ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第74話 その9「好きな子と鎌倉の町を散策しよう」(7) at 1995/5/31

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 鎌倉での昼食は混雑するので早めに済ませようと、『ランチ実施中!』の立て看板がある小洒落たカフェ『HOホーJOEジョー!』を見つけてスウィングドアを開けた直後、事件は起こった。


「ちっ――。なんでてめぇらがここにいるんだよ、くそっ!」

「はぁ。こっちのセリフだってーの……」

「あぁ!? なんか言ったか、ナプキン王子!?」

「……別に。なんにも」


 まだ十二時には少し早いというのに、ほぼ満席になっている店内の僕らが通されたテーブルのすぐ横に、なんとあの小山田たちの班が先客として座っていたのだった。

 昔の僕だったらこの時点で縮み上がり、すごすごと退店して他の店を探していたことだろう。

 でも今の、中身が四〇歳のオッサンである僕には、もう小山田への恐怖心はそこまでのレベルにはない。面倒臭いことになったなあ――その程度だったのだけれど、他のメンバーは嫌がるかもしれない。振り返ってそれぞれの表情を窺ってみると、嫌は嫌なのだろうけれど、仕方ない、といったあきらめに似た顔付きで僕に肩をすくめてみせたりしつつ座ろうとしていた。


「あーあ。気分悪ぃな。なんでこいつらと一緒に仲良くメシ喰わねえといけねえんだよ?」

「まったくですねー。せっかくいい場所を見つけたと思ったのに、真似されちゃあねー」


 聞こえよがしに小山田が声を張り上げ、吉川がにやにや笑いつつ何度もうなずいて同意する。周囲の客は、小山田の振る舞いにぎょっとしつつも、関わらない方がよさそうだと知らん顔を決め込んでいるようだ。


(まさか小山田たちも北鎌倉見学だったとはね……。い、いやいや! 待てよ……?)


 もしやと思って、小山田の隣に座って他の女子メンバーたちとおしゃべり中の桃月を盗み見ると、すぐに僕の視線に気づき、ぺろり、とピンク色の舌を出してウインクを返してきた。


(……やっぱり、そういうことか。まったく、余計なことしてくれちゃって……)


 僕は、学年トップクラスの人気を誇るセクシー小悪魔系ロリ巨乳・桃月の、誰もが勘違いしそうなそんな仕草を見ても、どきりとするどころかむしろ呆れて物も言えない状態だった。きっとこの前の『特別授業』で良くも悪くも北鎌倉に興味を持ったのだろう。それなら……仕方ない。さすがに、顔を合わせればひと悶着起こるだろうと期待して、ではないことを祈りたい。


「なー、モモー? 急遽見学コース変更してやったけど、このへん、つまんなくね?」

「そーおー? あたしは超タノシーけど。ダッチはヤだった?」

「い――いやいやいや! 楽しくねえわけじゃねーんだけどよー……なんつーか……」


 わかる。わかるぞー。

 男子だったらやっぱ、合戦! とか、戦い! って方がいいもんな。僕たちも、僕以外の男子が五十嵐君や佐倉君じゃなかったら、きっと別の所に行ってたもん。

 しばらくすると、トレイの上のグラスの氷をカラカラ鳴らしながら早足で、赤いエプロン姿の若い女性がオーダーを受けにやってきた。胸元あたりには『HO!JOE!』というロゴと、サムズアップをして白い歯を見せるサングラス姿の髭の男性のイラストがあった。ここの店名って、『北条』とか『方丈』じゃなくって、まさかのマスターの名前から付けた説急浮上。

 僕と純美子は、パスタがメインのAランチ。ロコとかえで――じゃなかった佐倉君は、ドライカレーとサラダがセットになったBランチ。そしてなぜか五十嵐君だけは、旬の鎌倉野菜をふんだんに取り入れた精進料理風ランチをオーダー。っていうか、そんなのどこにあったの?


「じき混みそうだから、トイレに行きたい人は今のうちに交代で行っておいた方がいいよ」


 ひとまずオーダーが済んだところで、さりげなく店内の様子をうかがってメンバーにアドバイスしておく。奥にトイレがあるらしき通路の横の壁に、『男女共用・ひとつしかありません』の貼り紙があるのを見つけたのだ。


「……あ、あたしはまだいっかなー?(小声)」


 別に小山田たちに聴こえたっていいんだぞ、ロコ。あ、もしかして柄にもなく乙女してる? とかいうと、本気で殴られそうなので黙っておくことにする。まずは純美子がちょっと頬を赤らめながら手を挙げ、続けて佐倉君がやっぱり頬を赤らめて行くことに。確認したところ五十嵐君はいいと言う。ロコにももう一度尋ねてみたけれど、すっかり意地になっているようだ。


「まだしばらく料理はこなさそうだし……じゃあ僕も、念のため行っておくとするかー」


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