58 / 155
2巻 序章~春の訪れと宴会となんでも包みと
ラベルク村への凱旋 ②
しおりを挟む
ラベルク村に帰ってきて、村の皆から歓迎でもみくちゃにされた俺達。その日の夜はそのまま盛大な宴会となると村長から告げられた。
宴会か! なんだか懐かしいな。地球では師匠とサシで飲むか、町の寄り合いの職員と一緒に飲み歩くくらいしかしたことがない。たまに都内に古い友人を訪ねるぐらいだった。
「そういえばガルム。俺とフィオナって酒飲んでいいのか? 俺のいた地球では未成年は酒を飲んじゃいけないって決まりがあってさ」
ふと疑問に思ってガルムに小声で耳打ちする。
ちなみに俺が地球から異世界転生してきた『流れ人』ということはパーティーメンバー以外にはもちろん秘密だ。そんなことを話しても到底信じて貰えるとは思えないけどな。
「そうなんだな。エリュハルトでは国ごとにそれぞれ成人の区切りが違うのが当たり前だ。ファルナート王国内での決まりでは、成人は16歳となっているから安心しろ」
成人は16歳からなんだ! まぁ実際、年齢について自分自身でもよく分かっていないし……そういえばフィオナにちゃんと年齢を聞いたことも無かったような気がする。とにかく問題がないならそれでいいか。俺は安直に考えた。
すると村長が深々と頭を下げる。
「この度は村を……いえ、この地方を救って頂き、誠にありがとうございました。言葉では言い尽くせぬ感謝の気持ちです。これはささやかではございますが、村からの心ばかりのお礼でございます」
村長さんが小さな木箱を俺に向かって差し出す。なんだろうと思いながら、恐るおそるその木箱を開けてみる。
中には銀貨が数十枚とキラキラと光る金貨が数枚見える! 俺は目を真ん丸にしてすぐに蓋を締めると、フィオナ、ガルム、エレノールの順番に顔を見渡す。3人は俺が驚いた顔をしている事が奇妙に映ったみたいで、不思議そうな表情をして見返す。
お礼……そうか。そういう流れになるのか! よくRPGゲームをやっているとクエスト達成の時にお金やアイテムが報酬としてもらえるアレか!
フィオナが俺の気持ちを察したんだと思う。前に出てくると村長にゆっくりと頭を下げた。
「村長様。ありがとうございます。これほどのお礼、いいのですか? 失礼ですが、ラベルク村の現状を考えると少々高すぎるのではないかと」
そうなんだよ。まだいまいち貨幣価値っていうのか? そういう事が全く分かっていない俺でも、この報酬の額は多いような気がする。
ガルムが笑いながら肩を叩いた。
「レンジ受け取れ。これはワシたちの働きに対する正当な報酬だ。それに、この村の皆の感謝の気持ちでもあるんだろう。逆に受け取らないのは失礼に当たるぞ」
「いや、俺は別に、そのお礼が欲しくてやったわけじゃないしよ」
困った顔をしている俺に、グリューンが欠伸をしながら呟くのが聞こえた。
「相棒。よく考えろ! ゲリプトゥ…そうだ。オイラ達、無一文なんだぜ! 」
は! そうだよ。忘れていた! ラベルク村ではお金を使うような場面って無かったから全然実感がなかった。ゼルバスもお金はいいって言ってくれていたしさ。
エレノールが何言ってんの! といった顔をして続ける。
「レンジ君。あなた、このまま王都に行ったら大変よ。宿代や食事代だって掛かるのよ。あたしお金貸さないからね! それに王都で寿司を広めるんでしょ? その資金はどうすんのよ。貰えるものは貰っておきなさいよ。それでも要らないって言うなら、あなたの分はあたしが貰うからね」
痛いところを突くなぁ。俺の分をエレノールにあげるのは、なんか嫌だ!
俺は村長に振り返ると、木箱をしっかりと抱えて頷いて見せた。
「分かった。村長さん有難く頂戴するよ。このお金は……そうだな! いつかみんなに最高の寿司を食べてもらうために使わせてもらうよ! 」
ちょっと、勝手に全部自分のものにしないでよね。山分けだからね! と後ろで騒いでいるエレノールは放置しておくとする。
ガルムが豪快に笑い、フィオナがあたたかい笑顔を向けている。どうやって分けるかは後で考えるとして、当座はフィオナにこのお金を預かってもらうか。
✛ ✛ ✛ ✛ ✛ ✛
村のあちこちからあたたかな煙が上がり、宴会に向けての食事を作っている様子が伺えた。とは言っても、つい先日まで食料不足が続いていた村だ。本格的な食糧難ではなかったようだが、それはそれでいきなり大量の食糧がでてくるわけでもないだろう。
何もしないって訳にはいかないよな……と思い立ち、近くにある湖にフィオナと出掛ける。エレノールも付いてきている。グリューンは「宴会になったら起こしてくれ」とか言って煙のように消えてしまっていた。
包丁を取り出し魔力を込めると、俺の意志を感じたように神の包丁が竿化する!
