ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

文字の大きさ
114 / 539

第114話 夜のブランコ at 1995/7/13

しおりを挟む
 ――キーコ、キーコ。



「ふーん……モリケンは自分が嫌いなんだ、かー……。やっぱ大親友様々だねー」


 なんとなくぎこちない雰囲気のまま部活を終え、家に帰って夕飯を済ませたタイミングだった。通りに面したキッチンの窓の外から聴こえる、チッ、チッ、という舌打ちに似た音に首を傾げながら顔を出して見下ろすと――はるか下の方に見慣れたパーカー短パン姿のロコがいたのだ。

 舌打ちや喉をポコンと鳴らして合図するのは、団地族ならではの地域ルールのようなものである。のっぺりとした武骨な建造物が一定間隔で並んでいるので、よく反響して聴こえるのだった。

 慌てて親父とお袋に出かける許可をもらい、僕も似たような姿で急いで飛び出してきた。今いるのは、団地の中に設けられた小さな遊具付きの公園である。相手がロコであると知らされた両親は、『広子ちゃんは女の子なんだから、早めに帰してあげなさいよ』と言っただけだ。



 ――キーコ、キーコ。
 で、今は二人してブランコに揺られてる、ってわけ。



「な、なんだよ。わかるわー、みたいな言い方。ロコまでそんな風に見えるっていう気かよ?」

「じゃあ、ケンタは自分で自分のこと好き?」



 ――キーコ、キーコ。



「………………好きじゃない」

「ほーら。やっぱそーなんじゃん」



 ――キーコ、キーコ。



「そ、そっちこそどうなんだよ?」

「今はあたしのハナシじゃないもーん。残念でしたー教えませんー」



 ――キーコ、キーコ。



「……好きなわけないじゃん。こんなネクラでちょい太で、地味な底辺ザコ男子。取柄なんて、他の奴より少しくらい勉強ができる、ってだけだ。一番じゃなくって、少しくらい、ってだけ」

「そういうの、自分で言うかなーフツー……。っと、それはおいといて」



 ――キッ。
 惰性で揺れていたブランコがぴたりと止まったのは、ロコが僕の方の鉄鎖を掴んだからだ。



「ケンタには、もっといいとこあるじゃん? なんで知ってるかって? そりゃあ師匠だもん」

「な……。だ……だったら言ってみろよ」


 なぜかロコの言葉を耳にした途端急に気恥ずかしくなって、イキオイでごまかしてしまえと催促した自分のセリフにますます頬が熱くなった僕は、まともに顔を合わせることができなくなってしまった。が――しばらくたっても返事がこないので、そろり、と視線を横に向ける。


「おい……。なんでロコが真っ赤になってんだよ……」

「べっ!? べっつにー!? あ、赤くとかぜんっぜんなってませんけどぉー!?」

「なってるじゃん……」


 公園の四方に立てられた水銀灯の薄青緑がかった白光の下でも、ロコの頬がほんのり赤らんでいるのがわかるくらいだ。その顔が、ぷい、とそっぽを向いてポニーテールが大きく揺れた。


「あ、あたしが言ったって、あんた自身がそう思わなかったらちっとも意味ないの。でしょ?」

「けど……けどさ? 自分でいくら考えたって、思いつかないものは思いつかないんだってば」

「はぁ……。ったく、ホント、世話が焼けるんだから……」


 ぶつぶつと呟いたロコは、背を向けたままブランコからすっと腰を上げ、ひと呼吸する。


「た、たとえばよ? 他の誰かを守るためなら真剣に怒るとこ、とかあるじゃない。うんうん」

「うんうん、ってうなずかれても。全然共感できないんだけど」

「と・に・か・く、そういうとこっ! あとは他の子に聞きなさい! あ……あたし、帰るっ」

「あ……! お、おい! ロコってば!」


 ずかずかと踏み鳴らす足音もやかましく、ほのかにシャンプーの香りを漂わせたロコは、そのまま二度と振り返ることなく僕をひとり残して家へと帰ってしまったのだった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...