326 / 539
第325話 球技大会・三日目(11) at 1995/11/10
しおりを挟む
「塾の帰、商店街でたむろしていた卒業生にからまれているところを助けてくれたから!」
「ゲーセンでカツアゲされそうな時に、忠中のヤンキーたちから助けてくれたじゃんか!」
「タツヒコが暴れ出していろんな物が飛んできたところを盾になって守ってくれたよね?」
なんとも情けないハナシだけれど、次々と声を上げるクラスメイトの大半は、僕の記憶の中にある顔と名前が一致しない生徒たちだった。見覚えがあるような気がするが、名前までは出てこない。しかし小山田は、一人たりとも名前を間違えることなく迷うことなく呼んでみせた。
けれど小山田は、目の前の光景がまるで夢か幻でもあるかのように、ただうろたえている。
「お、おい、てめぇら……そ、そんなのは、本当にたまたま、偶然のハナシであってよぅ――」
僕はすっかり観念して、やれやれ、と肩をすくめるよりない。
「たまたまでも、偶然でもさ? ダッチが彼らを守ってあげたことには変わりがないし、あそこにいるみんながダッチに対して、本当に感謝してるってことに少しも変わりはないんだよ」
「つ、つってもだな……」
「なんとなく、偶然助ける羽目になった程度の奴なら、ひとりひとりの名前なんてきっちり覚えてないんじゃないかな? 制服脱いで私服になったら、ちゃんと覚えてなけりゃ無理だって」
「そ、そりゃあ……守る、って一度男が決めたんだしよぉ……顔と名前くれぇは……」
まだぐずぐずと小山田は言い訳めいたセリフを並べ立てる。
そこに、いらだちを隠そうともせずにツッコミを入れたのは荒山だった。
「この野郎、まーだぐじぐじ言ってやがる! お前がカラダを張って守ってやった奴から礼言われてるんだぞ!? 胸張ってこたえてやれよ! こいつらだって、今、命張ってんだぞ!?」
最後のひとことで、小山田は、はっ、と顔を上げた。
そうだ――。
彼らだって、小山田に吹きつける逆風をはねのけようと、臆病で、ともすれば引っ込んでしまいそうなココロを奮い立たせて、かつて自分を救ってくれた、自分を守ってくれた少年に向けて投げつけられる石つぶてを身代わりとなって受けているのだ。それに気づいたのだ。
なんとかかろうじて立ち上がった彼らの握った拳は震えている。
怖い。
怖くて仕方ない。
今この状態の小山田に味方をしたって、損をするばかりだ。
それでも彼らは、かつて窮地に颯爽と現れたヒーローの姿を忘れることなんてできなかったのだ。
「みんな……くそっ……」
小山田は、ごつごつした拳で目元をぬぐうそぶりをした。涙? いや、違うということにしておいてやろう。それから、もう一度、さっき口にしたセリフを繰り返した。
「なあ、てめぇら? 俺様はどうすればいい? どうすればいいと思う? こんなやり方間違ってる、そんなことはわかってんだ。でも、どうやったらいいのか、わかんなくってよぅ……」
すると、はじめにこたえたのは最初に立ち上がった横山さんだった。
「……小山田君には、もうアイツみたいになって欲しくない。アイツは大嫌い」
「アイツって……もしかして、タツヒコのことか? 俺は……タツヒコみたいだったのか?」
「うん……。あたし、それがすごく嫌だった」
「そ、そっか」
弱気で臆病そうな横山さんだったけれど、そのまなざしはまっすぐ小山田を見つめていた。少しもひるまず、おびえず、ただただまっすぐ小山田の瞳の奥、ココロまでを見つめていた。
「ち――っ。アイツみたいだって言われるのは俺様だって嫌だからな。でもよぅ、やっぱ、どこをどうしたらいいのかわかんねえんだ。暴力はふるわない、言葉づかいも直す、あとは――」
「クラスメイトのみんなと、ちゃんと友だちになる。はじめからやり直すの。できるでしょ?」
「だな、うん。……あのよぅ、よ、横山ちゃん、またわかんなくなったら、教えてくれるか?」
今にも消え入りそうな小山田のセリフに満面の笑みでこたえる横山さんは、その瞬間、誰よりもきれいだった。そのイメージがダブる。
ん?
横山?
――そうか、同窓会の受付にいた!
