【生魚=毒】だと言われる異世界に転生した寿司職人レンジ~師匠に託された伝説の包丁を使って、エリュハルトの食の常識を『旨い』で覆します!

小宮めだか

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2巻 3章~ザックマーニャとファーバンとギャングの刺身と

異常覚知 Elinor's Gift : Sixth Sense

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 ザックマーニャがエレノールの緑色に光り輝く瞳を見返し、小さく笑う。

(やはりこの娘、他のものとは明らかに違う。『あの御方』がまだ小さい懸念と仰った意味はよく分からぬが、早めにわらわの手中に収めて置かねばならぬ存在なのかもしれん)

 漆黒のローブを被り、わらわの呪われた生い立ちに共感してくださった素晴らしい御方。

 『ザック……ボクには君が必要なんだ。分かるだろ? キミの世界の理を視たいという果てなき、清き高き思想。その為なら世界を破滅させても構わないんだろう? ボクならその理想に手を貸してやれると思うんだ。どうだい? 』

 わらわより遥かな高い魔力を誇りながら、誰よりも華やかに笑うあの御方。あの方に拾われてわらわ姉妹は救われたのじゃ……
 彼女は自分の持つ銀白色の錫杖を愛おし気に見つめる。その瞳に宿った一瞬の邂逅。それが何を意味するのかは、誰にも分からない。
 その御方がアストリアを小さな懸念と仰ったのだ。ザックマーニャも感じていた、同じハーフヴェルドという宿命を背負っているであろうこの娘。その血の掛け合わせしだいでは強大な魔力エルナの血潮を手に入れる可能性があることを。

(いつか、わらわに匹敵するほどの魔力エルナを手に入れる可能性もあるだと……ありえんわ)

 そんな……小さな雑念を吹き飛ばすかのように、小さくそして考えられないような速さで魔紋錬成を完成させる。ザックマーニャの持っている銀白色の錫杖がまるで生きているかのように光り輝き、その力を引き出すのを助けるかのように唸りを上げる。
 いきなり魔力の力強い渦がエレノールの体を浮かび上がらせる!
 強い導術の力に全く抵抗ができない。エレノールは息をすることも出来ずに苦痛に顔を歪ませる! そのまま魔力の渦が跳ね上がり、彼女の体は広間の壁に何度も叩きつけられる!

「キャハハハ! アストリア。楽しそうじゃのう! わらわの魔力の味はどうだ……もういいじゃろう。そろそろわらわのものになれ。おぬしも楽になれるぞ」

 その誓いを立てるわけにはいかない……誓いを立てればすべてを支配される。言葉とはそれほどまでの恐ろしいものなのだ。特に導術士どうしにおいての誓いは。
 エレノールは口から血を吐き、魔力の渦に翻弄されながらも、その叩きつけられ続ける苦痛に歯を食いしばって耐える。

「ミャアミャア! ミヤアア! 」

 使い魔は術者の感覚をある程度共有しているもの。ミンミの苦痛の声が広間にこだましていく。


✛ ✛ ✛ ✛ ✛ ✛


 10分ほどその状態が続き、ザックマーニャは飽きたのか、急にエレノールを解放する。
 はぁはぁと、肩で息をしながらその場にうずくまるエレノール。
 力をふり絞り、ザックマーニャを見上げる。

「殺す。いつかあんたを殺したる。ザックマーニャ! 絶対や! うちはいつかあんたの上に立ってみせるわ」

 エレノールの屈しない精神。凄まじい形相でエレノールはザックマーニャに断固たる決意を叩きつける。
 その言葉を聞きながら、楽しそうな笑顔を浮かべるザックマーニャ。

(同族嫌悪とでもいうのか、この決意に漲る瞳も忌々しいわ。しかしそれをまた美しいと、称賛に値すると感じてしまう感情もまた、わらわの中に別に存在する。奇妙な感覚じゃ。しかしそれまた一興……)

 ザックマーニャは相反する複雑な心象を、頭の中で反芻するように巡らせる。
 すると両開きの扉の前で頭を下げていた男性導術士が魔力を込め始める。

「大変な不敬であるぞ。アストリア」

 女性の導術士も持っていた杖を振りかざし、魔力を練りあげ始める

「マスター……やはりこの娘。生かしておくわけには」

 二人の導術士が魔力を込めるのを無感動に顧みると、ザックマーニャは自分の『女王の錫杖』を構え、大きく息を吸い込む。ビリリ!と導術練達の間に迸る威圧の魔力。それは二人の導術士の込めた魔力をも一瞬で飛散させる。再度ひれ伏す二人の導術士。

「わらわが望まぬのに何を勝手に魔力を込めておるのじゃ。この場で消してしまっても良いのじゃぞ。代わりはいくらでもおる」

 冷徹に言い放つザックマーニャ。更に頭を絨毯に押し込めるようにひれ伏す二人。
 口から血を流し、地面に両手をつきながら、そのやり取りを茫然と眺めているエレノールに振り返ると、ニヤリと口の端を歪めながら笑いかける。

「まぁよい。わらわはアストリアが大好きなのじゃ。おぬしのその反骨神がとてもとても心地良い。これからもわらわの為に尽力しておくれ」

 残忍な笑みを浮かべ、靴でエレノールの肩を思いっきり踏みつけるザックマーニャ。苦痛の声を上げるエレノール。

「わらわを殺したいか。いいのぅ。やれるものならな」

 ザックマーニャは尊大な微笑みを称える。

「魔力量は、導術士の優劣を決定的に分かつものじゃ。わらわがΩオメガ級魔導士に対し、愛しのアストリア、お主はβ級なのじゃ。その差は剣技や闘気とは比べ物にならん…その差こそが覆せない現実なのじゃ」

(そうね。そう。今はまだ……それが現実……わかっているわ)

 エレノールはその現実を覆せる小さな可能性。自分の異能について思いを巡らす。

 あたしの異能は『異常覚知シックスセンス』! 
 ついこの間まであんたの魔力の神髄が分からなかった……でも今なら。レンジ君の『神の包丁の一端』に触れたあたしなら、あんたの魔力の流れを知覚することができる。まだ敵わないほどの魔力差なのはどうしようない。でも……知ることができた今なら…いつか必ず!
 エレノールは跪き、痛みに耐え、血を流しながらも抗う力を緩めない。

「おうおう。魔力の量が跳ね上がっておるのぅ。今やα級でも問題なさそうじゃな。まぁよい。今回の件は魔力量を上げたという一点において目をつぶろうではないか」

 そんな自分の前でうずくまり、肩で息をしているエレノールを舐めるように見下すザックマーニャ。

(あくまでもあたしを下に見るか)

 歯を食いしばるように痛みに耐え、切れた口の中が血で溢れている。ゴホっと血が混じったような咳をする。

「失礼いたしました。今回の件、平に平にご容赦を願います」

 言葉だけは丁寧に、痛みをこらえ頭を下げるエレノール。

「よいぞよいぞ!わらわは協会員が魔力を高める行為については最大限の協力を惜しまないぞ。わらわはなんて寛大なのじゃ……そうであろうお前たち」

「エコール・オブ・ミステール。全ては魔力の為に……」

 控えている二人のα級魔導士はゆっくりと唱和する。しかしその視線は敵意を持ってエレノールに注がれ、二人のピリピリとした魔力が刺すように傷ついたエレノールを刺激している。

「御意にございます。またのマスター様からのお呼び出し、心よりお待ちしております」

 エレノールは悲壮な覚悟で立ち上がり、フラフラになりながら魔導協会を後にした。
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