【生魚=毒】だと言われる異世界に転生した寿司職人レンジ~師匠に託された伝説の包丁を使って、エリュハルトの食の常識を『旨い』で覆します!

小宮めだか

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2巻 4章~包丁の共鳴と幻妖蜘蛛とアリーゼと

共鳴

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 フィオナがそう問いかける。ジルベニスタは我が意を得たりとばかりに、したり顔を浮かべた。

「おお、フィオナ姫。わたしの行動に興味がおありとは。嬉しい限りですよ。今度ぜひ一緒にファルナート市場を散策致しましょう。このレンジとやらと行くより、10倍素晴らしい時間を過ごせましょうぞ」

 俺はピクリと片方の目を動かし、視線をやつに投げかける。その視線が来ることを期待していたかのように会心の笑みを俺に投げかけてくる。

「おい、ガルム。騒ぎになってもいいから、こいつ一発ぶん殴ってもいいか」

「よせ、レンジ。ただでさえワシは謹慎の身なんだぞ。ジル、お前の回りくどい言い方は変わらんな。何が言いたいのか要点を話せ。時が移る」

 ガルムは俺を軽くいなした様だが、自分がイライラしている事は隠せていないな。

「ははっ。父上もお人が悪い。謹慎中と言いながらレンジと一緒にランクアップの手伝いをしているそうではないですか。体裁があまり良い話ではありませんな。高ランクの冒険者が低ランクに肩入れをするのは」

 ガルムがその言葉を聞き、闘気を漲らせ立ち上がる。俺もそれにつられて席を立ち、じっと奴を睨みつける。こいつの口からは嫌みしかでてこねぇのか。
 一触即発の雰囲気が、朝早いギルドの空気を張りつめたものにしている。その緊迫した空気感を楽しむように両手を広げるジルベニスタ。すると後ろに控えていたドルーマンが、静かに前に出ると、奴の耳元で何事かを呟いている。
 そんな俺達とジルベニスタのところに、ルーシィさんがスッと近寄ってくる。

「騎士団長様。ただいまギルドマスターのドッセル・マッセルから、準備が整ったので執務室までお越しください、との伝言を承っております。なんでも魔導協会がらみの件だとか。どうぞ2階の応接室までお進みくださいませ」

 ルーシィさんのよどみない敬語に俺がびっくりする。いつもの可愛らしい方言はどこに行ったんだ。ちゃんと喋れるんじゃん。

「それに、こんな早朝から騎士団長ともあろうお方が、このような場所で大声を張り上げていらっしゃると、無礼な低位の冒険者が、軽率にも争いを挑んでくるやもしれません。どうぞ、くれぐれもご用心くださいませ」

 異も言わせぬ迫力を言葉に載せるルーシィさん。
 いつもの受付での様子とは明らかに違う印象に、度肝を抜かれたのだろう。ジルベニスタは舌打ちをしながら、2階への階段に向かって足早に歩きだす。すると、彼の後ろに控えていたドルーマンが俺の傍に滑るように近づき、小さく耳元で囁いた。

「レンジさん。ひとつ忠告をよろしいですか」

 彼は薄く赤い唇をゆっくりと開き、話を続ける。

「グリモワール子爵にはお気をつけなさい。あなたのことを調べておりますよ」

 グリモワール子爵? どこかで聞いたな……
 そうか! キャング採取の時の依頼主の名前が確か、グリモワール子爵だったよな。
 俺はドルーマンの冷たい眼差しを改めて見やる。なにか違和感というか、既視感とでもいいのか。妙な感覚を覚える。
 その時、俺のベルトのケースに下げられている『萌炎』が鈍く震えるのが伝わってきた。

(なんだ、何が起こっている……? )

 ドルーマンは俺達4人と1匹に丁寧に頭を下げる。その時、階段の下に辿り着いたジルベニスタが痺れを切らすようにこう叫んだのが俺の耳にも聞こえた。

「コーマ! 何をやっている。早く来い! 」

 俺はそのジルベニスタの言葉を聞き逃せなかった。
 コーマ? どこかで聞いた名だよな……どこだったか。
 王都内? いや違うな。ラベルク村でもない。もっと前、そう。もっと前の記憶だ。
 俺は頭を抱える様にその場に座り込む。

 神の包丁である『萌炎』の震えが、ベルトケースの中でだんだん大きくなってきているように感じる。その振動が俺の頭の中を大きく駆け巡っている様なそんな感覚に襲われて、頭を抱え込む。

「レンジさん、ちょっと、顔色が変ですよ! 」

「おい。レンジ! どうした! 」

「レンジ君、魔力を落ち着かせて。ゆっくり深呼吸して……」

 仲間たちの声が段々と遠くなっていく。
 俺はそのまま机の上に突っ伏すように気を失ってしまった。


✛ ✛ ✛ ✛ ✛ ✛


 ゆっくりと落ちていくような……急激な落ち方ではない、うまくは言えないが例えるなら、水の底に向かってどんどんと引き込まれていくような、そんな感覚。
 おそるおそる両目を開ける。周囲が燃え盛る炎で囲まれている事を知覚する。

 「こ、これはいったい……確かギルドで座っていて、包丁の震えに頭が痛くなって。俺はどうなったんだ!」

 そんな事を思いながら、周囲の炎の在り方に、何か以前どこかで見たことがあるかのような既視感を覚えて、もう一度周囲を見渡した。

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