「レンジ君。ほんとにその包丁って便利な代物よね。王都に帰ったらゆっくり調べさせてよ。だめかな? 」
エレノールが付いてきた魂胆はそんなところだろうとは分かっていた。確かになんか分かったら教えてよとは言ったけどよ。エレノールが本気で包丁を調べている様を想像すると、どうしてもマッドサイエンティストみたいなイメージが拭えないんだよな。
「やだよ。貸さないぞ。この包丁に何をされるか分かったもんじゃないしな」
俺は半笑いでやんわりと断る。「なによ! ちょっとくらい……」とブツブツ言っているエレノールに対して、これ以上はこの件を突っ込まないようにしようと心に決める。
宴会か! なんだか懐かしいな。地球では師匠とサシで飲むか、町の寄り合いの職員と一緒に飲み歩くくらいしかしたことがない。たまに都内に古い友人を訪ねるぐらいだった。
「そういえばガルム。俺とフィオナって酒飲んでいいのか? 俺のいた地球では未成年は酒を飲んじゃいけないって決まりがあってさ」
ふと疑問に思ってガルムに小声で耳打ちする。
ちなみに俺が地球から異世界転生してきた『流れ人』ということはパーティーメンバー以外にはもちろん秘密だ。そんなことを話しても到底信じて貰えるとは思えないけどな。
「そうなんだな。エリュハルトでは国ごとにそれぞれ成人の区切りが違うのが当たり前だ。ファルナート王国内での決まりでは、成人は16歳となっているから安心しろ」
成人は16歳からなんだ! まぁ実際、年齢について自分自身でもよく分かっていないし……そういえばフィオナにちゃんと年齢を聞いたことも無かったような気がする。とにかく問題がないならそれでいいか。俺は安直に考えた。
すると村長が深々と頭を下げる。
「この度は村を……いえ、この地方を救って頂き、誠にありがとうございました。言葉では言い尽くせぬ感謝の気持ちです。これはささやかではございますが、村からの心ばかりのお礼でございます」
村長さんが小さな木箱を俺に向かって差し出す。なんだろうと思いながら、恐るおそるその木箱を開けてみる。
中には銀貨が数十枚とキラキラと光る金貨が数枚見える! 俺は目を真ん丸にしてすぐに蓋を締めると、フィオナ、ガルム、エレノールの順番に顔を見渡す。3人は俺が驚いた顔をしている事が奇妙に映ったみたいで、不思議そうな表情をして見返す。
お礼……そうか。そういう流れになるのか! よくRPGゲームをやっているとクエスト達成の時にお金やアイテムが報酬としてもらえるアレか!
フィオナが俺の気持ちを察したんだと思う。前に出てくると村長にゆっくりと頭を下げた。
「村長様。ありがとうございます。これほどのお礼、いいのですか? 失礼ですが、ラベルク村の現状を考えると少々高すぎるのではないかと」
そうなんだよ。まだいまいち貨幣価値っていうのか? そういう事が全く分かっていない俺でも、この報酬の額は多いような気がする。
ガルムが笑いながら肩を叩いた。
「レンジ受け取れ。これはワシたちの働きに対する正当な報酬だ。それに、この村の皆の感謝の気持ちでもあるんだろう。逆に受け取らないのは失礼に当たるぞ」
「いや、俺は別に、そのお礼が欲しくてやったわけじゃないしよ」
困った顔をしている俺に、グリューンが欠伸をしながら呟くのが聞こえた。
「相棒。よく考えろ! ゲリプトゥ…そうだ。オイラ達、無一文なんだぜ! 」
は! そうだよ。忘れていた! ラベルク村ではお金を使うような場面って無かったから全然実感がなかった。ゼルバスもお金はいいって言ってくれていたしさ。
エレノールが何言ってんの! といった顔をして続ける。
「レンジ君。あなた、このまま王都に行ったら大変よ。宿代や食事代だって掛かるのよ。あたしお金貸さないからね! それに王都で寿司を広めるんでしょ? その資金はどうすんのよ。貰えるものは貰っておきなさいよ。それでも要らないって言うなら、あなたの分はあたしが貰うからね」
痛いところを突くなぁ。俺の分をエレノールにあげるのは、なんか嫌だ!
俺は村長に振り返ると、木箱をしっかりと抱えて頷いて見せた。
「分かった。村長さん有難く頂戴するよ。このお金は……そうだな! いつかみんなに最高の寿司を食べてもらうために使わせてもらうよ! 」
ちょっと、勝手に全部自分のものにしないでよね。山分けだからね! と後ろで騒いでいるエレノールは放置しておくとする。
ガルムが豪快に笑い、フィオナがあたたかい笑顔を向けている。どうやって分けるかは後で考えるとして、当座はフィオナにこのお金を預かってもらうか。
✛ ✛ ✛ ✛ ✛ ✛
村のあちこちからあたたかな煙が上がり、宴会に向けての食事を作っている様子が伺えた。とは言っても、つい先日まで食料不足が続いていた村だ。本格的な食糧難ではなかったようだが、それはそれでいきなり大量の食糧がでてくるわけでもないだろう。
何もしないって訳にはいかないよな……と思い立ち、近くにある湖にフィオナと出掛ける。エレノールも付いてきている。グリューンは「宴会になったら起こしてくれ」とか言って煙のように消えてしまっていた。
包丁を取り出し魔力を込めると、俺の意志を感じたように神の包丁が竿化する!
「レンジ君。ほんとにその包丁って便利な代物よね。王都に帰ったらゆっくり調べさせてよ。だめかな? 」
エレノールが付いてきた魂胆はそんなところだろうとは分かっていた。確かになんか分かったら教えてよとは言ったけどよ。エレノールが本気で包丁を調べている様を想像すると、どうしてもマッドサイエンティストみたいなイメージが拭えないんだよな。
「やだよ。貸さないぞ。この包丁に何をされるか分かったもんじゃないしな」
俺は半笑いでやんわりと断る。「なによ! ちょっとくらい……」とブツブツ言っているエレノールに対して、これ以上はこの件を突っ込まないようにしようと心に決める。
0
あなたにおすすめの小説
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした
渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞!
2024/02/21(水)1巻発売!
2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!)
2024/12/16(月)3巻発売!
2025/04/14(月)4巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
=====
車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
スキル買います
モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」
ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。
見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。
婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。
レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。
そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。
かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる