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第347話 スパイ大作戦(4) at 1995/11/22
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(誰かに見つかる可能性があるとしたら、真下の舞台からだけか……とはいえ……)
ぎしっ。
一歩、また一歩と、スノコ状のキャットウォークの上に足をそろり差し出すと、古びた木材のきしむ音がかすかに響く。上履きはハシゴを登る前に脱いでいた。それでも鳴り止まない。
ぎしっ。
ぎしっ。
極度に神経質になっているせいで、余計にその異音は、静寂の闇の中でギイギイと大きく鳴り響いている。七、八本あるどの黒い影に足を這わせても、やはり鳴り止まない。くそっ。
「――なんですって。ええ――そう」
「本当に――? ああ、それで――」
と、突然舞台袖から数人の女子生徒が姿を現わし、僕の心臓をたちまち寒からしめた。
なにぶん真上からの視点なので顔どころか背格好すら定かではないけれど、声のトーンと言葉の端々から推測するに、元・体操部の三年生らしい。まずいことに、ちょうど僕の真下に立って話し込んでいる。なにかの拍子に上を見上げれば、僕の存在に気づかれる可能性がある。
「まさか――が? 信じられない!」
「でもね――がそう言っていたもの」
(集中……っ! 集中しろ、古ノ森健太! 今は、一刻も早くマイクの設置位置を直すんだ!)
途切れ途切れの会話が僕のかりそめの冷静さを無情にもはぎ取ろうとする。なにがあったんだ? ロコがなにをしたんだ? 誰が言ってたんだ!?――ダメだ! 今は耳を貸すな! 僕のココロが傾けば、僕のカラダのバランスも傾いてしまう。一度目を閉じ、深々と息を吸った。
そして、再び前を向いて、前だけを向いて足を進めていく。
(――!?)
ひら――。
キャットウォークがかすかに揺れた拍子に、小さな綿ぼこりが手漕ぎのボートのように左右に揺られながら落ちていった! ゆら――ゆら。気にするな! とにかく前へ、前へ、だ!
ひら――。
「――くしゅん!」
「あら――大丈夫?」
鼻先をくすぐられて思わずかわいらしいくしゃみをした女子生徒が天井を見上げた。
が――。
「――?」
そこにあるのは闇と、その奥にかすかに見える光を失った照明だけだ。
とたんに、自分たちの口にしている会話の危うさに気づいたかのように、そして、いもしないはずの誰かの視線を感じて、ぶるり、と身を震わせると、舞台袖の方へ早足で戻っていった。
(ふぅ……。あ、危なかった……)
闇の中に溶け込んで影絵の一部となっていた僕は、思わず安堵の息を吐いていた。
(さて……マイクの位置を戻して……。よし、これでいいはずだ――コツ、コツ――っと)
部活用の女子更衣室の手前側の壁際まで引きずられ位置がズレてしまった――積もり積もった綿ぼこりが目印だ――マイクを元に戻した僕は、ハカセへの合図のつもりでマイクをつついた。五十嵐君からの返事は期待できないが、再設置がうまくいったことはこれで伝わるはずだ。
(しかし困ったな……。戻るにしてもリスクが大きすぎる……うーん……。……あ――っ!)
マイクを戻すことに必死だったので気づかなかったけれど、ちょうど角のところから灯りが漏れ出ていた。あそこからなら、会話も聞けるし、中の様子も盗み見ることができそうだ――。
ぎしっ。
一歩、また一歩と、スノコ状のキャットウォークの上に足をそろり差し出すと、古びた木材のきしむ音がかすかに響く。上履きはハシゴを登る前に脱いでいた。それでも鳴り止まない。
ぎしっ。
ぎしっ。
極度に神経質になっているせいで、余計にその異音は、静寂の闇の中でギイギイと大きく鳴り響いている。七、八本あるどの黒い影に足を這わせても、やはり鳴り止まない。くそっ。
「――なんですって。ええ――そう」
「本当に――? ああ、それで――」
と、突然舞台袖から数人の女子生徒が姿を現わし、僕の心臓をたちまち寒からしめた。
なにぶん真上からの視点なので顔どころか背格好すら定かではないけれど、声のトーンと言葉の端々から推測するに、元・体操部の三年生らしい。まずいことに、ちょうど僕の真下に立って話し込んでいる。なにかの拍子に上を見上げれば、僕の存在に気づかれる可能性がある。
「まさか――が? 信じられない!」
「でもね――がそう言っていたもの」
(集中……っ! 集中しろ、古ノ森健太! 今は、一刻も早くマイクの設置位置を直すんだ!)
途切れ途切れの会話が僕のかりそめの冷静さを無情にもはぎ取ろうとする。なにがあったんだ? ロコがなにをしたんだ? 誰が言ってたんだ!?――ダメだ! 今は耳を貸すな! 僕のココロが傾けば、僕のカラダのバランスも傾いてしまう。一度目を閉じ、深々と息を吸った。
そして、再び前を向いて、前だけを向いて足を進めていく。
(――!?)
ひら――。
キャットウォークがかすかに揺れた拍子に、小さな綿ぼこりが手漕ぎのボートのように左右に揺られながら落ちていった! ゆら――ゆら。気にするな! とにかく前へ、前へ、だ!
ひら――。
「――くしゅん!」
「あら――大丈夫?」
鼻先をくすぐられて思わずかわいらしいくしゃみをした女子生徒が天井を見上げた。
が――。
「――?」
そこにあるのは闇と、その奥にかすかに見える光を失った照明だけだ。
とたんに、自分たちの口にしている会話の危うさに気づいたかのように、そして、いもしないはずの誰かの視線を感じて、ぶるり、と身を震わせると、舞台袖の方へ早足で戻っていった。
(ふぅ……。あ、危なかった……)
闇の中に溶け込んで影絵の一部となっていた僕は、思わず安堵の息を吐いていた。
(さて……マイクの位置を戻して……。よし、これでいいはずだ――コツ、コツ――っと)
部活用の女子更衣室の手前側の壁際まで引きずられ位置がズレてしまった――積もり積もった綿ぼこりが目印だ――マイクを元に戻した僕は、ハカセへの合図のつもりでマイクをつついた。五十嵐君からの返事は期待できないが、再設置がうまくいったことはこれで伝わるはずだ。
(しかし困ったな……。戻るにしてもリスクが大きすぎる……うーん……。……あ――っ!)
マイクを戻すことに必死だったので気づかなかったけれど、ちょうど角のところから灯りが漏れ出ていた。あそこからなら、会話も聞けるし、中の様子も盗み見ることができそうだ――。
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