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第294話 バースディ・プレゼント at 1995/10/26
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「え……っ!? こ、これ、あたしにくれるの!?」
「だ、だって、ほら――スミちゃんの、た、誕生日だろ、今日はさ」
授業中に渡すきっかけがなく、部活中もみんなの目が気になり、結局夕暮れの帰り道で僕は、ていねいにラッピングされた小さな箱を純美子の差し出した手のひらの中にそっと置いた。
そのコットンキャンディのようなふわふわした包装紙にくるまれた、宝石のように輝く小箱を純美子はうっとりを眺め、それから、はにかんだように、くしゃり、と笑ってみせる。
「ケンタ君の方は過ぎちゃってたから、わざと教えなかったのに。……どうして知ってたの?」
「さあね。それは企業秘密さ。……おっと、サトチンから教えてもらったわけじゃないよ?」
この僕が二周目の『リトライ』者で。
あの頃から一度も忘れたことがなくて。
なんなら二十六年も経った『未来』でさえ、どうしても頭にこびりついて離れないだなんて。
そんなこと、言えるわけないじゃないか。
「……開けてみてもいいかな?」
「もちろん」
純美子の通学鞄を預かって、自分のと一緒に肩にかつぐ。そのまま並んでベンチに腰掛けた。純美子は自由になった両手で小さく輝く贈り物を両手にのせたまま捧げ持ち、口元をゆるめて揃えた両足の間にそっと置いた。プリーツスカートの上でおそるおそるリボンをほどいていく。
幾重にも包まれた小箱の中から現れたのは――。
「……うん。とってもかわいい! こんなステキな銀細工の髪留め、もらったのはじめて」
「実は、それ、僕のこれとおそろいのデザインなんだ」
僕は、ワイシャツの襟元から革ひもを引っ張り出し、こっそり下げていたペンダントを純美子に見せてあげた。どちらもメンフクロウをモチーフにしていて、古木にぐるりと丸く囲われた枝の上からこちらを見つめている。その姿を照らすように、丸くカットされた大きなラピスラズリが月のように配置されていた。
芸術を司るギリシア神、アテナのシンボルはフクロウだ。そして、ラピスラズリは芸術の才能を開花させるチカラを持ったパワーストーンだ。
「つ、つけてみてもいい?」
「うん。僕も見たいし」
でも、そんなことには気づいてもらえなくたっていい。願いはこめるもので、叶える、叶えないは本人の意思のチカラ。それに、純美子の強さは、この僕が一番よく知っているからだ。
「どう……かな……?」
「――!! とっても似合ってる……よかったぁ……!」
正直、フクロウのアクセサリーなんて微妙かも、と内心不安で仕方なかった。でも、今この選択が間違いじゃなかったと、純美子の笑顔が教えてくれる。
「あとさ……今度の土曜日、空いてる、かな? スミちゃんをデートに誘いたいんだ」
「えっ……空いてる、けど?」
「よかった。水族館は好き?」
「うん……好き、だよ」
「よし。決まりだ。スミちゃんの誕生日の、お祝いデートをしよう」
僕は、くしゃり、と笑った。
それに純美子の恥ずかしそうな笑顔がこたえた。
「で、でも……なんだかあたしばっかり悪いな……。ケンタ君のお祝いできなかったから……」
「い、いやいやいや! いいの、いいの」
僕は大急ぎで手を振ってみせた。
「それにもう、スミちゃんのおかげでとっておきの『プレゼント』をもらっちゃったから――」
そういって満面の笑みで笑い返した僕は、ココロの奥底に隠した複雑な感情と危険すぎるヒミツに刺し貫かれた痛みに顔をしかめないように、ことさらにこやかに笑ってみせるのだった。
「だ、だって、ほら――スミちゃんの、た、誕生日だろ、今日はさ」
授業中に渡すきっかけがなく、部活中もみんなの目が気になり、結局夕暮れの帰り道で僕は、ていねいにラッピングされた小さな箱を純美子の差し出した手のひらの中にそっと置いた。
そのコットンキャンディのようなふわふわした包装紙にくるまれた、宝石のように輝く小箱を純美子はうっとりを眺め、それから、はにかんだように、くしゃり、と笑ってみせる。
「ケンタ君の方は過ぎちゃってたから、わざと教えなかったのに。……どうして知ってたの?」
「さあね。それは企業秘密さ。……おっと、サトチンから教えてもらったわけじゃないよ?」
この僕が二周目の『リトライ』者で。
あの頃から一度も忘れたことがなくて。
なんなら二十六年も経った『未来』でさえ、どうしても頭にこびりついて離れないだなんて。
そんなこと、言えるわけないじゃないか。
「……開けてみてもいいかな?」
「もちろん」
純美子の通学鞄を預かって、自分のと一緒に肩にかつぐ。そのまま並んでベンチに腰掛けた。純美子は自由になった両手で小さく輝く贈り物を両手にのせたまま捧げ持ち、口元をゆるめて揃えた両足の間にそっと置いた。プリーツスカートの上でおそるおそるリボンをほどいていく。
幾重にも包まれた小箱の中から現れたのは――。
「……うん。とってもかわいい! こんなステキな銀細工の髪留め、もらったのはじめて」
「実は、それ、僕のこれとおそろいのデザインなんだ」
僕は、ワイシャツの襟元から革ひもを引っ張り出し、こっそり下げていたペンダントを純美子に見せてあげた。どちらもメンフクロウをモチーフにしていて、古木にぐるりと丸く囲われた枝の上からこちらを見つめている。その姿を照らすように、丸くカットされた大きなラピスラズリが月のように配置されていた。
芸術を司るギリシア神、アテナのシンボルはフクロウだ。そして、ラピスラズリは芸術の才能を開花させるチカラを持ったパワーストーンだ。
「つ、つけてみてもいい?」
「うん。僕も見たいし」
でも、そんなことには気づいてもらえなくたっていい。願いはこめるもので、叶える、叶えないは本人の意思のチカラ。それに、純美子の強さは、この僕が一番よく知っているからだ。
「どう……かな……?」
「――!! とっても似合ってる……よかったぁ……!」
正直、フクロウのアクセサリーなんて微妙かも、と内心不安で仕方なかった。でも、今この選択が間違いじゃなかったと、純美子の笑顔が教えてくれる。
「あとさ……今度の土曜日、空いてる、かな? スミちゃんをデートに誘いたいんだ」
「えっ……空いてる、けど?」
「よかった。水族館は好き?」
「うん……好き、だよ」
「よし。決まりだ。スミちゃんの誕生日の、お祝いデートをしよう」
僕は、くしゃり、と笑った。
それに純美子の恥ずかしそうな笑顔がこたえた。
「で、でも……なんだかあたしばっかり悪いな……。ケンタ君のお祝いできなかったから……」
「い、いやいやいや! いいの、いいの」
僕は大急ぎで手を振ってみせた。
「それにもう、スミちゃんのおかげでとっておきの『プレゼント』をもらっちゃったから――」
そういって満面の笑みで笑い返した僕は、ココロの奥底に隠した複雑な感情と危険すぎるヒミツに刺し貫かれた痛みに顔をしかめないように、ことさらにこやかに笑ってみせるのだった。
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