異世界教へようこそ ─ Welcome to Different dimension religion─

ひより那

文字の大きさ
73 / 76
第6章 過去の友達

第72話 逆に気になる……気持ち

しおりを挟む
「俺達の負けだな」
 アルゴは斧を背中に戻した。

 10ギラ硬貨を握りしめ周囲を見回す琢磨は犯人を探しているようだ。そんな琢磨くんと目があった。

「私たちの負けね、あんな攻撃が直撃したら体が真っ二つだったわよ」
「そうだな、俺の剣だけで済んで良かったよ」
「誰だか知らんが助けられたな。帰るぞ」

 アルゴたちはリングを後にして会場から出ていった。
 近くの冒険者がヒソヒソ「あの攻撃はやばいぞ、オリハルコン製のリングを破壊するなんて……」聞こえてくる。

 リングに触れてみるとハナの社でもらった鉱石のひとつ、強度はミスリルより上のようだ。ラノベでも見るオリハルコンという有名な素材だった。

「朔弥くん、まさかこんな所で会うとは思わなかったよ、あとでゆっくり話しでもしようぜ」

 こうしてエキシビジョンマッチは幕を閉じた。有名な冒険者を圧倒的な強さで倒した勇者パーティ、周囲からは聖女結衣の所属するウッドバーレンのメルギンス将軍が協力すれば太刀打ちできる国なんてないんじゃないかという話題で盛り上がっていた。


 バチアニアの広場に大きく空いた穴、何者かによって準備されていた地下迷宮と巨大な地震によって偶然繋がったおかげで手の施しようがなくなる前に魔物たちを駆逐出来た。
 その事実は国によって伏せられ、過去に天災を巻き起こした魔物の軍勢を討伐した勇者が所属する国として広まったのであった。

 ◆ ◆ ◆


 翌日、ルルとナナは彩衣に任せて宮殿に来ていた。
 兵士を通じて琢磨くんから話しがしたいと申し出があったからだ。

 ユランダ・メシアに呼び出されて部屋で待っていたことを思い出す。あのあと琢磨くんにリンゴのことを聞かれた後に沙羅に地下へ落されたんだったよなぁ。そうだ……雫……なんであんなことに。
 全ての記憶は残っている。しかし、異世界教関連の繋がりは切断されているようで、キッカケがないと引っ張り出せない……。

 コンッコン──

 扉を開けて入ってきたのは琢磨くん。この国の雰囲気に合った服装に着替えていた。

「まさか朔弥くんがこっちの世界に来てるとは思わなかったよ」
「そっか、琢磨くんは知らなかったんだね」
 そう、沙羅が言っていた。僕が異世界教徒だった事実は消しておくと……だから琢磨くんも知らないことになっているというわけか。

「朔弥くんは光輝はるかぜくんや結衣いずもさんが行方不明になった後に姿を消したからね。ビックリしたよ」
「まぁ、なんとかこっちでやってるといった感じだ。たまたま立ち寄ったバチアニアで琢磨くんと会うとはねぇ」

 雑談をしていると、時折チキュウの話題が出ては懐かしくなる。

「そういえば琢磨くんは異世界教を抜けてまでバチアニアを守ったって噂されているよ」
「ああ、実は異世界教をクビになったんだよ、これは内緒な」
「えぇ、なんでまた……」
「覚えてないんだけど、異世界教の秘密を喋っちゃったみたいなんだよ。ちょっとそんなのを繰り返しちまってな」

 これってユランダ・メシアで僕に秘密を話してしまったってことだろう。

「覚えてないって?」
「ああ、異世界教はな、脱退者に一切のペナルティーを与えないんだ。抜けたければ自由にどうぞってな。ただ、条件として内部情報を忘れる治療を受けなきゃなんねぇけど。まぁ、余計なことを知ってて命を狙われるよりずっと良いけどな」

