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第299話 恋する遊び島(4) at 1995/10/28
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「もう、本当にスミは怒りました……ぷんぷんです!」
「こ、困ったなぁ……でも、結構面白かったでしょ?」
そう尋ねた僕を、きっ! とすかさず睨みつける純美子。無理矢理連れていかれたスリル満点のアトラクションの連続に、さすがに根を上げた純美子のリクエストで、僕らはセンターハウス一階のフードコート『シーサイドオアシス』でドリンクを飲みながら休憩中なのであった。
時刻はもうすぐ夕方の五時。
元々ここが市が管轄する公園ということもあって、一部の施設やアトラクションは営業終了になってしまう時間が近づいていた。なお、八景島への入島はまだまだ遅い夜まで可能である。
「どうしたら機嫌、直してくれるのかな……?」
「つーん」
「弱ったな……調子に乗りすぎました。……ごめんね?」
「つーん」
「あ、あのさ……? お詫びに、お誕生日のプレゼント、見に行かない?」
「つーん……えっ!? だって、このステキな髪留め、プレゼントにもらっちゃってるよ?」
「いいのいいの。スミちゃんと一緒に、スミちゃんの気にいったものを選んで、贈りたいんだ」
「そ、そんなの、悪いよぅ……」
「いいんだって。あの時、僕ができなかったこと全部、スミちゃんにしてあげたいだけだから」
「えっ………………あの時、って?」
「な、なんでもないなんでもない! こっちのハ・ナ・シ。ほら、行こうよ!」
あ、危なかった。
あやうく余計なことまで口走るところだった。
センターハウスの隣に併設されているショップエリア『ベイ・マーケット』へと、僕は純美子の手をとり歩いていく。まるで僕がおもちゃをねだっている子どもみたいだ、と無性におかしくてくすくすと笑いを漏らすと、純美子がそれを勘繰って、控えめなヒップで、どん、と押す。なんだか今日一日で、いつも以上に二人の距離が縮まった気がして、ついにやけてしまう。
「これなんかどうかな、スミちゃん?」
「わぁ……キレイだね! でも……実は、ちょっと気になっているものがあって……ね?」
「え? なになに? 教えて、教えてよ?」
すると、純美子は妙に顔を赤らめ、僕の右手の薬指と小指の二本だけを握り締めて引っ張っていく。すると、辿り着いた先に並べられていたのは、見渡す限りのぬいぐるみの群れだった。
「ちょっと子どもっぽくて恥ずかしいんだけど……このぬいぐるみが気になっちゃって……」
それは、真っ白なシロイルカの大きなぬいぐるみだった。
いや、サイズ的に抱き枕だろう。
シロイルカは、ここ八景島シーパラダイスを代表する生き物だ。カナリアのようなかわいい鳴き声と見る人をたちまちなごませてしまう柔和な表情。僕も一目でファンになってしまった。
「いいじゃんいいじゃん! どれどれ……ふむ……」
「ダ、ダメダメダメッ! こんな高いの、買ってもらえないよ!」
「いいよ。大丈夫だって」
そこそこいいお値段がするものの、使い道なんてパソコン関連くらいしかなくて貯め込んだままになっていたお年玉やらなんやらを、有効に、カノジョの笑顔のために使えるなら本望だ。
「こ、困っちゃうよぅ……こんな……。でも……うれしいな……」
「そうそう。それでいいの。スミちゃんが喜んでくれたら、僕もうれしいんだから」
早速レジへとシロイルカを連れて行き、会計を済ませてから純美子へと手渡す。純美子はうっとりと目を細めながら、優しくシロイルカを抱きしめる。それから、囁くように言った。
「この子は、ケンタ君の代わり。会えなくて寂しい夜は、この子をケンタ君だと思って眠るの」
「そのうち立場が逆転しそうで怖いんだけど……」
「もう! そんなこと絶っ対ないもん! だって、あたし、ケンタ君のこと誰よりも大――!」
真っ赤になってそこまで口走ったとたん、純美子は慌てて、はっ、と口を閉ざした。
「じ、じゃあ、そんなにいうのなら、証明してあげる……ねえ、ケンタ君……もっとこっちに」
「ん? ん? えっ! ………………!?」
