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第60話 中間テストがやってくる! at 1995/5/15
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また新しい週のはじまりだ。
だが今月はゴールデン・ウィークで一週間少なかったこともあり、四月よりも忙しい気がする。来週末には中間テストが、月末には純美子たちと一緒に行く鎌倉での校外活動があるのだ。
「中間テスト……かぁ」
しかしきっと、お前四〇歳じゃん断然有利じゃん、と思っている奴がいるのだろう。だがそれは、四〇歳になるまで現役時代に学んださまざまな知識を保持できていたとしたらの話だ。
悲しいかなオトナになるというのは案外不自由なもので、一人前のオトナとして生きていくためには、より専門的でより狭義な知識や情報を身に着けていく必要に迫られるものだ。すると、せっかく学び身に着けた知識であっても、徐々に記憶の片隅の方へと追いやられてしまう。
そして、どうしてもすぐに記憶の引き出しから取り出せなくなってくる。
僕個人としては、中学・高校で学ぶあれやこれの知識は、決して将来不要になるものだとは思っていない。図形の面積や線の長さを求める公式はDIYをするときに便利だし、漢字の読み書きや文章の読み解き方はどんな仕事でだって当たり前のように必要になる。自分の住む国やそれを取り巻く諸外国の歴史は最低限学んでおいて損はないし、『○○の法則』みたいな不変の自然法則はいざって時に役に立つ。音楽だって美術だって保険・体育だってすべてそうだ。
「どったの、モリケン?」
「おう、シブチンか。来週中間テストだなあって思ってさ」
いつものように教室の前の方からひょこひょこと渋田が現れると、前の席の主、工藤が気を利かせてどこかへ出かけていった。いつも悪いなぁ。そんなことはお構いなしに渋田は座った。
「なんだよー。モリケン、いっつも成績いいでしょー?」
「ま、まあね……」
そりゃ現役時代はね、なんて言えるわけもなく、僕は引きつり気味の笑顔らしきものを浮かべてみせた。毎日の授業で少しずつ勘を取り戻してはいるものの、あの頃に比べたらほど遠い。
そんな僕たちの会話を耳にして、隣の純美子までがユーウツそうな顔をする。
「あたしからしたら、二人とも羨ましいよー。いっつも必死だもん。今回も頑張らないと……」
あの頃の僕は、純美子は成績優秀な子だと思っていた。しかし、告白されて付き合うことになってからすぐ、『どうしてもケンタと一緒の高校に行きたくって、いつも背伸びして必死で頑張ってたんだよ』と純美子から言われ、嬉しいやら申し訳ないやらで複雑な思いをしたっけ。
「じゃあ、こうしないか?」
なので僕は、二人に向けて提案することにした。
「これから毎日、中間テストに向けての勉強会をしない? 場所は僕らの部室で。どうかな?」
「あー。それ、いいかもね」
「え!? あたしも参加していいの?」
「もちろん。ついでに佐倉君や五十嵐君にも声をかけてみようよ。二人ともかなり優秀だしね」
中間や期末テストの結果の成績優秀者上位一〇名については、職員室前の掲示板に名前と点数が貼り出されるのがウチの中学校の常だった。二人の名前も、そこに高い確率で掲載されていた。このタイミングで一緒に勉強することができれば、僕自身の学力を取り戻すきっかけにもなるだろうし、なにより、校外活動に行く前にある程度の親睦を深めることだってできるかもしれない。我ながら冴えたアイディアである。
「凄いね! 頼りになるセンセイがいっぱいの勉強会、ぜひあたしもよろしくお願いします!」
「えっと……サトチンも誘っていい?」
「いいに決まってるじゃん。シブチンが誘いたい子も大歓迎だって」
「あ、あの……さ……。ちょっといい……かな……?」
期せずして盛り上がりはじめたところに、突然声がかけられ、僕たちは思わずどきりとした。
ふと声のした方を向くと――そこにはロコが立っていた。
