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CHAPTER1
Episode 3 / 街灯と私
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ずっと曇ったまま、空はだんだんと暗くなっていた。雲の隙間から見えていた青は、夕陽の色と混じって濁っている。雨もそこまで降っていないものの、服のせいでずっとぬるま湯に浸かっているような心地。忘がたいことが立て続けに起きたことも相まって、気分はまだ良くなれなかった。
助けに来てくれたおじさんのジェスターと、酷い勘違いをするも守ってくれたベルジは、そろって真剣な表情のまま、周囲を見渡しながら歩いている。私は彼らの後ろにくっつくようにしていた。
あの怪物は一体なんだったんだろう。そもそも、ここは何があってボロボロになってしまったんだろう。不気味な様子の熊。普通ではなかった。
目が覚めてからずっと落ち着かなかった。だからやっと、この街をはじめてじっくり見られる。あちこちが石に囲まれた路地裏のイメージが強かったけれど、いま歩いている広々とした街路は、より寂しさが際立っている。かつて賑わっていたんだと思うと切なくなる。街路樹も痛々しく折れ曲がったままだ。
人が立っている光景が目に浮かぶ。あのお店はきっと盛況だっただろう。何も置かれていないが、道にはみ出ている商品棚は圧巻である。
並行して並んでいる建物はどれも色の彩度が落ちているように見える。吊り下げられた看板や旗が、誰かが来るのを待っているみたい。こっちへ手を振るように揺れ動いている。この街のことや二人のことを知りたくなってきた。
「あの……!」と言うと、二人が同時にこっちを見た。なんでもないただの反応だろうけど、息が詰まってしまった。人の目にはまだ慣れない。私の声が、ちゃんと聞こえているんだと考えると、どこか不思議だった。
「……ここは、どこ……?」
ジェスターが戸惑いを見せて、ベルジの方を向いてから、私の方へ振り返る。
「四区だ」
「よんく?」
「そうだ、ネーベの第四区。そんなになんにも覚えてないのか?」
ベルジが腰につけたさっきの武器に手を添えて、首を動かしている。周りに目を配りながら、慎重に進んでいる。
「うん……」
「五年ほど前だったか、魔法の爆発事故があってな。なあベルジ」
「ま、まあ」
「人が立ち入らなくなって、いつの間にか化け物の巣窟になっちまった。――覚えてないか?」
「う、うん……」
「……寝てたって?」
「ほんとなの、ほんと」
「嘘だとは思ってない」
ひとつひとつの単語をゆっくり考えても、やっぱり何も思い出せなかった。どこを見ても墨でできたような街。一目見れば忘れられないことが立て続けに起きているのに、一向に頭の中は目を覚ましてくれない。そう、街路樹だと思って眺めていたのが、コンパスで描かれた幾何学模様を重ねたようなクラゲだったということに気づいても。
「クラゲ……」
二人が一緒に息を詰まらせ、振り返る。足を止めて、あの何重もの光る円が織りなす、芸術ともいえる模様に私は釘付けになっていた。私は本当に今、目を覚ましているのか分からなくなっていく。
「アヴァ!逃げるぞ、あいつもまずいから」
「あ……ごめんなさい……」
「――おや?今日はずいぶんと……機嫌が悪いな」
歯を擦るような音が行き渡っていた。周りを取り囲んでいる。重なっているのは模様だけではなかった。妖艶な女性のクワイアを思わせる声。耳を塞ぎたくなる不協和に、私の空っぽになった頭の中が埋められていく。何かを考える気さえも失せてくる。
「おい、アヴァが危ない」
「……気持ちわりいな……!」
さっきの火の玉が、コウモリみたいに集まってきていたクラゲを横から次々と焼いていく。川の流れのように緩やかだった模様と動きは、火であぶられた途端に稲妻になる。発する声も金属を激しく引っ掻くような音に変わってしまう。足が地面についている感覚が戻ってきた。
「カッとなるな。アヴァ、今のうちに行くぞ。ちょっと走ろう」
* * *
息を切らすほどにとにかく走って逃げた。これほど走ったにも関わらず、寂しげな街の様子は一向に変わらない。どこまでもこんな風景が続いていると思うと、二人がいても心細くなる。
「……さみしい」
「もうすぐだ。もうちょっと我慢だ」
手が冷えた。内側から凍っていく手触り。あの時の氷と似ている。藍色で透明感もまるで全く無かったあの氷。どうしていいか分からなくなって、あの怪物の爪が迫ってきた時、反射的に放った。手を伸ばすと、まるで手袋を誰かに取られるような感触がした。それから、なにかに頭を全方向から押しつぶされて、耳を傾けずとも聞こえてくる泣き声や叫び声。
「また、また氷……!」
「見せてみろ」
痛くて袖で温めようと包んでいた手を、ジェスターに見せる。指先からは小さなつららがいくつもできていた。何も考えず、ただ彼の言葉に耳を澄ませることにした。
「お前は……ちゃんと習ってないな?」
「これ、何……?」
「魔法だ」
「なんだか、頭とか、ここをグッと掴まれるみたいな、誰かが見えたり、ドンドンドンって、こう、叩いてくるみたいな感じがするの」
私は自分の頭と胸を片手で叩いたりしてみながら、氷と一緒に襲ってくる激しい何かを表現した。
「そうか……。ちょっと休んだほうがいいな。家は?車で送ろう」
「……覚えてないの」
二人は私の言葉を聞く度に、顔を引きながら苦笑いしていた。私も自分に対してそんな気持ちだった。自分のことくらいは覚えていて欲しかった。
「参ったな……。じゃあ一旦、俺の家まで行こう。またそこでじっくり考えような。もうすぐここも出られるから、もう少しがんばれ」
ここを出ると、人がたくさんいるところがあるんだろうか。ここと違って明るいのか。とにかくジェスターの言葉は、この街で唯一のランプだった。
「化け物はな、どういうわけだか知らんが、人の弱みが大好物なんだ。あんまり怖がるなよ」
「気持ち悪かった」
「ああ、みんな寒気がするような見た目してる。なんだ、確か名前があったよな……レー……レディア?なんたらっていう」「レディオラリアですよ」「ああそうだ。変な名前だろ?」
「レ、レリオラリラ……」
うまく言えなかった。
「名前くらい習いますよね」「覚える必要ないだろ、化け物で通じるし」「はあ」
何も感じるなと言われても無理だ。何も分からないっていうのが、どれほど無力で寂しくて恐ろしいことか。身をもって思い知ったのだから。
* * *
足が少し痛くなってきた頃には、大きな門の前に着いた。鉄で補強されていて、あの怪物も及ばぬ高さまである。ここだけ家々とは違って、より手入れのされた石が積まれている。この第四区に来た時に私はこんなところを通ったのだろうか。こんなにも巨大で目に残るのに、やっぱり引っかかるものは無かった。
「この、向こう側が第三区。まあ門はもちろん開けない。ってか、これはハリボテだ。頭のいい化け物たちがわんさか一気に来るかもしれん。この検問所から行く」
門を挟むように建てられた検問所に入る。年季の入った扉が、木の軋む音を鳴らして、物静かな空間を切った。
「ったく、ちゃんと掃除しろよ」
「僕ら以外来ないから、まあ……」
暗い。誰も使っていないのか、床の木材はカビが生えていそうだし、机や棚の引き出しは開けっ放し。紙も散らかっていて、もはや廃墟だった。壁紙は剥がれ、雨漏りも至る所で見られる。ジェスターが壁にある何かをカチカチと触ったが、何も起きなかった。
「つかねえ。うへー、ベルジ今度掃除やっといてくれねーか」
「ヤですよこんな。喘息になったら……」
ジェスターが指を唐突に鳴らした。ベルジの放っていた火の玉みたいなものが、宙に浮いて、止まった。部屋の隅々まで見える。雑に積まれた本や、壊れた棚、椅子も顔を出した。
ギシギシと全体が音を立てている。三人合わせて足を止める。それでもカタカタと聞こえる。
「ちっさいのが紛れ込んでんな」
ジェスターがあの大きな音が出る武器を手に取る。真っ暗闇の中、かすかに音に動きがある。それは部屋中を虫みたいに動き回っているみたいだ。
「耳塞いでろ」
彼がそういうと、すぐに撃った。音が止んだ。
「さっすがジェスターさん、やっぱすげえや」
「よくいるやつだ」
