異世界教へようこそ ─ Welcome to Different dimension religion─

ひより那

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第4章 獣に植物に聖女結衣

第43話 ギフテッド

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「ケアルナさん、本当にラクナシアに任せるの? まだアルミラージを倒せるほどだよ」
「いろんな経験を積むのが一番近道なのよー。そのためにサポートがいるんだからー」

 蔓に絡まれて動けないモブAとモブCふたり、残ったモブBひとりは一生懸命に蔓を切り裂くが斬っても斬っても再生してしまう。

「お前ら何やりやがったー」
 モブBは腰の鞘から剣を抜き取ると、なりふり構わぬ表情で大きく振りかぶってラクナシアを切りつけた。

「ほらサクラちゃん、相手の右膝ー」
 ケアルナに言われるがままフリックバレットを打ち込む、体制を崩したモブBはラクナシアを横切るように倒れ込んで大きく転がった。

 大の字になっているモブB、地面から伸びた蔓が手足に巻き付く。

「ラクナシアちゃーん、次が来るわよー」
 変わりにモブAが開放されている。「なんだお前たちは」と怒号をあげると巨大な斧を振り上げてラクナシアに振り下ろした。

 フリックバレットの狙いをつけた時、「ちょっと待ってー」とケアルナ。「ラクナシアが」と慌てると「見て」と指差す。

 巨大な斧をひょいっと避けるラクナシア。巨大な斧が地面をえぐり土砂を散らす。

「すごい、すごいよラクナシア」
「ラクナシアちゃーん、斧は大振りだからしっかり見れば避けられるわよー」

 大きな斧を振り回すモブA、避け続けるラクナシアに苛ついているのかどんどん動きが荒くなる。

「さすがラクーン族、素早さはピカ1ねー」
「ケアルナはラクナシアのことを知ってるの?」
「むかーし、ラクーン族に会ったことあるのよ。その時のにそっくりねー、ラクナシアちゃんの母親だったりしてー」

 さすがにそんな偶然は……僕も外国人の顔を同じように見えてしまうことがある。そんな感じだろう。

「それよりもケアルナさん、これからどうするのさ」
「ちょっと待ってー」

 地面から伸びる蔓がモブAを絡め取って動きを封じる。身動きのとれないモブABCは怒号を飛ばすことしかできない。

「ラクナシアちゃーん、ちょっと来てー」
 テコテコ走ってくるラクナシア。
「ケアルナ様、サクラ様、攻撃をよけられました!」
 今まで自信なさげにしていた表情が嘘のように晴れ晴れしている。

「偉いわーラクナシアちゃん、ちょっとコツを伝授してあげるから耳を貸して……あ、サクラちゃんは棒っきれでもいいから剣になりそうな物を4本持ってきてくれる?」

 ヒソヒソ話しを始めるケアルナ、後ろの方では「ふざけるなー」「なにしやがるんだー」「とっととはなしやがれー」と騒ぎまくっているモブABC。

「どう考えてもケアルナさんの仕業だよなー」

 あれって地系の能力なのかなー、植物と土は関係なさそうだけど……とりあえず木を変形させて木刀でも作るか。

「そうだ!」
 こういう時こそジゲンフォーのバック、何が出てくるのだろう。
 
 手に吸い付く剣の束、小さなバックから出てくる4本の剣はまるで秘密道具のよう。

「あ、青い刃の刀剣……ミスリルか……」

 最近はミスリルに縁がある。頭にあるものが出てくるんだもんなーミスリルを考えてたってことか……いや、ミスリルが出たから考えたんだけど。

 卵が先か鶏が先か──

「おーい、サクラちゃーん。準備できたら持ってきてねー」
 おっと、催促されてしまった。取り出した剣を脇に抱えて小走りで戻った。

「ケアルナさーん、4本持ってきましたー」
 キラリと光る青い刃。
「あら、サクラちゃん。ってそれ全部ミスリルじゃないー。どこに隠し持ってたのー?」

 あぁ、しまった。当たり前になりすぎて何も考えていなかった。

「まあいいわ、じゃあそれをラクナシアちゃんの尻尾に入れてちょうだいー」
「ええー」
 予想外の用途にビックリ。尻尾に入れた剣からどんな攻撃が繰り出されるのか想像もつかない。

