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第1章 異世界教へようこそ
第9話 異世界へと繋がったふたり──【1章完結】
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放課後──涼しさも増し幾分か日の落ちるのも早くなってきた季節。
「雫が待ってる、急がないと……」
約束した公園に自転車を走らせていた。
あの事件の後、何度か前を通ったけど時間が止まっているように何年も前から変わらぬ公園。
「光輝、結衣……」。
前を通るたびに思い出してしまう。漆黒の闇の中で降り立ったピエロ、禁断の果実、不思議な少女。すべてはここから始まった。
公園の駐輪場に来ると聞きなれた声が風に乗ってふらふらと耳に入る。
「これを食べれば……朔也……解散……るわ」
「ホントぅ……こ……金……食……ればいいの……」
雫と……沙羅の声だ。
嫌な予感がしてならない。スタンドもかけずに自転車を乗り捨てて走った。
倒れる自転車、吹っ飛ぶバッグ。これらは事象として起きているだけで意識は目の前しかなかった。
「いた!」
対面して話している沙羅と雫。
雫の手には……「禁断の果実!」
苦しい……息が出来ない。なんでこんなに苦しくなるほど走っているのだろう。そんな必死な僕に気づくことなく雫は禁断の果実を口に運んだ。
「しずくー」
僕の存在に気付いたふたり、雫はニコリと微笑んで手を振ると風のように消えていった。
「朔也」
沙羅の悲しげな声、寂しそうな表情。
既に肺の酸素は消え失せ呼吸が出来ない。それでも必死に走る。そんな小さなことより雫が禁断の果実を……スピードを落とすことなく沙羅の元へ。
「朔也、雫はあっちの世界に行って光輝や結衣を助けに行ってくれるって」
声が震えている。
「雫がそんなことを……でもなんで沙羅がこんなところに」
「通りがかったのよ、そしたら雫さんに声をかけられたの。朔也を異世界教から抜けさせたいって」
なぜだろう体が震える。雫まで巻き込んでしまった……彼女は一体僕に何を伝えたかったのだろう……。思わず力なくへたりこんだ。
「大丈夫よ、異世界教をもっと大きくして光輝と結衣を助けてあげましょう」
起き上がらせてくれる沙羅、バシンと背中を叩かれた。
「そうだね。異世界教を大きくして光輝の助けを増やしてあげないとな。光輝ならいつか結衣を救ってくれるはずだ」
大きくうなずいてくれる沙羅に心が安堵する。僕のことを理解してくれる、そんな気がした。
「あとは雫も一緒にこっちの世界に戻してあげないとね」
光輝の仲間も随分と送り込んだ。雫まで行ったのなら百人力だろう。
その後も着実に異世界教徒を増やしていくのだった。
* * *
その日の夜。
なんで沙羅は禁断の果実を持ってあの場所を通りがかったのだろう。
禁断の果実はエデンで1度だけしか実っことはない……それを沙羅に渡して大事に金庫に入れていたはず。
「持ち歩いていたの……か? それとも沙羅も生み出せるのか……」
いやいや、そんなはずはない。僕が異世界リンゴを生み出した数だけ異世界教徒が誕生している。もしかして僕の知らない異世界教徒もいるのか……疑念の渦がグルグル巡っていた。
一体……何が正しくて何が間違っているのか。
ベッドに倒れ込み天井を見上げる。白い天井をキャンパスに思い返される雫の声。
○。○。○。○。
わたし思い出したの! 中2の時に何があったか……あなたは沙羅に騙されているのよ。
○。○。○。○。
ファサーと聞こえてくる風の音。
「エデンが僕を呼んでいる……」
目を閉じてエデンへと向かう。……揺らめく樹木。多くの葉がザワザワと爽やかな音を奏でている。いつもの風景だ。……いや、木の裏に人の気配があった。
「人!? もしかしてあの時に見かけた女性か」
大樹の陰に隠れる人影に向かって走り出す。
木が近づいてくると女性が大きく樹木を揺らし始めた。揺れる幹、散っていく葉、ブランブランする異世界リンゴ。
