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第265話 波乱ぶくみの運動会(11) at 1995/10/10
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「位置についてー! よーい!」
ぱあん!!
――はじまった!
スタートラインに立っていた選手たちが、一斉にお題の書かれているパネルボードが散乱しているフィールド内に殺到した。僕も全力でダッシュしたが、ふと後ろを振り返ると、五十嵐君だけは少しも動じず、ゆっくりとした足取りで一歩ずつ近づいてくる。帝王の貫禄か。
(確かに真っ先にパネルボードを拾ったからといって、カンタンなお題とは限らない……けど)
すべてがすべて、難問ぞろいというわけでもないだろう。あの余裕が裏目に出ることだって当然のようにありえるのだ。僕は再び視線を前に戻し、パネルボード拾いに夢中になっている連中の群れを観察した。なんだか無駄に取り合いを繰り広げているらしい。ここはマズそうだ。
(パネルボードを一度拾ったが最後、お題の変更はできない……! 慎重に選ばないと……!)
僕は、小競り合いで体力を消耗することを避け、比較的参加選手のいない場所を目指す。すると、途中でパネルボードを確保した参加選手がパネルを裏返すところにちょうど出くわした。
「よし! ゲットできたぞ! なになに……うへぇ! 『体重52キロの女子』だってー!?」
あ、あぶないあぶない……。
あれはかなりのハズレパネルだったようだ。
中学生女子の平均体重は、確か47キログラムくらいだったはずだ。それを5キログラム上回っている女子を探して連れて来い、というお題だ。そう聞くと意外とカンタンそうだが、まず常識的に考えて、女子に体重のハナシを振るはタブー中のタブーである。
しかも、平均より5キログラムという数字は、絶妙に微妙なラインだ。見た目で『太っている』まではいかない。『ぽっちゃりめ』か(「め」という言葉を忘れたら即、死、である)『がっちりめ』といった体型だ。わかりやすく例を挙げるなら、某地上波放送局所属の、くいしんぼうキャラを売りにしている名物女子アナがおよそ55キログラム。あのイメージでは、認識上『太っている』まではいかないのがわかってもらえたと思う。しかも、そのセンシティブなラインの質問を、自ら女子相手にしなくてはならないのだ。ヘイト値上昇は避けられない。
また別のところでは――。
「カンタンなお題が出ますように……うわぁあああ?! 『二股かけている人』だと……!?」
あれもダメだ。ハズレ中のハズレパネルだ。
たとえ中学生レベルの稚拙な恋愛とはいえど、二人を手玉にとって弄んでいることが明るみになれば、その後の中学生活は地獄と化す。ごくまれに、それでも女の子が寄って来るチート男子がいたりするが、いずれにせよ『クズキャラ』のレッテルを貼られること間違いなしだ。
そしてまた――。
「さすがにあんなのばっかりじゃ……。う……、『先週職員室のガラスを割った人』って……」
……おい。
それはお題じゃなくて、犯人探しだと思うんだが?
ボールが飛んできてガラスが一枚割れたんですよ、と荻センが言っていた気がする。だからといって、『借り物競争』で生徒を使って犯人を割り出すのはどうなんだ? いまだ名乗り出てこない、ってことで、月曜日の朝礼で梅センが必ず捕まえて罰を与える、と息巻いていた。
ついに、僕の順番となったようだ。
目の前にあるパネルボードの裏面を穴が空くほど見つめて、ごくり、と唾を飲み下した。
(ヤバいのがきませんように……! お願いします!)
――くるり。
「なになに……? えええええっ!? こんなお題は、さすがにライン越えだってぇー!?」
ぱあん!!
――はじまった!
スタートラインに立っていた選手たちが、一斉にお題の書かれているパネルボードが散乱しているフィールド内に殺到した。僕も全力でダッシュしたが、ふと後ろを振り返ると、五十嵐君だけは少しも動じず、ゆっくりとした足取りで一歩ずつ近づいてくる。帝王の貫禄か。
(確かに真っ先にパネルボードを拾ったからといって、カンタンなお題とは限らない……けど)
すべてがすべて、難問ぞろいというわけでもないだろう。あの余裕が裏目に出ることだって当然のようにありえるのだ。僕は再び視線を前に戻し、パネルボード拾いに夢中になっている連中の群れを観察した。なんだか無駄に取り合いを繰り広げているらしい。ここはマズそうだ。
(パネルボードを一度拾ったが最後、お題の変更はできない……! 慎重に選ばないと……!)
僕は、小競り合いで体力を消耗することを避け、比較的参加選手のいない場所を目指す。すると、途中でパネルボードを確保した参加選手がパネルを裏返すところにちょうど出くわした。
「よし! ゲットできたぞ! なになに……うへぇ! 『体重52キロの女子』だってー!?」
あ、あぶないあぶない……。
あれはかなりのハズレパネルだったようだ。
中学生女子の平均体重は、確か47キログラムくらいだったはずだ。それを5キログラム上回っている女子を探して連れて来い、というお題だ。そう聞くと意外とカンタンそうだが、まず常識的に考えて、女子に体重のハナシを振るはタブー中のタブーである。
しかも、平均より5キログラムという数字は、絶妙に微妙なラインだ。見た目で『太っている』まではいかない。『ぽっちゃりめ』か(「め」という言葉を忘れたら即、死、である)『がっちりめ』といった体型だ。わかりやすく例を挙げるなら、某地上波放送局所属の、くいしんぼうキャラを売りにしている名物女子アナがおよそ55キログラム。あのイメージでは、認識上『太っている』まではいかないのがわかってもらえたと思う。しかも、そのセンシティブなラインの質問を、自ら女子相手にしなくてはならないのだ。ヘイト値上昇は避けられない。
また別のところでは――。
「カンタンなお題が出ますように……うわぁあああ?! 『二股かけている人』だと……!?」
あれもダメだ。ハズレ中のハズレパネルだ。
たとえ中学生レベルの稚拙な恋愛とはいえど、二人を手玉にとって弄んでいることが明るみになれば、その後の中学生活は地獄と化す。ごくまれに、それでも女の子が寄って来るチート男子がいたりするが、いずれにせよ『クズキャラ』のレッテルを貼られること間違いなしだ。
そしてまた――。
「さすがにあんなのばっかりじゃ……。う……、『先週職員室のガラスを割った人』って……」
……おい。
それはお題じゃなくて、犯人探しだと思うんだが?
ボールが飛んできてガラスが一枚割れたんですよ、と荻センが言っていた気がする。だからといって、『借り物競争』で生徒を使って犯人を割り出すのはどうなんだ? いまだ名乗り出てこない、ってことで、月曜日の朝礼で梅センが必ず捕まえて罰を与える、と息巻いていた。
ついに、僕の順番となったようだ。
目の前にあるパネルボードの裏面を穴が空くほど見つめて、ごくり、と唾を飲み下した。
(ヤバいのがきませんように……! お願いします!)
――くるり。
「なになに……? えええええっ!? こんなお題は、さすがにライン越えだってぇー!?」
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