74 / 539
第74話 その9「好きな子と鎌倉の町を散策しよう」(7) at 1995/5/31
しおりを挟む
鎌倉での昼食は混雑するので早めに済ませようと、『ランチ実施中!』の立て看板がある小洒落たカフェ『HO!JOE!』を見つけてスウィングドアを開けた直後、事件は起こった。
「ちっ――。なんでてめぇらがここにいるんだよ、くそっ!」
「はぁ。こっちのセリフだってーの……」
「あぁ!? なんか言ったか、ナプキン王子!?」
「……別に。なんにも」
まだ十二時には少し早いというのに、ほぼ満席になっている店内の僕らが通されたテーブルのすぐ横に、なんとあの小山田たちの班が先客として座っていたのだった。
昔の僕だったらこの時点で縮み上がり、すごすごと退店して他の店を探していたことだろう。
でも今の、中身が四〇歳のオッサンである僕には、もう小山田への恐怖心はそこまでのレベルにはない。面倒臭いことになったなあ――その程度だったのだけれど、他のメンバーは嫌がるかもしれない。振り返ってそれぞれの表情を窺ってみると、嫌は嫌なのだろうけれど、仕方ない、といったあきらめに似た顔付きで僕に肩をすくめてみせたりしつつ座ろうとしていた。
「あーあ。気分悪ぃな。なんでこいつらと一緒に仲良くメシ喰わねえといけねえんだよ?」
「まったくですねー。せっかくいい場所を見つけたと思ったのに、真似されちゃあねー」
聞こえよがしに小山田が声を張り上げ、吉川がにやにや笑いつつ何度もうなずいて同意する。周囲の客は、小山田の振る舞いにぎょっとしつつも、関わらない方がよさそうだと知らん顔を決め込んでいるようだ。
(まさか小山田たちも北鎌倉見学だったとはね……。い、いやいや! 待てよ……?)
もしやと思って、小山田の隣に座って他の女子メンバーたちとおしゃべり中の桃月を盗み見ると、すぐに僕の視線に気づき、ぺろり、とピンク色の舌を出してウインクを返してきた。
(……やっぱり、そういうことか。まったく、余計なことしてくれちゃって……)
僕は、学年トップクラスの人気を誇るセクシー小悪魔系ロリ巨乳・桃月の、誰もが勘違いしそうなそんな仕草を見ても、どきりとするどころかむしろ呆れて物も言えない状態だった。きっとこの前の『特別授業』で良くも悪くも北鎌倉に興味を持ったのだろう。それなら……仕方ない。さすがに、顔を合わせればひと悶着起こるだろうと期待して、ではないことを祈りたい。
「なー、モモー? 急遽見学コース変更してやったけど、このへん、つまんなくね?」
「そーおー? あたしは超タノシーけど。ダッチはヤだった?」
「い――いやいやいや! 楽しくねえわけじゃねーんだけどよー……なんつーか……」
わかる。わかるぞー。
男子だったらやっぱ、合戦! とか、戦い! って方がいいもんな。僕たちも、僕以外の男子が五十嵐君や佐倉君じゃなかったら、きっと別の所に行ってたもん。
しばらくすると、トレイの上のグラスの氷をカラカラ鳴らしながら早足で、赤いエプロン姿の若い女性がオーダーを受けにやってきた。胸元あたりには『HO!JOE!』というロゴと、サムズアップをして白い歯を見せるサングラス姿の髭の男性のイラストがあった。ここの店名って、『北条』とか『方丈』じゃなくって、まさかのマスターの名前から付けた説急浮上。
僕と純美子は、パスタがメインのAランチ。ロコとかえで――じゃなかった佐倉君は、ドライカレーとサラダがセットになったBランチ。そしてなぜか五十嵐君だけは、旬の鎌倉野菜をふんだんに取り入れた精進料理風ランチをオーダー。っていうか、そんなのどこにあったの?
