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第131話 宣戦布告 at 1995/7/21
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「――というわけですからね。夏休みだからといって、くれぐれもハメを外し過ぎないように」
荻島センセイは歌舞伎役者が見栄を切るかのように芝居がかった仕草でぎょろりと目を剥いてみせた。その様子がおかしくて、釣られてクラス中がくすくすと忍び笑いを漏らす。
「休み明けは、文化祭に運動会、球技大会と学校行事が盛り沢山ですからね。しっかりと体調管理をして、宿題と日々の勉強にも精を出して励んでください。そうそう、一学期にできなかった分、プールでの水泳授業もやりますからね。ああ、大変ですねぇ、中学生は!」
宿題、という単語が荻島センセイの口から飛び出すと、クラス全員が自分の机の上に積み上げられたプリントの山を見つめ、うげ、とげっそりした顔付きをする。とにかく量が多い。
「じゃあね、これで一学期を終わりにしますよ。はい、係の人、最後の挨拶お願いしますね」
合図に合わせ、さようなら、と頭を下げた直後だった。
「……おう。ちょっといいか、ナプキン王子?」
教室の隅まで響くドスの効いた声で言い放ったのは小山田だった。
顔を上げると、いつの間にか窓際にある僕の席の前に立っていた。クラス全員が何事かと驚きうろたえ、動きを止める。
「いいけど……一体なんだい? 何も……してないと思うんだけど。悪いけど、喧嘩なら――」
「そうじゃねえ」
まるで身に覚えのない僕が今にも降りかかりそうな火の粉を払おうと返答すると、首を振る。
「そうじゃねえがよ……ここいらでお前とはきっちり勝負をつけておきてぇんだ。いいな?」
「いいな、って……ずいぶん勝手だな」
「俺様は暴力が嫌いなんだ。本当はな。だから、フェアな勝負って奴をしてやろうってのさ」
「フェアな勝負、ねえ。……それで?」
渋々話に応じている僕が余計な茶々を入れるたび、小山田の背後にいる吉川が物凄い目で睨みつけてくる。むやみに刺激してもこちらに得はない。ここはおとなしく聞くしかなさそうだ。
「てめぇ、最近『電算論理研究部』とかっていう部活をはじめたらしいじゃねえか。だろ?」
「………………それがどうした?」
僕のことはいい。けれど、もし他の部員たちを巻きこむことになってしまったとしたら後悔してもしきれない――そう思ったら自然と声が硬く、低くなっていた。構わず小山田は続けた。
「そう構えるなって。平和的なルールで、三本勝負で決着つけてぇのさ。脅しも暴力も抜きだ」
相手が相手だ。油断はできない。
僕は黙ったまま続きを促すようにうなずいてみせた。
「一本目の勝負は、九月にやる文化祭の部活ごとの出し物だ。客を集めた方が勝ちってことだ」
「おいおいおい……こっちはまだできたばかりで――」
「二本目の勝負は――」
小山田は僕の言葉を無視して続ける。
「運動会の花形、大トリの騎馬戦で最後まで生き残って、敵の帽子を多く獲った方が勝ちだ。な? わかりやすいだろ?」
「そんなむちゃくちゃな……」
そんなの、どう考えたってスポーツ万能の小山田の方が圧倒的に有利じゃないか。
「そして最後の三本目は、球技大会だ」
なぜか急に右手を突き出し、指を二本立てた小山田は、にやり、と不敵な笑みを浮かべた。
「ウチのクラスは当然サッカーで優勝するからな! なんたって、キャプテンの俺様と副キャプテンのカエルがいるんだ、どうやったって勝つに決まってるだろ!? そこで、だ――」
「……はぁ。どうせ、どっちが最優秀選手に選ばれるか、っていう気なんだろ?」
「ははっ! 腰抜けのてめぇにしちゃあ、なかなか勘がいいじゃねえか!」
何が平和的で、脅しも暴力もない、公平なルールだ。
こんな不利な条件、呑めるわけがない。
と、僕にも小山田にも予想できなかったことがここで起こる。
