異世界教へようこそ ─ Welcome to Different dimension religion─

ひより那

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第6章 過去の友達

第74話 新たな旅の始まり ──【6章完結】

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 何もない高原から突如現れた女性。30歳くらいだろうかとんがり帽子に黒いローブをきている。一言でいうならばグラマーな黒魔道士。

「ご主人さまー、何もないところから人が出てきたニャ」

「お前たちは何でここに何かがあることが分かったのか話してもらおう」
「なんだお前、いきなり出てきて命令するとは変なおばさんだな」
「おばっ! なんてことを言うのよ」

 この女性、彩衣と相性が悪そうだ。なんとなく似た者同士に見えるが……

「あの……とりあえずすいません。僕が見ているマップでこの場所に人が表示されていたんです。普通とは違う感じで気になってしまいまして」
「ふむ、そうか。私に付いてきなさい」
「おばさん、変なことするなよ」

 こら彩衣、余計なことを言わないの……顔は笑ってるけど目が怖いし頬がピクピクいってるんだけど。

 彼女について行くといきなり景色が変わった。いきなり切り替わると頭が処理しきれないのかバグったように混乱する。

 通路は地下に続く階段……自動で動いている。わかりやすい言葉でいうとエスカレーターというやつだ。この世界にそぐわない産物に驚くが、僕と彩衣は知識の中にあるものなので直ぐに慣れた。

「ルル、地面が勝手に動いています」
「ナナー、怖いにゃ怖いにゃ」

 二人で抱き合って怖がっているルルとナナ。下まで進むと今度は箱の中に押し込まれ下へと向かう。

「これはエレベーターだな」
「私はヘルメス。錬金術師よ。あなた達の世界では電気というものをエネルギーとして進化したんでしょ。この世界は魔法力というものをエネルギーとして進化したってわけ」
「すごいですねこれ、なんか不思議な感じがします」
「進化に対する考え方が違うのね。チキュウはいかに生活しやすくなるかに主眼を置いて、こっちの世界ビシュミラーは、人や物の特性をいかに引き出すかに主眼を置いているの」

 ビシュミラー。初めて異世界リンゴを見せられた時……少女は確かにビシュミラーと言っていた。しかしこっちの世界でその単語を聞いたことはない。何か特別な言葉なのだろうか。

「ビシュミラーって何ですか? この世界にきて聞いたことないのですが」
「あなた今、『この世界』と言ったわよね。その言葉があなた方の言うチキュウと同義よ。チキュウとは人がつけた名前であって本当の名前でない。その本当の名前が『この世界』であるビシュミラーと同義ってわけ」
「なんだおばさん、難しいことを言ってからに」

 まったく妙に彩衣がくってかかるなぁ。

「あなたの種族と私達の種族は仲があまり良くないからね。血は争えないってことかな」
「ヘルメスさんは彩衣の事を知っているんですか?」
「見れば分かるわよ。あなたのこともね。ただ、それは教えてあげない。自分たちで導き出すものだから」

 ガチャーン。タイミングよくエレベーターが止まった。扉が空いた先には所狭しと様々な材料が並べられた部屋。その合間を縫うようについていく。

「すっごい臭いだ」
「ああ、絶対に触ったり崩したりするなよ。物によっては人生が終わるからな」

 いやいやヤバイじゃん。カラカラ笑っているヘルメスに恐怖すら覚える。薬品のような野草のような緑のような土のようななんだか良くわからない臭い。色々な記憶が想起されて気持ち悪い。

 通されたのは一段高くなった部屋、靴を脱いで上がるいわゆる和室である。

「お主たちは、元神子たちが同じパーティーを組んで冒険していたのは知ってるよな。その中心となる男がチキュウ人でな、そいつに教えてもらったタタミというやつだ」

 畳の臭い、あまり嗅いだことはことはないが何となく懐かしい臭いがした。
 ルルとナナは恐る恐る畳にあがる。手を滑らせて「ザラザラしてるニャ」「なんだか気持ちがいいですね」と嬉しそうにしていた。

「それでヘルメスさんは何でこんな所にいるんですか?」
「そろそろこの国で大きなことが起こりそうな気がしてね、まぁ傍観者みたいなものだ」
「あれ? ちょっと待ってください。リリス長老が言っていた『あのお方』というのを知っているんですか」
「ああ、直接は会ったことはないがな。今でいうとユランダ・メシアの辺りか」

