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2巻 4章~包丁の共鳴と幻妖蜘蛛とアリーゼと
炎が使えない闘い
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洞窟に近づくにつれ、辺りは白い絹の繭のような物体に覆われ、木々の間に貼られた頑強なロープのようなものが目に入る。触るとかなり粘つきが強い。これに手や足を取られたら身動きが難しくなるんじゃないかな。
「明らかにラスモフィスが洞窟内に居るな。洞窟内も同様に糸が張り巡らされている可能性が高い。なるべく触れぬように行くしかないな」
ガルムの的確な指示が飛ぶ。フィオナとエレノールが頷く。
「相棒。この糸って燃やせねぇのかな。萌炎で炎を生み出せるだろ」
これはグリューンの言葉。それに対してエレノールが答える。
「もちろん燃やすことは可能よ。でもそれによって周囲の木々も燃えちゃうから、最悪森林火災になりかねないわ。あまり得策ではないわね。やってみる? 」
「火事になるのはやだな。最悪逃げ場を失ったりしたら元も子もない」
自分が転生の際に焼け死んだことを思い出して、身震いする。もちろん実際に焼け死んだ感覚はないんだけどな。
「この糸を掻い潜って、洞窟の中を進むのはかなり骨が折れそうですね……きゃっ! 」
エレノールの傍で周囲を見渡しながら歩いていたフィオナ。一瞬見落としてしまったのだろう、ちょうど顔の辺りの高さにあった白い繭に突っ込んでしまい、苦しそうに藻掻いている!
俺とエレノールで繭を急いで取り払う。かなり粘着性と耐久性が強い。これは思ったよりもタチが悪そうだな……
口や鼻、耳の中にまで蜘蛛の糸が入ってしまったのだろう、フィオナがかなり嫌そうに糸を吐き出し、むせこんでいる。
「相棒、パッフ アウフ! 洞窟の中からなにか大きな魔力を持つやつが出てくるぞ」
グリューンは俺の頭の上に飛び移っていたんだろう。白い繭まみれでは無かったようで、警戒の声を出しながら、洞窟の中を指差した。
「ちっ! これだけ糸が張り巡らせられては、大斧では役に立たん。ちょっと状況を甘く見ていたな……」
そう言うとガルムが唸り声を上げ、一気に筋肉を躍動させる。獣人化というやつか。
大斧だとリーチが長すぎて、蜘蛛の糸が邪魔してうまく扱えないんだな。武器の選択を間違えたというやつか。ガルムにしては珍しいミスだな。
包丁を取り出すと魔力を込める。萌炎は炎の技が基本だから、これだけ糸が張り巡らされていると、かなり扱いにくいのは容易に想像がつく。さてどうするか。
その時、洞窟の入り口から体長3メートルほどの大きな蜘蛛が現れる! 足が10本あって、それが洞窟の入り口の壁を引っ搔くようにして移動している。糸を器用にめぐって前に進んでいるので、おそらくはフィオナが糸に引っ掛かってしまって、その振動が伝わり、幻妖蜘蛛ラスモフィスが戦闘態勢に入ったんだろう。
「気をつけや! ラスモフィスの腹にあるデッカイ目ェ見つめたらアカンで。一気に魅了されてまうからな! 」
うっそ。マジか……確かに幻妖蜘蛛の腹辺りに、巨大な一つ目のような器官が見える。
「あぁ、分かっている! とりあえずレンジ。一気に近づいて奴の目を瞑すぞ! 」
ガルムが大きく吠える。腕に筋肉を集中させているようで、腕の太さが2倍ほどになっている! もしかして、ガルムは筋肉で押し込む気ですかい。
『炎の剣化』は使えないな。俺の剣の腕では、辺りの白い蜘蛛の糸に炎が燃え移って、大変なことになりかねない。
その瞬間、ラスモフィスの腹にある魔紋のような瞳が静かに開いていくのを目の端に捉える!