現れたのは――イケメングループのリーダー、室生だった。
「その勝負……僕もぜひ参加させてもらうとしようかな? いいだろ、ダッチ、モリケン?」
荻島センセイは歌舞伎役者が見栄を切るかのように芝居がかった仕草でぎょろりと目を剥いてみせた。その様子がおかしくて、釣られてクラス中がくすくすと忍び笑いを漏らす。
「休み明けは、文化祭に運動会、球技大会と学校行事が盛り沢山ですからね。しっかりと体調管理をして、宿題と日々の勉強にも精を出して励んでください。そうそう、一学期にできなかった分、プールでの水泳授業もやりますからね。ああ、大変ですねぇ、中学生は!」
宿題、という単語が荻島センセイの口から飛び出すと、クラス全員が自分の机の上に積み上げられたプリントの山を見つめ、うげ、とげっそりした顔付きをする。とにかく量が多い。
「じゃあね、これで一学期を終わりにしますよ。はい、係の人、最後の挨拶お願いしますね」
合図に合わせ、さようなら、と頭を下げた直後だった。
「……おう。ちょっといいか、ナプキン王子?」
教室の隅まで響くドスの効いた声で言い放ったのは小山田だった。
顔を上げると、いつの間にか窓際にある僕の席の前に立っていた。クラス全員が何事かと驚きうろたえ、動きを止める。
「いいけど……一体なんだい? 何も……してないと思うんだけど。悪いけど、喧嘩なら――」
「そうじゃねえ」
まるで身に覚えのない僕が今にも降りかかりそうな火の粉を払おうと返答すると、首を振る。
「そうじゃねえがよ……ここいらでお前とはきっちり勝負をつけておきてぇんだ。いいな?」
「いいな、って……ずいぶん勝手だな」
「俺様は暴力が嫌いなんだ。本当はな。だから、フェアな勝負って奴をしてやろうってのさ」
「フェアな勝負、ねえ。……それで?」
渋々話に応じている僕が余計な茶々を入れるたび、小山田の背後にいる吉川が物凄い目で睨みつけてくる。むやみに刺激してもこちらに得はない。ここはおとなしく聞くしかなさそうだ。
「てめぇ、最近『電算論理研究部』とかっていう部活をはじめたらしいじゃねえか。だろ?」
「………………それがどうした?」
僕のことはいい。けれど、もし他の部員たちを巻きこむことになってしまったとしたら後悔してもしきれない――そう思ったら自然と声が硬く、低くなっていた。構わず小山田は続けた。
「そう構えるなって。平和的なルールで、三本勝負で決着つけてぇのさ。脅しも暴力も抜きだ」
相手が相手だ。油断はできない。
僕は黙ったまま続きを促すようにうなずいてみせた。
「一本目の勝負は、九月にやる文化祭の部活ごとの出し物だ。客を集めた方が勝ちってことだ」
「おいおいおい……こっちはまだできたばかりで――」
「二本目の勝負は――」
小山田は僕の言葉を無視して続ける。
「運動会の花形、大トリの騎馬戦で最後まで生き残って、敵の帽子を多く獲った方が勝ちだ。な? わかりやすいだろ?」
「そんなむちゃくちゃな……」
そんなの、どう考えたってスポーツ万能の小山田の方が圧倒的に有利じゃないか。
「そして最後の三本目は、球技大会だ」
なぜか急に右手を突き出し、指を二本立てた小山田は、にやり、と不敵な笑みを浮かべた。
「ウチのクラスは当然サッカーで優勝するからな! なんたって、キャプテンの俺様と副キャプテンのカエルがいるんだ、どうやったって勝つに決まってるだろ!? そこで、だ――」
「……はぁ。どうせ、どっちが最優秀選手に選ばれるか、っていう気なんだろ?」
「ははっ! 腰抜けのてめぇにしちゃあ、なかなか勘がいいじゃねえか!」
何が平和的で、脅しも暴力もない、公平なルールだ。
こんな不利な条件、呑めるわけがない。
と、僕にも小山田にも予想できなかったことがここで起こる。
現れたのは――イケメングループのリーダー、室生だった。
「その勝負……僕もぜひ参加させてもらうとしようかな? いいだろ、ダッチ、モリケン?」
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