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第62話 寂しかったのは僕だけじゃない at 1995/5/19
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あっという間に金曜日になった。
僕のヒラメキで急遽開催された勉強会だったけれど、ちょうど試験前の部活動禁止期間だったことも手伝ってか、毎日みんな積極的に参加してくれて、今日まで全員ほぼ無欠席である。
そして今日もまた、いつもの小グループにわかれて勉強中だ。
「ふーっ。ちょ、休憩! もー喉からっからだし。お茶淹れるわー。みんなもいるー?」
最初にギブアップして休憩を宣言するのは決まってロコだ。元々当直室だということもあって給湯器や電気コンロがあり、お茶くらいは淹れられる。それを知ったみんなが色々持ち寄ってきた結果、コーヒーや茶葉だけは豊富に用意されているのだ。先生には内緒で、だけど。
すっかりお茶くみ係がさまになってきたロコは、鼻歌混じりにお湯が沸くのを待っている、
「でもさー。かえでちゃんとハカセの二人に教えてもらうと、マジでわかりやすいんだよねー」
「そ、それは上ノ原さんが頑張ってるからだよ! 僕なんか、あんまり役に立ってないし……」
「ほらほら、ちょっとっ!?」
あー、はじまったはじまった。いつものアレだ。
と思って顔を上げると、純美子と目が合った。
ちょっと嬉しそうな顔で忍び笑いをしている。
「あーさ? その『僕なんか』っての禁止って言ったよね!? かえでちゃんはマジで良い子。それはあたしが保証してあげる! ホント、男の子にしておくのはもったいないくらいだもん」
「そ、そんな……なんか照れちゃう……。って、女の子にならなきゃダメなの!?」
「ま、まあそれはどっちでもオッケーなんだけどさ。ね? ハカセもそう思うでしょ?」
「すっかり『ハカセ』が定着していることにいささか疑問はありますが……それには同意です」
「ほら! ハカセのお墨付きなんだよー? もっと自信持っていいんだからね!」
「あ……えっと……その……ありがとう」
かえでちゃんのはにかんだ笑顔、ホントかわゆいんだわ、これが。ぎゅーっ!――いてて。
「ねえ、ケンタ君? もしかして、最初っからこうなることまで計算済みだったのかなー?」
「今、思いっきり足踏んだ子から真顔で聞かれると答えにくいんだけど……ははっ、まさか」
僕のセリフをまるで信じていない様子の純美子は、ホントにー? とジト目にやにや笑いで僕を上目遣いで覗き込んでくるけれど、こうまで上手くいくとは正直思っていなかったのだ。
パッとメンバーだけ見ればロコだけ際立ってみえるのが当然のことで、みんなと噛み合わないかも、という懸念は確かにあった。でも、ロコだってごく普通の女の子なわけで、周りがいろいろ騒いでるだけで中身はまっすぐで素直だ。なんたって、僕の師匠で兄貴分でもあるし。
これで、きっちりテストの点数も伸びてくれれば大成功なんだけど。
「な、なによ、ケンタ? ひとりでニヤニヤしちゃって……キッモいんですけど」
ガチャン! と、僕用に淹れてくれたらしき紅茶を乱暴に置いたロコはふくれっ面をした。
「キモくは……いや、キモかったかもしれないけど、ストレートに言わなくても」
「あ、あたしが勉強してるのがそんなに面白い? ホンット、やなカンジ……!」
「へ? 面白い? いやいや、どっちかっていうと楽しいし、嬉しいんだけど僕」
「た、楽しくて……嬉しい……?」
僕が口にしたセリフに戸惑ってしまったロコは、混乱したようなしかめ顔をしてひとりごとのように繰り返した、僕はどうにかしてこの感情を伝えたくて、もう一度言葉を繋いだ。
「ほ、ほら、僕たち幼馴染だろ? でもさ、中学になってからは一枚見えない壁があるみたいに思えちゃって、凄く距離を感じちゃってたんだ。勝手にね。でも今は、一緒に勉強してる」
「そんなの、ケンタが勝手に――! ……ううん、あたしも少し、そんな風に思ってたかも」
そうか――そう感じてたのは、僕だけじゃなかったんだ。
勝手に僕は、ロコだけがオトナになって、最下層組の僕なんかじゃ絶対に追いつけないくらい遠く先まで行ってしまったように感じていた。でも、そんな孤独感を感じていたのは一緒で。
「あのさ……? また子供の時みたいに仲良くしてくれないか、ロコ?」