「あれって、家の中とかでも、出ちゃうんだ……レリオラリラ」
心配していたことが漏れる。
「……レディオラリア。まあ大丈夫。怪物がいるのはここだけだよ。どこから来てるのか分からないんだけど」
ベルジが親切に教えてくれた。
怪物は妙な見た目をしている。襲ってきた熊みたいなのだって、体から蔦が生えてたし、黒い血みたいな液体を流していた。いま一瞬見えたのも、ありえないぐらい大きくなったカナブンみたいだった。それに花がいっぱいくっついていた。翅の擦れる音か、ギチギチとした音をずっと鳴らしていた。
「あっちだ」
窓からオレンジ色の光がふんわりと入ってきている。ヘドロみたいな雰囲気が、一気に焚き火の周りみたいに感じる。
ジェスターが扉を開けて見えてきたのは、音が重なり、人の話し声が聞こえ、明かりの灯った街の光景。建物はさっきと似た見た目ではあるものの、明らかに服が違うようだ。屋根も塗装がしっかりと着けてあって綺麗。石畳も目立ったヒビや穴もない。ゴミも落ちていない。
あぁ、目を覚ますなら、せめてここが良かったと思った。
「すごい……」
「あぁ、そうだったな……。大丈夫か?」
「大丈夫って?」
「まあ……うん、とっとと帰ってしまおう」
ジェスターは顔を振りながら言った。
「アヴァ、あれに乗るんだ」
彼らが指さした先には、黒くて光沢のある大きな……乗り物がある。
「これに?」
「車。車だぞ?これ忘れちゃあ……」
ベルジがからかうように言う。
「くるま……」
「はは、アヴァは助手席座りな」
ジェスターが苦笑いしながら、手で叩いて教えてくれた。
「じょしゅせき……」
「隣だ」
顔みたいに見える方が前面だろう。丸くて白い目みたいなものが印象的。左右対称で、全体的に丸みを帯びている、細長い乗り物だ。
二人の真似をしながら、扉を開けて乗ってみる。柔らかい。石にしか座ってこなかったから、居心地の良さに感動する。タバコのにおいは気になってしまうところ。私はおそらく、苦手だ。
「ジェスターさーん!」
聞き慣れない男の人の声が近づいてくる。ジェスターは窓を開けた。
「オールト!んだよどうした?」
「どうしたって、なんで来なかったんですか会議!」
「あれ、今日は俺、ベルジと四区巡回するっつってなかったか」
「もう!何回目ですか!」
「数えたこた無い。とにかく、俺らは帰る。疲れてるんだ」
「来週は絶対ですよ!」
オールトと呼ばれた人が、顔を歪めたまま走り去っていく。なんの話をしているかさっぱりだったけど、この人はかなりいろんな人に慕われていそうだ。
扉の重々しさからも、本当に動くのかと思ったけれど、ガガガガ、という音が鳴って、全体が振動し始めた。びっくりしたが、彼らはうんともすんとも言わない。当たり前のことなんだろう。
ベルジの言った通り、知識まで虫食いになっているのかと思うと悔しい。間違いなく私は、誰かの目には単なるおバカさんとして映ることもあるかもしれない。
ジェスターが足を動かすと、車は動き始めた。体が後ろに押される感じがする。すごい。窓からは似た車が見える。たくさんの人が使っているみたいだ。色も形もみんな違う。ある種の個性のひとつだろうか。
「ね、ベルジくん、車って……」
後ろの席に振り返ると、すやすやと寝ている彼がいた。首を窓に預けて、口を開けていた。
「寝てる」
「げ、おいおい……ったくよー」
「大丈夫。助けてくれたし、頑張ってたし」
「優しいな」
どれほど痛かったんだろうか、想像するだけでも怖くなる。私は彼の役に立てなかった。むしろ困らせる一方で足枷になっていたかもしれない。こうして誰かに助けてもらってばかりいて、本当にいいのだろうか。ジェスターの家で休んだとして、邪魔にならないか。
けれど、ひとりで出歩くことさえ、また彼らのお世話になってしまうんだろう。それ以上に、周りに広がるすべてが怖い。誰かがそばにいてくれる方がいい。
「しょーがねえやつだ。……そうだ、いいもの聞かせてやろう。なんか思い出せるかもな」
何やら機械を片手でいじっている。カチカチと押すのを見ていると、音楽が流れはじめた。その場で演奏しているように聞こえてくる。