ポトリ……
異世界リンゴが枝と別れを告げ、地面に落ちると僕の足元にコロコロと転がった。
不思議な光景に立ち尽くす僕の足に当たった異世界リンゴ。足元でゆらゆら揺れる異世界リンゴを拾い上げる。
「あれ?……」
異世界リンゴに触れた瞬間に現実に引き戻されるはずだが戻らない。それどころか大樹を中心のぼやけていたはずの風景が鮮明になっていた。
「ここはどこ……だ」
どこまでも広がる世界、良くわからない場所に夢を覚まそうと必死に頬をつねり頭を振ってみる。しかし残ったのは頬の痛みとふらふらする頭だけだった。
一歩、二歩……徐々に足早になっていく足。高原を下り池を越え森に入る。どの道が正解なのか分からないが兎に角走った。
いくら走っても世界は広がっている……それどころか森を抜けることさえ出来なかった。
「ハァ、ハァ……」
息が切れる。喉も乾いたしお腹も空いた。
見知らぬ台地に生える植物や木の実を食べるのは怖い。それどころか熊や猪なんかに遭遇でもしたら無事でいられるか……。
わき出る恐怖が足をすくめ疲労を思い出させる。自然と両手が|膝に乗り大きく溜息を付いた。
手に握られている異世界リンゴ、琢磨くんたちが美味しそうに食べていた風景が頭に浮かぶ。
「これ、食べちゃおうかなぁ」
○。○。○。○。
『僕と沙羅に与えられた使命』
①異世界リンゴをより多くの人に分け与える。
②使命を受ける者は異世界リンゴを食べてはいけない。
③黄金のリンゴの他、違ったリンゴが穫れることがある。それを上納すること。
○。○。○。○。
こんな時に生真面目に思い出してしまう自分が嫌になる。
ゴクリと唾を飲み込む。体は水分を欲し胃は食物を欲するように大合唱。
「異世界に飛ばされたところで行った先で隠れていれば大丈夫だろう……どうせ戻ってこれるはずだし」
正常な思考を妨げ、正当化しか出来ないほどに憔悴していた。
ガブリ……一気に食らいつく。
みんなが口を揃えて言っていた言葉『うまい』。例えることの出来ない旨味が口の味覚を刺激して優しい香りが鼻から突き抜ける。
気づくと完食。一つしかないことが悔しいほど美味しかった。
「ん?」
特に体が変化した様子はない。違うのは満たされた喉、満たされた腹、満たされた心。ゲームでいう体力満タン薬を飲んだような心地よさ。一言でいえば完全回復。
大の字になって草の絨毯に寝転んだ……優しく吹き抜ける風が頬を掠めて吹き抜ける。ゆっくりと流れる雲を眺めていると、エデンに監禁されているような恐ろしさが徐々に薄れ瞼が重くなる。
○。○。○。○ 。。。
「ん……んん…………。ああ、いつのまに眠っちゃったんだ」
目を擦りながら横になっている体を起こし、「よし、行くか」と走り出そうとした時……。
「あれ? ここはどこだ?」
さっきまで居た場所と違う……深い森、微かな木漏れ日が地面を照らしているが薄暗さが見慣れる地という不安を増幅させる。
「なんだこれ……」
不思議な力を感じる石碑……そこに掘られているのは文字? 絵? 良くわからない記号のようなものが描かれていた。
「そこにいるのは誰!?」
女性の声が僕に突き刺さる。明らかに不審者に浴びせるような口調。声のする方向を見ると……
「雫!!!」
まさしく雫、僕の幼馴染である斑霧 雫だった。そう……彼女との再会が大きく運命を変えるのだった。
──第1章 完
===
第1章完結です。
先ずはここまで及び頂きありがとうございます。
第2章『異世界教と異世界教』
第10話 犯してしまった禁忌
異世界リンゴを食べてはいけないと釘を刺されていたにも関わらず口にしてしまった朔弥。なぜ食べてはいけなかったのか、朔弥が最初に食べさせられた実はなんだったのか……様々な謎が解き明かされていきます。
再開した雫、彼女は本当に雫なのか……そして光輝や結衣はいまどこで何をしているのか……沙羅は一体何を考えているのか。そして捻じ曲げられた運命とは。
