような表情を見せている。
「エレノールは空とかも飛べるのか? 」
俺は、アニメの中で高速で飛行する魔法使いの姿を想像しながら聞いている。
「あら、導術が珍しい? 王都だとそこまで奇異な存在でもないとは思っていたけど」
はぐらかす様に言うエレノール。王都だと割と一般的な光景なのか? それにしてはフィオナが驚いていたような気がする。
「空を飛べるのかと言われるなら答えはイエスよ。今使った導術とは違う呪文で『飛行』という呪文があるわ。今あたしが乗っているコレは、大気の精霊にお願いして、地面に沿って少し浮きながら進む、小さな円盤を作ってもらっただけよ」
色々な呪文があるんだな。まさに俺の想像通りの魔法使いが『導術士』ってやつなのか。
「レンジ君はやっぱり不思議ね。導術を面白い物って感覚で見るヒトってあんまりいないのよ。大抵は畏怖や崇拝、果ては変わり者のような見方が一般的ね」
「そんなもんなのか。俺にとっては新鮮で面白そうってイメージになっちゃうんだけどな。その円盤って、街中で使うと楽そうだよな。あ、そうか、それより空を飛べばいいのか。いろいろ出来そうでいいなぁ」
俺が見たままの感想をエレノールにぶつけると、彼女は困ったような表情で答えてくれる。
「この呪文もそうだけど、空を飛ぶとなると更に高い集中力が必要なの。だから簡単に街中で使える代物でもないのよ。目立っちゃって面倒くさいしね。特に旅先では何が起こるかも分からないし、導術士は魔力を温存するのが常だから、余計な呪文を唱えないものよ」
ああ、なるほどな。そういうもんなのね。理解したけど、その余計な呪文を唱えて滑空しているのがエレノールなので説得力が無いんだよな。いいんだけどよ。
すると、グリューンが面白そうに俺からエレノールの乗っている円盤に移ろうと飛んだのが見えた。しかしエレノールの足元に立とうとして、なぜか円盤には乗れずにエレノールの足にしがみつくグリューン。どうなってんだ?
「あたしだけしか乗れないわ。今回のものは、そういう仕組みにしてあるの」
へぇ、そんなこともできるんだ。学問から発達したとかガルムが言っていたよな。俺にはよく分からないがなにかすごいって事だけは分かる。
エレノールにしがみつくグリューンを見たからか、エレノールの肩に乗っていた優雅な猫が嫌そうに「ミャアミャア」と爪を立てる。ほら、グリューン嫌がられてるぞ。
「ミンミ、よしよし。大丈夫よ。グリューン君、ちょっとうちのミンミが気にしちゃうから、レンジ君の傍に戻ってくれないかな」
ちぇっ……という表情をして、俺の肩の上に戻るグリューン。
「しかしフィーム語を話す使い魔なんて。びっくりしたわ。どうなっているの。さっき唱えた魔法といい、大きな魔力といい……興味が尽きないわ。レンジ君」
う。やはりそう来ましたか。俺にじゃない、グリューンや包丁を探るように見る眼差しに気付いていたさ。さすがに伝説の包丁とか流れ人とか言う訳にはいかない。
ガルムが俺を細い目で睨んでいるのが見えた。
だよな。大丈夫、分かっている。
「答えないならそれでもいいわ。詮索しすぎるのも協力関係にひびを入れてしまうかもしれないから」
興味を無くしたというよりも、一旦は引き下がったという感じだな。フィオナの視線もさっきから痛いし、なんか針の筵にいる気分だぞ。
✛ ✛ ✛ ✛ ✛ ✛ ✛
こちらの投稿で1巻の3章は終了です。
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