これは……ジャズだ。ゆったりとしたテンポ、シャリシャリとした音。つま先立ちで弾むようなピアノ。いい曲。膝に置いた指が、心地よいリズムに嵌めるように動く。
――なにも思い出せはしない。けれど音楽を聴くと不思議と張りつめていたものがふわふわになっていくような感じがして心地良い。街の光の色と溶け合っていて、ずっと外の景色を見ていられる。見えるのはほとんど、家々だけではあるが、綺麗だ。メロディに合わせて、オレンジ色の流れ星みたいな線が上下する。
「どうだ?なんかピンときたか?」
ドラムソロが空気を埋めた後、ジェスターが口を開く。
「ピンと?」
「なにか思い出せたかってこと」
「ううん。そもそも思い出すっていうのが……」
「なんだそりゃ。まぁ、めちゃくちゃ運は良かった。俺とベルジ、ちょうど見回りしてたんだ」
だからベルジは出会った時……。あの目はすごく鋭くて怖かった。狩人に狙われているガゼルとか、あんな気持ちなんだろう。
「へへっ、たぶんだけどベルジ、間違えてお前に向かって銃ぶっぱなしたろ?聞こえてきたぞ」
ジェスターが私を横目にくすくすと笑う。そうか、あれは銃というのか。あんなものに当たっていたらどうなっていたか。
強くベルジに怒ってしまった。それくらい言わないと止まらなかったかもしれないけれど、爪の間に入り込んだ汚れみたいに、彼が気にしていないか気になる。
「まあ許してやってくれ。コイツな、一回友達に化けたバケモンにコテンパンにされてんだ」
「え、そんな……嫌な感じ……」
「俺ならそんなことされたら、トサカに来る。ベルジなりのやり方だったんだろうけどな。怖かっただろ」
「怖かった」
「やり方を変えるよう俺から言っとくよ。お前みたいに迷子になった男の子もいたんだが、そいつとは未だに喧嘩中だ」
クラリネットのフレーズが落ち着かせてくれる。なにか掴めそうで掴めない感じが続く。自分の手を見ながら、そんな自分に嫌気がさす。アヴァって誰なの?名前の入った服なんて誰が着せたの?何のためにここにいるの?手に力が入る。何も解決はしない。力を抜く。
電灯の光を見ると、大丈夫だよって声をかけてくれている気がしてくる。帰る場所なんて知らないのに、おかえりって言ってくれているようだった。
助けに来てくれたおじさんのジェスターと、酷い勘違いをするも守ってくれたベルジは、そろって真剣な表情のまま、周囲を見渡しながら歩いている。私は彼らの後ろにくっつくようにしていた。
あの怪物は一体なんだったんだろう。そもそも、ここは何があってボロボロになってしまったんだろう。不気味な様子の熊。普通ではなかった。
目が覚めてからずっと落ち着かなかった。だからやっと、この街をはじめてじっくり見られる。あちこちが石に囲まれた路地裏のイメージが強かったけれど、いま歩いている広々とした街路は、より寂しさが際立っている。かつて賑わっていたんだと思うと切なくなる。街路樹も痛々しく折れ曲がったままだ。
人が立っている光景が目に浮かぶ。あのお店はきっと盛況だっただろう。何も置かれていないが、道にはみ出ている商品棚は圧巻である。
並行して並んでいる建物はどれも色の彩度が落ちているように見える。吊り下げられた看板や旗が、誰かが来るのを待っているみたい。こっちへ手を振るように揺れ動いている。この街のことや二人のことを知りたくなってきた。
「あの……!」と言うと、二人が同時にこっちを見た。なんでもないただの反応だろうけど、息が詰まってしまった。人の目にはまだ慣れない。私の声が、ちゃんと聞こえているんだと考えると、どこか不思議だった。
「……ここは、どこ……?」
ジェスターが戸惑いを見せて、ベルジの方を向いてから、私の方へ振り返る。
「四区だ」
「よんく?」
「そうだ、ネーベの第四区。そんなになんにも覚えてないのか?」
ベルジが腰につけたさっきの武器に手を添えて、首を動かしている。周りに目を配りながら、慎重に進んでいる。
「うん……」
「五年ほど前だったか、魔法の爆発事故があってな。なあベルジ」
「ま、まあ」
「人が立ち入らなくなって、いつの間にか化け物の巣窟になっちまった。――覚えてないか?」
「う、うん……」
「……寝てたって?」
