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おまけ
しおりを挟む僕の両親は、仲がいい。結婚して二十年近く経つそうだけれど、二人とも休日の日はいつも一緒にいて、隙あらばイチャイチャしていて……まったく、息子の前でやめてほしいよ。恥ずかしいから。
「兄上。今日からお仕事なんだって?」
トーストを食べながら声をかけてきたのは、弟のハシェルトだ。僕――リシェルトよりも四つ年下で、今は十四歳。街学校中等部の三年生だ。
対して、僕はもう十八歳。だから今日からとうとう社会人デビューなんだ。子どもの頃からの憧れの仕事――海保騎士として。
「そうだよ。この騎士服、カッコイイだろ」
海色の騎士服を見せびらかしたけれど、ハシェルトはつまらなそうな顔をする。
「えー、ダサい」
「――はぁ!?」
と怒ったのは僕じゃない。父上だ。父上も海保騎士だから。といっても、もう役職が上がっていて、海に出ることは少ないけれど。
今、起きたのか、父上はつかつかと食堂にやってくる。
「ハーシェ! なんてこと言ってるんだ! カッコイイだろっ」
「俺のセンスに引っかからない」
「なんだそれ!」
ぎゃあぎゃあ言い合う二人を、「こら、うるさい」と一喝したのは父様だ。エプロン姿でお玉を持っており、あろうことか、お玉をこつんこつんと二人の腕に軽くぶつけた。「「いてっ」」と二人とも顔をしかめる。
それでも、父上はすぐに表情を持ち直した。「シルフィ、おはよう」と父様を抱き寄せ、キスをする。ああもう、まただ。やめてほしいよ。
僕とハシェルトは顔を見合わせ、肩を竦めた。ラブラブな両親を持つ子どもの苦労も、みんなに知ってほしいというか。
「バカ……っ、二人の前ではやめろって」
「二人っきりならいいのか?」
「そ、そりゃあ……二人の時なら」
もじもじして答える父様に、僕たちは呆れてしまう。父上はもちろん、父様も夫ラブすぎる旦那だなーって。
この二人を馴れ初めはまだ聞いたことがない。でも、父上の一目惚れだったとは聞いたことがある。猛アタックして父様を射止めたのだと。
いつか、聞いてみたい。たとえば、僕が誰かと結婚することになったら。その時に。
僕はちらりと両親の様子を窺った。いつまでも仲のいい、見ていて恥ずかしくなるほどのラブラブ夫夫。子どもの身からするとうんざりとする時もあるけれど、でも実はちょっぴり羨ましい。僕もいつか愛する人と結婚して、両親みたいな関係を築けるのかな?
と、僕は掛け時計を見て、慌てて身を翻した。
「あっ、ごめん! 行ってきまーす!」
急いで家を出て、王都港に走った。
●●●●●●
お読みいただき、ありがとうございました!
第13回BL大賞に応募しているので、よければ応援よろしくお願いします!
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