【生魚=毒】だと言われる異世界に転生した寿司職人レンジ~師匠に託された伝説の包丁を使って、エリュハルトの食の常識を『旨い』で覆します!

小宮めだか

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2巻 1章~旅立ちと騎士団長と王都到着と

立つ鳥跡を濁さず〜letter news

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 そんな話があった次の日の朝。春の気配が一気に高まる晴れ渡る空。七変星ダルバと名付けられたこの世界の太陽的存在が、緑色を浮かべて俺たちの頭上に輝いている。
 俺たちは村長の屋敷内の大きな部屋をそれぞれ充てがわれ、ふかふかのベッドでゆっくりと休むことができた。

「村を救ってくださった冒険者様にもう少し報いねばならないのですが……今の村の現状ではこのぐらい事しかできず、申し訳ございません」

 そういう村長の言葉に、こちらは頭を下げることしかできない。いいんだよ。俺達はそれぞれの目的があってこの村を訪れて、勝手に動いた結果この地方が救われたんだ。
 俺はベッドから起き上がると大きく伸びをした。久しぶり過ぎるふかふかのベッドで寝られた感覚。やっぱり睡眠は大事よ!
 朝の空気を吸いたくなり、屋敷の玄関の扉を開けて外に出る。すると屋敷のすぐ横に小さな粗末な作りの机と椅子があり、そこにフィオナが座って何か一心に祈っている場面に遭遇した。
 フィオナは集中している様子で、両手を祈る様に組んでいるが分かる。フィオナの前には折りたたまれた紙のような物が置かれているのが見える。両手が徐々に淡い光を帯び始めて、一気に強い光を放った。

立つ鳥跡を濁さずレター・ニュース

 フィオナの綺麗な声が小さく響く。フィオナはその手の中に生まれた強い光を目の前の紙にかざす。すると紙が光り輝き、一羽の真っ白い鳩のような鳥になり、そのままフィオナの左肩にとまった。

「セリナの元に送り届けて! 」

 フィオナがそう鳩のような鳥に告げると、それはゆっくりと羽ばたき、パタパタパタッと羽音を立ててその場から飛び去って行った。
 俺が立ち尽くしているのに気づくと、嬉しそうに近づいてきた。

「おはようございますレンジさん。お早いお目覚めですね。よく眠れました?」

 よく見るとフィオナの装いがかなり変化していることに俺は気づいた。
 以前のニットチェニックから、白を基調としたロング丈のシャツの上に、キャメル色のノースリーブの上着を重ね着している。デニムのような色をしたズボンで、拳術を扱うフィオナの動きを邪魔しないような着こなしがイイ感じだ。足元は黒いブーツを履いている。春の陽射しに映えるような、軽やかな装い。とても似合っているなぁ……
 印象がガラリと変わったフィオナに、俺は内心ドギマギしながら、それを悟られないように大きく手を振った。やっぱり俺は『基本的に女子が苦手な村の出身』だから、こういう時、一体どういう風に反応するのが正解なんだ? かなり困ってしまうぞ!

「それ……うん、いいじゃんフィオナ。似合っているぞ」

 これぐらいが精いっぱいだ。フィオナはその言葉にパッと表情を明るくさせる。

「レンジさん。気づいてくれたんですね! 嬉しいです」

 そういうとフィオナは嬉しそうに何度も頷いた。

「村長さんが暑そうにしていたわたしに用意してくださったんですよ。思ったよりもかわいい服だったので、ちょっと気分がいいんです!一応神官という立場もありますので、あまり華やかな服を着るわけにもいかないんですけど」

 そういうもんなのか。別に神官だろうと着たい服を着ればいいんじゃないかな。なかなかそういう訳にもいかないのかな。フィオナの立場とか、見る人の印象とかあるもんな。学校の先生があまり奇抜な服装をするわけにはいかないみたいなもんか。

「そういえばフィオナ。今の魔法は? なんか鳥を飛ばしたように見えたけど」

 俺は話題を直ぐに変えるように、先ほどフィオナが唱えていた魔法について話を強引に持っていった。

「あれは、書いた手紙を遠くにいる相手に届けられるように、手紙自体をプルトという鳥に魔法で変化させて飛ばす呪文ですよ」

 なるほどな。つまりは書いた手紙を伝書鳩に変化させる呪文ってわけだな。かなり便利そうじゃないか。この世界じゃスマートフォンなんてないだろうし、電話のようなものを使っている様子もエリュハルトに入ってからこれまで見たことがない。
 へぇ……という顔をしている俺を見ながら、フィオナが話を続ける。

「王都でわたしと同じように神官の修業をしている、双子の妹のセリナに送ったんです。わたしがかなり長い間王都から離れていたので、絶対心配していると思うんです。早めにわたしの無事を伝えたくて。両親はわたし達が幼い頃にモンスターに襲われ亡くなってしまっているので、お互いの存在がものすごく大きいんです」

 双子の妹がいるのは初耳だ! しかもサラッとフィオナは言い切ったけど、両親が幼い頃にモンスターに襲われて亡くなっているって、かなりハードな人生だよな。それともこれも地球の感覚で、エリュハルトではそれほど珍しいことではないのか?

「双子だから当たり前なのですけど、よく似てると周囲の方々には言われます。でも妹の方が拳聖流としての腕前は上で……なかなか組手では勝てないんです」

 待て。それって相当強いんじゃないか? だってホワイトドラゴンの尾撃をなんとか防げるフィオナよりも上なんだろ! 俺は思わず口の中の唾をゴクリと飲み込んだ。



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