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お姉ちゃん系甘々サキュバスに負けない!

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「あぁ、朝食を食べた感じがしない……」

 サフィアのキスと『後でね』という言葉にドキドキし、レックスは朝食をゆっくり味わうことができなかった。
 この後サフィアにいったい何をされるのか。まさかアイヴィも混ぜて責められ放題にされるのではないだろうかと悪寒が走る。

 ぼーっと廊下を歩いている内に、レックスは背の高い人影にぶつかってしまった。

「ごっ、ごめん!」

 とっさに頭を一度下げる。顔を上げた彼の目に入ったのは、アイヴィやサフィアより長身、下手をすれば青年男性ほどの身長を持つ赤毛の女性だった。もちろん、紅の翼と角を生やしたサキュバスメイドである。

「ヴァネッサ」

「あれ、あれあれ? どうしたのレックス君。なんか嫌なことあった? 元気ないって顔してるよ?」

 彼女はかがんでレックスを真正面から見つめる。右目は長い髪で隠されているが、優しく温かな左目が彼へ心配そうな視線を送っていた。

「ちょっとね……」

「その顔はちょっとというようなものじゃないと思うよ? お姉ちゃんに話してみて?」

 レックスはマーガレットの娘であるサキュバスメイド3姉妹の長女、ヴァネッサにはあまり警戒心を抱いていなかった。今まで彼女が無理矢理搾ってきたことは無く、彼女自身優しい姉として彼に接してきたからだ。
 彼女になら少し愚痴っても大丈夫か、とレックスは心の内を話すことを決める。

「実はさ」

 毎晩おこなわれるアイヴィの悪夢と搾精に疲れたこと、そんなものは修行の内だというように状況を軽視する父母のこと、所構わずいたずらを仕掛けてくるサフィアに苦労していることを洗いざらい愚痴る。
 それでもヴァネッサはうんうんと頷きながら文句を言うことなく彼の話を聞いた。

「うんうん、そうだね。旦那様とお母様、ちょっと人目を気にしなさすぎってところあるよね」

「そうだよなぁ~。あっ、ゴメン、愚痴が多くなってしまって」

「大丈夫、レックス君は頑張っているよ。ちゃんと見ているお姉ちゃんが言うんだもん。少しくらい不満を漏らしたって、お姉ちゃんはレックス君のことを嫌いになんてならないよ」

「ヴァネッサ……」

 ぎゅっと暖かな抱擁ほうよう。他のサキュバスより大きな翼と柔らかな体で包まれ、本能を刺激する女の香りに体の力が抜けそうになる。

「だからね」

 そして彼女の右目を隠していた髪がかき上げられ、その眼光が露わになった。右目には瞳の代わりに、複雑で怪奇な魔法陣が描かれていた。
 魔族の目にごくまれに現れるという、怪しげな力を持つ魔眼。それが至近距離でレックスの視界に映る。

「フフッ、お姉ちゃんの前ではダメになっていいんだよ?」

「あ、ああっ!」

 やられた、まさかヴァネッサに! と考えた時にはもう遅い。魔眼の影響がすぐに精神に現れ、物事を考えたりその場から逃げ出すという選択肢が真っ白に塗りつぶされる。

「さぁ、自分に正直になろうね。私のお部屋いこっか。お姉ちゃんに何してほしい? お姉ちゃんはレックス君のものだから、何をしたっていいんだよ? でもレックス君はお姉ちゃんのものだからね? 普段の疲れ、私の体でいっぱい癒してあげるね」

「ヴァネッサお姉ちゃんはボクのもの、ボクはヴァネッサお姉ちゃんのもの、ヴァネッサお姉ちゃんはボクのもの……」

 もはやレックスは魔眼にしっかりと洗脳され、ぶつぶつと同じうわ言を繰り返す人形と化していた。その心は丸裸にされ、正直に自分の心を話すだけになっている。

「さぁ、言ってみて? お姉ちゃんと何がしたい?」

 ぎゅっとレックスの顔に胸が押し当てられ、頭が谷間の間に埋もれる形となった。むにゅりとした柔くて心地よい感覚。もう既にレックスの精神と体は正直になっていた。腕を回してぎゅっとヴァネッサの体を抱きしめ返して、より強く彼女の体に埋もれる形となる。

