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第4章 獣に植物に聖女結衣
第44話 ラクナシアの実力
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シモフリを出発して6日、いろいろとあったがリュウコウの目前まで無事に辿り着いた。
ジンを出てからいろいろな人と出会った。まさか僕が奴隷を買ってドライアドまで仲間にするなんて考えもしなかったよ。
「よーしこれで結衣に会えるぞ!」
今までの苦労を圧縮するように肩をすぼめて一気に両手を挙げて解き放つ。
なんだか寂しそうにうつむくラクナシアが目に入った。やっと目的地に到着したのにどうしたんだろう……。どう接していいのか分からずオロオロしてしまった。
「あのねーサクラちゃん、子供の前でママ以外の名前を嬉しそうに呼ぶからでしょ。捨てられちゃうんじゃないかと寂しがってるのよ。ラクナシアちゃん、ママたちきっと捨てられちゃうんだわー。オヨヨヨヨー」
いやいや、パパとママって……それに明らかに演技臭いし。
「い……いえ……サクラ様とはそんな……捨てられても文句は言えません……」
「違うんだラクナシア、捨てようとか全然思ってないし、ほらー、ケアルナが変なこというからややこしくなったじゃない」
ケアルナはウフフと笑うと、急に真剣な表情となって口を開いた。
「それでね、サクラちゃんに言っておきたいことがあるの」
「なんですかケアルナさん?」
いつものような間延びした言葉ではない。それほど深刻な話しなのだろうか。
「ラクナシアちゃんが強くなったと思ってるでしょ?」
圧巻たちを圧倒した強さ……4本の剣を自在に操り5刀流で戦う姿に凄い以外の言葉が見つからない。
これなら自分の身は自分で守れるんじゃないかと思っったほどだ。
「その顔はやっぱりって感じね。しょうがない、ふたりとも人気のないところに行きましょー」
リュウコウの北にある木々が生い茂った森に連れられた。
「ラクナシアちゃん、サクラちゃんを倒すつもりで戦ってみなさい。サクラちゃんはその攻撃を受けるか避けるだけ、一切攻撃をしちゃあダメよ」
え……ラクナシアと戦う?
「ケアルナ様……ご主人様に刃を向けるなんて……」
「いーい、私たちはラクナシアちゃんを守ると決めたの。ラクナシアちゃんの強さを過剰にも過小にも評価をしてほしくない……見誤ると大変なことになると思うから」
僕がラクナシアの評価を見誤っているということか。強くなったと思っていたが、あの言い方だと、咄嗟の判断で大丈夫だと思ってしまうとラクナシアが危険ということだろうか。
ラクナシアは背中から抜刀すると、尻尾から4本の剣が浮かび上がらせて留まらせる。5本の剣先が僕を睨み、真直ぐに見つめるラクナシアと共にプレッシャーを与えてくる。
「ごめんなさい!」
ラクナシアの言葉とともに4本の剣が一直線に向かってくる。風を切る音を耳に彼女の弱点を理解した。
「そういうことか! ケアルナが言ったのはそういうことだったのか」
襲いくる剣を避けると、一気に間合いを詰めてラクナシアの頭にポンッと手をのせた。
ズゴゴゴゴ──
ラクナシアの剣によって切断された木々が地面を揺らす。行き場のなくなった剣は地面に突き刺さっていた。
「威力はとてつもないが、攻撃が単調すぎて避けられやすい。経験不足……ラクナシア自信が強くなったわけではない。ということか」
「ご明察。ある程度はもう一つにギフテッドでカバーは出来るとしても、ラクナシアちゃんが経験を積んでスキルを自分のものにしないとならないわね」
しょぼーんとするラクナシア。
「悪漢三人組を倒したんだから誇ってもいいと思うよ。あくまでこれからの課題だから」
「倒せたのはサクラ様とケアルナ様の協力があってこそです。私。もっともっと強くなります」
「そうそう、その意気よー。私たちも協力するからねー」
「ところでケアルナさんってどれくらい強いの?」
「ふふふ、大したことないわよ」
はぐらかされてしまった。蔓で相手の動きを止める能力、常にある余裕からかなりの強さを感じる。
「奴隷の私が言うのも申し訳ないのですが、ケアルナ様やサクラ様のお手を煩わせないで済むようになりたいです」
「んー、かわいいー。いいのよママとパパに任せなさい。どんどん頼っていいんだからねー」
ラクナシアに思いっきり抱きついて激しく頬擦りするケアルナ。ちょっと羨ましい……。
「そうだよ、パパとママというのは置いておいてみんな家族みたいなものなんだから何でも言って」
満面の笑みを浮かべるラクナシア。
「ねえサクラちゃん、二人目はどうしようか。そんなかわいい容姿でもついてるんでしょ」
あらぬ妄想が頭を駆け巡る。こんなんでも高校生の男子、必死に考えないようにするが妄想はどんどん膨らんでしまう。
「サクラ様は聖女様とどんな関係なんですか」
