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第5章 3組の双子
第62話 コロバシ
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「ぐわぁ」
なんとかシールドでワームの攻撃を防いではいるがダメージは着実に積み上がってくる。
知能があるのか、魔物は僕と彩衣の距離を着実に遠ざけるような攻撃を仕掛け、遂には彩衣の声が届かない距離まで離された。
彩衣は強力なシールドで魔物の攻撃を確実に防ぎ無傷だが、魔力量が多いと言っても無限と言うわけではないので長期戦はまずい。
「僕がなんとかしないと」
武器もダメ、フリックバレッドもダメ、全ての攻撃が修復されてしまう。シールドに使っている僕の魔力も着実に減少している。
「しまった」
シールドの出力が遅れた。魔力を少しでも節約しようと消失させた瞬間、彩衣を牽制していた尻尾に叩きつけられ地面に直撃。大穴を作る。
ヤバイ……何本か骨が折れたようだ。動くだけで激痛が走る……。
「ここまでか」
視界に入る彩衣の姿、いや……僕が死んだら彩衣も道連れになってしまう……。なんとかアダマンタイトの剣を杖にして立ち上がった。
体もボロボロ服もボロボロ。僕に出来る攻撃は剣しかない……生き物である以上心臓はあるはず。しかし剣を杖にしてやっと立っている僕に何が出来るだろう。いや、そんな弱音を吐いている場合ではない。
真正面から突撃してくるワームの頭、余裕のつもりか……。
「シールド」
出ない……とうとう魔力も尽きたか。
あと出来ることは……精神武器を取り出しアダマンタイト盾に変形。ワームの攻撃を直に受けた。
体ごと大きく吹き飛ばされる。宙を舞って彩衣の方に飛んでいく。攻撃自体はガードできても強すぎる威力は殺しきれない。
──ボシュ。僕の体を一瞬の光が包んだ。
それを撃ったのは彩衣。ブレザイムとモスビートの複合回復弾。そのまま回転して彩衣の元で着地。
「彩衣、ありがと」
「気にするな、私も魔力が殆どないしな。でも逆転のチャンスはあるぞ」
「よし、それに乗った」
「サクラ、思いつかないだけだろ。あそこ見てみろ」
彩衣が指差したのは僕が床に叩きつけられて出来たクレーター。
「おかしいとは思わんか?」
「はい? 全然分からないんだけど」
「考えても見ろ、今までの通ってきた所はどんなに激しい戦いをしても床や壁が壊れたこと無かっただろ。それが叩きつけられただけで壊れるってことは素材が違う」
「なるほど、素材が違う理由があると……そうか、僕のアダマンタイト盾が攻撃を受け止めたということはすり抜けられる素材が決まっているのか」
「その可能性が高い、そして未来視を使いまくって攻撃した。唯一ダメージが入ったのが頭だ」
目を合わせてお互いが頷く。
勝利を確信したのかワームが頭から突撃してきた。貧乏性な僕がレアなアダマンタイト鉱石を無駄にバッグにしまってきた成果。
ワームの体に合わせたて変形させた『鰻カゴ』 (かえし付き)に、体がスッポリとハマっていく。かえしが引っかかって脱出は不可能。
鰻カゴのせいで地中に潜れないワーム。物凄く暴れるもんだからカランカランうるさいしあちこちをボロボロにするし。
まだアダマンタイト鉱石は十分にある。鰻カゴを地面に固定しご対面。
「じゃあ、彩衣頼むよ」
「任せろ、残った全ての魔力をぶっ放す」
火と水のブレザイム、風と土のモスビートを一つに合体。流線型の美しいライフルとなった。
「「いっけー」」
銃口から放たれた弾は四属性の弾が渦を巻いてワームに向かう。そして鰻カゴごとワームを粉砕。生命源を失ったワームは霧とともに散っていった。
「ふぅー」
大きく息を吐いて座り込んだ。
「私も無理だ」
脱力する彩衣、僕の膝に頭を乗せてゴロンと転がった。
「残念だったね。肉を食べれば魔力も回復したのに……食べてたらどんなスキルを得られたんだろう」
「それは無理ですわ朔弥」
聞き覚えのある女性の声……この声は……沙羅。
「なんでここに……」
広間を見回しながら近づいてくる沙羅、こんな状態でバトルになったら勝ち目なんてまるでない。
「ふふふ、久しぶりね朔弥。ちなみにさっきの話しですが今戦ったのはストーアウォームって言うドラゴン、魔獣でも魔物でもないのよ。私の城を守るペットとして飼っていたの。まさか倒してしまうなんて強くなりましたねー」
「私の城って……ペットって」
「ここは元々私のお城だったのよ。強すぎる私たちが周りの国々にとって恐怖だったのでしょうね。神に背く国に仕立て上げられた上に滅ぼされて封印された。まぁその後は色々あって今に至るって訳ね」
「……」
「あなたにはまだ分からないでしょう。この世界の人間と異世界に飛ばされた人間、どちらに正義があるか貴方の目で実際に見てどうするか決めて頂戴」
話しを聞いていると沙羅が正しいことを言っているよな雰囲気を感じてしまう。
考えてみたら沙羅は何を悪いことをした……琢磨くんや憲久くん、そして異世界教のみんなは異世界に行けることをとても喜んでいた。デメリットもあるがメリットを感じる人のほうが多かったのも事実……か。
「いやいやいや、そんなことはない。ウィルさんやセッカさん……雫だって変な風にされたんだ」
「朔弥、自分の価値観だけで私を悪と決めつけないで。貴方が異世界教徒だったことを知る全ての人の記憶を無かった事にしておくわ。だからサクラと名乗りその姿で世界を自分の目で見てみなさい」
この感覚……僕の容姿、僕の体、僕の声。姿が戻っていた。
「なんでこんなことを……」
「まぁ、この世界であるビシュミラーとチキュウを一つにして私にとっての理想郷を作るの。そのために大きな傷みを伴うこともある。その代償を大きすぎると見るか小さいと見るかを判断して頂戴。そして私に共感してくれるならまた一緒に異世界教をやり直しましょう」
沙羅は溶けるように消えていった。
「サクラ、大丈夫か。言葉だけは聞こえておったがいろいろありそうだな」
「そうだね、僕は沙羅が言った通り世界を巡ってみるよ。彩衣はどうする?」
「もちろん一緒に行くぞ。私たちは恋人以上に心が通じ合っているからな」
いや……それは戦闘に関してのみな気もするけど……。まぁ、放ってはおけないしなんとかなるだろう。
「おぉ。サクラ、顔が戻ってるぞ」
「ああ、どうやら沙羅に戻されたみたいだ。元神子さんが固定してくれたのを壊したみたいだね」
「何か変な感じだが容姿なんてどうでもいいぞ。サクラと一緒にいたいのだからな」
なんか嬉しいことを言ってくれる。
「よし先に進もう、きっとこの先が出口だ」
「サクラさんお久しぶりですね」
メイド服の女性、マルコ神殿で共に戦った沙羅のメイド。
「ルーセットさん」
人と会うたびにドキドキする。満身創痍な状況で戦いになったら勝てる気がしない。それでも警戒だけは怠れない。
「大丈夫ですよ。沙羅様からの伝言と、脱出のお手伝いをするように命じられました」
「脱出? この先は出口じゃないのか」
「だから言ったろ、どうせいつもの行き止まりだと」
「サクラさんが言った通りこの先は城門で間違いありません。しかしここは土の中、埋まっているので外に出ることは出来ません」
ああ、そういうことか。言われてみれば地面の下にいるんだった。ということは今まで行き止まりだと思って引き返したところは普通に外へと繋がる通路だったんじゃないか。
「それで伝言というのは?」
「子供です」
場面が切り替わった。今までみた建物の中ではなく洞窟の中をイメージさせる場所、そこには犬耳と尻尾がある女の子、猫耳と尻尾がある女の子。共に6歳位だろうか。ふたりの子供が横たわっていた。
「この子たちは……獣人?」
「可愛いぞサクラ、魔物や魔獣ばっかり見てきたから目の保養だ」
「ここで拾った奴隷の双子です。私たち異世界教は無闇な殺生を望みません。しかし獣人を異世界教が匿うことも出来ません。もし助けたいと思うならアカルチュエーションの力で首輪を外してあげると良いでしょう」
一体これは……双子の獣人姉妹の前に立つルーセット。僕たちに一体何をさせようというのだろうか。