「サクラ様、尻尾の付け根おしりの方が柄側です。

 試しに一本を尻尾に入れようと近づけると、吸い込まれるように毛の合間に溶け込んだ。

 二本……三本……四本……どんどんと入っていく。

「さぁ、ラクナシアちゃんやってみて」

 剣をモブABCに向けて構えると尻尾から4本の剣が浮かび上がりファンネルのように宙に留まった。

 それに合わせて開放されたモブC、蔓に絡まれながら必死に抵抗していたせいかかなり疲労の色が見える。

「悪かった。謝るから……もうオレたちの負けで良いから勘弁してくれよー」
 必死に懇願するモブCに、ケアルナは「もう無理よー、ラクーン族は気性が激しいからねぇー、スイッチが入っちゃったみたいよー」とカラカラ笑った。

 普段と変わらぬ表情だが雰囲気が全然違う。表情一つ変えぬまま宙に漂う一本の剣をモブCに向かって放った。
 風を切る音を立てて剣は一直線、モブCは手に持った槍で振り払う。しかし刃は粉砕され剣は勢いを落とすことなくモブCの顔面へ……。

「ヤバイ!」

 モブCの顔面に突き刺さる瞬間、地面から伸びた蔓が剣の柄に巻き付いて動きを止めていた。

 眉間の薄皮1枚で救われたモブC、その場にへたり込んで倒れた。

「見ているこっちがドキドキする。あのおっとりしたラクナシアが」

「ラクナシアちゃーん、みんな開放するわよー」
 にこやかに話すケアルナ、モブABを捕らえていた蔓は地面の中へ消えていった。

 なんとか起き上がったモブC、顔面蒼白のモブAB、3人は顔を見合わせると同時に頷くと脱兎のごとく逃げ出した。

 呆気に捉われる僕、何なんだ一体。そうだ、それよりもラクナシア!

「大丈夫、怪我はない?」
 
 宙に留まっていた4本の剣は尻尾の中へと帰っていった。

 汚れた服についた埃を払う、ラクナシアはさっきまでの迫力が嘘のようにいつもの表情をして震えて涙を流している。

「サクラ様ー怖かったです」

「ギフテッド酔いね」
「ギフテッド酔い?」
「そうよ、人型が精神武器を持っているように、獣人などの人外種はギフテッドという固有スキルを持って生まれてくるの。もしかしたらラクナシアちゃんのスキルはファンネルかなぁと試してみたらビンゴだったわ」
「じゃあ、あの剣がふわ~って浮かんだのがそうだったの?」

 ゆりえ口になって上目遣いで見つめてくるラクナシア。

「そうよ、初めてのギフテットで種族本来の気性が出ちゃったのね。もう馴染んだから大丈夫よ」
「こ、こわかったです……。意思を操られているように体が勝手に……」
「もう大丈夫ー。それにしてもミスリルの剣は破壊力が凄まじいわねー、おかげでもう一つのギフテッドを見そこなったわー」

 え、こんなにすごい技がまだあるってのか。

「サクラちゃん、ギフテッドはひとつとは限らないの。私だって複数あるんだから」
「え……ケアルナさんは人間じゃないんですか?」
「あたりまえじゃない、あんなに自由に蔓を出し入れする人間がいますか……あれはギフテッドの一つ……というよりドライアド族はみんな使えるから種族スキルかな」

 ドライアド族。ラノベで見たことあるぞ、木の精霊……森の番人……妖精? とにかくドライアドという単語を聞いただけでラノベ脳がくすぐられる。

 こうして人間ボク獣人ラクーン族ドライアド族植物の旅が始まるのだった。

 目指すはリュウコウだー!
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