「ほんとなの、ほんと」
「嘘だとは思ってない」
ひとつひとつの単語をゆっくり考えても、やっぱり何も思い出せなかった。どこを見ても墨でできたような街。一目見れば忘れられないことが立て続けに起きているのに、一向に頭の中は目を覚ましてくれない。そう、街路樹だと思って眺めていたのが、コンパスで描かれた幾何学模様を重ねたようなクラゲだったということに気づいても。
「クラゲ……」
二人が一緒に息を詰まらせ、振り返る。足を止めて、あの何重もの光る円が織りなす、芸術ともいえる模様に私は釘付けになっていた。私は本当に今、目を覚ましているのか分からなくなっていく。
「アヴァ!逃げるぞ、あいつもまずいから」
「あ……ごめんなさい……」
「――おや?今日はずいぶんと……機嫌が悪いな」
歯を擦るような音が行き渡っていた。周りを取り囲んでいる。重なっているのは模様だけではなかった。妖艶な女性のクワイアを思わせる声。耳を塞ぎたくなる不協和に、私の空っぽになった頭の中が埋められていく。何かを考える気さえも失せてくる。
「おい、アヴァが危ない」
「……気持ちわりいな……!」
さっきの火の玉が、コウモリみたいに集まってきていたクラゲを横から次々と焼いていく。川の流れのように緩やかだった模様と動きは、火であぶられた途端に稲妻になる。発する声も金属を激しく引っ掻くような音に変わってしまう。足が地面についている感覚が戻ってきた。
「カッとなるな。アヴァ、今のうちに行くぞ。ちょっと走ろう」
* * *
息を切らすほどにとにかく走って逃げた。これほど走ったにも関わらず、寂しげな街の様子は一向に変わらない。どこまでもこんな風景が続いていると思うと、二人がいても心細くなる。
「……さみしい」
「もうすぐだ。もうちょっと我慢だ」
手が冷えた。内側から凍っていく手触り。あの時の氷と似ている。藍色で透明感もまるで全く無かったあの氷。どうしていいか分からなくなって、あの怪物の爪が迫ってきた時、反射的に放った。手を伸ばすと、まるで手袋を誰かに取られるような感触がした。それから、なにかに頭を全方向から押しつぶされて、耳を傾けずとも聞こえてくる泣き声や叫び声。
「また、また氷……!」
「見せてみろ」
痛くて袖で温めようと包んでいた手を、ジェスターに見せる。指先からは小さなつららがいくつもできていた。何も考えず、ただ彼の言葉に耳を澄ませることにした。
「お前は……ちゃんと習ってないな?」
「これ、何……?」
「魔法だ」
「なんだか、頭とか、ここをグッと掴まれるみたいな、誰かが見えたり、ドンドンドンって、こう、叩いてくるみたいな感じがするの」
私は自分の頭と胸を片手で叩いたりしてみながら、氷と一緒に襲ってくる激しい何かを表現した。
「そうか……。ちょっと休んだほうがいいな。家は?車で送ろう」
「……覚えてないの」
二人は私の言葉を聞く度に、顔を引きながら苦笑いしていた。私も自分に対してそんな気持ちだった。自分のことくらいは覚えていて欲しかった。
「参ったな……。じゃあ一旦、俺の家まで行こう。またそこでじっくり考えような。もうすぐここも出られるから、もう少しがんばれ」
ここを出ると、人がたくさんいるところがあるんだろうか。ここと違って明るいのか。とにかくジェスターの言葉は、この街で唯一のランプだった。
「化け物はな、どういうわけだか知らんが、人の弱みが大好物なんだ。あんまり怖がるなよ」
「気持ち悪かった」
「ああ、みんな寒気がするような見た目してる。なんだ、確か名前があったよな……レー……レディア?なんたらっていう」「レディオラリアですよ」「ああそうだ。変な名前だろ?」
「レ、レリオラリラ……」
うまく言えなかった。
「名前くらい習いますよね」「覚える必要ないだろ、化け物で通じるし」「はあ」
何も感じるなと言われても無理だ。何も分からないっていうのが、どれほど無力で寂しくて恐ろしいことか。身をもって思い知ったのだから。
* * *
足が少し痛くなってきた頃には、大きな門の前に着いた。鉄で補強されていて、あの怪物も及ばぬ高さまである。ここだけ家々とは違って、より手入れのされた石が積まれている。この第四区に来た時に私はこんなところを通ったのだろうか。こんなにも巨大で目に残るのに、やっぱり引っかかるものは無かった。