「ふ、ふん! そこまでお願いされたら師匠としては嫌といえないわね! ……いいわよ!」
僕のヒラメキで急遽開催された勉強会だったけれど、ちょうど試験前の部活動禁止期間だったことも手伝ってか、毎日みんな積極的に参加してくれて、今日まで全員ほぼ無欠席である。
そして今日もまた、いつもの小グループにわかれて勉強中だ。
「ふーっ。ちょ、休憩! もー喉からっからだし。お茶淹れるわー。みんなもいるー?」
最初にギブアップして休憩を宣言するのは決まってロコだ。元々当直室だということもあって給湯器や電気コンロがあり、お茶くらいは淹れられる。それを知ったみんなが色々持ち寄ってきた結果、コーヒーや茶葉だけは豊富に用意されているのだ。先生には内緒で、だけど。
すっかりお茶くみ係がさまになってきたロコは、鼻歌混じりにお湯が沸くのを待っている、
「でもさー。かえでちゃんとハカセの二人に教えてもらうと、マジでわかりやすいんだよねー」
「そ、それは上ノ原さんが頑張ってるからだよ! 僕なんか、あんまり役に立ってないし……」
「ほらほら、ちょっとっ!?」
あー、はじまったはじまった。いつものアレだ。
と思って顔を上げると、純美子と目が合った。
ちょっと嬉しそうな顔で忍び笑いをしている。
「あーさ? その『僕なんか』っての禁止って言ったよね!? かえでちゃんはマジで良い子。それはあたしが保証してあげる! ホント、男の子にしておくのはもったいないくらいだもん」
「そ、そんな……なんか照れちゃう……。って、女の子にならなきゃダメなの!?」
「ま、まあそれはどっちでもオッケーなんだけどさ。ね? ハカセもそう思うでしょ?」
「すっかり『ハカセ』が定着していることにいささか疑問はありますが……それには同意です」
「ほら! ハカセのお墨付きなんだよー? もっと自信持っていいんだからね!」
「あ……えっと……その……ありがとう」
かえでちゃんのはにかんだ笑顔、ホントかわゆいんだわ、これが。ぎゅーっ!――いてて。
「ねえ、ケンタ君? もしかして、最初っからこうなることまで計算済みだったのかなー?」
「今、思いっきり足踏んだ子から真顔で聞かれると答えにくいんだけど……ははっ、まさか」
僕のセリフをまるで信じていない様子の純美子は、ホントにー? とジト目にやにや笑いで僕を上目遣いで覗き込んでくるけれど、こうまで上手くいくとは正直思っていなかったのだ。
パッとメンバーだけ見ればロコだけ際立ってみえるのが当然のことで、みんなと噛み合わないかも、という懸念は確かにあった。でも、ロコだってごく普通の女の子なわけで、周りがいろいろ騒いでるだけで中身はまっすぐで素直だ。なんたって、僕の師匠で兄貴分でもあるし。
これで、きっちりテストの点数も伸びてくれれば大成功なんだけど。
「な、なによ、ケンタ? ひとりでニヤニヤしちゃって……キッモいんですけど」
ガチャン! と、僕用に淹れてくれたらしき紅茶を乱暴に置いたロコはふくれっ面をした。
「キモくは……いや、キモかったかもしれないけど、ストレートに言わなくても」
「あ、あたしが勉強してるのがそんなに面白い? ホンット、やなカンジ……!」
「へ? 面白い? いやいや、どっちかっていうと楽しいし、嬉しいんだけど僕」
「た、楽しくて……嬉しい……?」
僕が口にしたセリフに戸惑ってしまったロコは、混乱したようなしかめ顔をしてひとりごとのように繰り返した、僕はどうにかしてこの感情を伝えたくて、もう一度言葉を繋いだ。
「ほ、ほら、僕たち幼馴染だろ? でもさ、中学になってからは一枚見えない壁があるみたいに思えちゃって、凄く距離を感じちゃってたんだ。勝手にね。でも今は、一緒に勉強してる」
「そんなの、ケンタが勝手に――! ……ううん、あたしも少し、そんな風に思ってたかも」
そうか――そう感じてたのは、僕だけじゃなかったんだ。
勝手に僕は、ロコだけがオトナになって、最下層組の僕なんかじゃ絶対に追いつけないくらい遠く先まで行ってしまったように感じていた。でも、そんな孤独感を感じていたのは一緒で。
「あのさ……? また子供の時みたいに仲良くしてくれないか、ロコ?」
「ふ、ふん! そこまでお願いされたら師匠としては嫌といえないわね! ……いいわよ!」
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