【生魚=毒】だと言われる異世界に転生した寿司職人レンジ~師匠に託された伝説の包丁を使って、エリュハルトの食の常識を『旨い』で覆します!

小宮めだか

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1巻 3章~エレノールと凍りオオカミと導術と

利害の一致

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 ガルムの唸るような、警戒する低い声が洞窟に響いた。

 「ワシはまだ、あまりこの娘を全面的には信頼してはいないがな」

 値踏みするように、エレノールの全身を見ているガルム。
 確かにガルムが勘繰りたくなる気持ちは分かる。何か本当の事を言っていないような。どこか真意から視線を逸らそうとしているような、そんな感覚は俺にもある。
 ガルムはエレノールに向かって指を突きつける。

「魔法のキノコとやらの採取に協力させるだけしておいて、そのままとんずらするって可能性だってあるからな」

 ガルムの白い尻尾が強く地面に叩きつけられるのが見えた。ガルム、分かるんだけどイライラしているのがもろバレだ。

「そんなことはしない……のは約束するわ。でもキミ達があまりにも役立たずで、ドラゴンに歯が立たないとあたしが判断したらわからないけれども」

 あくまでも協力関係ということか。利害が一致しなくなったらそこまで。命までは捨てる気はないと。そらそうだよな。

「まさか、かの有名な『粉砕のガルム』のパーティーが、ドラゴンごときに遅れをとるなんて思えないし」

 少し挑発するような目線を送るエレノール。ガルムが強く睨み返すのが見えた。

「全く。導術士の連中は、どうしてこう高飛車なやつが多いんだ! 」

 ガルム、何度もイライラと尻尾を地面に叩きつけないでくれ。そうじゃなくてもあんた充分怖いんだからよ。
 フィオナがチラッと俺に目配せをしてくるのが見えた。しょうがねぇなぁ。

「俺はいいと思うぜ。その魔法のキノコってやつにも興味があるしな。導術っていうんだっけか?呪文を詠唱して、かっこよく敵をやっつけるやつ。さっき見た感覚でいえば俺やフィオナより明らかに強そうだ。だったらドラゴンを倒せる可能性も高まるんだろ? 仲間にしない手はないさ。逃げたら逃げたで、そん時はそん時に考えるさ」

 俺の至極あっさりとした割り切った考えに、表情が固まるガルム。せっかくうまくフィオナが交渉してくれていたのに、ガルムの警戒心丸出し感で振り出しに戻りそうだったからな。ちょっと強引だけどまとめさせてもらった。

「あはは。キミ面白い。面白いわ! そういう物事を単純化できる柔らかな考え方ってすごく好きかも」

 エレノールが大きな声で笑う。褒めてくれてありがとうな。
 でもエレノールを全面的に信用しているわけでは無いのも事実。彼女の視線が時々チラッと、俺の腰にある包丁に向くのが分かっていたからな。
 それとは別に、魔法のキノコの話を聞いたときに頭にピンと来たんだよ。それはたぶん食べられる……しかも旨いってな! 俺の食材に対する直感は当たるんだ。
 俺はガルムと目を合わせる。大きなため息をつくガルム。

「分かった。レンジやフィオナがいいというのであれば異存はない。しかし! 途中で変な動きを少しでも見せたら、分かっているな」

 ガルムは視線を自分の斧に向けている。

「そうね。その斧で真っ二つになるのだけはごめんだわ。約束する。しっかりとドラゴンを倒すまでは協力するわ。12柱神のひとり、知と魔力の根源たる女神シーシリアの名に懸けて誓う」

 エレノールが右手を挙げて、宣誓するように神様の名を告げる。色々神様の名前が出てきて覚えられないなぁ。後でフィオナにまとめて教えてもらうしかないな。

「それとさ」

 。これを言うには結構勇気がいるんだが、どうしても聞きたいんだ。

「エレノール。その格好……この雪山でかなり寒くないか? 」

 いや、だってその紅いローブの下は、直視するのが気まずいような、地球でいう露出度の高い黒いセパレートタイプの水着に分厚い革のブーツ姿とでも言えばいいのか、そういう服装だぜ! チラッと見える豊かな胸の膨らみも、かなり目の毒だ。なんだかんだ言って、健全なる男子だぜ、俺は。
 少しの間があって、エレノールは「あはは! 」と笑った。

「いきなりな質問ね。そうね。よく言われるわ。一緒に居ると、どこを見たらいいのか正直困るって」

 フィオナの俺を見る目がジト目になっているのが分かる。
 いや! ここは! 男なら、そこを聞かないとまずいでしょ!
 よく分からない男子の使命感に燃えている俺を、面白そうに見ているエレノール。

「寒くはないわ。気合って訳でもないわよ念のため。あたしの師匠が、導術を学ぶ者向けに、高度な技術で魔力を編み込んで作ってくれた衣装なの。師匠の趣味もたぶん入ってる。キミの気持ちは分かるんだけど、あたしは気に入っている。だから慣れてとしか言えないわ」

 うわぁ……とんでもない師匠だ。お互い変わりもんの師匠を持つと苦労するよな。
 俺はそう言おうとして口をつぐんだ。フィオナの形相が険しくなっているのに気付いたからだ。やばい。あれは怒っている目だ。

「エレノールさん! 」

 フィオナが一気にエレノールに顔を近づけた。エレノールはフィオナに気圧される様に少し後退りする。

「なんや、この子。距離感めっさ近いわ! ちょっと……」

 久しぶりに見たな、距離感近すぎフィオナ。アレをされると大概は引くよな。
 フィオナが大きく息を吸い込むと、その瞬間エレノールに向かって大きく宣言した。

「これだけは言っておきます!女性の魅力は……大きな胸だけじゃないですからね! 」

 え? そこ! 気にするのそこかよフィオナ。
 目を丸くする俺。そのやり取りを見ていたガルムは大きな声で笑いだした。


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