「この、向こう側が第三区。まあ門はもちろん開けない。ってか、これはハリボテだ。頭のいい化け物たちがわんさか一気に来るかもしれん。この検問所から行く」
門を挟むように建てられた検問所に入る。年季の入った扉が、木の軋む音を鳴らして、物静かな空間を切った。
「ったく、ちゃんと掃除しろよ」
「僕ら以外来ないから、まあ……」
暗い。誰も使っていないのか、床の木材はカビが生えていそうだし、机や棚の引き出しは開けっ放し。紙も散らかっていて、もはや廃墟だった。壁紙は剥がれ、雨漏りも至る所で見られる。ジェスターが壁にある何かをカチカチと触ったが、何も起きなかった。
「つかねえ。うへー、ベルジ今度掃除やっといてくれねーか」
「ヤですよこんな。喘息になったら……」
ジェスターが指を唐突に鳴らした。ベルジの放っていた火の玉みたいなものが、宙に浮いて、止まった。部屋の隅々まで見える。雑に積まれた本や、壊れた棚、椅子も顔を出した。
ギシギシと全体が音を立てている。三人合わせて足を止める。それでもカタカタと聞こえる。
「ちっさいのが紛れ込んでんな」
ジェスターがあの大きな音が出る武器を手に取る。真っ暗闇の中、かすかに音に動きがある。それは部屋中を虫みたいに動き回っているみたいだ。
「耳塞いでろ」
彼がそういうと、すぐに撃った。音が止んだ。
「さっすがジェスターさん、やっぱすげえや」
「よくいるやつだ」
「あれって、家の中とかでも、出ちゃうんだ……レリオラリラ」
心配していたことが漏れる。
「……レディオラリア。まあ大丈夫。怪物がいるのはここだけだよ。どこから来てるのか分からないんだけど」
ベルジが親切に教えてくれた。
怪物は妙な見た目をしている。襲ってきた熊みたいなのだって、体から蔦が生えてたし、黒い血みたいな液体を流していた。いま一瞬見えたのも、ありえないぐらい大きくなったカナブンみたいだった。それに花がいっぱいくっついていた。翅の擦れる音か、ギチギチとした音をずっと鳴らしていた。
「あっちだ」
窓からオレンジ色の光がふんわりと入ってきている。ヘドロみたいな雰囲気が、一気に焚き火の周りみたいに感じる。
ジェスターが扉を開けて見えてきたのは、音が重なり、人の話し声が聞こえ、明かりの灯った街の光景。建物はさっきと似た見た目ではあるものの、明らかに服が違うようだ。屋根も塗装がしっかりと着けてあって綺麗。石畳も目立ったヒビや穴もない。ゴミも落ちていない。
あぁ、目を覚ますなら、せめてここが良かったと思った。
「すごい……」
「あぁ、そうだったな……。大丈夫か?」
「大丈夫って?」
「まあ……うん、とっとと帰ってしまおう」
ジェスターは顔を振りながら言った。
「アヴァ、あれに乗るんだ」
彼らが指さした先には、黒くて光沢のある大きな……乗り物がある。
「これに?」
「車。車だぞ?これ忘れちゃあ……」
ベルジがからかうように言う。
「くるま……」
「はは、アヴァは助手席座りな」
ジェスターが苦笑いしながら、手で叩いて教えてくれた。
「じょしゅせき……」
「隣だ」
顔みたいに見える方が前面だろう。丸くて白い目みたいなものが印象的。左右対称で、全体的に丸みを帯びている、細長い乗り物だ。
二人の真似をしながら、扉を開けて乗ってみる。柔らかい。石にしか座ってこなかったから、居心地の良さに感動する。タバコのにおいは気になってしまうところ。私はおそらく、苦手だ。
「ジェスターさーん!」
聞き慣れない男の人の声が近づいてくる。ジェスターは窓を開けた。
「オールト!んだよどうした?」
「どうしたって、なんで来なかったんですか会議!」
「あれ、今日は俺、ベルジと四区巡回するっつってなかったか」
「もう!何回目ですか!」
「数えたこた無い。とにかく、俺らは帰る。疲れてるんだ」
「来週は絶対ですよ!」
オールトと呼ばれた人が、顔を歪めたまま走り去っていく。なんの話をしているかさっぱりだったけど、この人はかなりいろんな人に慕われていそうだ。