そんな周りに振り回されながら成長していく主人公朔弥に応援をお願いします。
「雫が待ってる、急がないと……」
約束した公園に自転車を走らせていた。
あの事件の後、何度か前を通ったけど時間が止まっているように何年も前から変わらぬ公園。
「光輝、結衣……」。
前を通るたびに思い出してしまう。漆黒の闇の中で降り立ったピエロ、禁断の果実、不思議な少女。すべてはここから始まった。
公園の駐輪場に来ると聞きなれた声が風に乗ってふらふらと耳に入る。
「これを食べれば……朔也……解散……るわ」
「ホントぅ……こ……金……食……ればいいの……」
雫と……沙羅の声だ。
嫌な予感がしてならない。スタンドもかけずに自転車を乗り捨てて走った。
倒れる自転車、吹っ飛ぶバッグ。これらは事象として起きているだけで意識は目の前しかなかった。
「いた!」
対面して話している沙羅と雫。
雫の手には……「禁断の果実!」
苦しい……息が出来ない。なんでこんなに苦しくなるほど走っているのだろう。そんな必死な僕に気づくことなく雫は禁断の果実を口に運んだ。
「しずくー」
僕の存在に気付いたふたり、雫はニコリと微笑んで手を振ると風のように消えていった。
「朔也」
沙羅の悲しげな声、寂しそうな表情。
既に肺の酸素は消え失せ呼吸が出来ない。それでも必死に走る。そんな小さなことより雫が禁断の果実を……スピードを落とすことなく沙羅の元へ。
「朔也、雫はあっちの世界に行って光輝や結衣を助けに行ってくれるって」
声が震えている。
「雫がそんなことを……でもなんで沙羅がこんなところに」
「通りがかったのよ、そしたら雫さんに声をかけられたの。朔也を異世界教から抜けさせたいって」
なぜだろう体が震える。雫まで巻き込んでしまった……彼女は一体僕に何を伝えたかったのだろう……。思わず力なくへたりこんだ。
「大丈夫よ、異世界教をもっと大きくして光輝と結衣を助けてあげましょう」
起き上がらせてくれる沙羅、バシンと背中を叩かれた。
「そうだね。異世界教を大きくして光輝の助けを増やしてあげないとな。光輝ならいつか結衣を救ってくれるはずだ」
大きくうなずいてくれる沙羅に心が安堵する。僕のことを理解してくれる、そんな気がした。
「あとは雫も一緒にこっちの世界に戻してあげないとね」
光輝の仲間も随分と送り込んだ。雫まで行ったのなら百人力だろう。
その後も着実に異世界教徒を増やしていくのだった。
* * *
その日の夜。
なんで沙羅は禁断の果実を持ってあの場所を通りがかったのだろう。
禁断の果実はエデンで1度だけしか実っことはない……それを沙羅に渡して大事に金庫に入れていたはず。
「持ち歩いていたの……か? それとも沙羅も生み出せるのか……」
いやいや、そんなはずはない。僕が異世界リンゴを生み出した数だけ異世界教徒が誕生している。もしかして僕の知らない異世界教徒もいるのか……疑念の渦がグルグル巡っていた。
一体……何が正しくて何が間違っているのか。
ベッドに倒れ込み天井を見上げる。白い天井をキャンパスに思い返される雫の声。
○。○。○。○。
わたし思い出したの! 中2の時に何があったか……あなたは沙羅に騙されているのよ。
○。○。○。○。
ファサーと聞こえてくる風の音。
「エデンが僕を呼んでいる……」
目を閉じてエデンへと向かう。……揺らめく樹木。多くの葉がザワザワと爽やかな音を奏でている。いつもの風景だ。……いや、木の裏に人の気配があった。
「人!? もしかしてあの時に見かけた女性か」
大樹の陰に隠れる人影に向かって走り出す。
木が近づいてくると女性が大きく樹木を揺らし始めた。揺れる幹、散っていく葉、ブランブランする異世界リンゴ。
ポトリ……
異世界リンゴが枝と別れを告げ、地面に落ちると僕の足元にコロコロと転がった。
不思議な光景に立ち尽くす僕の足に当たった異世界リンゴ。足元でゆらゆら揺れる異世界リンゴを拾い上げる。
「あれ?……」