「みんな! 目ェ逸らして!! 」
叫ぶように警告の声を出すエレノール。俺は必死に奴の腹の瞳から目を逸らすように、自分の両目を腕で覆う。
「ギギギギ…ギニャアア!! 」
パキパキと10本の蜘蛛の足が関節部分を鈍く鳴らして威嚇する。
ゆっくりと両目を開いた俺の前に展開された光景に、エレノールが大きく声を上げた。
「フィオナ……なんでねん! 」
脚を引きずるようにして、身体を左右に揺らしながら幻妖蜘蛛ラスモフィスの前に立っているフィオナ。その眼は虚ろで何も見ていないかのように俺の目には感じられた。
「まさか……ウチの声、聞こえへんかったん!? 」
エレノールの悲痛な叫び。そうだよ。なんでだ……俺だって反応できたんだぞ。
「相棒、ひょっとするとひょっとして! さっきの蜘蛛の糸が耳に入って聞こえにくかったんじゃねぇか! 」
グリューンの悲鳴に似た声が挙がる。そうか。さっき糸の繭に絡まった時に、耳の中にも繭が入り込んでしまって、それでエレノールの声が聞こえなかったんだ。
「これは厄介なことになったぞ、レンジ!」
ガルムが鼻を鳴らすようにして、大きく唸る。
俺も包丁を構えつつ、少しずつ後ろに下がる。エレノールも錬成の手が止まってしまっている。
(まさかこんなことになるなんて。どうすりゃいいんだ! )
森の中に、大きく幻妖蜘蛛ラスモフィスの歓喜の声が響き渡った。
「明らかにラスモフィスが洞窟内に居るな。洞窟内も同様に糸が張り巡らされている可能性が高い。なるべく触れぬように行くしかないな」
ガルムの的確な指示が飛ぶ。フィオナとエレノールが頷く。
「相棒。この糸って燃やせねぇのかな。萌炎で炎を生み出せるだろ」
これはグリューンの言葉。それに対してエレノールが答える。
「もちろん燃やすことは可能よ。でもそれによって周囲の木々も燃えちゃうから、最悪森林火災になりかねないわ。あまり得策ではないわね。やってみる? 」
「火事になるのはやだな。最悪逃げ場を失ったりしたら元も子もない」
自分が転生の際に焼け死んだことを思い出して、身震いする。もちろん実際に焼け死んだ感覚はないんだけどな。
「この糸を掻い潜って、洞窟の中を進むのはかなり骨が折れそうですね……きゃっ! 」
エレノールの傍で周囲を見渡しながら歩いていたフィオナ。一瞬見落としてしまったのだろう、ちょうど顔の辺りの高さにあった白い繭に突っ込んでしまい、苦しそうに藻掻いている!
俺とエレノールで繭を急いで取り払う。かなり粘着性と耐久性が強い。これは思ったよりもタチが悪そうだな……
口や鼻、耳の中にまで蜘蛛の糸が入ってしまったのだろう、フィオナがかなり嫌そうに糸を吐き出し、むせこんでいる。
「相棒、パッフ アウフ! 洞窟の中からなにか大きな魔力を持つやつが出てくるぞ」
グリューンは俺の頭の上に飛び移っていたんだろう。白い繭まみれでは無かったようで、警戒の声を出しながら、洞窟の中を指差した。
「ちっ! これだけ糸が張り巡らせられては、大斧では役に立たん。ちょっと状況を甘く見ていたな……」
そう言うとガルムが唸り声を上げ、一気に筋肉を躍動させる。獣人化というやつか。
大斧だとリーチが長すぎて、蜘蛛の糸が邪魔してうまく扱えないんだな。武器の選択を間違えたというやつか。ガルムにしては珍しいミスだな。
包丁を取り出すと魔力を込める。萌炎は炎の技が基本だから、これだけ糸が張り巡らされていると、かなり扱いにくいのは容易に想像がつく。さてどうするか。
その時、洞窟の入り口から体長3メートルほどの大きな蜘蛛が現れる! 足が10本あって、それが洞窟の入り口の壁を引っ搔くようにして移動している。糸を器用にめぐって前に進んでいるので、おそらくはフィオナが糸に引っ掛かってしまって、その振動が伝わり、幻妖蜘蛛ラスモフィスが戦闘態勢に入ったんだろう。
「気をつけや! ラスモフィスの腹にあるデッカイ目ェ見つめたらアカンで。一気に魅了されてまうからな! 」
うっそ。マジか……確かに幻妖蜘蛛の腹辺りに、巨大な一つ目のような器官が見える。
「あぁ、分かっている! とりあえずレンジ。一気に近づいて奴の目を瞑すぞ! 」
ガルムが大きく吠える。腕に筋肉を集中させているようで、腕の太さが2倍ほどになっている! もしかして、ガルムは筋肉で押し込む気ですかい。
『炎の剣化』は使えないな。俺の剣の腕では、辺りの白い蜘蛛の糸に炎が燃え移って、大変なことになりかねない。
その瞬間、ラスモフィスの腹にある魔紋のような瞳が静かに開いていくのを目の端に捉える!
「みんな! 目ェ逸らして!! 」
叫ぶように警告の声を出すエレノール。俺は必死に奴の腹の瞳から目を逸らすように、自分の両目を腕で覆う。
「ギギギギ…ギニャアア!! 」
パキパキと10本の蜘蛛の足が関節部分を鈍く鳴らして威嚇する。
ゆっくりと両目を開いた俺の前に展開された光景に、エレノールが大きく声を上げた。
「フィオナ……なんでねん! 」
脚を引きずるようにして、身体を左右に揺らしながら幻妖蜘蛛ラスモフィスの前に立っているフィオナ。その眼は虚ろで何も見ていないかのように俺の目には感じられた。
「まさか……ウチの声、聞こえへんかったん!? 」
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「相棒、ひょっとするとひょっとして! さっきの蜘蛛の糸が耳に入って聞こえにくかったんじゃねぇか! 」
グリューンの悲鳴に似た声が挙がる。そうか。さっき糸の繭に絡まった時に、耳の中にも繭が入り込んでしまって、それでエレノールの声が聞こえなかったんだ。
「これは厄介なことになったぞ、レンジ!」
ガルムが鼻を鳴らすようにして、大きく唸る。
俺も包丁を構えつつ、少しずつ後ろに下がる。エレノールも錬成の手が止まってしまっている。
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森の中に、大きく幻妖蜘蛛ラスモフィスの歓喜の声が響き渡った。
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