扉の重々しさからも、本当に動くのかと思ったけれど、ガガガガ、という音が鳴って、全体が振動し始めた。びっくりしたが、彼らはうんともすんとも言わない。当たり前のことなんだろう。
ベルジの言った通り、知識まで虫食いになっているのかと思うと悔しい。間違いなく私は、誰かの目には単なるおバカさんとして映ることもあるかもしれない。
ジェスターが足を動かすと、車は動き始めた。体が後ろに押される感じがする。すごい。窓からは似た車が見える。たくさんの人が使っているみたいだ。色も形もみんな違う。ある種の個性のひとつだろうか。
「ね、ベルジくん、車って……」
後ろの席に振り返ると、すやすやと寝ている彼がいた。首を窓に預けて、口を開けていた。
「寝てる」
「げ、おいおい……ったくよー」
「大丈夫。助けてくれたし、頑張ってたし」
「優しいな」
どれほど痛かったんだろうか、想像するだけでも怖くなる。私は彼の役に立てなかった。むしろ困らせる一方で足枷になっていたかもしれない。こうして誰かに助けてもらってばかりいて、本当にいいのだろうか。ジェスターの家で休んだとして、邪魔にならないか。
けれど、ひとりで出歩くことさえ、また彼らのお世話になってしまうんだろう。それ以上に、周りに広がるすべてが怖い。誰かがそばにいてくれる方がいい。
「しょーがねえやつだ。……そうだ、いいもの聞かせてやろう。なんか思い出せるかもな」
何やら機械を片手でいじっている。カチカチと押すのを見ていると、音楽が流れはじめた。その場で演奏しているように聞こえてくる。
これは……ジャズだ。ゆったりとしたテンポ、シャリシャリとした音。つま先立ちで弾むようなピアノ。いい曲。膝に置いた指が、心地よいリズムに嵌めるように動く。
――なにも思い出せはしない。けれど音楽を聴くと不思議と張りつめていたものがふわふわになっていくような感じがして心地良い。街の光の色と溶け合っていて、ずっと外の景色を見ていられる。見えるのはほとんど、家々だけではあるが、綺麗だ。メロディに合わせて、オレンジ色の流れ星みたいな線が上下する。
「どうだ?なんかピンときたか?」
ドラムソロが空気を埋めた後、ジェスターが口を開く。
「ピンと?」
「なにか思い出せたかってこと」
「ううん。そもそも思い出すっていうのが……」
「なんだそりゃ。まぁ、めちゃくちゃ運は良かった。俺とベルジ、ちょうど見回りしてたんだ」
だからベルジは出会った時……。あの目はすごく鋭くて怖かった。狩人に狙われているガゼルとか、あんな気持ちなんだろう。
「へへっ、たぶんだけどベルジ、間違えてお前に向かって銃ぶっぱなしたろ?聞こえてきたぞ」
ジェスターが私を横目にくすくすと笑う。そうか、あれは銃というのか。あんなものに当たっていたらどうなっていたか。
強くベルジに怒ってしまった。それくらい言わないと止まらなかったかもしれないけれど、爪の間に入り込んだ汚れみたいに、彼が気にしていないか気になる。
「まあ許してやってくれ。コイツな、一回友達に化けたバケモンにコテンパンにされてんだ」
「え、そんな……嫌な感じ……」
「俺ならそんなことされたら、トサカに来る。ベルジなりのやり方だったんだろうけどな。怖かっただろ」
「怖かった」
「やり方を変えるよう俺から言っとくよ。お前みたいに迷子になった男の子もいたんだが、そいつとは未だに喧嘩中だ」
クラリネットのフレーズが落ち着かせてくれる。なにか掴めそうで掴めない感じが続く。自分の手を見ながら、そんな自分に嫌気がさす。アヴァって誰なの?名前の入った服なんて誰が着せたの?何のためにここにいるの?手に力が入る。何も解決はしない。力を抜く。
電灯の光を見ると、大丈夫だよって声をかけてくれている気がしてくる。帰る場所なんて知らないのに、おかえりって言ってくれているようだった。
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サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
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