「じき混みそうだから、トイレに行きたい人は今のうちに交代で行っておいた方がいいよ」
ひとまずオーダーが済んだところで、さりげなく店内の様子をうかがってメンバーにアドバイスしておく。奥にトイレがあるらしき通路の横の壁に、『男女共用・ひとつしかありません』の貼り紙があるのを見つけたのだ。
「……あ、あたしはまだいっかなー?(小声)」
別に小山田たちに聴こえたっていいんだぞ、ロコ。あ、もしかして柄にもなく乙女してる? とかいうと、本気で殴られそうなので黙っておくことにする。まずは純美子がちょっと頬を赤らめながら手を挙げ、続けて佐倉君がやっぱり頬を赤らめて行くことに。確認したところ五十嵐君はいいと言う。ロコにももう一度尋ねてみたけれど、すっかり意地になっているようだ。
「まだしばらく料理はこなさそうだし……じゃあ僕も、念のため行っておくとするかー」
「ちっ――。なんでてめぇらがここにいるんだよ、くそっ!」
「はぁ。こっちのセリフだってーの……」
「あぁ!? なんか言ったか、ナプキン王子!?」
「……別に。なんにも」
まだ十二時には少し早いというのに、ほぼ満席になっている店内の僕らが通されたテーブルのすぐ横に、なんとあの小山田たちの班が先客として座っていたのだった。
昔の僕だったらこの時点で縮み上がり、すごすごと退店して他の店を探していたことだろう。
でも今の、中身が四〇歳のオッサンである僕には、もう小山田への恐怖心はそこまでのレベルにはない。面倒臭いことになったなあ――その程度だったのだけれど、他のメンバーは嫌がるかもしれない。振り返ってそれぞれの表情を窺ってみると、嫌は嫌なのだろうけれど、仕方ない、といったあきらめに似た顔付きで僕に肩をすくめてみせたりしつつ座ろうとしていた。
「あーあ。気分悪ぃな。なんでこいつらと一緒に仲良くメシ喰わねえといけねえんだよ?」
「まったくですねー。せっかくいい場所を見つけたと思ったのに、真似されちゃあねー」
聞こえよがしに小山田が声を張り上げ、吉川がにやにや笑いつつ何度もうなずいて同意する。周囲の客は、小山田の振る舞いにぎょっとしつつも、関わらない方がよさそうだと知らん顔を決め込んでいるようだ。
(まさか小山田たちも北鎌倉見学だったとはね……。い、いやいや! 待てよ……?)
もしやと思って、小山田の隣に座って他の女子メンバーたちとおしゃべり中の桃月を盗み見ると、すぐに僕の視線に気づき、ぺろり、とピンク色の舌を出してウインクを返してきた。
(……やっぱり、そういうことか。まったく、余計なことしてくれちゃって……)
僕は、学年トップクラスの人気を誇るセクシー小悪魔系ロリ巨乳・桃月の、誰もが勘違いしそうなそんな仕草を見ても、どきりとするどころかむしろ呆れて物も言えない状態だった。きっとこの前の『特別授業』で良くも悪くも北鎌倉に興味を持ったのだろう。それなら……仕方ない。さすがに、顔を合わせればひと悶着起こるだろうと期待して、ではないことを祈りたい。
「なー、モモー? 急遽見学コース変更してやったけど、このへん、つまんなくね?」
「そーおー? あたしは超タノシーけど。ダッチはヤだった?」
「い――いやいやいや! 楽しくねえわけじゃねーんだけどよー……なんつーか……」
わかる。わかるぞー。
男子だったらやっぱ、合戦! とか、戦い! って方がいいもんな。僕たちも、僕以外の男子が五十嵐君や佐倉君じゃなかったら、きっと別の所に行ってたもん。
しばらくすると、トレイの上のグラスの氷をカラカラ鳴らしながら早足で、赤いエプロン姿の若い女性がオーダーを受けにやってきた。胸元あたりには『HO!JOE!』というロゴと、サムズアップをして白い歯を見せるサングラス姿の髭の男性のイラストがあった。ここの店名って、『北条』とか『方丈』じゃなくって、まさかのマスターの名前から付けた説急浮上。
僕と純美子は、パスタがメインのAランチ。ロコとかえで――じゃなかった佐倉君は、ドライカレーとサラダがセットになったBランチ。そしてなぜか五十嵐君だけは、旬の鎌倉野菜をふんだんに取り入れた精進料理風ランチをオーダー。っていうか、そんなのどこにあったの?
「じき混みそうだから、トイレに行きたい人は今のうちに交代で行っておいた方がいいよ」
ひとまずオーダーが済んだところで、さりげなく店内の様子をうかがってメンバーにアドバイスしておく。奥にトイレがあるらしき通路の横の壁に、『男女共用・ひとつしかありません』の貼り紙があるのを見つけたのだ。
「……あ、あたしはまだいっかなー?(小声)」
別に小山田たちに聴こえたっていいんだぞ、ロコ。あ、もしかして柄にもなく乙女してる? とかいうと、本気で殴られそうなので黙っておくことにする。まずは純美子がちょっと頬を赤らめながら手を挙げ、続けて佐倉君がやっぱり頬を赤らめて行くことに。確認したところ五十嵐君はいいと言う。ロコにももう一度尋ねてみたけれど、すっかり意地になっているようだ。
「まだしばらく料理はこなさそうだし……じゃあ僕も、念のため行っておくとするかー」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2026.2.22)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる