異世界教へようこそ ─ Welcome to Different dimension religion─

ひより那

文字の大きさ
72 / 76
第6章 過去の友達

第71話 キレッキレの必殺技

しおりを挟む
 バルコニーから立ち上がって手を振る女王と聖女結衣。

みなさーん(スピーカー音声→)、今日のおめでたいこの日に立ち会えたことは生涯の思い出となるでしょう。勇者を讃えるパーティーのサプライズとして重大発表があります》

 冒険者たちは聖女結衣の登場に大興奮、兵士たちは激しい拍手で場を盛り上げ涙を流している人までいる。

「サクラ、姉の持ってる杖に付いてるの、城で見たくぼみの形と同じだな」
「あの赤い石? そうだとすればあれが賢者の石」

みなさーん(スピーカー音声→)、ユリア女王のバチアニアと聖女結衣様が治めるウッドバーレン、この時いまをもって同盟が締結されました。ここに参加している皆様は、この国の専属冒険者として登録できる権利があります。今まで頑張ってきた皆様の努力が報われる時が来ました》

 地図で見るとユランダ・メシアのあるストネシアを挟むように配置された国での同盟。偶然なのか……。

 地震のような揺れが広場に広がった。

「みなさんご安心くださーい、これよりエキシビションマッチ用の闘技場を出します。危ないのでロープの中に入らないでくださーい」
 男がロープの内側に入ると、男とともに中央の噴水を中心に地面から分厚い石版がせり出してくる。1辺が30メートルはあるであろう真っ白い闘技場だった。

「勇者パーティーのレベルは非公開になっていますが、対戦するアルゴパーティーのレベルを公開させていただきます。この戦闘をご覧になって挑戦したい方は是非お申し出下さい」

 あちこちから「俺達も挑戦しようか」という声が聞こえたかと思えば「アルゴたちが負けるようならどこもダメだろう」という声も聞こえてくる。

「それでは登場して下さいアルゴチームリーダー、アルゴ・スリラン レベル40」
 闘技場にかけられた階段を登ってゆっくりと中央に歩みを進めるアルゴ、かなりの有名人なのか『アルゴ』コールがあちこちから聞こえてくる。

「続いて、剣士といえばベックス、ベックスと言えば剣士、剣士の憧れベックス・カツキ レベル36」
 ゴツいアルゴと違ってスリムでイケメンなベックス、広場に集まった数少ない女性の声援を独り占めしている。

「そして最後は、みんなが思っているだろう。そのこぶしで僕を殴って……死をかけてでもお願いしたい紅一点の格闘家アイドル、イリア・ソイナ レベル35」
 広場にいる男たちの高い声と口笛、声援と言うより推しのアイドルに自分をアピールしている声、そんな男たちに投げキッスをするイリア。
 
 そんな3人が会場のあがるとテンションマックス、ヒートアップする。

 彩衣は「全くうるさい」と目を闘技場に向けること無く食べ物をつまみ、ルルとナナは「「アルゴ様がんばって」」と祈っていた。

「申し遅れました、このエキシビジョンマッチを取り仕切るフェスティ・バチアニアと申します。以後お見知り置き下さい」
 フェスティーは手を突き出しお尻を引いてお辞儀ボウ・アンド・スクレープした。

「バチアニアって、この国と同じということは公爵ということか……つまりおエライさんってことなんだな」
「サクラと名乗って良かったな、サクヤという名だったらどうなっていたんだろうな」

「それでは勇者パーティーの登場です。バチアニアでの魔物騒動を一気に解決に導いた勇者、琢磨様、俊介様、光流様の登場です」

 地面が揺れる。闘技場の中央にある噴水が下に消えていくと、代わりに3人の男がせり上がって来た。まさしく琢磨くんたち。

「そうだ……あのふたり、どこかで見たことあると思ったら、憲久くんと一緒に異世界今日の話しを聞きに来たふたりあの時のふたりだ……。でもなんで3人がこんなところにいるんだ」
「勇者は異世界教を抜けてきたって誰かが言ってたな」

「みんなー、俺達は3人だ。みんなの中から魔法使いをメンバーに加えたいと思っている。攻撃魔法や回復薬、この戦いをみて立候補したい人がいたら後で声をかけてくれ」
「「リーダーである琢磨と僕たちで審査させてもらう。通れば君も勇者パーティーだ」」