「ああ、結依とは幼馴染みなんだ……他に光輝と雫という幼馴染がいるんだけどみんな行方不明になってさー。みんなこっちの世界にいる気がしてさ。見つけたいんだ」
「サクラちゃん、この世界にはどうやって?」
「あれ……そういえばなんでだろう。気づいたらジンの街にいて……」
……考えてみればなんでフリックバレットが使えたり武器まで作り出せるんだ……なんで頭にハナがいるんだ……当たり前に思ってたけどやっぱりおかしいよな。
「顔が真っ青ですよサクラ様」
「サクラちゃんは記憶操作系の闇魔法の干渉を受けているようね」とケアルナ、首を傾げて小さく口を開く「……一人はセレンの容姿変容、もう一人は誰かの記憶操作……あと1つは何かしら……」
確かに記憶が欠けている。自分の経験が勝手に補完してくれているのか全然気づかなかったが……。そもそもなんでだろう、考えが尽きない。
「ん?」
足に小さなものでつつかれている感触。ラクナシアが人差し指でつんつんつついていた。悲しそうな表情を浮かべて。
「わたしもずーっと檻の中にいたから分からないことだらけです。だから……サクラ様と同じでこの世界の記憶がないみたいなものです。元気だしてください」
にぱぁーっと広がる笑顔。
「かわいぃぃぃー」
素早い動きでケアルナがラクナシアに抱きついた。頬ずりしては強く抱きしめ……そして「サクラちゃん、ラクナシアちゃんがこんなに一生懸命勇気づけてくれるんだからいつまでも悩んでないの!」とケアルナが力強く激を入れてくれる。
「そうだよね、悩んだところで今は変えられない。これからどうするか考えるよ。ありがとうラクナシア」
…………強がって言ってみたが、まったく気にしないなんて無理な話し、ゆっくり記憶を探ってみよう。
◆ ◆ ◆
山岳都市リュウコウ、ウッドバーレンの王都である。
山を切り崩し緩やかな傾斜を作ってとぐろを巻いた龍を再現、中央には龍の頭を模したオブジェクトが威光を放ち国を見つめている。
王城は地下にあって魔法を妨害する結界と厳重な警備で24時間体制で女王を守るシステムが凄いの──
──リュウコウはこんな街よ」
ケアルナがナレーション風に説明してくれた。
「ケアルナはリュウコウに来たことあるの?」
「この国の女王は用心深いからすっごく閉鎖的な国なのよねー。あんまり面白くないし1度しか来たことないかなー」
まぁ、凄いのかもしれないけど、王様がどうとか女王がどうとか一般人にはそんなに関係ないんじゃないかなー。
そんな僕にケアルナが口を開いた。
「この国の上層部は国外の民には興味がないの……だからこの国以外の生物に限り奴隷商を許しているのかもしれないわねー」
「あ、だからラクナシアも」
「そういうことですねー」
「でもわたしは、そのおかげでサクラ様やケアルナ様に出会えました」
笑顔のラクナシア、最近は良く笑顔を見せてくれて嬉しい。
「神子討伐に参加される方は広場で受付してくださいーい」
この国の兵士だろうか、さまざまなチームに声をかけている。そんな状況を見守るばかりで僕たちに声がかかることはない。
「サクラちゃん、あの兵士も見た目でしか判断してないみたいねー、私たちはさっさと広場に行って受付しましょー」
多くの人が行き交う街並、あたりの景色を楽しみながら広場に向かうのであった。
ジンを出てからいろいろな人と出会った。まさか僕が奴隷を買ってドライアドまで仲間にするなんて考えもしなかったよ。
「よーしこれで結衣に会えるぞ!」
今までの苦労を圧縮するように肩をすぼめて一気に両手を挙げて解き放つ。
なんだか寂しそうにうつむくラクナシアが目に入った。やっと目的地に到着したのにどうしたんだろう……。どう接していいのか分からずオロオロしてしまった。
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いやいや、パパとママって……それに明らかに演技臭いし。
「い……いえ……サクラ様とはそんな……捨てられても文句は言えません……」
「違うんだラクナシア、捨てようとか全然思ってないし、ほらー、ケアルナが変なこというからややこしくなったじゃない」
ケアルナはウフフと笑うと、急に真剣な表情となって口を開いた。
「それでね、サクラちゃんに言っておきたいことがあるの」
「なんですかケアルナさん?」
いつものような間延びした言葉ではない。それほど深刻な話しなのだろうか。
「ラクナシアちゃんが強くなったと思ってるでしょ?」
圧巻たちを圧倒した強さ……4本の剣を自在に操り5刀流で戦う姿に凄い以外の言葉が見つからない。
これなら自分の身は自分で守れるんじゃないかと思っったほどだ。
「その顔はやっぱりって感じね。しょうがない、ふたりとも人気のないところに行きましょー」
リュウコウの北にある木々が生い茂った森に連れられた。
「ラクナシアちゃん、サクラちゃんを倒すつもりで戦ってみなさい。サクラちゃんはその攻撃を受けるか避けるだけ、一切攻撃をしちゃあダメよ」
え……ラクナシアと戦う?