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知能があるのか、魔物は僕と彩衣の距離を着実に遠ざけるような攻撃を仕掛け、遂には彩衣の声が届かない距離まで離された。
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出ない……とうとう魔力も尽きたか。
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「気にするな、私も魔力が殆どないしな。でも逆転のチャンスはあるぞ」
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「サクラ、思いつかないだけだろ。あそこ見てみろ」
彩衣が指差したのは僕が床に叩きつけられて出来たクレーター。
「おかしいとは思わんか?」
「はい? 全然分からないんだけど」
「考えても見ろ、今までの通ってきた所はどんなに激しい戦いをしても床や壁が壊れたこと無かっただろ。それが叩きつけられただけで壊れるってことは素材が違う」
「なるほど、素材が違う理由があると……そうか、僕のアダマンタイト盾が攻撃を受け止めたということはすり抜けられる素材が決まっているのか」
「その可能性が高い、そして未来視を使いまくって攻撃した。唯一ダメージが入ったのが頭だ」
目を合わせてお互いが頷く。
勝利を確信したのかワームが頭から突撃してきた。貧乏性な僕がレアなアダマンタイト鉱石を無駄にバッグにしまってきた成果。
ワームの体に合わせたて変形させた『鰻カゴ』 (かえし付き)に、体がスッポリとハマっていく。かえしが引っかかって脱出は不可能。
鰻カゴのせいで地中に潜れないワーム。物凄く暴れるもんだからカランカランうるさいしあちこちをボロボロにするし。
まだアダマンタイト鉱石は十分にある。鰻カゴを地面に固定しご対面。
「じゃあ、彩衣頼むよ」
「任せろ、残った全ての魔力をぶっ放す」
火と水のブレザイム、風と土のモスビートを一つに合体。流線型の美しいライフルとなった。
「「いっけー」」
銃口から放たれた弾は四属性の弾が渦を巻いてワームに向かう。そして鰻カゴごとワームを粉砕。生命源を失ったワームは霧とともに散っていった。
「ふぅー」
大きく息を吐いて座り込んだ。
「私も無理だ」
脱力する彩衣、僕の膝に頭を乗せてゴロンと転がった。
「残念だったね。肉を食べれば魔力も回復したのに……食べてたらどんなスキルを得られたんだろう」
「それは無理ですわ朔弥」
聞き覚えのある女性の声……この声は……沙羅。
「なんでここに……」
広間を見回しながら近づいてくる沙羅、こんな状態でバトルになったら勝ち目なんてまるでない。
「ふふふ、久しぶりね朔弥。ちなみにさっきの話しですが今戦ったのはストーアウォームって言うドラゴン、魔獣でも魔物でもないのよ。私の城を守るペットとして飼っていたの。まさか倒してしまうなんて強くなりましたねー」
「私の城って……ペットって」
「ここは元々私のお城だったのよ。強すぎる私たちが周りの国々にとって恐怖だったのでしょうね。神に背く国に仕立て上げられた上に滅ぼされて封印された。まぁその後は色々あって今に至るって訳ね」
「……」
「あなたにはまだ分からないでしょう。この世界の人間と異世界に飛ばされた人間、どちらに正義があるか貴方の目で実際に見てどうするか決めて頂戴」
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考えてみたら沙羅は何を悪いことをした……琢磨くんや憲久くん、そして異世界教のみんなは異世界に行けることをとても喜んでいた。デメリットもあるがメリットを感じる人のほうが多かったのも事実……か。
「いやいやいや、そんなことはない。ウィルさんやセッカさん……雫だって変な風にされたんだ」
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