「もちろんだよ、小山田君! 今度はあたしの番だもん、いつも、いつだって助けてあげる!」
【決勝】 Bグループ 〇2―1 VS 3―1● (3―0)
「ゲーセンでカツアゲされそうな時に、忠中のヤンキーたちから助けてくれたじゃんか!」
「タツヒコが暴れ出していろんな物が飛んできたところを盾になって守ってくれたよね?」
なんとも情けないハナシだけれど、次々と声を上げるクラスメイトの大半は、僕の記憶の中にある顔と名前が一致しない生徒たちだった。見覚えがあるような気がするが、名前までは出てこない。しかし小山田は、一人たりとも名前を間違えることなく迷うことなく呼んでみせた。
けれど小山田は、目の前の光景がまるで夢か幻でもあるかのように、ただうろたえている。
「お、おい、てめぇら……そ、そんなのは、本当にたまたま、偶然のハナシであってよぅ――」
僕はすっかり観念して、やれやれ、と肩をすくめるよりない。
「たまたまでも、偶然でもさ? ダッチが彼らを守ってあげたことには変わりがないし、あそこにいるみんながダッチに対して、本当に感謝してるってことに少しも変わりはないんだよ」
「つ、つってもだな……」
「なんとなく、偶然助ける羽目になった程度の奴なら、ひとりひとりの名前なんてきっちり覚えてないんじゃないかな? 制服脱いで私服になったら、ちゃんと覚えてなけりゃ無理だって」
「そ、そりゃあ……守る、って一度男が決めたんだしよぉ……顔と名前くれぇは……」
まだぐずぐずと小山田は言い訳めいたセリフを並べ立てる。
そこに、いらだちを隠そうともせずにツッコミを入れたのは荒山だった。
「この野郎、まーだぐじぐじ言ってやがる! お前がカラダを張って守ってやった奴から礼言われてるんだぞ!? 胸張ってこたえてやれよ! こいつらだって、今、命張ってんだぞ!?」
最後のひとことで、小山田は、はっ、と顔を上げた。
そうだ――。
彼らだって、小山田に吹きつける逆風をはねのけようと、臆病で、ともすれば引っ込んでしまいそうなココロを奮い立たせて、かつて自分を救ってくれた、自分を守ってくれた少年に向けて投げつけられる石つぶてを身代わりとなって受けているのだ。それに気づいたのだ。
なんとかかろうじて立ち上がった彼らの握った拳は震えている。
怖い。
怖くて仕方ない。
今この状態の小山田に味方をしたって、損をするばかりだ。
それでも彼らは、かつて窮地に颯爽と現れたヒーローの姿を忘れることなんてできなかったのだ。
「みんな……くそっ……」
小山田は、ごつごつした拳で目元をぬぐうそぶりをした。涙? いや、違うということにしておいてやろう。それから、もう一度、さっき口にしたセリフを繰り返した。
「なあ、てめぇら? 俺様はどうすればいい? どうすればいいと思う? こんなやり方間違ってる、そんなことはわかってんだ。でも、どうやったらいいのか、わかんなくってよぅ……」
すると、はじめにこたえたのは最初に立ち上がった横山さんだった。
「……小山田君には、もうアイツみたいになって欲しくない。アイツは大嫌い」
「アイツって……もしかして、タツヒコのことか? 俺は……タツヒコみたいだったのか?」
「うん……。あたし、それがすごく嫌だった」
「そ、そっか」
弱気で臆病そうな横山さんだったけれど、そのまなざしはまっすぐ小山田を見つめていた。少しもひるまず、おびえず、ただただまっすぐ小山田の瞳の奥、ココロまでを見つめていた。
「ち――っ。アイツみたいだって言われるのは俺様だって嫌だからな。でもよぅ、やっぱ、どこをどうしたらいいのかわかんねえんだ。暴力はふるわない、言葉づかいも直す、あとは――」
「クラスメイトのみんなと、ちゃんと友だちになる。はじめからやり直すの。できるでしょ?」
「だな、うん。……あのよぅ、よ、横山ちゃん、またわかんなくなったら、教えてくれるか?」
今にも消え入りそうな小山田のセリフに満面の笑みでこたえる横山さんは、その瞬間、誰よりもきれいだった。そのイメージがダブる。
ん?
横山?
――そうか、同窓会の受付にいた!
「もちろんだよ、小山田君! 今度はあたしの番だもん、いつも、いつだって助けてあげる!」
【決勝】 Bグループ 〇2―1 VS 3―1● (3―0)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2026.2.22)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる