元・嫌われ令息と氷鬼の国王の幸せな政略結婚

あきたいぬ大好き(深凪雪花)

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本編★

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「ミュゼは……本当に可愛いな」

 耳元に囁き、首筋にそっとキスをする。くすぐったくて、俺は小さく声を上げた。
 恥ずかしく思いながら顔を上げると、儚げで美しい顔立ちの男――リュクセーレと目が合う。優しく微笑みかけられて、俺はドギマギしながら一つ頷く。
 結婚式を挙げた日の夜。リュクセーレと裸で抱き合い、愛撫を受けていると、やがてとうとうその時がやってきた。

「挿れてもいいか」
「は、はい……っ」

 こわごわと頷くと、……中にぐっと熱いものが入ってきた。
 あぁっ、と喘ぎ声がもれる。咄嗟に手の甲で口元を押さえようとしたけれど、リュクセーレの手がそれを阻んだ。俺の手首をシーツに縫いつけ、もっと声を聞かせてほしいと甘く言う。
 ずるい。そう言われたら、拘束をほどけないじゃないか。
 最初は優しかったストロークが、少しずつ激しくなっていく。何度も何度も腰を打ちつけられ、揺さぶられ、俺は喘ぎ声を止められなかった。

「へ、いか…っ……」
「どうした、ミュゼ」

 俺は腕を伸ばし、リュクセーレの頬に手を触れた。ふわりと微笑みかける。

「大好きです。あなたのことが」
「……っ!」

 リュクセーレの腰の動きが止まった。繋がったまま、俺のことを力強く引き寄せる。
「俺もだ。――愛しているよ、ミュゼルト」


   ◇◇◇


 俺とリュクセーレの出会ったのは、一年前のことだ。
 ……いや、厳密には『異世界転生した俺が、リュクセーレと初めて顔を合わせた』という意味になる。
 現代で若くして病死した俺は、気付いたらこの世界に異世界転生していた。それも、あまりにも横暴すぎて周りから嫌われている公爵令息『ミュゼルト・ルーフェン』に。
 前世のことを思い出した当初は混乱したものの、落ち着きを取り戻した俺が真っ先に考えたのは、ある一つの野望だ。それは、国王に婿入りして子供を授かるというもの。
 前世の俺は、独身のままで死んでしまった。だから家族が欲しかった。今世ではオメガだったので、自分で子供を出産しようと思ったのだ。
 ――子供には、最高の教育環境を用意してやりたい。
 後宮入りしたいと考えたのは、だからだ。王族から平民に落ちることはあっても、その逆はない。少なくとも、この異世界では。
 野望を達成するために、ひたすら勉強に打ち込み、同時に美容にも磨きをかけた。今では、『賢華の王婿』とあだ名されるほどになった。
 そんな経緯を持つ俺だから、後宮入りした時は、リュクセーレの心も簡単に射止められると思っていた。けれど今思えば、笑えるほどの勘違い野郎だった。
 リュクセーレにはきっと、そんな俺の腹黒い打算的な考えが伝わっていたのかもしれない。夫夫になっても塩対応で冷たく、思い描いていた結婚生活からは程遠くて。
 でも、冷たくされるほどにリュクセーレのことが気になってしまい、気付いたら……いつの間にか好きになっていた。

「陛下……好きです」

 思い切って想いを伝えたのが、後宮入りして初めての冬。一生懸命、自分の手で編んだマフラーを、リュクセーレは無言ではあったけれど受け取ってくれた。

「お前が編んだのか」
「は、はい」

 緊張して上手く言葉を話せない。もしかしたら、夫でも拒否されるのではないかと思い、おそるおそる続きの言葉を待った。

「そうか。手間をかけさせてすまない。――ありがとう」
「……!」

 本当に受け取ってもらえた……!
 泣きたくなるくらい嬉しかった。思わず、目から涙が流れ落ちた。
 静かに泣く俺を、リュクセーレはこわごわと抱きしめる。不器用だけれど、優しく、それでいて力強い腕の中で、俺はしゃくり上げた。

「ミュゼルト」
「あ……も、申し訳ありませんっ」

 慌てて涙を拭う。リュクセーレのお召し物を汚してしまった。申し訳ない。
 体を離そうとしたけれど、なぜかリュクセーレは離してはくれなかった。戸惑っていると、リュクセーレが静かに告げる。

「俺も好きだ。あなたのことが」
「え……?」

 俺は驚いて、顏を上げた。
 淡い空色の瞳と目が合う。俺を見つめる眼差しは、温かい。『氷鬼の国王』と揶揄されている人柄とは思えないくらいに。
 夢でも見ているのかと思ったけれど、手の甲をつねったら痛い。これは現実のようだ。

「あなたの、凛として芯のあるところを好ましく思う。もちろん、あなたのすべてが愛おしく感じられるのだが」
「……っ!」

 感極まってしまい、言葉が出てこない。ただ、リュクセーレにしがみついて、態度で気持ちを示すほかなかった。

「これからは、もっとたくさん愛情表現をする。末永く幸せにするよ」
「っ、はい……っ!」

 ――そうして、俺とリュクセーレは、『本物の夫夫』になった。


   ◇◇◇


「懐妊したというのは本当か」
「はい」

 後宮の自室で、俺はベッドに横たわっている。庭の畑で耕している家庭菜園中に倒れてしまったのだ。暑さで倒れたのかと思いきや、なんと――めでたく、子供を授かった。
 夢にまで見た、自分の子供。それも、愛する人の。
 幸せだ。とても。願わくはどうか、この幸せがずっと続いてほしい。

「生まれてくるのが楽しみだな」
「そうですね。たくさん可愛がってあげたいです」

 俺たちは微笑み合い、そっとキスをした。

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