【生魚=毒】だと言われる異世界に転生した寿司職人レンジ~師匠に託された伝説の包丁を使って、エリュハルトの食の常識を『旨い』で覆します!

小宮めだか

文字の大きさ
51 / 155
1巻 4章~聖なる山とドラゴンと春の精霊と

The Deadly Struggle. Minute 3.  光の剣よ、冬を断て!

しおりを挟む
 大きくドラゴンが身を捩った!苦痛に全身をのたうち回らせ、自分の首や身体を周囲の壁に何度も叩きつけているのが見える。
 その瞬間、鎖が蠢く前のホワイトドラゴンの動きとは比較にならないような速さで、左の鍵爪がガルムに襲い掛かる!

「速い! ぐわっ……! 」

 虚を突かれたガルムだったけれど、大斧を盾のようにしてなんとか致命傷は避けたようだ。それでも鍵爪に体を掴まれ、そのまま地面に突っ伏すようにして倒れ込む。

「ガルム大丈夫か! 」

 俺が大声で叫ぶ。しかしその瞬間、驚異的な速さでホワイトドラゴンの首が伸び……俺とフィオナ、エレノールを大きく飲み込まんとするかのように、素早い牙の攻撃が襲い掛かった!

「!!! 」

 これは避けらない! なんだこの速さは……今までと段違いじゃないか!
 俺はゆっくりと周囲の時間が流れるのを感じた。これってまさか走馬灯ってやつか!
 ホワイトドラゴンの大きく開いた口が迫り、鋭い牙が俺たちをかみ切らんとする様子がスローモーションのように見える……このままじゃ、フィオナもエレノールも!

「ニルフ!! ふざけんじゃねぇ! 泣いていねぇでなんかしろってんだ! 」

 グリューンが大きく叫ぶの聴こえた! その瞬間、一気に嚙み砕こうとしているドラゴンの動きが止まる……俺は大きく息を吐き出す。フィオナの身体の緊張が解けるのを感じる。

『グリューーーン! オレっちだって負けないよ! 』

 男の子が懸命に戦っているような声がドラゴンの身体の中からはっきりと聴こえた。この声は春の精霊か。助かった!
 俺は大きく炎の剣を振りかぶる! 念じる想いの大きさに比例して炎の大きさは更に巨大になり、俺の身長よりも長くなっている。力一杯その炎の剣を、噛み砕こうとしていたドラゴンの口に向かって振り下ろす!

『ザッシュ!! 』

 焦げ臭いような、剣の発する大きな炎に焼かれる臭い! 苦悶の表情と激しい咆哮を上げながら、天井に向かって首を捩らせるホワイドラゴン!

「レンジ! グリューン! もうダメかと思ったぞ……」

 ガルムが鍵爪から強引に脱出してこちらに駆け寄ってくる。すぐさま傷を治療するフィオナ。

破邪導術ディスペル・エルナ、魔文錬成完了まであと……30秒……カウントダウンを開始します』

 エレノール! 集中してるんじゃ……え!
 俺は耳を疑った。今まで「ミャアミャア」としか鳴かないと思っていた使い魔のミンミが、エレノールと全く同じ声でカウントダウンを始めている!

「……25……20……」

 その時だ! ホワイトドラゴンが周囲の魔力エルナを取り込むように、大きく息を吸い込むような動きを見せる。さっき俺が切りつけた口から緑色の血が流れ、その口が大きく開かれる。凍結していくような魔力エルナの結晶が、ドラゴンの口の中に充満している! まさか……竜の息吹ドラゴンブレス! やばい!

「ここまで来て! させるかよ!! 」

 無我夢中で炎の剣をホワイトドラゴンに向けて突き出した。突然頭に浮かぶキーワード……えいい! ままよ!!

炎の大盾グローサー・フォイアシルト!! 』

 キラキラと俺の魔力エルナが光り輝き、持っている炎の剣の形状が瞬時に変化する! そう、包丁が竿化したときのような感覚だ。光り輝く結晶になった炎の粒子が、再度俺たちの目の前で大きな炎の盾を形成する!
 冷気の渦をまとった光線状の竜の息吹ドラゴンブレスが、俺たちにうなりを上げて襲い掛かる!! それは作り出した炎の大盾にぶち当たり、大きくせめぎあう様に強力な光を発する!
 ゆらり……と魔力エルナが大きく削り取られるのを感じる! くそ、なんて量を消費するんだ! 膝ががくりと折れる様な感覚が襲う。それをなんとか踏ん張り耐える。
 もう少し、もう少しのはずなんだ!

『……3……2……1! カウントダウンを終了。魔力エルナ充填完了』

 ミンミがそう告げた! その瞬間、エレノールの緑色の瞳が大きく光り輝く!

破邪導術ディスペル・エルナ!! 』

 エレノールの堂々とした呪文の言葉が火口内に響きわたる! 彼女の持っている黒双樹の杖から、神々しい光があふれ出し、その光はホワイトドラゴンの真上に集結する。その光に照らし出され、大きく身じろぐようにドラゴンの全身を覆った鎖……黒ローブの男の残滓ざんしの念……が、ギシギシと大きな音を立てる! その瞬間、真上に収束された光の渦が、小さないくつかの輝く矢のように変化し、一気に黒く禍々しい鎖に向かって掃射される! 大きくガラスが一斉に割れる様な音を立てて、鎖が後も残さず消滅する!
 ドラゴンが悲鳴にも似た苦痛の表情と泣き声を上げる!

「今だ、レンジ!! 思いっきり魔力エルナを高めろ! 」

 グリューンが大きく俺に向かって叫ぶ! 無我夢中で自分の腹に力を込める!
 フィオナの綺麗な笑顔がまず浮かぶ。次にグリューンのにやけた様な表情、ガルムの大きな笑い声、エレノールがキノコを頬張っている表情……
 そして師匠が俺に店の仕切りを初めて任せた時の様な、俺を信頼する表情が浮かんだ!

「……冬を終わらせるぞ!! 」

 俺の右手に、大きな神々しい光の剣とでも言わんばかりの、純粋な魔力エルナの結晶の剣が創造される!
 そのまま……その光の剣をホワイトドラゴンに向かって思いっきり振り下ろした!



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

処理中です...