「ケアルナ様……ご主人様に刃を向けるなんて……」
「いーい、私たちはラクナシアちゃんを守ると決めたの。ラクナシアちゃんの強さを過剰にも過小にも評価をしてほしくない……見誤ると大変なことになると思うから」
僕がラクナシアの評価を見誤っているということか。強くなったと思っていたが、あの言い方だと、咄嗟の判断で大丈夫だと思ってしまうとラクナシアが危険ということだろうか。
ラクナシアは背中から抜刀すると、尻尾から4本の剣が浮かび上がらせて留まらせる。5本の剣先が僕を睨み、真直ぐに見つめるラクナシアと共にプレッシャーを与えてくる。
「ごめんなさい!」
ラクナシアの言葉とともに4本の剣が一直線に向かってくる。風を切る音を耳に彼女の弱点を理解した。
「そういうことか! ケアルナが言ったのはそういうことだったのか」
襲いくる剣を避けると、一気に間合いを詰めてラクナシアの頭にポンッと手をのせた。
ズゴゴゴゴ──
ラクナシアの剣によって切断された木々が地面を揺らす。行き場のなくなった剣は地面に突き刺さっていた。
「威力はとてつもないが、攻撃が単調すぎて避けられやすい。経験不足……ラクナシア自信が強くなったわけではない。ということか」
「ご明察。ある程度はもう一つにギフテッドでカバーは出来るとしても、ラクナシアちゃんが経験を積んでスキルを自分のものにしないとならないわね」
しょぼーんとするラクナシア。
「悪漢三人組を倒したんだから誇ってもいいと思うよ。あくまでこれからの課題だから」
「倒せたのはサクラ様とケアルナ様の協力があってこそです。私。もっともっと強くなります」
「そうそう、その意気よー。私たちも協力するからねー」
「ところでケアルナさんってどれくらい強いの?」
「ふふふ、大したことないわよ」
はぐらかされてしまった。蔓で相手の動きを止める能力、常にある余裕からかなりの強さを感じる。
「奴隷の私が言うのも申し訳ないのですが、ケアルナ様やサクラ様のお手を煩わせないで済むようになりたいです」
「んー、かわいいー。いいのよママとパパに任せなさい。どんどん頼っていいんだからねー」
ラクナシアに思いっきり抱きついて激しく頬擦りするケアルナ。ちょっと羨ましい……。
「そうだよ、パパとママというのは置いておいてみんな家族みたいなものなんだから何でも言って」
満面の笑みを浮かべるラクナシア。
「ねえサクラちゃん、二人目はどうしようか。そんなかわいい容姿でもついてるんでしょ」
あらぬ妄想が頭を駆け巡る。こんなんでも高校生の男子、必死に考えないようにするが妄想はどんどん膨らんでしまう。
「サクラ様は聖女様とどんな関係なんですか」
「ああ、結依とは幼馴染みなんだ……他に光輝と雫という幼馴染がいるんだけどみんな行方不明になってさー。みんなこっちの世界にいる気がしてさ。見つけたいんだ」
「サクラちゃん、この世界にはどうやって?」
「あれ……そういえばなんでだろう。気づいたらジンの街にいて……」
……考えてみればなんでフリックバレットが使えたり武器まで作り出せるんだ……なんで頭にハナがいるんだ……当たり前に思ってたけどやっぱりおかしいよな。
「顔が真っ青ですよサクラ様」
「サクラちゃんは記憶操作系の闇魔法の干渉を受けているようね」とケアルナ、首を傾げて小さく口を開く「……一人はセレンの容姿変容、もう一人は誰かの記憶操作……あと1つは何かしら……」
確かに記憶が欠けている。自分の経験が勝手に補完してくれているのか全然気づかなかったが……。そもそもなんでだろう、考えが尽きない。
「ん?」
足に小さなものでつつかれている感触。ラクナシアが人差し指でつんつんつついていた。悲しそうな表情を浮かべて。
「わたしもずーっと檻の中にいたから分からないことだらけです。だから……サクラ様と同じでこの世界の記憶がないみたいなものです。元気だしてください」
にぱぁーっと広がる笑顔。
「かわいぃぃぃー」
素早い動きでケアルナがラクナシアに抱きついた。頬ずりしては強く抱きしめ……そして「サクラちゃん、ラクナシアちゃんがこんなに一生懸命勇気づけてくれるんだからいつまでも悩んでないの!」とケアルナが力強く激を入れてくれる。
「そうだよね、悩んだところで今は変えられない。これからどうするか考えるよ。ありがとうラクナシア」
…………強がって言ってみたが、まったく気にしないなんて無理な話し、ゆっくり記憶を探ってみよう。
◆ ◆ ◆
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まぁ、凄いのかもしれないけど、王様がどうとか女王がどうとか一般人にはそんなに関係ないんじゃないかなー。
そんな僕にケアルナが口を開いた。
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「そういうことですねー」
「でもわたしは、そのおかげでサクラ様やケアルナ様に出会えました」
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