 『あのお方』を知っている? 馬鹿みたいに強い神子を従える男……彼を知っていたのはセレンさん、そしてこのヘルメスさん。きっと凄い人なのだろう。

「誰なんですかそのお方って言うのは」
「それは教えてあげない。君たちに教えてあげるのは賢者の石のこと。触れたんだろうソウジャの城に」

 都合の良く僕たちの事情を鑑みて詳しく教えてくれる。本当にラノベのようだ。

「なんでお前にそんなことを教えなければならん」
「こらこら彩衣、ルルやナナみたいに静かにしていなさい」

 後ろから羽交い締めする勢いで口を塞ぐ。
私の未来視をかい潜るとはやるなもごもごもごもごもご
「ヘルメスさん、失礼しました」
「賢者の石はな、魔力を何倍にも高める効果と、魔物を操る効果があるんだ」
「魔物を操る?」

 色々なことが頭を巡る。今まで聞いた魔物が出てくるシーンにリュウコウが関わっている気がする。そして賢者の石を持っているのは結衣……いやいや、マーサンが魔物に襲われたのは僕たちがこの世界に飛ばされるよりずっと前……バチアニアで魔物の巣を作っていたルルとナナの元主人リョウガもリュウコウの貴族……

「ご主人さまー、どうしたニャ?」

 転移した時間がずれているのだけが心の救い……一概に結衣が関わってるとは言い難い。その前の持ち主は沙羅のはず……彼女が結衣に罪を着せたとも考えられる。
 
「ご主人様、顔が青いようですがどうかなされましたか」
「サクラ、考えても仕方ないぞ。予定通りヨハネ神殿を通ってウッドバーレンに向かえば良かろう」
「そうだ、そういうところは気が彩衣そなたと気が合いそうだのう。この世界は大きく変わろうとしている……4人の神子が均衡を保ってきた世界から、4人の神子が神をひとり選ぶ世界へとな」

 ルカ神殿はウタハ長老からソウジャへ。
 マタイ神殿はリリス長老はからニコへ。
 マルコ神殿はユニから聖女結衣へ。
 ヨハネ神殿はアカリからラクナシアへ。

「ヘルメスさん、お願いがあるんです」
「なんだい」
「錬金術を教えてほしいんです! 僕たちのパーティーは回復がいない。もしもの時、助けられる術を欲しいんです」
「そんなことか、いいぞ。3ヶ月でマスターさせてやろう。獣族たちには良い技を教えてやろう、そこの小娘と一緒に奥の部屋に入れ。ゴーレムくんがいるから指示に従え」
 
 ヘルメスに問答無用で首根っこを掴まれて引っ張られた。連れられた部屋は8畳ほどの部屋、所狭しと棚に置かれた瓶や素材類が並べられている。

「狭いですね」
「錬金術にスペースなどいらん。余計な体力を使うくらいならその分、頭を働かせろ」

 ヘルメスの詰め込み教育が始まった。臭い肌触りを中心に素材の根本的な特性を用いた掛け算的な錬金術。ハナの社でおみやげとしてもらった素材や集めた鉱石などを利用して様々な道具を作っていく。

「お前のその物質を変形させる能力は、私の持つヘルメスの能力と酷似しているな……いや、その他にも秘密があるようだがまあいいか」

 こうして3ヶ月、みっちりヘルメスにしごかれた。睡眠と食事だけは開放されルルとナナ、彩衣と時間を共にできたので苦にはならなかったが今学んでいることの話題は禁止、ヘルメス曰く「愚痴となってやる気を削ぐ可能性がある」だそうだ。

 ◆ ◆ ◆

「ありがとうございました。これで前以上に安心して旅を続けることが出来ます」
「ありがとうな。わたしは強くなった気はしないがルルとナナと連携が取れるように鳴ったぞ」
「ありがとうございます。これでご主人様の手を煩わせることは少なくなります」
「ありがとうニャ、ゴーレムちゃんと離れるのは寂しいけどご主人さまと頑張るニャ」

 少しづつ見えてきたこの世界の情勢。僕たちにどこまで出来るか分からないけど争いが止められるならそれが一番いいと思うようになっていた。

「まずはラクナシアだな。僕のこと覚えてくれてるかなー」

 こうしてヨハネ神殿に向けて一歩踏み出すのであった。



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