 歓声がポツリポツリと上がる。歓声と言うよりは歓び、「私、立候補しちゃおうかなー」という魔道士と必死に止めるパーティーメンバーといった構図。

「それではみなさん、ユリア女王、聖女結衣様も見ておられます。素晴らしい戦いを見せて下さい!」

 アルゴチームは連携を意識した配置、琢磨チームは戦う気があるのかその場に立っているだけだった。

「それでは、エキシビジョンマッチスタートですー!!」

 動いたのは琢磨チーム、俊介は腰につけたナックルを装着し、光流は剣を抜く。ふたりは対にする相手に切りかかった。

 イリアVS俊介 ベックスVS光流 といった個人戦へと変わり、琢磨は右手を挙げると土が現れ斧を形作る。そのままアルゴにブーメランのように投げつけた。
 アルゴは背中の戦斧を抜くと、それを受け止めるが勢いを殺しきれずに後ろに滑ってしまう。
 琢磨の斧はそのまま霧散すると、既に新しい斧を作り出した琢磨が上空から切りかかっていた。それに気づいたアルゴは体を横にして斧を避ける。

 ズッゴーン! と巨大な音とともに闘技場を直撃、リングは傷一つつかない。次の瞬間、斧を支点として琢磨がリングを蹴って体ごと足払い。アルゴは一瞬の隙をつかれて大きく転んだ。
 更に琢磨はサムズ・アップした親指を下から上にもっていく。リングから伸びた突起がアルゴの太い右手を貫通。

「んぐっ」
 アルゴは何とか起き上がりながら突起から腕を一気に引き抜いた。

「「アルゴ」」

 アルゴの元に戻るイリアとベックス。俊介と光流も琢磨の元に戻った。

「ちょっとアルゴ、あいつらはヤバいわ。攻撃は当たらないし軽くいなされちゃうわ」
「ああ、俺もそうだ。あんな子供にやられるなんてなぁ」
「そうだな、確かに俺達とは根本的な強さが違う」

 琢磨が右手を横に出すと、俊介と光流が武器を収める。その様子を見て琢磨はポケットからポーションを取り出してアルゴに投げた。

「それを飲んで蟻たちを葬った技を受けてもらっていいかな。受け切ったら君たちの勝ち、受けきれなかったら俺たちの勝ちだ」
「なんでそんなことをする必要がある!」

「バチアニアの勇者となった俺たちの力を見届けてほしいんだ。ここに居る何人かは、何匹集まってもたかが蟻程度に思ってる奴がいると思うんだ」

 冒険者たちはそう思ってましたと言わんばかりの表情。

「そうか、お前たちはそんなことを引け目を感じていたのか……やっぱり子供だな」
「なんとでも言ってくれ、最高レベルの君たちに圧勝することはこのバチアニアを守ることにもつながるんだ」
「分かった、挑戦を受けよう」

 アルゴは転がっているポーションを拾い上げて一気の飲み干す。瞬時に腕の出血がとまるとブンブン振り回して回復程度を確認した。
 
「すいませーん、多くの蟻を一気に殲滅した技を使いますので、アルゴさんの裏側の人はコッチ側に避難して下さーい」

 俊介の言葉にいそいそと走る冒険者たち、その顔はさっきまで見せていた余裕は消え失せているようだった。

「それではいきます」

 琢磨は手刀を胸の前で構える、どんな攻撃が来ても受け止められるように構え直すアルゴパーティー。
 
 この攻撃はヤバイ気がする。彩衣も感じているようで小さく「助けたほうがいいぞ」とつぶやいた。バレないように助けるにはアレしかない。

「フォールディングファン」
 言葉と同時に手刀で宙を切るように水平に払い始める。僕は10ギラ硬貨をフリックバレットで弾く。
 ギラは琢磨くんの膝にヒット、バランスを崩し傾いた琢磨の斬った手刀が体に合わせて斜めになった。
 手刀に合わせて扇子のように広がった土の刃は空を切り裂きリングを切り裂く。軌道にあったベックスの刃も豆腐のように切り裂かれ、破片が地面に落ちる。
 
「誰だ!」
 と、膝を押さえながら声をあげた琢磨は地面に落ちている10ギラ硬貨を拾い上げるのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。 貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。 元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。 これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。 ※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑) ※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。 ※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...