「あ、あたしもっ! な……仲間に入れてもらってもいい? お、お願いっ、助けてよ!!」
だが今月はゴールデン・ウィークで一週間少なかったこともあり、四月よりも忙しい気がする。来週末には中間テストが、月末には純美子たちと一緒に行く鎌倉での校外活動があるのだ。
「中間テスト……かぁ」
しかしきっと、お前四〇歳じゃん断然有利じゃん、と思っている奴がいるのだろう。だがそれは、四〇歳になるまで現役時代に学んださまざまな知識を保持できていたとしたらの話だ。
悲しいかなオトナになるというのは案外不自由なもので、一人前のオトナとして生きていくためには、より専門的でより狭義な知識や情報を身に着けていく必要に迫られるものだ。すると、せっかく学び身に着けた知識であっても、徐々に記憶の片隅の方へと追いやられてしまう。
そして、どうしてもすぐに記憶の引き出しから取り出せなくなってくる。
僕個人としては、中学・高校で学ぶあれやこれの知識は、決して将来不要になるものだとは思っていない。図形の面積や線の長さを求める公式はDIYをするときに便利だし、漢字の読み書きや文章の読み解き方はどんな仕事でだって当たり前のように必要になる。自分の住む国やそれを取り巻く諸外国の歴史は最低限学んでおいて損はないし、『○○の法則』みたいな不変の自然法則はいざって時に役に立つ。音楽だって美術だって保険・体育だってすべてそうだ。
「どったの、モリケン?」
「おう、シブチンか。来週中間テストだなあって思ってさ」
いつものように教室の前の方からひょこひょこと渋田が現れると、前の席の主、工藤が気を利かせてどこかへ出かけていった。いつも悪いなぁ。そんなことはお構いなしに渋田は座った。
「なんだよー。モリケン、いっつも成績いいでしょー?」
「ま、まあね……」
そりゃ現役時代はね、なんて言えるわけもなく、僕は引きつり気味の笑顔らしきものを浮かべてみせた。毎日の授業で少しずつ勘を取り戻してはいるものの、あの頃に比べたらほど遠い。
そんな僕たちの会話を耳にして、隣の純美子までがユーウツそうな顔をする。
「あたしからしたら、二人とも羨ましいよー。いっつも必死だもん。今回も頑張らないと……」
あの頃の僕は、純美子は成績優秀な子だと思っていた。しかし、告白されて付き合うことになってからすぐ、『どうしてもケンタと一緒の高校に行きたくって、いつも背伸びして必死で頑張ってたんだよ』と純美子から言われ、嬉しいやら申し訳ないやらで複雑な思いをしたっけ。
「じゃあ、こうしないか?」
なので僕は、二人に向けて提案することにした。
「これから毎日、中間テストに向けての勉強会をしない? 場所は僕らの部室で。どうかな?」
「あー。それ、いいかもね」
「え!? あたしも参加していいの?」
「もちろん。ついでに佐倉君や五十嵐君にも声をかけてみようよ。二人ともかなり優秀だしね」
中間や期末テストの結果の成績優秀者上位一〇名については、職員室前の掲示板に名前と点数が貼り出されるのがウチの中学校の常だった。二人の名前も、そこに高い確率で掲載されていた。このタイミングで一緒に勉強することができれば、僕自身の学力を取り戻すきっかけにもなるだろうし、なにより、校外活動に行く前にある程度の親睦を深めることだってできるかもしれない。我ながら冴えたアイディアである。
「凄いね! 頼りになるセンセイがいっぱいの勉強会、ぜひあたしもよろしくお願いします!」
「えっと……サトチンも誘っていい?」
「いいに決まってるじゃん。シブチンが誘いたい子も大歓迎だって」
「あ、あの……さ……。ちょっといい……かな……?」
期せずして盛り上がりはじめたところに、突然声がかけられ、僕たちは思わずどきりとした。
ふと声のした方を向くと――そこにはロコが立っていた。
「あ、あたしもっ! な……仲間に入れてもらってもいい? お、お願いっ、助けてよ!!」
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