「……たい」

「やぁん、聞こえないよぉ。もっとはっきり言ってみて?」

「ヴァネッサお姉ちゃんと、したいです! いっぱいエッチなことしたい! ヴァネッサお姉ちゃんはボクのものだ! ボクが絶対に幸せにする!」

「嬉しい……! あの時言ってくれたこと、まだ覚えているんだね。じゃあ、私のお部屋でたくさん気持ちよくなろうね?」

 ゆっくりと手で撫でられる感覚に、レックスはうっとりとして目を閉じた。香水とフェロモンの甘い香り、そして魔眼の力でとろとろとまどろむ。

「廊下で何をやっているのです、ヴァネッサ姉さん」

 しかし、レックスが大声を出したのを聞いたのだろう。カツカツと足音を立てながら床を踏みしめ、桃色の長髪をゆらしながらアイヴィがその場へと歩いてきた。
 そしていつもの無表情のまま腕を組んで、ヴァネッサの行く手を阻むように仁王立ちする。

「あら、アイヴィ? 悪いけど、レックス君は今から私と楽しむから。お姉ちゃんに優先権があるからゴメンね?」

「ほう? 独り占めすると」

 無表情ながらも不機嫌そうなアイヴィは、レックスとヴァネッサの前までつかつかと移動。そして右手を静かにレックスの顔に近づけ、パチンと指を鳴らした。

「はっ!? って、うわ!? ヴァネッサ!?」

 その音でレックスは正気へ戻り、強く抱き着いていたヴァネッサからばっと離れる。

「な、何をしたの!? 私の魔眼より強力な魔法なんて……!?」

「魔法なんて使ってませんよ。ただ指を鳴らしたんです。調教済みのレックス様は私が指を鳴らすだけで正気になったり、強い催眠状態になったりします」

「えっ!? ボクの体、今そんなことになってるの!? いつやった? おい、いつそんなことできるようにした!?」

「いつって、レックス様が小さな時から毎晩ずっと指を鳴らして刷り込ませてきました。いざという時のために刷り込んだ甲斐がありました」

「お前なんてことを!? いや、それより助けてくれアイヴィ! 後生だから! ヴァネッサお姉ちゃんに甘えたら絶対ダメになる! ていうかまだ朝だぞ!? せっかくの休日が潰れる!」

 普段通りにヴァネッサと呼び捨てにするのではなく、お姉ちゃんと言う単語を付けることから、まだレックスは彼女の魔眼の影響を受けていることをアイヴィは理解した。安心するレックス。しかしーー

「助けに来たわけではありませんよ? レックス様は魔眼と私の調教で完全に逃げられない状態。いいチャンスです」

「は?」

「私はヴァネッサ姉さんが独り占めをするのがズルいと言っているのです。ここはサフィアも交えてたっぷりと愛し合いましょう。ね、ヴァネッサ姉さん」

「……は?」

「うーん、そうだね。レックス君が頑張れば3人がかりでもみんな満足できるよね。レックス君が元気にぴゅっぴゅできるようになるまで成長するの、みんな待ってたんだよ?」

「…………は?」

「愛しています、レックス様。成長したレックス様の精気を全部私達に捧げてください。大好きです、お慕いしています、ずっと一緒にいて」

「うふふっ。大丈夫だよ怖くないよ? お姉ちゃんたちにぜ~んぶ任せていっぱいイこうね? どこを責められたい? 耳? 口? 胸? それともやっぱり、アソコかなぁ?」

「ひっ!? 死ぬ!? 絶対に逝く!! だっ、誰か助けて!」

「ご心配なさらず。死なない程度に4人で愛し合いましょう。さぁ、レックス様は私が指を鳴らすと、意識を保ったまま深く深く堕ちていきます」

「やめっ――」

 指を鳴らす音。直後にレックスは体を動かすことができない人形となり、ヴァネッサにおんぶされて彼女の寝室へと持ち込まれた。その日の情交は朝から夜まで続いたという。

 後に寝室で3人のサキュバスと共に目覚めたレックスは語った。「は? 負けてないが? ボクが負けたと思わない限り負けてないが?」と。
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