まわりからはきっと、僕らの姿は二人でシロイルカを抱きしめているだけにしか見えなかった――はずだ。
「こ、困ったなぁ……でも、結構面白かったでしょ?」
そう尋ねた僕を、きっ! とすかさず睨みつける純美子。無理矢理連れていかれたスリル満点のアトラクションの連続に、さすがに根を上げた純美子のリクエストで、僕らはセンターハウス一階のフードコート『シーサイドオアシス』でドリンクを飲みながら休憩中なのであった。
時刻はもうすぐ夕方の五時。
元々ここが市が管轄する公園ということもあって、一部の施設やアトラクションは営業終了になってしまう時間が近づいていた。なお、八景島への入島はまだまだ遅い夜まで可能である。
「どうしたら機嫌、直してくれるのかな……?」
「つーん」
「弱ったな……調子に乗りすぎました。……ごめんね?」
「つーん」
「あ、あのさ……? お詫びに、お誕生日のプレゼント、見に行かない?」
「つーん……えっ!? だって、このステキな髪留め、プレゼントにもらっちゃってるよ?」
「いいのいいの。スミちゃんと一緒に、スミちゃんの気にいったものを選んで、贈りたいんだ」
「そ、そんなの、悪いよぅ……」
「いいんだって。あの時、僕ができなかったこと全部、スミちゃんにしてあげたいだけだから」
「えっ………………あの時、って?」
「な、なんでもないなんでもない! こっちのハ・ナ・シ。ほら、行こうよ!」
あ、危なかった。
あやうく余計なことまで口走るところだった。
センターハウスの隣に併設されているショップエリア『ベイ・マーケット』へと、僕は純美子の手をとり歩いていく。まるで僕がおもちゃをねだっている子どもみたいだ、と無性におかしくてくすくすと笑いを漏らすと、純美子がそれを勘繰って、控えめなヒップで、どん、と押す。なんだか今日一日で、いつも以上に二人の距離が縮まった気がして、ついにやけてしまう。
「これなんかどうかな、スミちゃん?」
「わぁ……キレイだね! でも……実は、ちょっと気になっているものがあって……ね?」
「え? なになに? 教えて、教えてよ?」
すると、純美子は妙に顔を赤らめ、僕の右手の薬指と小指の二本だけを握り締めて引っ張っていく。すると、辿り着いた先に並べられていたのは、見渡す限りのぬいぐるみの群れだった。
「ちょっと子どもっぽくて恥ずかしいんだけど……このぬいぐるみが気になっちゃって……」
それは、真っ白なシロイルカの大きなぬいぐるみだった。
いや、サイズ的に抱き枕だろう。
シロイルカは、ここ八景島シーパラダイスを代表する生き物だ。カナリアのようなかわいい鳴き声と見る人をたちまちなごませてしまう柔和な表情。僕も一目でファンになってしまった。
「いいじゃんいいじゃん! どれどれ……ふむ……」
「ダ、ダメダメダメッ! こんな高いの、買ってもらえないよ!」
「いいよ。大丈夫だって」
そこそこいいお値段がするものの、使い道なんてパソコン関連くらいしかなくて貯め込んだままになっていたお年玉やらなんやらを、有効に、カノジョの笑顔のために使えるなら本望だ。
「こ、困っちゃうよぅ……こんな……。でも……うれしいな……」
「そうそう。それでいいの。スミちゃんが喜んでくれたら、僕もうれしいんだから」
早速レジへとシロイルカを連れて行き、会計を済ませてから純美子へと手渡す。純美子はうっとりと目を細めながら、優しくシロイルカを抱きしめる。それから、囁くように言った。
「この子は、ケンタ君の代わり。会えなくて寂しい夜は、この子をケンタ君だと思って眠るの」
「そのうち立場が逆転しそうで怖いんだけど……」
「もう! そんなこと絶っ対ないもん! だって、あたし、ケンタ君のこと誰よりも大――!」
真っ赤になってそこまで口走ったとたん、純美子は慌てて、はっ、と口を閉ざした。
「じ、じゃあ、そんなにいうのなら、証明してあげる……ねえ、ケンタ君……もっとこっちに」
「ん? ん? えっ! ………………!?」
まわりからはきっと、僕らの姿は二人でシロイルカを抱きしめているだけにしか見えなかった――はずだ。
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