 確かに……口の軽い琢磨くんが秘密を知ったまま野に放たれたとあっては異世界教も気が気ではないだろう。

「でも良かったね琢磨くん、勇者になれて。ずっと前に勇者になりたいって言ってたものね」
「え!? なんで朔弥くんが僕の夢を知ってるんだ。誰にも言ったことなかったのに……」

 あ、しまった。初めて異世界リンゴを渡した時*5話に聞いたんだった。

「い、いや……前に琢磨くんが誰かに話してたのを聞いたんだよ……」
「そっかー、誰かに話したかなー。俺は口が固いんだけどなぁ」

 琢磨くんは自分のことを口が固いと思ってたのか……。同級生では有名だった『彼にだけはここだけの話しをしてはダメだ』という暗黙の了解まで出来ていたのに。

「そ、そうだね。え、えっと……あの一緒にいた人たちって友達?」
「ああ、中学の時の友達だな。憲久と俊介と光流は俺のラノベ仲間なんだよ。詳しい事情は覚えてないが彼らはだいぶ後に異世界教に入ったんだ。気づいたら3人共記憶を消ちりょうされた後だったからな。まぁ、彼らも勇者になりたかったのかもな」

 ガッツリ消されてるんだな。田中さんサナンは結構覚えてたんだけどなぁ……それほど信用されていなかったってことか。

「でも、本当に勇者になったんだから凄いよ」
「まぁ、国のお抱え勇者だけど自由に動けるからありがたい。兵士になったわけじゃないから必要な時にお声がかかるって感じだな」
「バチアニアも安泰だね。なんだっけ……ファン……フォン?」
「フォールディングファンだよ。扇子って意味なんだけどな、アダマンチウム並の強度を持った土の刃を扇状に発生させるんだ。広範囲技だから広いところじゃないと使えないけど」

 アダマンチウムってハナの社でもらった鉱石か。オリハルコンより固い鉱石だったんだな。

「僕はこっちの世界ではサクラって名乗ってるんだ。サクヤって国があるようで変えたほうがいいって勧められたんだ」
「ああ、あったな。確か……ウッドバーレンと同盟を結んでいるんだっけか。まぁ、その方がいいかもなっ! この国で縁もゆかりもないやつがバチアニアなんて名乗ってたらトラブルになりそうだ」
「ウッドバーレンって言えば聖女結衣ってどう考えても行方不明になった結衣だと思うんだけど、琢磨くんはどう思う?」
「前にウッドバーレンで神子討伐作戦ってのがあってな、3人で一般部隊として参加したんだが作戦終了後に話す機会があって聞いたんだ。結衣いずもさん?って、違うようなこと言われたぞ」

 えっ……琢磨くん達はあの神子討伐作戦に参加してたのか。全然気付かなかった。

「噂では聞いたことあるけど……神子を退けるなんて凄い人がいるって噂が流れてたよ」
 情報を聞き出すためとは言え、知らないフリして口の軽い琢磨くんに喋らせているようで気が引ける。

「ああ、本当は俺も本体組に入る筈だったんだけどな。なんだか色々と作戦があるだとかで一般隊に配属されたよ。まぁ、その縁があってこの国で勇者やってるんだけどな」
「へぇ~、そんな大掛かりな作戦があったんだね。でもそんなに凄い作戦に参加できるなんて凄いじゃん」
「良く知らないけどサクラって子利用するような事を聞いたけど……おっ、朔弥くんの名前と一緒だな……女の子って言ってたけど」

 色々聞いて分かったのは、どうやらウッドバーレンでの神子討伐は色々な国や人々の思惑が複雑に絡み合った結果遂行されたようだ。

 隠す気が無いのか、琢磨くんのレベルまで教えてもらった。彼のレベルは52、残りふたりのレベルは共に45だそうだ。

 これ以上聞き取って上層部にバレでもしたら……折角勇者になったのにまたクビになってしまうのではないかと逆に心配してしまう。

 これ以上は止めとこう……そう思うのであった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。 貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。 元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。 これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。 ※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑) ※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。 ※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...