異世界リンゴに触れた瞬間に現実に引き戻されるはずだが戻らない。それどころか大樹を中心のぼやけていたはずの風景が鮮明になっていた。
「ここはどこ……だ」
どこまでも広がる世界、良くわからない場所に夢を覚まそうと必死に頬をつねり頭を振ってみる。しかし残ったのは頬の痛みとふらふらする頭だけだった。
一歩、二歩……徐々に足早になっていく足。高原を下り池を越え森に入る。どの道が正解なのか分からないが兎に角走った。
いくら走っても世界は広がっている……それどころか森を抜けることさえ出来なかった。
「ハァ、ハァ……」
息が切れる。喉も乾いたしお腹も空いた。
見知らぬ台地に生える植物や木の実を食べるのは怖い。それどころか熊や猪なんかに遭遇でもしたら無事でいられるか……。
わき出る恐怖が足をすくめ疲労を思い出させる。自然と両手が|膝に乗り大きく溜息を付いた。
手に握られている異世界リンゴ、琢磨くんたちが美味しそうに食べていた風景が頭に浮かぶ。
「これ、食べちゃおうかなぁ」
○。○。○。○。
『僕と沙羅に与えられた使命』
①異世界リンゴをより多くの人に分け与える。
②使命を受ける者は異世界リンゴを食べてはいけない。
③黄金のリンゴの他、違ったリンゴが穫れることがある。それを上納すること。
○。○。○。○。
こんな時に生真面目に思い出してしまう自分が嫌になる。
ゴクリと唾を飲み込む。体は水分を欲し胃は食物を欲するように大合唱。
「異世界に飛ばされたところで行った先で隠れていれば大丈夫だろう……どうせ戻ってこれるはずだし」
正常な思考を妨げ、正当化しか出来ないほどに憔悴していた。
ガブリ……一気に食らいつく。
みんなが口を揃えて言っていた言葉『うまい』。例えることの出来ない旨味が口の味覚を刺激して優しい香りが鼻から突き抜ける。
気づくと完食。一つしかないことが悔しいほど美味しかった。
「ん?」
特に体が変化した様子はない。違うのは満たされた喉、満たされた腹、満たされた心。ゲームでいう体力満タン薬を飲んだような心地よさ。一言でいえば完全回復。
大の字になって草の絨毯に寝転んだ……優しく吹き抜ける風が頬を掠めて吹き抜ける。ゆっくりと流れる雲を眺めていると、エデンに監禁されているような恐ろしさが徐々に薄れ瞼が重くなる。
○。○。○。○ 。。。
「ん……んん…………。ああ、いつのまに眠っちゃったんだ」
目を擦りながら横になっている体を起こし、「よし、行くか」と走り出そうとした時……。
「あれ? ここはどこだ?」
さっきまで居た場所と違う……深い森、微かな木漏れ日が地面を照らしているが薄暗さが見慣れる地という不安を増幅させる。
「なんだこれ……」
不思議な力を感じる石碑……そこに掘られているのは文字? 絵? 良くわからない記号のようなものが描かれていた。
「そこにいるのは誰!?」
女性の声が僕に突き刺さる。明らかに不審者に浴びせるような口調。声のする方向を見ると……
「雫!!!」
まさしく雫、僕の幼馴染である斑霧 雫だった。そう……彼女との再会が大きく運命を変えるのだった。
──第1章 完
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第1章完結です。
先ずはここまで及び頂きありがとうございます。
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第10話 犯してしまった禁忌
異世界リンゴを食べてはいけないと釘を刺されていたにも関わらず口にしてしまった朔弥。なぜ食べてはいけなかったのか、朔弥が最初に食べさせられた実はなんだったのか……様々な謎が解き明かされていきます。
再開した雫、彼女は本当に雫なのか……そして光輝や結衣はいまどこで何をしているのか……沙羅は一体何を考えているのか。そして捻じ曲げられた運命とは。
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